サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2013.01.23
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カテゴリ: カーネーション
 「天賦の才」というのが、本来的に「天からの授かり物」である以上、それを我が身一つに「専有」しておくのは何となく「居心地が悪い」のではないか、という話について少し補足します。
 要は「天賦の才」とは、本人の「意志」とか「手柄」の類は、いっさい「関与出来ない」領域のものだということなのです。これはほとんど「子どもは自分の親を選ぶことが出来ない」というのと同類の話であって、本人の意志とか努力とは無関係に、それらは我が身に「不可避的に付着」している。
 イチローが「天才と言われると腹が立つ」というのは、たいていの人がその当の「天賦の才」のことを指して、一種の羨望を隠しつつ彼の才能と騒ぐからでしょう。彼からすれば、それじたいは自分の「手柄」でも何でもない。このはなはだ扱い難い「悪魔的な中味」といかに付き合ってきたか、「そこをキチンと見てくれよ」と言いたいところではないか?
 それがたまたま世間から称揚される才だったから良かったものの、もし天からの授かり物が殺人の才として、我が身に「逃れがたく付着」していたらどうだったのか?ということなのです。こういう問いの立てかたというのを、普通なかなかしないのですよね。

 さて次に、なぜそれが「どこかから譲渡されたもの、他へ受け渡しすべきもの」として意識されるのか?ということなのですが、これは上の話と連動している。要はもともと自分のものでない以上、いずれは我が身から去るもの、と意識されるからではないか?でなおかつ、それが我が身に付着しているのが避け難い「運命」であるならば、せめてその中味を出来るかぎり「コトバ」にすることで、いくらかでも「見通し」をつけたい。さらに言えば、ある程度「コントロール可能」なものにしておけるかもしれない、ということではなかったか?
 イチローは天からの「授かり物」を「敬意」をもって扱い、我が身において最適化出来るよう、まるで儀式を執り行うように常に注意を払っている(彼のバッターボックスに入る時の、完全にルーティン化された「しぐさ」を見てごらんなさい)。だけど結果としてのパフォーマンスは厳密に我が身一つの出来事、それらをもたらした元々の「才」はいずれ天に戻すべきもの、と捉えているのではないかしらん。
 彼が繰り返し「語ろう」としているのは、「天賦の才」の中味ではなく、その扱い方なのだと思う。彼に現れた一回的な出来事は、それが厳密に個別的な出来事であるために、改めてコトバでなぞることは不能というか無意味。しかしこの厄介な到来物の「扱い方」だけは、あるいは示すことが出来、受け渡すことが出来得るものなのかもしれない。
 で、その「扱い方」には永久に解はない、なぜならそれを見詰める我が身は、時間性の中にあって常に「変化し続ける」からです。我が身にそれが避け難く付着している以上、自身が生きている間はそれを「問い続ける」しかない、言わば避けようのない一種の「義務」として、それを受け止めているのかもしれないのです(想像ですよ)。
 こういったものの捉え方を、たぶん「対自化」というのだと思うのです。

 話がどんどん飛躍しますが、中味がじつは悪魔(危険、毒)であっても、それを何とか「なだめすかして」使いまわして来たというのは、火を我が手にして以来の人類史の振るまいそのものでもあったと言えるでしょう。あるいはもっと遡れば、生命が扱いのきわめて厄介な「酸素」を飼いならす術を身につけた瞬間から、そうした悪魔=異物との共存が始まったのかもしれない。
 異物を異物のまま取り込んで「使いまわす」には、どこかでそれと「折り合っていく」しかない。人類史的にはそれを鎮魂だの地鎮だの圧倒的な自然に対する「畏敬」の態度表明の繰り返しによって、やって来たような気がするのですが、近代文明はそうした他者=異物に対する「敬意」の表明を忘れてしまっているようです。「フクシマ」はまさしくそうした人類史的な刻印を押された事故のような気もしますが、まあそれ以上に敗戦後日本の民族的疾病が生み出したものという見方も出来そうです(これについては、またまた内田樹さんの「原発供養」という面白いエッセイがあるのですが、話が離れる一方なので、これ以上ここでは触れません)。

― つづく ―





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Last updated  2013.01.23 12:02:32
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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