サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.02.21
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カテゴリ: カーネーション
あり得た二回目あるいは三回目の「喪失」
 今まで何となく影の薄かった聡子が、「もう、さびしい!」と大写しになって、にわかに前面に出て来ましたね。糸子の「勝さん似の、いつも上機嫌で」というコメントを待つまでもなく、彼女が笑顔のままで、「こっちを、向いて!」というシグナルを発し続けていたのを、私たちは知っているわけです。
 糸子にとっては、迂闊だったと謗られてもしょうがない状況ですが、何しろキャラの立つ姉二人のほうに、どうしても目が向くいてしまうのは、神ならぬ人間の「業」なのでしょう。

 じつは今回の一件で、糸子は「二回目あるいは三回目の、大きな喪失」を味わったかもしれない。勝が「いつも上機嫌」であることによって、糸子がさしたる関心を抱かなかった結果、取り返しようのない「解決不能の謎」を残したように、聡子がもし洋裁でなくテニスを選んでいたら、彼女は「永遠の謎」として糸子の前から、立ち去っていたかもしれないのです。
 もちろん、勝のように「遺骨」となって糸子の前に戻って来る、ということはないのでしょうが、糸子が死ぬまで気付くことのない傷を負ったまま、別の人生を歩んで行ったかもしれない、というシナリオは、かなりの蓋然性をこの時点では持っていたわけです。

 大事なことは、今回の一件は、聡子のほうから「手が差し伸べられている」ということで、糸子はまだその重大性に充分気付いてない。はたして、それに糸子のほうから「気付く」ということがあるのかどうか?これは「勝問題」が、糸子の中で解決するシチュエーションがあり得るのかどうか?という問題と再びリンクして来るわけです。笑顔のまま「すんません、すんません!」と、善作に叩頭していた勝とは何だったのか、我々は糸子とともに、今だに答えを見つけられないでいる。
 ついでに言うと、へタレの勘助が「俺には、会う資格がないんや。もう」と言って、不思議な微笑を浮かべたまま、立ち去った時の表情とも、驚くほど「笑う」聡子は相似しているのです。
 今回はすんでのところで、何とか事件化せずに済んだわけですが、それにしても、勝や勘助の不思議な「笑顔」が、今になってイヤに気になって来ますね。こういうキャラクターというのも、今まであったのかどうか?

 ただし、糸子には何やら罪障感だけはあるようで、その分、どうしても姉二人に比べて、聡子に「甘く」なる。このあたり、作者はよく見てますね。

 それともう一つ、その聡子が教室で「じっと座って居られへん」子だったというエピソードは、ずいぶん今日的な課題を含んでいて、このドラマはまたしても、「世間の禁止」に踏み込もうとしているのかもしれない。大したものです。
 一見、スポーツ好きの活発な子というような、ぼやかし方をしているけれども、むしろ彼女は一種の「ハンデを負った者」、私に言わせると、端的に「社会的不適応者」として造形されているようにも見える。例えば、小学校で一分と経たず椅子に座っていられない、というようなタイプの子としてです。
 これに対して、世間は普通どういう解決の仕方をするか?と言えば、それはもうほとんど一意的に、「矯正=多数への平準化」という形を採るでしょう。たぶんこのドラマでは、こうしたテーマをベタな形で前景化するようなことはしないでしょうが、イメージとしてさり気なく「刻印」してあるというのが、後々ひょっとして全編の構想を支える重要なファクターに成って来るかもしれないという意味でも、この点は頭の隅っこに入れておいたほうが良さそうですね。

 なぜなら、直子も「この世に唯一の単独者」として、モーツァルトがそうであったように、一種の「社会的不愚者」、決定的に「不適応な少数者」足らざるを得なかったからです。と考えると、勝も勘助も、そしてたぶん糸子もまた、厳密には世間に理解されざる者として世に在ったのではないか、という気がして来るのですが、どうなのかなあ。
 それにしても、次から次へとさまざまな想像を、このドラマは我々に投げかけて来ますね、まったく!

― つづく ―

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Last updated  2012.03.01 14:09:18
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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