ヴィーテ・イタリア高岡(Hiruccio)のイタリアワイン&主夫日記

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2008/02/15
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カテゴリ: 映画と読書

痴人の愛

イタリア文化に興味がある、日本映画の古い作品が
好きだという人には、増村保造の映画は無視できない
と思います。


この東大出のインテリ監督は、ローマのチェントロ・
スペリメンターレ・デッラ・チネマトグラフィア
というムッソリーニが創設した世界一古い映画学校へ
当時の文化庁から研究員として派遣された人であり
戦後の日本映画界では有数の理論派ではなかったかと
思います。


彼の文章の中でも「ある弁明」と題された論文を
20年前ほどに読んだ僕は、とても感銘を受けた
ことを覚えています。


彼は、自分の作品への「情緒がなく、真実が歪められ
雰囲気描写が皆無で、味も素っ気もない」という
批判に対して、弁明しています。


「情緒とは本来emotionであり、すべての感情の昂揚
を指していい筈であるが、日本人はいつからか
否定的な消極的な感情のみを情緒というようになった」


「愛を果敢に要求する女性と、控え目に訴える女性と
どちらに「情緒」を感じるか。率直な愛の表現が美しく
感動的か、抑制された愛の表現が好感を持たれるか」


「率直な表現は粗野で、利己的で、非人間的であり、
抑制された表現は、優美、他愛的で人間的だという
のだろうか。」

「私は人間的な人間を描きたくない。恥も外聞もなく
欲望を表現する狂人を描きたい」


彼のこうしたemotionの質を好む態度はイタリアで
培われたものと思われます。


そして、その彼が谷崎潤一郎の「痴人の愛」を
題材にするのは、非常に理に適っていると言うか
当然出会うしかなかった運命のような気さえします。


古典としての題材が存在して、それをリメイクもしくは
別の形態で表現するからには、古典をベースにした
論評は避けられず、だからこそ楽しいと思うので
結果的にこの映画が原作に比べて楽しいのかどうか
ということを書けば、少々残念だった、というのが
正直な感想です。


一番残念だったのは、物語の舞台が大正から昭和の
戦後に移し変えられたというところ。

この辺りで、僕は映画は原作に敗北したように思い
ます。

大正にして原作に忠実に描くとなると、どうしても
制作費がかさむでしょう。

増村が、昭和に舞台設定して、描こうとしたのは
昭和の高度成長のグロテスクさ、ダイナミックさ
とこの小市民オヤジのフェチぶりとコギャルの
荒唐無稽な性癖とをたぶらせる方法です。

僕は、あの谷崎の文体にある女体へのフェティ
シズムをどう映画で表現するか、とても興味を
持っていました。

だって、フェチを映像で表現するにはアップしか
ないわけです。ただアップを強調しすぎると、
これは映画的に非常に醜くなるわけでそれを
増村がどう処理しているのか興味津々でした。

で、この点はすごく美味く撮られていました。
つまり、彼の家で写している無数の写真を
網羅して、その上にナレーションをくっつける
やり方でした。


役者はほぼ素晴らしい!

小沢昭一は完璧でしょう。40年前のオタッキー
な日本人が美味く演じられている。

安田道代・・・・当時の役者でいえば、恐らく
最高のキャスティングではなかったかと言う気が
します。その肉体に多少の難は感じましたが、あの
西洋的な佇まいや放埓娘の感覚は良く出ていました。

田村正和・・・・まあ隔世の感が強いですね(笑)
昔は良い男だった。そしてキャスティングにおいても
はまり役だし、彼の演技力も素晴らしい。


でも全体的に、押し付けがましく、粗野で、これ見
よがしであり、テーマこそ同じであっても、
時に静かに流れ、時に激流と化す河の水の
ような谷崎文体に比べると、唐突なカットを挟んで
インパクトはあるものの、しっくり感じられない。

つまり100%増村スタイルを貫いてはいるけれど
谷崎ほどのエモーションは得られなかった。


何故か?


やはり僕は谷崎的世界と増村的スタイルのミスマッチ
という気がします。


まるでバリック樽をかけて作ったフラスカーティの
ようです(^^;)


とはいえ、谷崎×増村は「卍」もありますし、
一度見たくらいだから、まだまだ僕も作品をちゃんと
理解したことにはならないでしょう。ひとまずは
第一印象ということでご勘弁ください。


痴人の愛





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Last updated  2008/02/18 02:35:35 PM
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