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蓑と笠といえば、時代劇や絵本の挿絵で見るくらいですが、古代から日本全国で使われてきました。 蓑は稲わらなどから作る雨・雪よけの外套です。地域によっては、わらの外にイラクサや麻、ヤマブドウの繊維も使われました。 藁は水を通してしまうのでは?と思いましたが、撥水性があるため、雨水は繊維に沿って下に落ち、中にしみこまないのだそうです。 柳宗悦の『蓑のこと』を読むと、歴史がわかります。江戸浅草の蓑市は有名で、雷門前に市が立ったそうです。(明治中期まで年2回) 全国で使われた蓑の中でも、北津軽、南津軽、岩手、鹿角、仙北、最上、村上の産は見事だったと言います。実用的な物に加えて装飾的な物もつくられていたのですね。 『蓑のこと』から、ことわざの解釈も引いておきます。「蓑になり笠になり」…一般に風雨をしのぐ蓑の役目、日差しを遮る笠の役目を果たして、対象者をかばうこと。「表になり裏になり庇う」「蓑造る人は笠を着る」…作った人は使わずに他の人が使う。「互いに寄り添う暮らしのこと」「蓑笠を着て人の家に入らぬもの」…濡れた蓑や笠を着けたままでは、訪ねたお宅をぬらしてしまうので、脱いでから入りなさいというエチケットととれますが。元は素戔嗚尊(すさのおのみこと)が追放された後、蓑を着て神々を訪ねたが、拒絶されたという故事から「物事を断られる」意味。「蓑笠はてんで持ち」…「必要な物は各自で持てという心」なかなか味わい深い言葉たちです。 参照元:『柳宗悦 民藝紀行』岩波文庫を底本とする青空文庫☆蓑…サ、サイ、みの ☆笠…リュウ、かさ「蓑」は「茅や菅などで編んだ雨具」のほか「草木が茂るさま、花が垂れ下がるさま」の意味があります。「笠」は柄のないかさで、「頭にかぶって雨や日光を避けるかぶりがさ」。「蓑笠(さりゅう)」で「蓑と笠を身につけたいでたち」です。
June 8, 2024
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鳥の仲間もいろいろですが、熟語では「大きくてすばらしい」存在と「ちっぽけな存在」が対比されます。☆鴻…コウ、おおとり、おお(きい) ☆鵠…コク、コウ、くぐい、しろ(い)、まと、ただ(しい)、おお(きい) 「鴻」と「鵠」は共に「大型の水鳥、オオハクチョウ」を表す漢字です。「鵠」は「正鵠を射る」(弓矢で的の中心を射貫く→ものごとの要点を正しく捕らえる)という言葉があるように、「弓を射る的」の意味もあります。弓の的の中心に白鳥の絵を描いていたことから。 「鴻鵠」で「オオハクチョウのような大きな鳥→りっぱな人物のたとえ」になります。☆燕…エン、つばめ、さかもり、くつろ(ぐ) ☆雀…ジャク、すずめ 対する「燕」と「雀」はちょっと気の毒な扱いです。「ちっぽけでありふれた存在」の象徴のように使われます。「燕雀」で「ツバメやスズメのような小さな鳥→小人物のたとえ」になります。*門前雀羅…門前に雀を捕まえるための網を仕掛ける→訪れる人が誰もいない寂しい様子「燕雀安(いずく)んぞ鴻鵠の志を知らんや」…小人物は大人物の大いなる志が理解できない。 秦の陳勝は若い頃、雇われて畑を耕す身分でした。「もし出世してもあんたのことは忘れないよ」と仲間に言うと「雇われの身分で、出世なんかできるものか」とせせら笑われました。答えて陳勝が言ったのが、この言葉でした。 その後、陳勝は秦に反乱を起こし、秦の滅亡のきっかけになったと歴史は伝えます。
June 3, 2024
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☆箕…キ、み、ちりとり ☆其…キ、そ(の)、それ ☆簸…ハ、ひ(る)、あお(る) 穀物をふるって、糠(ぬか)やちりを取り除くための竹製の道具が「箕」(み)です。「箕」には、両足を投げ出して座るという意味もあり。「箕坐」(きざ)、「箕踞」または「箕倨」(ききょ)という熟語を作ります。箕 「これ・あれ・それ」の「それ」は、漢字で書くとすれば「其れ(それ)」ですが、「其」の漢字も「箕」をかたどった漢字です。 もうひとつ「簸」も「箕」と同じように使われたり、動詞になって「箕をふるう」「あおる」(古い言い方で、「ひる」と言います)の意味で使われます。 ふるう動作から、「人をあおる、おだてる」時にも使います。確かに、振るう動作は「イケイケ」とあおっているように見えますね。 生活に即したひとつの道具から、いくつもの漢字ができるのが面白いと思いました。
