サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.02.13
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カテゴリ: カーネーション
「死」及び「死者」
 小難しい「父性」性の話は、再びここでいったん止めにして、最近このドラマを観ていて、もう一つ強いこだわりというか、ある「明示性」を放っていることがあるような気がしているのです。これもまた、あらかじめ仕組まれたものなのか否か?

 それは「死」及び「死者」に対する扱い、といったものなのです。前にこのドラマは「死の場面を描かない」ということを、勘助や父善作の死に絡めて話したことがありました。それをあえて描かないことによって、このドラマが糸子目線を極めて意識している、彼女の視界に厳密に限定することによって、かえって「臨調感」が増している、というような話でした。
 確かに登場人物の死の場面がないことによって、糸子の内部に生じた巨大な欠落感を、我々も共有することが出来、したがってその後に続く、周防との恋愛模様も、その巨大な空洞に到来した「他者」として、「むべなるかな」と腑に落ちるところがあったわけです。

 さて、ではその後、先週までにアナウンスされた死者はというと、ハルばあさん、松坂家の祖父、そして先週千代によって印象深く語られた、松坂家の祖母貞子の三人ということになりますね。
 で、これら三人に共通することは、いずれもその「死の場面に、糸子は立ち会ったであろう」可能性が高い、ということなのです。少なくとも祖母ハルの死には、間違いなく立ち会っているでしょう(だって糸子自身がアナウンスしている)。つまり、これらは善作や勘助のときのように、不可抗力的に立ち会えなかったシチュエーションとは違う。ということは、そうしない明らかな意図を含んでいるのでしょう。
 あえてその場面をカットしているのはなぜか?当然思い浮かぶのは、ジメジメした感触を嫌うこのドラマのトーンからみて避けた、とするもの。そしてもう一つは、あえてその場面を出さず、「語り」によってより余韻を残そうとする仕方、ということになって来るのですが、はたしてそれで充分と言えるのかどうか?

 私はまたしても、これが糸子の「一人語り」で進行しているドラマであることに、ふたたび注意を促されるのです。一言でいえば「糸子が望まなかったから、省いた」のではないかということで、前に周防の人間像が「ボヤけて見える」のは、糸子がそう望んだから、という話と連動して来るわけです。
 それは例の家族会議における、「…ホンマ申し訳ないと思うてます。(せや)けど…二人共もう亡くなってしまいました」という糸子の態度表明に当然結びついて来るわけで、このしごく事実認知的な、したがって周囲から見れば、身も蓋もない物言いは、「生者の世界に、死者は絶対入って来るな!」という宣言でもあるのでしょう。「死者は、死者の世界でどうぞ安んじていて下さい、私たち生者は生きている限り、生者の世界を責任持って引き受けますから」ということなのではないか?

 人の死の場面というのは、往々にして生者が死に逝く人に「拘束される」場面でもあるわけです。ひたすら最後の言葉を謹聴し、「生の世界に残される人々」は全員「分かりました」と頭を垂れることを要請される。糸子はそうした死者=他者に「拘束される(呪われる)」構えには、決然としてノーを突きつけるのです。これは決して「死者を、ないがしろにしている」という態度ではない。

 したがって糸子が選択した、貞子の最後の言葉というのは、「絶対、生き延びや!」と彼女の耳元でささやいた、神戸での別れのシーンだったということになりますね。貞子がまだヴァイタルに生きていた時の言葉こそ、糸子にとって「生きた共有すべき言葉」だったということなのでしょう。

― つづく ―





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Last updated  2012.02.13 11:26:27
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
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