ヴィーテ・イタリア高岡(Hiruccio)のイタリアワイン&主夫日記

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2008/02/08
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カテゴリ: 映画と読書
自宅の本棚に目をやっていたらこの本が目配せを
送っていたんです(^^;)


ついつい手にとって読み始めた瞬間、自分の中に
火がついた感じがしたので


「やばいなあ・・・」


と思っていたのです。


イタリア語のタイトルでは、


L'amore di uno sciocco
ラモーレ・ディ・ウノ・ショッコ


ハハハ、つまり、現代どおりの訳がついています。


因みに、仮面ライダーの「ショッカー」は、このショッコの
女性形の「ショッカ」から来ているのでしょうか・・・。


馬鹿ども


という感じですね。いや、英語の「ショックを与える者」
ということでしょうか。でもショッカーレという動詞で
「ショックを与える」という意味もあります。

語源は同じところにあるのかもしれません。


さらに因みに、辞書にはscioccoショッコの意味として
二番目に


(トスカーナ)塩気のない、味のない、気の抜けた


という意味がありました。「愚か」「馬鹿」が
味の形容詞になるというのは興味深いところです。


イタリア料理の中でもとりわけ塩気のきつい
トスカーナ料理に、塩が足りないと「愚か」と
いうことになるんですね。分かるような、分からん
ような・・・。



また、確か、須賀敦子さんが谷崎の全集の翻訳をされて
いたと記憶します。



ミラノ霧の風景

ウンベルト・サバ詩集




さて、話が逸れすぎました。



何気なく本を手にとって、目にした



「私はこれから、あまり世間に類例がないだろうと
 思われる私達夫婦の間柄に就いて、出来るだけ
 正直に、ざっくばらんに、ありのままの事実を
 書いてみようと思います。それは私自身に取って
 忘れがたい貴い記録であると同時に、恐らくは
 読者諸君にとっても、きっと何かの参考資料と
 なるに違いない。」



という冒頭から、ほとんど二宮金次郎状態に突入
してしまったのでした。


エロ、フェチ、マゾ・・・・恐らくワインを愛する
人間=あなたならこの世界とは非常に縁が深いのでは
ないでしょうか(^^;)


つまり、それは「偏愛」ということで、愛とは
言葉であり、愛とは描写であり、愛とは細部である
とすれば、エロがフェティシズムを帯びるのは
当然のことでしょう。


またマゾにしてもサドにしても、それは表裏一体的な
世界であり、愛のエモーションを求めるのであれば
そのどちらかの世界への耽溺を求めるのは、非常に
人間的な一面なんだと思いますし、誰しもがどちらか
の傾向を持っているでしょう。




それにしても、見事な文体です。

僕は読書をするときは、気に入った表現や大切と
思われる箇所に線を引きますが、とにかく、線を
引く箇所が多すぎて、全編に線を引きたくなるほど
そのリズムと流れるような旋律的文章には
時にうっとり、時に戦慄しながら、文の美の世界に
耽溺できるのでした。


『ナオミのように撫で肩で、頸が長いものは、着物
 を脱ぐと痩せているのが普通ですけれど、彼女は
 それと反対で、思いの外に厚みのある、たっぷり
 とした立派な肩と、いかにも呼吸の強そうな胸を
 持っていました。

 ボタンを嵌めてやる折に、彼女が深く息を吸ったり、
 腕を動かして背中の肉にもくもく波をうたせたり
 すると、それでなくてもハチ切れそうな海水服は、
 丘のように盛り上がった肩のところに一杯に伸びて、
 ぴんと弾けてしまいそうになるのです。

 一と口に云えばそれは実に力の籠もった、「若さ」
 と「美しさ」の感じの溢れた肩でした。私は内々
 そのあたりにいる多くの少女と比較してみましたが
 彼女のように健康な肩と優雅な頸を兼ね備えている
 ものは外にいないような気がしました。』

こうした表現が満載なんですね!


さて
ワインというのは、その味わいを「ボディ」で
捉えますから、こういう肉体の表現を読むとその
ままワインの描写にもなるように思います。


「背中の肉にもくもくと波を打たせたり」という
表現には思わず興奮してしまいますが、これは
ワインの舌触りの粘性と酸の質の絡みをイメージ
することができます。


「力の籠もった若さ」「美しさ」も素敵な
表現ですが、そうした分かりやすい言葉で瞬時に
イメージできる言葉の数々を読んでいると、

あ~、これはワインの表現を学ぶには恰好の
教科書だな、なんて思えたりもしたのでした。


この小説は海外でも日本でも数多く映画化されて
いますが、やはり増村保造の映画は見なくては
いけません。


痴人の愛



増村保造といえば、日本人の映画人として初めて
イタリアのチェントロ・スペリメンターレ・デル・
チネマ、という、世界で一番古い映画学校を出た
東大の超インテリ監督ですが、彼の映画の主人公に
なる理想的人間像と「痴人の愛」の主人公
ナオミは、恐らく100%重なることができる
人物だったに違いありません。



何かを偏愛するものだけが人生の幸せを獲得する
ことができる。


この小説の主人公の譲治をなんら偏見で見る
ことなく、好感を持って慈しむことのできる
時代がすでに到来しているのではないか
と思います。





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Last updated  2008/02/12 04:41:19 PM
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