May 31, 2024
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☆呑…トン、ドン、の(む) 「呑舟(どんしゅう)の魚」という故事成語があります。舟を飲み込む魚とはすごいスケールです。大魚→大人物の意味で使われます。*「呑舟の魚を漏らす」という言葉もあって、目の粗い網は舟を飲み込むような大魚も逃す→法が大まかすぎて罪人を逃してしまうこと。 *呑牛之人…牛を一飲みにするほどの気概→気持ちの大きいことのたとえ「呑舟」「呑牛」とスケールの大きな話ばかりでした。 常用漢字では「のむ」は「飲む」で統一されます。「呑む」は大口を開けてがばっと飲み込む状態なので、お酒をのむ場合に使うことがあります。「呑む」のはいいですが、酒に「呑まれる」ことは避けたいです。
May 27, 2024
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「おおう」と読む漢字は、常用漢字の読みでは「覆う」だけですが、常用漢字表外の読みと、常用漢字外まで範囲を広げると、様々な字が出てきます。☆奄…エン、おお(う)、ふさ(がる)、たちまち ☆掩…エン、おお(う)、かば(う)、たちまち 「気息奄々(えんえん)」は、気道が塞がって息が苦しい、息も絶え絶えという状況です。そこから、物事がうまくいかず非常に苦しい時にも使われます。 「奄」は、塞がる、覆い被さるという意味の漢字です。 「掩護(えんご)射撃」は、敵の攻撃から味方を守るために、側面や背後から射撃をすること。「掩」が常用漢字でないため「援護射撃」と書かれることも多いのですが、「援護」は戦う場合に使われる字ではなく、「困っている人を助ける」意味なので「掩護射撃」が本来の漢字です。 戦いから広がって、会議や論争の場で、対立する意見の一方に同意し主張を強めるような意見を述べる場合も「掩護射撃」になります。 「掩」も「手で覆う」「覆い隠す」の意味がある字です。☆庇…ヒ、ひさし、おお(う)、かば(う) 「庇(ひさし)」は、家屋の窓や出入り口の上についた出っ張りです。直射日光や雨風が直接入り込むのを防ぐ働きをします。帽子でも、サンバイザーや野球帽の前に突き出したつばを「庇」と呼びます。 「庇」の字にも「覆い隠す」「かばう」の意味があります。「親の庇護(ひご)の元ですくすく育った。」と言うときの「庇護」は、弱者をかばい、守ることです。
May 23, 2024
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蕎麦(そば)の花 信州生まれの私は蕎麦が好きです。「蕎麦」の「蕎」の字は、音読みだと「キョウ」です。漢字の音を表す部分、音符が「喬」。「矯正(きょうせい)歯科」の「矯」、「鉄橋(てっきょう)」の「橋」から「キョウ」の読みが類推できます。☆喬…キョウ、たか(い)、おご(る) ☆僑…キョウ、やど(る)、かりずまい ☆蕎…キョウ*喬木(きょうぼく)は風に折らる…喬木は高木の古い言い方で、対になる熟語が灌木(低木)です。植物学的には、幹が直立して堅く、高さ3メートル以上になるような樫、松などの木を言います。 →高い地位の人ほど人から嫉まれ失脚することが多いこと*幽谷より出でて喬木に遷(うつ)る…低位から高位へ移ること→出世を望むこと横浜中華街 「華僑」は長い期間外国に定住している中国人コロニー。経済圏をしっかり持って、その地の経済発展の原動力になっています。 「喬」を音符に持つ漢字の中には、音だけでなく「高い」「高ぶる」の意味も「喬」と共通して持つものがあります。
May 19, 2024
