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2024.03.23
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カテゴリ: open to public



電車を3つも乗り換えて辿り着いた会場


生前の中村哲さんの講演に伺うことはできなかったがとうとう彼の事業のパートナーともいえる藤田千代子さんの講演を聴く機会を得た。

前半は中村さんの活動の記録、授業などに用いるために1時間を45分に編集したもの。

以前に観たことがある内容だけれどやはり新たまる。そして思いを強くする。

登山隊の随行医師として参加したパキスタンの寒村で、置き去りにせざるを得なかったパキスタン人ハンセン患者たちへの断腸の念。

その贖罪に突き動かされた生涯

幾つも病院を作り、井戸を掘り、最終的には用水路を作る事業を起こした。そのために治水を学び、ショベルカー運転技術を身に付けた。

小柄で朴訥とした人柄はたとえ大統領の前でも物乞いの前でも全く変わらなかった。

そしてペシャワールの病院には大勢のアフガニスタン難民が逃れてやって来た。彼らの多くは農民だ。

当時のアフガニスタンはソ連が10年戦争で荒らし、それが去って間も無く9.11報復で国土は荒み、更に旱魃が追い打ちを掛けた。

戦争どころではないのだ。
旱魃による飢えからの解放のために作物の大地を潤す用水路を作ろう、と中村氏は言い出す。

誰もが馬鹿げていると反対した。素人の私たちにそんなことができるわけがない、藤田さんも当初は反対した。しかし諦めるような中村氏にあらず。

用水路工事は挫折も経験したが、中村氏の生まれ育った福岡市の古い治水工事の叡智がその難場を救ったという。そしてその資金は日本の一般の、市井の人びとの寄付金なのだ。

水は通じた。ありとあらゆる苦労と努力と半目も全て水に流して。

10年で風景は一変した。

緑の農園と木々に囲まれ、武器を捨てた男たちは畑を耕す、喜ぶ母親、笑う子ども、おそらく鳥も小動物も虫たちも沢山集まって来たことだろう。

中村氏はいう。
自然と人びとの努力、それらへのお礼に種をまく、と。高山から吹き付ける風に揺れながら麦は見事に実っていた。


中村氏は無惨にも銃弾によって突然人生が閉じられたが、今、医療関連に従事しながら用水路工事の熟練工でもある地元アフガニスタン、パキスタンの人びと90余人が育った。

彼らは小さな村々から要望を受け、用水路は着実に実現されている。

アフガニスタンの乾いた大地を潤す源には中村氏の確固たる決意が決起しているのだ。


いつかアフガニスタンやパキスタンの国境には緑なす草原、畑、森、花々が楽園のように広がるだろう。人びとは平和の鐘を鳴らすだろう。


藤田さんの講演のあと、岩手の方による鎮魂のさんさ踊りがあり、それが舞台背景で微笑む中村氏と相まってとても良かった。アフガニスタンの空に舞と楽曲が届いたかのようで。


この催しは申込開始後1時間で完売したそうだ。





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最終更新日  2024.03.23 19:10:54
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