サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.03.11
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「事態を、共有する」ということ
 話は少し「カーネーション」から離れますが、私が以前に「いわゆる戦争報道について」という項目で、ずいぶん長々とおしゃべりをして来たのには、結局、戦前も戦後も「我が身を差し出す」ような仕方で、「本当のこと」を言明した日本人がいたのか(いるのか)どうか?というようなことを、あれこれ考えてみたかったからでした。
 もし一人でも戦争について、そういう「語り方」をしている人がいるなら(いるかもしれません)、戦争を知らない私たちは、その言明を「引き受け」なければならない。しかし今次大戦を糾弾するにせよ擁護するにせよ、我が身をその埒外に置いて語られる言説には、やはり私たちは信憑を置くことが出来ない。外国からの糾弾に対し、真に自身の「品格を保って」反論ないし謝罪が出来ない、という状況にずうっと置かれ続けるということになるのです。

 しかし、ここで大事なことは、私たちそれを聞く側は、そうした「歴史の埒外に、我が身を置く」という戦前(あるいは、もっと昔)からの糾弾的姿勢を、そのまま無批判に採用することによって、むしろ真実が開示されることを、ずうっと拒んで来たのかもしれない、ということなのです。それは戦後日本社会が組織的に、改めて「選択した」方法だったのかもしれないのですが、社会集団的に無意識に選択したその仕方こそ、戦前戦後を通じて日本人の心にずうっと潜んでいる「権力的思考」性だったのではないか?
 私たちがそういう「審判者的」構えで先人に対するとき、戦争を知る人々はとてもじゃないが素直に真実を語り、現実にあったことに本当に向き合って、それを後世に遺しておこう、という気にはなれないでしょう。なぜならその時、語るべき人たちは「被告人席」に座らされているからです(ウーン、ちょっと重い話になってしまいましたね)。

 しかし、目下の「福島第一原発」の現況を見ていても、なぜ「政府、東電から真実が出て来ないのか?語られないのか?」という問いの立て方ではなく、なぜ私たちは「政府、東電から真実を引き出せないのか?語らせられないのか?」と自問したほうが、思考の立て方としては生産的なのかもしれないのです。
 「社会の木鐸」というような、糾弾的な構えで振りかぶった瞬間に(ということは、ほとんどのマスコミ、野党、言論人ということです)、相手は身をすくめて「口を封じられる」のです。互いが「事態を共有する」という構えを持たないかぎり、決して「本当のこと」が明らかになることはない。日本の原発の歴史というのは、まさしく「相手の口を、お互いに塞ぎあう」という身ぶりによって、結果的に今回の悲劇を招いたと言っていいのではないか(何だか、偉そうな言い方ですが)?

 このような言い方をすると、「じゃあ、もっと開示責任を重くして、吊るし上げればいいじゃないか」というような発言が出て来そうですが、そういう仕方で事柄が何でも「一丁上がり」と思い込む幼児的な思考回路こそが、入り組んだ事象から本質を導き出して解決を図るという「強靭な思考」を奪ってしまうのです。
 柳田邦夫さんの「巨大事故原因調査」をめぐる様々な著作を読めば、事故原因の解明では、当事者の恣意や自己弁護的言明を排除し、真相を究明して行くのにまず必要なのは、聞く側が、糾弾的審問姿勢を厳禁して、言わば原因究明のために、証言者に「寄り添う」ような形で対峙することなのだそうです。

 これは何も「迎合」とか「宥和主義」というのとは違う。聞く側が事態を「共に引き受ける」構えであるとき、それはむしろ話す側にとって、「自身を、より厳しい現実と対峙させる」場合が有り得るということなのです。なぜならそういう仕方で語られた事柄を「引き受ける」ことになるのは、語った本人ではなく「聞き届けた側に、共有される」ことになるわけなのだから。
 真実というのはそれが語られた瞬間、語った者から「解き放たれて」、ボールは聞き手を介して「普遍の次元」にジャンプしているのです(法律的次元の話ではないですよ。倫理的領域の話)。

 さてさて、日本のジャーナリストや言論人、マスコミに、証言者からの声をそういうふうに聞き届けて、今度は「自署名入り」の「発語」として、責任を持って「言説」を行っている人がいるのかどうか。NYタイムスのJ・レストンが米ソ双方の政治家から一目置かれていたというのは、そうした「自署名入り」の論説をずうっと行っていたからでしょう。

 意見や立場の違いはあるにせよ、成熟した大人の社会関係で「事態を共有する」とは、そういう意味だと思うのです。





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Last updated  2012.03.11 09:53:36
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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