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☆鍾…ショウ、あつ(める)、つりがね、さかずき ☆輯…シュウ、あつ(める)、やわ(らぐ)☆蒐…シュウ、あかね、あつ(める)、かり ☆纂…サン、あつ(める)、くみひも、つ(ぐ) 「あつめる」と読む漢字は常用漢字では「集める」であって、この一字で間に合ってしまうのですが、ほかにも「あつめる」漢字はあって、集めてみると微妙なニュアンスの違いが面白いと感じます。 「親の愛を一身にあつめる」という場合の「あつめる」は「鍾める」と書けます。「鍾(ショウ)」は「鍾愛」(愛情をあつめる)のように、心情に関する事柄をあつめるときに用います。元は金属製の酒壺の意味なので、愛情を注ぎ入れるイメージです。「鍾乳洞」の「鍾」でもあります。この「鍾」は「釣り鐘」。釣り鐘の表面の突起が「鍾乳」で、「鍾乳」のような突起ができるのが「鍾乳洞」です。 ジョン・ディクスン・カーの作品に「帽子収集狂事件」という題名があります。今は「収集」を使いますがが、私が初めて読んだ頃は「蒐集」の字が使われていました。 この「蒐」はアカネだったのですね。知りませんでした。染料にする草を狩り集めるイメージでしょうか。 「編集」と同じような意味の「編纂」の「纂」も「あつめる」です。元の意味は「組紐」なので、糸をよりあつめて1つにするイメージです。 「輯(シュウ)」は、車の積載部の意味から借りて「あつめる」「やわらぐ」の意味を持つ漢字です。車の荷台に荷物を整理して乗せる感じでしょうか。「材料をあつめて整理する」です。「編輯」=「編集」の熟語で使います。
May 15, 2024
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枇杷はバラ科の常緑高木で、果実の形が楽器の琵琶に似ていることからこの名前になったといいます。 枇杷の木は広く根を張るので、家が倒れる虞があるから庭に植えてはいけないという言い伝えがありました。 「杷」の漢字は、麦を収穫するときに使った農具の名前でした。「竹杷(さらい)」という、長い竹の柄の先に粗い歯をつけた熊手のような道具の名前に残っています。 楽器の琵琶は、リュートの仲間で、中国から東アジア、日本へと伝わりました。 日本では伝統的に物語で使用される楽器で、町中で琵琶を演奏しながら物語を語る「琵琶法師」がいました。 琵琶法師は僧侶、または僧侶の姿をした芸能者で、多くは盲目であったと伝えられます。特に有名な演目が『平家物語』です。
May 11, 2024
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☆皐…コウ、さわ、さつき 五月の別名が「皐月(さつき)」です。 「鶴九皐(きゅうこう)に鳴き、声天に聞こゆ」という故事成語があります。「九皐(きゅうこう)」は広い湿地。「九」は程度の大きさ、奥深さをいいます。 鶴は奥深い湿地にいても声が天まで届く。それと同じように、優れた人物はどんな場所にいても、名声が伝わるということです。☆菖…ショウ、しょうぶ菖蒲 五月は別名、菖蒲月。端午の節句に菖蒲湯に入る習慣がある方も多いと思います。 菖蒲は、水辺に群生して、50~100cmになります。中国では古代から、菖蒲の葉が刀に似ていること、独特の芳香があることから、男子にとって縁起のよい、邪気を払う植物とされてきました。 日本でも、奈良時代、聖武天皇の時代から端午の節句に使われるようになりました。「あやめぐさ」「あやめ」という名で出てきますが、現在花を観賞する「はなしょうぶ」「あやめ」とは全く別の植物です。 五月の節(せち)には、宮中の御殿という御殿に菖蒲を葺(ふ)き、菖蒲を冠につけ、天皇から下される薬玉を、見目よい女官が取り次ぐイベントがあったことが「枕草子」に書かれています。もっとも、「枕草子」が書かれた頃には行われなくなったようで、伝聞であること、廃止されてしまってとても残念であることも記載されています。花菖蒲
May 5, 2024
