サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.02.22
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カテゴリ: カーネーション
衣装とデザイン
 ところで、直子の美意識というのは、どういうタイプの「表現」なのでしょうか?同じ服飾を扱いながら、なぜ彼女の衣装だけが「尖がって」来るのか?素人なので何とも言えないのですが、このドラマが「虚構」であるという前提で、ある程度の想像もしてみたいという誘惑に駆られますね。

 独創的なコンセプトというのが、日常着(商品としての服飾)に、そのまま適用出来ないのはあたりまえのことで、これは何も服飾に限ったことではない(車でも家具でも家でも、一緒)。モード・コレクションの出品作として、一つの提案をするのなら、早い話、ギスギスに彫琢されたモデルが、ステージで二、三分の間着れれば好いわけで、極論すれば裏地がピン留めでも構わないわけでしょう。しかし商品としての衣装は、それがどんなコンセプトであったとしても、一回着たら少なくとも十数時間の使用には、耐えなくてはならないのではないか。
 糸子が「着心地」を第一にしたのは、買い手の満足の在り処を、よく心得ていたからです。

 さて、そう考えていると、直子のデザインに対するエピソードが、もっぱら絵画的な話を中心に描かれていたということが、一つのヒントになるかもしれません。優子だって同じようにデザイン画を描いていたのは、最近の話で明らかになっていますが、我々は子ども時代の二人が、姉は裁縫の方に、妹は絵画の方に、もっぱら関心が向いていたという記憶があるのです。
 なべてしまえば、直子は「より、アートを指向した」んだろう、ということになりますが、私はその中でも「平面芸術」である絵画に強く惹かれた、ということに関心を惹かれます。

 三次元(あるいは、「時間性」も含めた四次元)であるこの世の事物を、その色彩も含めて、どのように平面に落とし込むかというのは、絵画図像の歴史そのものなのであって、さまざまな試みが為されて来たわけです。私はまったくの素人なので、偉そうな話は出来ないのですが、それでも面白いのは「平面図象」が色彩を重視するのに対し、「立体図像(彫刻)」は必ずしもそれに関心を示さないのではないか、という傾向なのです(私見ですよ。現代アートでは、色彩の立体図像があたりまえのように創られています)。
 これはたんに私の妄想なのですが、人間というのは色彩を「平面で捉えたい」傾向があるのかしらん、と思ってしまう。色彩を施された彫刻というのが、なぜかピンと来ないというのは、人の視覚は立体図像を把握しようとする時に、色彩があるいは邪魔をする、ということがあるのかもしれないのです。
ロダンの彫刻 を観てください。どう考えても、この彫琢されたフォルムを把握するのに色彩は邪魔でしょう。逆に先の ピカソの絵 は、まさしく色彩平面であることによって、その独創的なフォルムを把持しているのです。

 となると、衣装デザインの面白味とは、まさしく「立体図像としての身体を被う、色彩としての平面図象」という構図が見えて来はしまいか?そして衣装デザインの妙味とは、あるいはこの絵画と彫刻の相反する持ち味を、一挙に満足させるツールとして、一分のアーティストには映ったのかもしれない。直子はそういう入り方で、衣装デザインを行っているのかもしれないのです。彼女が身体から最も遠い幾何学模様を、しきりと描いていたのを思い出しますね。

 さて、ここまで妄想を膨らませてしまうと、衣装に関してもう一つ、やはり触れずにおれないことが出て来るでしょう。それは衣装を被った人間が、まさしく動き続ける「生身の身体」であるということです。言い換えれば、衣装デザインには優れて「時間性」に対する美の感性も、強く求められているということでしょう。
 衣装は画板に凍結された美ではなく、立体図像の「動き(dynamics)」の中でこそ、その最高の美しさが表現されなければならない。ウーン、なかなか面白いのですが、直子にかかると、それがさながら「動くアート」になってしまうんですよね。

― つづく ―

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Last updated  2012.02.22 14:41:39
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
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