サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.01.13
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カテゴリ: カーネーション
 私は糸子の生れて初めての「恋愛」が「不倫」であったことに、「それが実話だから」といった消極的な意味じゃなくて、むしろ驚くほどのドラマ性を感じてしまう。この先どのように描かれるのか想像もつきませんが、「自我の溶解」の過程が、同時にキリスト教的な意味での「原罪」意識とセットになって提出されているからです。

 これまで長々とおしゃべりしてきて、このドラマに一貫する「構え」とは何だろうか、確かにある一貫した「明示性」を感じながら、それと言うことが出来なかったのですが、例によって「テレビ感想欄」の書き込みを見ていたら、はたと手を打つことが書いてありました。その書き込みが事実なのかどうか、私には知る術はないし、また知ろうという興味もないのですが、少なくともこのドラマが暗喩する事柄を知る手がかりにはなるかもしれない。
 それは、「小篠綾子さんがクリスチャンだった」という話なのです。というわけで最低限のウラを取ろうとWikipediaを見てみたら、確かにクリスチャンだったとある!
 私は宗教に対して、ことさらな違和感や先入観は(イスラム教や道教も含めて)できるだけ持たないように心がけている者ですが、今になってこのドラマを振り返ってみると、何がなしキリスト教ミッションのようなニオイも感じないわけではない(例えば、「ベン・ハー」みたいな)。一言でいうと、「無明の境」にある「罪深き人間たち」の贖罪の物語のような。

 例えば、主人公の糸子はじめ、奈津も玉枝も「我が身の罪」に、今だ気づかない「無明の淵」をさまよっている人間たち(寡婦とか娼婦とか)という見方も出来ますよね。

 小篠さんが、いつからクリスチャンだったのか、これまた私の知るところではないのですが、あえて偏見ではなく指摘しておきたいのは、彼女が自伝に我が身の「不倫話」をあえて記したというのは、たとえそれが世間周知の話であったにしても、「自ら記しておく」という行為において、一種の「告解(罪の告白)」に似た構えがあったのではないか?ということなのです。
 「不倫」という言葉に蔵された「不道徳」「汚れ」といったことではなく、おそらく小篠さん自身は、「罪を意識しつつ、しかしそれはその時の我が意に正直だった事柄だから、その時の偽りない心だったから、書き記すしかない」と思っていたでしょう。こういう心理のプロセスは、普通の日本人にはあまり見られない在りようだと思うのです。私たちはこうした秘密の「告白」をすることが、あらためて周囲の人たちを傷つけはしないか?という方向に先に気が回ります。たとえ、いくら世間周知の事実であっても、本人の口から語り出さないかぎり、無かったことにはしないまでも、「あえて触れない」という気遣いをするのが、本人に対しても周囲の人たちに対しても示す普通の日本人の感覚でしょう。

 脚本家の渡辺あやさんやNHK大阪のディレクターたちは、そのあたり、この自伝の持つ特性をどこまで読み切って、このドラマの製作を決断したのか?私はかなり意識していたのではないかと、これまであれこれ詮索をしていて思うのです。しかし自伝ならば「自身がクリスチャンであること」は自由に書けるけれども、朝ドラのテーマにもしキリスト教ミッションのようなものが入り込んだとしたら、公共放送の立ち位置として、一つの信教の構えを取り入れるのはかなり問題だし、だいいちそれと分かって観てしまうと、今まで新鮮だった糸子や奈津、玉枝の人物造形が、「何だ、そうだったのか!」ということになりかねません(私などかなり、そうなってしまいそうです)。
 というわけで、このドラマでは表向きこうした「キリスト教的構え」を、前景化させないように進行させているように見える。ミッション臭を極力排することが出来れば、これはこれで、はなはだ斬新な人物造形として、私たちは観ることが出来るのです。それは例えば大岡昌平の「野火」で使われた手法であったでしょう。大岡自身はクリスチャンではなったにもかかわらず、聖書的イメージを欧文がかった語法で散りばめることによって、彼は日本語に新たな地平を切り拓いたのでした。

― つづく ―





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Last updated  2012.01.13 14:21:38
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
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