雪白の月

雪白の月

PR

プロフィール

つぐみ@夜空

つぐみ@夜空

カレンダー

カテゴリ

コメント新着

今時の漫画だけ読んでおれば良いのでは?@ Re:細川智栄子 『 王家の紋章 』…… 「完結しないこと」 にイラつく ファンの皆様の心情をお察しします(09/07) 昭和漫画にイライラするんだったら最初か…
きゅうあしま @ ラストコメントが良い指摘です。 お疲れ様です。 コメントおもしろく拝見し…
きゅうあしま @ ゆうきまさみは超一流のB面としてを開き直っています。 お疲れ様です。 つぐみ@夜空さんは丁寧に…

キーワードサーチ

▼キーワード検索

フリーページ

2016年04月15日
XML
カテゴリ: 漫画・アニメ





電子書籍 (無料版含む) にて、全10巻読了。

単巻作品 『 キス、絶交、キス 』 (2001年) の続編となる作品。 設定や人物関係は単純で回想も多いので、前作未読でもストーリーが分からないということはない。


小・中学校時代の5年間、お互いに好意を持ちながらも絶交状態だった男女が、卒業の日に和解、別の高校に通いつつ交際するが、上手に付き合えずにギクシャク …的なのが延々続く、恋愛漫画。


「長い絶交から一転」 …というパターンは、古くは、カナダの少女向け小説 『赤毛のアン』 を思い出すが、それを含めて、ハッキリ言って設定やエピソードそのものに目新しさは無い。

作画についても、人物の絵柄は可愛らしく、魅力があるが、背景は申し訳程度にしか描かれず、構図やペンタッチにも特別、秀でたセンスは感じられない。


ただ、少女漫画に余りにもまん延する、なんだかんだ言って 「素直で、可愛いところを自己アピールできるヒロイン」 や 「男らしくスマートな相手役男子」に飽き飽きしている読者、また、自分が未熟で純粋だった頃の初恋の記憶が薄れかけた年齢の大人が読むと、案外、共感できるかもしれない。

いや、初恋の記憶 …とか言っても、私自身は、中高生時代に男性と交際したことも、さほど真剣に誰かを想い続けたことすら無いのだが、もしも当時、ものすごく好きな人と思いがけず両想いになって付き合うことになっていたら、きっと、こんな風に苦しんでいたんじゃないか、 …という、あくまで想像からの感情移入に過ぎないのだが。


一つのエピソードを、主人公の男女それぞれの視点から、二度描く (時には脇役の視点からも) というのは、短編や番外編では時々見られる手法だが、全巻通して ほぼ毎エピソードやるのは、ちょっと珍しく、読者によっては クドく感じるかもしれない。


と言うのも、相手の男子の視点で描き直すと言っても、特別ビックリするような 「裏の顔」 や 「新事実」 が明かされる訳でもなく、ほぼ同じ話を、大した絵的な違いもなく、淡々と相手側のモノローグを付けて描き直してるだけ、 …と言えなくもないのだ。

しかも、これぞ 「ループ展開」 というような、同じような心理葛藤の繰り返しで、 「え? その悩みは前回、解消されたんじゃないの?」 というようなことで、毎回、お互いに誤解し合い、喧嘩したり、泣いたりしてばかり。


傍観者の立場だと、かなりイライラも させられるが、よく考えてみれば確かに、真剣であればあるほど、昨日まで仲良くしていても、今日は 「もう、嫌われたかもしれない」 と不安になった、若い頃の恋愛の記憶を呼び覚まされる。


特に、この作品のような、 「マジメで勉強もスポーツもできる優等生のヒロイン」 と、 「派手で人気者だが、劣等生の男子」 の組み合わせなんてのは、小中学生時代にはありがちだが、将来的には “破綻する典型” みたいで、やたらと切ないではないか。


とは言え、正直、5巻を越えたあたりから、関係性の停滞に さすがに飽きてはくるが、同じエピソードを繰り返して描くというクドい手法が、むしろ、意外に (私にとっては) 読み続けるモチベーションになった。


なにしろ、相手の男子 (羽鳥) が余りに純粋かつ不器用で、劣等生であることを引け目に感じながらも、優秀なヒロインを心から誇りに思っているところが 却って痛々しく、巻を追って、彼の行動心理が 大方 想像つくようになってもなお、羽鳥視点からのストーリーを改めて読み直したくなる。


「イケメンだけど一途で純粋」 みたいな男子は、少女漫画では散々描かれているが、なんだかんだ言っても、自信の無いヒロインを余裕でリードしてくれる構図が多い。 そもそも、男の方が 「高スペックで、立場が上」 であることを、多くの女性 自らが理想としている現実がある。

勿論、羽鳥のような、小学生のように純粋なままの男も、現実にはそう存在しないと分かってはいるが、他の出来過ぎヒーローよりは、不器用で女性の扱いのヘタな羽鳥の方が、まだリアリティーがありそうに感じる。 …と言うか、 「いたら いいな」 と思う。


理屈はどうでも、 「恋愛一辺倒の少女漫画」 では滅多に泣けなくなってしまった私が、何故だか久しぶりに琴線に触れて、前半はウルウルし通しだった。

絵柄も内容も 「ド少女漫画」 には違いないが、案外、かつて不器用だった大人の男性にも、共感できるところがあるかもしれないと思う。


惜しむらくは、やはり、ちょっと冗長過ぎる点。 5、6巻にまとめ、少々 名残惜しい位で終わらせれば、「名作」 と言えたかもしれない。


蛇足だが、この作品を読んでいて、作画の拙さや作風がちょっと似ているという意味で、あきの香奈さん という漫画家を思い出した。

1980年代、主に 『別マ』 に執筆されていた方だが、何冊か短編集を出して 早々に引退してしまったようで、今はWikipediaにも載っていないし、コミックスも全て絶版のようだ。

最初に見た時は、 「絵柄が可愛らしいだけで、素人がノートに描いたような手抜きの作画」 とバカにしていたが、繊細な心理描写で、ついつい泣かせられてしまう作品が多かった。

少なくとも、同時代の 『別マ』 でメインを張っていた 多田かおる や、 いくえみ綾 、紡木たく 等よりは、キャラクターに奇をてらったところがなく、リアリティーを感じて、私は好きだったのだが…。




<関連日記>
2012.10.24. とんとん拍子で 「高校デビュー」 を果たしていく女の子 の お伽噺 ・・・ 椎名軽穂 『 君に届け 』

2014.2.7. 模倣も ここまで長く続ければ 尊敬 ・・・ いくえみ綾 『 潔く柔く 』

2015.3.10. 元祖 「引き延ばし系」 少女漫画 ・・・ 多田かおる 『 イタズラな Kiss 』

2015.5.25. ヒロインの魅力すら霞んでゆく、魔のループ展開 ・・・ 河原和音 『 高校デビュー 』











お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2016年10月10日 22時08分10秒
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: