HANNAのファンタジー気分

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June 7, 2009
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テーマ: 本日の1冊(3696)
 弁解から始めますと、近頃パソコンが不調です。とっても反応が「重く」なってしまって・・・もしかして買い換え時? 買ってからまだ(もう)7,8年なんですけど・・・


 で、ムーミンの話題は、だいぶ前“春の旅立ち”にからめた日記をいくつか書いた、その続きのつもりでした(季節がずれちゃいましたが)。

 ムーミンの一党で“旅”をするひとといえば、やはりスナフキン。短編集 『ムーミン谷の仲間たち』 の最初のお話「春のしらべ」は、孤独なさすらいびとスナフキンの本質にせまる?お話です。

 スナフキンはさすらいの詩人で作曲家でもありますが、彼が新しい「春のしらべ」を作るまでのあれこれ――せっかく歌の着想がわいたのに、偶然出会ったちいさな「はい虫」のおしゃべりや何やかやに気持ちを乱され、旅の足取りまで乱されて、でも結局はちゃんと、歌はできる――、それは、芸術家の“産みの苦しみ”の実例をわかりやすく語っていると思われます。

 スナフキンが歌を作るには世間一般のしがらみから離れて、自由に、独りでいなければなりません。もともと彼は“独り”をそれはそれは愛しているのですが、でも、だからといって、誰とも全くつきあわないわけではないのです。ゆきずりのはい虫の悩みや願いも聞いてやるし、旅に出ても必ずムーミン谷には戻ってきて、ムーミントロールの「親友」であり続けるスナフキンは、“独り”と“友情”との微妙なバランスをどのようにとっているのか。
 これは、芸術家でなくても、人間関係や社会的立場にしばられる(あるいはそこに適応しにくい)現代人にとって、興味深い問題だと思います。

 スナフキンが、ムーミン谷には仲間として居られるのは、

  ムーミンたちはおたがいに、人のことは心配しないことにしているのです。こうすれば、だれだって良心が発達するし、ありったけの自由がえられますからね。――ヤンソン『ムーミン谷の仲間たち』山室静訳

という、ムーミンたちのおおらかな気質のおかげでしょう。
 だからと言って、気配りをしないわけではありません。「世界でいちばんさいごのりゅう」では、竜がスナフキンだけになついたことにしょげ返るムーミントロールの気持ちを、スナフキンはちゃんと察知して、そっと竜を遠くへやり、なにげなくふるまいながらムーミンを元気づけます。
 けれど、自分のことしか頭にない、自分の気持ちで精一杯なはい虫に対しては、邪魔されたスナフキンはイライラして“切れそう”になります。でも、やっぱり見捨ててはおけない。“独り”と“友情”の葛藤。こういう気持ちって、あるなあ、と思います。

 大丈夫。自分の気持ちに素直であり続けることで、最後に「春のしらべ」の霊感はちゃんとスナフキンのもとへやってきます;

  ――第一部はあこがれ、第二部と第三部は春のかなしみ、それから、そうです、たったひとりでいることの、大きな大きなよころびでした。――『ムーミン谷の仲間たち』

 はい虫につきあってやり、彼に名前をつけてやり、彼のために戻ってきてやったことで、スナフキンの孤独の喜びはいっそう増し、音楽はいっそう豊かになったのだろうと思います。





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Last updated  June 7, 2009 11:39:22 PM
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