トカトントン 2.1

トカトントン 2.1

2017/09/07
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カテゴリ: ひよっこ
■菅野美穂を見ているだけで(そのうち何分の一かは画面が黒くなっていたとしても)、幸せな15分だった。ひとつひとつのセリフの言い回し、ちょっとした仕草の可愛さ、ドキッとさせる喉越しの表情、どれをとっても満点の演技。結婚以来、堺君共々、互いにその仕事ぶりに凄みを増して見えるって私は芸能人カップル評論家でも何でもない。

■おかもちを持ったウエイトレスの制服姿の娘とハイヒールを履いた女優と、肩幅だけが広い優男があれだけの数のマスコミ陣の追撃を追い払って川本邸からこのあかね坂商店街まで無事にたどり着けるなんてことはありえない。

■きっとこの逃亡劇の成功にはここにはいないあとひとりが何かに変身する(それは普通ヒデ君の仕事だが)とか、追っ手の心を一気につかんでしまう芸を見せる(それはあの芸風ではありえない)とか、ここには書けない想像もできない何かをやってしまったからだろう。でもまあ、それが明かされたにせよ、全く問題にされなかったにせよ、物語が破綻するわけではないのだ。

■あの停電シーンを全くの黒い画面で見せる方法も演出プランの中にはあったと思う。視聴者も誰がその場に入って来るのかをその声の表情だけで判断し、その立ち位置と並び方と人数を想像しながらその場面を見る(聞く)。

■しかしああやって薄暗い画面で周りが何も見えないという演技を熱演する俳優たちの芝居を見る楽しみの方が真っ暗な画面に比べより喜劇性を生む。中でも最高のセリフは愛子さんの「見えないけど素敵です」という省吾さんに対するものだった。きっと彼女の頭の中には毎日眺めるあのお顔があったと思われ。

■自然発生的な現象を作ることで餃子パーティーへの何の脈絡もない展開の唐突さをやわらげる。皆がなぜか(自然に)集まった、では次に何をしようか。そこで光石研によってその提案が絶妙のタイミングで行われる。これが彼の(この人がいなければドラマにならないという)名バイプレイヤーたるところである。

■昼の再放送において、この川本世津子(せつこ)歓迎会の裏では「やすらぎの郷」で昭和の名女優九条摂子(せつこ)の告別式がしめやかに行われていた。倉本聰渾身の名場面だったが、このちっぽけな餃子パーティーの感慨とあの大規模な告別式の感動の度合いがほぼ均等であったのはなぜだ。それはたまたまふたりの女優の役名が同じだったからというわけではない。

■集まった人がみんな笑っている。集まった人がみんな泣いている。そんな人の中のひとりになってそんなことを繰り返すことが人生だったとしたら、できればその最後は餃子パーティーの中のひとりでありたい。できれば集まった人はみんな優しい気持ちでそこにいて欲しい。自分もまた優しい人のひとりとしてその中にいたい。


それにしても結局一番悲しいのは忘れられたヤスハルである。





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Last updated  2017/09/07 10:10:57 PM
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Dehe@ Re[1]:カルトQ 2005 北の国から(10/18) adventさんへ ご指摘の通りです。例によ…
advent@ Re:カルトQ 2005 北の国から(10/18) 五郎が読んだ大江健三郎> 開口健ではなく…
しょうゆ@ Re:家庭教師 / 岡村靖幸(09/09) …最後まで岡村靖幸はわからなかったのでは…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
Dehe @ Re[1]:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) Mr.Zokuさんへ 情報ありがとうございまし…
Mr.Zoku@ Re:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) 今年出た[Deluxe Edition]は聴かれました…

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