サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2011.12.29
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カテゴリ: カーネーション
 要するに、ドラマというのはヘタな「始末」をつければウソ臭くなる、かといって何らかの「明示性(メタ・メッセージ)」が提示されなければ、今度はこっちの気分が収まらない、というまことに矛盾した狭隘にあって繰り広げられるものだ、ということになって来るのです。いかにホントらしく、なおかつ腑に落ちるようにするか、これをめぐって試みられるさまざまな「方法」こそ、「芸術」というマジックなのでしょう。ウソ(虚構)と分かっていて、なおかつホントらしく見えてしまうもの、何がなしそれが「ホントのこと」を言い当てているような気がするもの、それを例えば巷間では「真実」というような言い方をしますね。
 ホントらしく見せる「方法」で、ドラマなどで比較的よく使われるのが、実在の人物をモデルにした「物語」です。「実在した」はずという事実が「物語」に信憑をあたえ、かなりとんでもないようなストーリーでも、容易に話を引っ張ることが出来る。例えば、人じゃないですが、探査衛星「はやぶさ」みたいに、現実に達成された驚くべき偉業があるからこそ、こうした「物語」は成り立つのです(でなければ、この「物語」は絵空事として、誰も信じないでしょう)。ただし、このように鮮やかに決着した「現実」というのには、「芸術マジック」の入る余地はほとんどないのです。事実を厳密に辿っていけば、すべて事は足りる。

 このあたり、創作とか創造に意欲的な「芸術家」(「芸術」とはそもそも「創造」行為そのものを指すのですから、この言い方はおかしいのですが)は、上のような実在のモデルを題材にした場合、当然実際にあっただろう「事実」と、虚構の「創造」との間に鋭い緊張を抱えることになります。したがって人によっては、意識的に地味な対象やネガティブな事象を選ぶ場合もある。先に上げた三島の「宴のあと」など、まさしくそうしたケースでしょう。明らかに彼は実在の人物より、魅力的な人物像を造形しようと企てたのです。
 さて、では今回の「カーネーション」は、どのあたりにバランスを取ろうとしているのか?コシノ三姉妹という世界的デザイナーのお母さんがモデルとなれば、どこまでも想像力を飛翔させるということは出来ない。否、むしろかなりの「縛り」が創作の段階で生じたのではないか?

 こうしたとき、よく使われるのが実在のモデルの周りに、創作上の(虚構の)人物を配置するというやりかたです。事実の縛りを離れて、なおかつ主人公の気質とか考えかたを、サイドから明徴化するのに、これはわりと便利なのです。
 では、現在のところで、それらしき人物がどこに配置されているのかと言えば、それはおそらく安岡家と奈津ということになるでしょう。ネット上ではこれらの人物のモデル探しが賑やかですが、私は主人公も含めてあまりそうした実在論争には関心がありません。何度も言うように、ナマの「現実」はそのままでは、永遠に何かを「物語る」ことができない、「明示性」を持たせることができないのです。浮気とか出征とか戦死とかの確定した「履歴」を改ざんすることは出来なくとも、モデルの心に分け入って、観客と共有できる「真実」を語らせようとすれば、創作者側の「想像力」を媒介にして「芸術マジック」を起すしかない。
 このあたり、いわゆるモデル論争が不毛な下卑た暴露合戦を呈するのとは、意味が違うのです。早い話、私は実際のコシノ三姉妹の来歴にそんなに関心はありませんし、服飾デザインなどはるか興味の範囲外です(男なので)。

 さて、では創作上の人物と見られる安岡家の人たちと奈津は、このドラマでいったいどのような位置づけになっているのでしょうか?

― つづく ―





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Last updated  2011.12.30 16:38:00
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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