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☆蒼…ソウ、あお、あお(い)、しげ(る)、ふる(びる)、あわただ(しい)☆碧…ヘキ、あお、みどり 五月は空の色も青さを増して、木々の緑が濃くなってきます。木々の緑は空の「あお」と違う色ですが、「あおあおと茂る」という表現をします。昔は「青色」の範囲が広く、青と緑まで含んだ色の名が「あお」でした。 「蒼」も「碧」も「あお」と「みどり」を含んだ色の意味を持ちます。*古色蒼然…いかにも古びた様子→古いゆえに味わいのある様子と、肯定的にも使われます。*暮色蒼然…夕暮れ時、あたりが段々暗くなっていく様子。「蒼然」は薄暗い様子や古びて色あせた様を表します。
May 2, 2024
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大空に真鯉、緋鯉が泳ぐ季節です。☆緋…ヒ、あか、☆鯉…リ、こい、てがみ 「鯉」に「てがみ」の読みがあるのは面白いですね。「双魚」または「双鯉」・「鯉素(りそ)」=「手紙」になった故事がまた変わっています。 「尺」は、人差し指と親指を広げた形からできた象形文字です。その長さが「尺」でしたが、人によって長さが変わってしまうため、一定の長さが定められるようになりました。周代で約20cm、六朝時代には長くなり、唐代の大尺が29.6cm、現代の中国では1尺=1/3mと定められています。時代、場所によって1尺の長さは異なります。 「素」は絹のきれ。文字を書くのにこの布を用いました。「尺素(せきそ)」で「短い手紙」の意味になります。 「緋」は、深い紅色、濃く明るい赤色と辞書にはあります。 日本の伝統色では、茜で染めた色を「緋(あけ)」と呼んできました。「赤」と「緋」は、太陽や火の色というのは共通なのですが、「赤」は総括的な三原色の色名、「緋」は染色の色名です。「緋」の方がより深い赤色になります。
April 28, 2024
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☆茄…カ、なす、はす、なすび 「瓜(うり)の蔓(つる)に茄子(なすび)はならぬ」などど言います。「平凡な親から才能のある子は生まれない」という意味ですが、ことわざの中には「鳶が鷹を生む」という正反対の意味の言葉もあります。 子どもが才能を発揮するかどうかに関わるのは、遺伝が半分、環境が半分だといわれます。運動神経は80%以上が遺伝で決まるとも聞きます。 作家のO氏には3人のお子さんがいますが、下2人のお子さんは、イエーツの詩を原語から、自分ならどう翻訳するかという話題で盛り上がる、というのが家庭内の日常だったそうです。長男さんは、音楽家の道に進まれました。 ご一家の周りには、俳優さん、映画監督さん、音楽をされている方々などが多くいらっしゃいました。幼少から文芸・芸術に触れ、必要ならプロの人から学ぶ機会も与えられる環境がありました。 遺伝のみならず、環境が才能を育てるのは確かだと確信した話でした。 もちろん、ある程度成長してから、逆境に負けず自らの努力で才能を開花させる方たちもたくさんいます。ですが、幼少時は大人から与えられる環境が全てです。 子どもが、食事を提供されるだけでなく、大学生のお兄さん、お姉さんに宿題を見てもらったり、大人に相談に乗ってもらえる「こども食堂」のような場は貴重です。 全ての人が「茄子」である必要はありません。親以上の存在になる必要もありません。瓜なら瓜で、その人らしい瓜であればいいと思います。ちょっと形はいびつでも甘い瓜であったり、のっぽさんの瓜であったり、色つやのいい瓜であったり。 ただ、子どもに生長(人として成長)するための栄養をあげる責を負うのは大人であることだけは間違いありません。
April 14, 2024
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☆禽…キン、とり、とら(える)、いけど(り) ☆棲…セイ、す(む)、すみか 「禽」は鳥類を指しますが、生物分類学がまだ進んでいなかった頃の「鳥類」は獣類も含んでいました。分類が進んでから、今でいうところの「鳥」を指すようになりました。*良禽(りょうきん)は木を択(えら)ぶ=「良禽択木」「良禽は木を相(み)て棲む」…賢い鳥がよい木を選んで巣を作るように、賢い臣下は仕えるにふさわしい主君を選ぶ。→職業などもよく見定めて選択すべきであること。*禽困覆車=禽困れば車を覆(くつがえ)す…鳥も苦しくなれば車をひっくり返す。→弱者でも追い詰められると予想外の力を出す。 「棲」の初まりは「鳥が棲(す)む」です。 「棲遁」「棲隠」(人里離れて隠遁する→鳥や獣のように自然の中で生きる意味合いが強いからでしょうか)の場合のみ、人にも使われますが、人が「すむ」場合は基本的には「住む」の漢字を用います。 「栖」も「棲」同様「鳥のすみか」→「すむ」の意味を持つ漢字です。「西」の漢字は鳥が木の上に留まっている姿を表しています。
