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2015年11月11日
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カテゴリ: 漫画・アニメ

『浦沢直樹の漫勉』 (Eテレ) の さいとう・たかをの回 (2015.9.25.放送) は、なかなか面白かった。


『ゴルゴ13』 について、「さいとう・たかを自身は殆ど絵を描いていない」 …という都市伝説を、実際にゴルゴを描く現場を見せて (しかも、かなり丁寧なカラー扉絵まで) 否定したのは、『探検バクモン』 でもやってたので目新しさは無かったが、最も笑えたのは、浦沢氏との以下のやり取り。


さいとう 「自分に権利なくなってくるからね。…『台風五郎』(初期の代表作) をやめるってなったときに、読者から “ 台風五郎を殺すんなら お前が死ね ”って (笑)」

浦沢 「もう順番がよくわからないですよね。『YAWARA!』 の復刻版が出るときに、どうしても気に入らないところを描き直したら、読者が、 “ なんの権利でそんなことやっているんだ ” って。 “ えっ? 僕に権利ないの? それも ” って」


…私も余り人のことは言えないが、Amazon のレビューなどを読んでると、漫画作品を 「私物化」するファンがいて、ツッコミたくなることが多々ある。

低評価を付ける際、「ストーリーがつまらない」 とか、「キャラに魅力がない」 とか、「作画が雑」 とか、「表現がヘタクソ」 とか、の理由であれば分かるのだが、「自分の予想と違う」 展開にひたすら怒り、作品の評価を下げたり、作者や他のファンの感性を攻撃するのは、度を超すと滑稽なので注意しないといけないな、と思った。



<読者エゴの極端な例>


○ キャラクターの欠点や過ちを許さない

メインキャラの過去の悪行をいつまでも問題視する。それがストーリーの根幹やキャラの行動原理に繋がっていても無視。


○ ひいきのキャラが幸せになれないとマジで怒る

『ライアー×ライアー』 『ひるなかの流星』 等でも指摘したが、三角関係の末に自分の好きなキャラが失恋すると、作者 (作品) を攻撃する、等。


○ 作品のテーマをこうと決めつけ、そこから外れると怒る

『ちはやふる』 は 「カルタ漫画」、 『3月のライオン』 は 「将棋漫画」 と決めつけ、エピソードが恋愛や私生活のゴタゴタに傾くと、「そんな漫画ではなかったはず」 とか 「元のテーマに戻せ」 と、ブーイング。



確かに、テーマが途中から迷走したり、余りにも変化してしまうと、ショックなことがあることは認める。

『銀のスプーン』 は、ほのぼのレシピ漫画かと思わせといて、最近はシリアスに傾き過ぎて一部の読者から不評を買っている。 私的には許容範囲だが、ガッカリする読者の気持ちも分からなくない。

なんだかんだ言って、多くの読者は 常にハッピーエンドを期待しているもので、特に長期連載でキャラに感情移入していればいるほど、その不幸は見たくないものだ。


だが、「スポ根」 だから、「バトルもの」 だからと決めつけて、恋愛要素や私生活描写に傾いた途端に低評価をつけるのは、ちょっと筋違いのような気がする。


例えば、 『君に届け』 で脇役のラブストーリーを延々やることについては、私も 「番外編でやれば?」 と思うし、そもそも、こういうダラダラと恋愛だけの内容の漫画を嫌って読まない人がいても、それは個人の勝手だ。


だが、 『ちはやふる』 や 『3月のライオン』 の作者の過去作品 (末次由紀 『エデンの花』 等、羽海野チカ 『ハチミツとクローバー』 等)を読んだことのある読者であれば、恋愛含めて人間関係の悩みや葛藤を描くことを得意とする作家であることは予め分かるだろうし、初めての読者でも、スタート当初のエピソードや雰囲気で、カルタや将棋だけを描こうとしてる訳ではないと予想できて良さそうなものだ。

百歩譲って 掲載誌がカルタや将棋の専門誌だってならまだ分かるが、「対戦や闘いだけに専念しろ」 なんて、読者が決めることではないだろう。


『ちはやふる』 も『3月のライオン』 も、競技世界のトップを目指す一生懸命さや純粋さを持つメインキャラの魅力を描いた上でこそ、その友情や恋愛が一層美しいものに感じるし、説得力が増す。 部活も勉強もせず、ひたすら恋愛ばかりの漫画とは違って、競技の面白さが根底にあるから、脇役の闘いにも興味が持てるのではないだろうか。


私も 『ぴんとこな』 の感想では、「歌舞伎漫画に徹すれば良かったのに」 と書いたことがあったが、それはあくまで、歌舞伎以外の恋愛エピソードが陳腐でつまらなかったからで、本来は、競争関係のみ描いて恋愛要素を全く無視するのは不自然だと思う。


そんなにカルタや将棋の熱い闘いだけを観たいなら、何も漫画じゃなくても、実際の対戦観たら? 特に将棋や囲碁の対局は、週末には大抵、Eテレ等で放送してるんだし。


どうしても 「勝負漫画に恋愛を混ぜるのは邪道」 だと言うなら、ある日突然、少年が囲碁の霊に取り憑かれ、恋愛どころか友人や家族も無視してひたすら囲碁の道に邁進する 『ヒカルの碁』 とか、あれはあれで面白いので、その類の少年漫画を厳選して読めばいいと思う。




<関連日記>
2012.3.12. 久しぶりに、全巻買ってもいいと思った・・・ 『 ちはやふる 』 (原作)

2012.4.19. 片思いのナルシシズム ・・・ 『 ハチミツとクローバー 』

2012.5.29. バカバカしくてもやめられない、愛すべき 「メロドラマ」 ・・・ 末次由紀 『 エデンの花 』

2012.6.25. 主人公の 「感受性」 の強さ (若さ) が重たい ・・・ 羽海野チカ 『 3月のライオン 』

2012.10.24. とんとん拍子で 「高校デビュー」 を果たしていく女の子 の お伽噺 ・・・ 椎名軽穂 『 君に届け 』

2014.6.2. ストーリーも作画も模範的なだけに、イチャモンつけてみたくなる ・・・ ほったゆみ、小畑健 『 ヒカルの碁 』  

2014.9.28. 「ドラマ」 と 「レシピ」 のバランスが丁度よい料理漫画 ・・・ 小沢真理 『 銀のスプーン 』

2015.6.25. 「歌舞伎漫画」 に徹していれば、名作と呼べたかも ・・・ 嶋木あこ 『 ぴんとこな 』

2015.7.27. 「欠陥人間による グズグズな恋愛」 と割り切って読もう ・・・ 金田一蓮十郎 『 ライアー×ライアー 』

2015.9.2. プロ漫画家 “創作の秘密” 公開 ・・・ 『 浦沢直樹の漫勉 』












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最終更新日  2016年02月07日 23時21分00秒
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