HANNAのファンタジー気分

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November 1, 2005
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『星の帆船』 (原題  THE SHIP THAT SAILED TO MARS )です。
 建築家でもあった原作者が描いた、緻密で古風な幻想画が印象的。
 主人公は老学者で、妖精たちを助手に、宇宙船を創り上げます。むかしから火星は、夢想家たちの憧れの惑星だったのでしょう。火星へと旅立つところが表紙絵になっていますが、

  帆を張った船はまるで、陽を浴びた雲のようにそびえましたが、裏通りを往来する人々は本当にそれが、陽を浴びた雲だと思いこんでしまったようです。
 ――ウィリアム・M・ティムリン 『星の帆船』 舟崎克彦訳

 ほんとうに、夕映えの雲が船の形に見えたりすることが、ありますよね。

 途中で神話や伝説の息づくさまざまな星や幻獣に遭遇し、やがて着いた火星は、妖精たちの国でした。
 そして、火星にはお姫様がいるのです。彼女のために、老学者は「雷(いかずち)の国」へ赴き、王子ととらわれの妖精たちを救い出します。王女と王子は結ばれ、老学者は火星の住人となって幸福に暮らした、というところで物語は終わります。

 面白いのは、ヒーローである主人公が老人であること。西洋の物語なら、火星へ到達しそこの王女と結婚するのは若きヒーローなのが常だと思うのですが。

 とすると、帰ることのないこの旅は、老学者の彼岸への旅であるのでしょう。

 地球上での彼は、孤独で変人でした。けれど、一生を自分の夢に捧げ、ついに妖精たちをともなって冒険の旅をし、憧れの火星に到達する…なんとすばらしい人生でしょう。
 彼の本当の真価は、地球を離れた時こそ発揮されるのです。そのことを、地上の人々は誰一人知りません。そういうものです。

 ***

 私も、自分の空想の火星を持っています。そこにはやっぱりお姫様がいます。そんな夢の火星に関する詩を HPの一角 に載せています。よろしかったら、どうぞ。

 ***

 2023年追記。この日記の画像は私の持っている舟崎克彦訳の古い版ですが、2019年に望林堂完訳文庫というところから新訳が電子書籍で出ていますので、リンクはそちらに変更しました。





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Last updated  December 8, 2023 12:39:33 AM
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