April 10, 2024
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4月には別名がいろいろありますが、「卯月」「卯(う)の花月」はよく聞きます。卯木(うつぎ)は卯の花とも言い、陰暦4月に開花するので、4月は「卯の花が咲く月」と呼ばれたのです。陰暦4月は太陽暦の5月なので、今の4月にはまだ卯の花は見られません。卯木 ☆卯…ボウ、う 4月の異称をほかにも挙げておきます。夏初月(夏の始まりの月)鳥待月(ほととぎすの初音が待たれる月)植月(稲などの苗を植える月)木の葉採り月(蚕に食べさせる桑の葉を採る月)麦秋(麦の収穫時)
April 3, 2024
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☆杓…シャク、ヒョウ、ひしゃく、しゃく(う) 「誰も彼もが」「何でもかんでも」の意味で使われる「猫も杓子(しゃくし)も」という慣用句には、様々な語源説があります。 「ねこ」←「禰宜(ねぎ)」で神主さん、「杓子」←「釈子・釈氏」で僧侶を指し、「宗教に関わる人全て」→「誰もかも」の意味だという説もあります。 『一休咄』に出てくる「釈迦も達磨も猫も杓子も」という言葉の後半だけが伝わったという説も。「ねこ」←「女子(めこ)」と「しゃくし」←「弱子(じゃくし)=こども」から「女子どもまでも」→「誰もかも」になったという説、そのほかにもあるそうです。*杓子で腹を切る…不可能なこと。形式だけしてみせること。*大は小を兼ねるも杓子は耳掻きにならぬ…大きいものは小さいものの代用になるとは言っても、全てがそうはいかない。などということわざもあります。 そして「杓子定規」と言えば、「曲がった杓子の柄を定規の代わりにするように、ほかには通用しない規則や基準で物事を判断すること」「融通がきかないこと」です。
March 30, 2024
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☆葡…ブ、フ ☆萄…トウのび太「葡萄」 葡萄茶(えびちゃ)色、葡萄染め(えびぞめ)という言葉を耳にしたことがあるかと思います。葡萄(えび)は、ヤマブドウの古名エビカズラからきています。 葡萄茶は、卒業式の袴などに見られる暗い赤色ですが、『源氏物語』などに出てくる葡萄色は、赤みのある紫色で、ヤマブドウでななくムラサキの根で染めます。 紫は「高貴」を象徴する色でした。 枕草子第二六三段は、関白道隆が一切経供養を行う場面を描きます。一切経供養は、新しく写経した一切経を寺に納めて供養するイベントです。中宮定子のお供で清少納言も参加しました。そのときの定子の衣装です。…紅の御衣(おんぞ)どもよろしからむやは。なかに唐綾の柳の御衣、葡萄染の五重襲(いつへがさね)の織物に、赤色の唐の御衣、地摺の唐の薄物に象眼重ねたる御裳などたてまつりて、ものの色などは、さらになべてのに似るべきやうもなし。 この日はほかにも「葡萄染」の装束が多く書かれています。 残念ながら、葡萄染めは褪色しやすかったようで、第一五八段で「むかしおぼえて不用なるもの」昔は立派だったのだろうけれど、今では用をなさないものとして、「葡萄染の織物」を挙げています。時が経ってすっかり色あせてしまった葡萄染めのことです。
March 16, 2024
