HANNAのファンタジー気分

HANNAのファンタジー気分

December 16, 2007
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 今年はどうもばたばたと忙しく、静かな午後が過ごせません。

 それでも寒くなるとなぜか読みたくなるのが、タカムラさんご推薦のファンタジーコミック、 『トッペンカムデンへようこそ』 。別に冬限定の話じゃないんですけど、舞台の「トッペンカムデン」という国が、アルプスを思わせる山国で、冬には雪に閉ざされます。おまけにヒロインの王女様の住む城は、空へ向かって突きだした崖の突端にあり、下界と隔絶されている。
 そんなお城の王女の窓辺へ、雪の中、長身で黒ずくめ、大きな杖を抱えた魔法使いがお茶をしに訪ねてきます・・・

 この物語でまず面白いと思ったのは、一国を預かる王女ローラの性格が破天荒の世間知らずなのに対し、魔法使いレジーはクソマジメな常識派、というところ。普通なら現実的であるべき執政者が夢見る乙女で、非現実な領域をつかさどるはずの魔法使いが逆に世間のしがらみにしばられている感じがします。
 その結果、腕の立つ魔法使いレジーが、10歳も年下のローラ姫に振り回されてしまいます。

  「困るわ! 今までずっとツケで仕事してくれたじゃない
  どうして今回はダメなの!?」
  「組合からクレームがついた トッペンカムデンに対しツケが多すぎる・・・」
                    ――征矢友花『トッペンカムデンへようこそ』

 でもローラはただのテンネンなお姫様では終わらず、その純粋さと許容範囲の広さには、王たる者の本質があります。
 私がいちばんスゴイと思うのは、敵をも味方にしてしまうローラのふところの深さ。それは冒頭の話で思いっきり悪役だった大臣シャイデック(顔つきもいかにも腹黒そう!)を、第3話で牢から出し、国一番の英雄にまでしてしまうという筋書きです。
 隣国に戦争をしかけられたローラは、

  「あなたと取引したいの
   この国を救うことができたら 一年前私を暗殺しようとした罪は帳消しにする。
   どう?」

と言って、その暗殺をそそのかした黒幕である隣国との戦争に、悪役だったシャイデックを参謀役にと担ぎ出すのです。
 さまざまな危機をこえて勝利したトッペンカムデンで、元・悪徳大臣のシャイデックがヒゲぼうぼうの囚人顔のまま、宰相としてローラを支えていくところが、何というか日本的、いや東洋的だと思うのです。
 西洋のファンタジーなら、善悪がはっきりしていて、悪はどこまでも滅ぼされるか、たとえ改心しても悪役がここまで主人公にとって大事な人物になることは考えられません。
 でも、『トッペンカムデン』では、善と悪は割と簡単に入れ替わるのです。というか、人間には善の部分と悪の部分がともにあって、悪の部分が出てくるのも当然、というふうに描かれます。

 ローラと思い合う魔法使いレジーでさえ、後半の物語では悪の魔導師に体をのっとられて地上最悪の存在になってしまいます(「のっとられた」ので仕方ないんですが)。また、ローラのいとこ、魔女マドレーンが悪役として登場しますが、この恐るべきライバルをも、最後にはローラは受け入れて、自分の味方にしてしまうのです。

  「一緒にトッペンカムデンをささえて」
  「正気? 敵対していた人間を仲間に迎え入れられるわけ・・・」
  「うちの大臣たち、そういうの慣れてるから平気。いい考えでしょ?」

 こうして、ダイヤモンド姫とたたえられる通り、純粋で悪をも取り込むローラ姫は、ついに魔法使いレジーと結ばれて王座につき、めでたく物語は終わるのです。この時、禁忌であるはずの王女と魔法使いの結婚を、いわば力業で承認したのが、冒頭の悪役シャイデックであるのが、何ともスゴイのでした。

『トッペンカムデンへようこそ』についてもっともっと→ HP内「王女様と魔法使いの結婚」 をどうぞ!





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Last updated  December 16, 2007 11:39:45 PM
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