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仲のいい夫婦のことを「鴛鴦(おしどり)夫婦」と言います。「鴛鴦(えんおう)の契り」とも言います。鴛鴦(羽の色がカラフルな方が雄) おしどりはカルガモ科の水鳥で、「鴛」が雄、「鴦」が雌のおしどりを表す漢字です。 番(つが)いの雌と雄が並んで泳ぐ様子は本当に仲が良さそうです。 けれど実は、シーズンごとに相手が変わっているんだとか…。 もちろんこの習性は「鴛鴦の契り」の語ができた時代には知られていませんでした。昔の人が知ったら腰を抜かしそうです。 でもまあ、これが今風の夫婦のあり方かも知れませんね。
March 10, 2024
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☆嘉…カ、よみ(する)、よ(い) ☆辰…シン、たつ 縁起のいい月日、めでたい月日を「嘉辰令月」と言います。辰年(たつどし)の「辰」には「時、日」の意味があるので「嘉辰」で「よき日」です。 「嘉肴(かこう)」はおいしい料理。 「嘉」の漢字には、いい意味しかないですね。 「嘉」「喜」の漢字の中の「壴」は、祭祀に使われる楽器を並べた形からきたそうです。 「嘉」の「めでたい」「おいしい」は、常用漢字の「佳」と書き換えられます。「嘉辰令月」「嘉肴」は、「佳辰令月」「佳肴」とも書きます。 「辰」は部首としては「しんのたつ」で、「農」「辱」の部首です。「辰」の漢字には十二支の「たつ」「時、日」「早朝」「星」の意味があります。 陰暦3月の別名が「嘉月(かげつ)」です。春が来て、心弾む月ですね。
March 8, 2024
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☆雛…ス、スウ、ひな、ひよこ 枕草子に「過ぎにしかた恋しきもの…雛(ひひな)遊びの調度」と出てきます。過ぎ去った日々を懐かしく思い出す物として、幼女の人形遊びの道具をあげているのです。 平安時代は3月3日にひな人形を飾る習慣はありませんでした。普段の人形遊びに、小さな家や車、室内の調度品が作られ使われていました。リカちゃん人形とリカちゃんハウスで遊ぶイメージですね。 ひな人形が飾られたのは江戸時代からで、「雛遊び」が上巳(じょうし)の節句と結びついて女の子の幸福を願う行事になったといわれます。☆菱…リョウ、ひし菱餅 菱の実 雛祭りには「菱餅(ひしもち)」を飾ります。上段から赤・白・緑の3色のものが多いのですが、地方によっては2色だったり、もっと色が多い所もあるそうです。 本来、赤は、厄払い、解毒の意味で山梔子(さんしし)=くちなしの実で染め、白は、血圧低下の作用があるとされる菱の実を入れました。緑は、元はハハコグサ、後に造血作用のあるヨモギで色をつけました。 緑の新芽が清浄な残雪の下から萌え出て、桃の花が咲いて春が訪れる情景を表したのが「菱餅」だといいます。菱形になったことについては諸説がありますが、春の訪れを祝い、女の子の成長と幸福を願って飾られたことは間違いありません。
March 3, 2024
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☆謂…イ、い(う)、い(われ)、いい ☆云…ウン、い(う) 常用漢字の範囲では「いう」は「言う」しか用いられませんが、「いう」漢字には「謂」「云」もあります。 「謂われのない、盗みの疑いをかけられた」の「いわれ」は漢字にすると「謂われ」になります。この「謂われ」は「根拠」「理由」の意味です。 「所謂(いわゆる)」は、「世間で言うところの」「よくいう」で、「彼は所謂、御曹司ってやつだ」などと使います。 「云」も「いう」ですが、自分が発言するのではなく、他人の言葉や書物から引いて「~という」(こう言っている)場合に使います。 「謂う」「云う」はどちらも自分以外の人たちが「言っている」というニュアンスが強くなります。
February 16, 2024
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冬の柑橘(かんきつ)類の代表は、なんといっても蜜柑(みかん)。また、寒い日は、鍋物や柚子湯(ゆずゆ)で身体を温めるのが最高です。 蜜柑 金柑☆柑…カン、こうじ ☆橘…キツ、たちばな クネンボ タチバナ 「橘」の漢字は「クネンボ」を指しましたが、日本に入ってから「ヤマトタチバナ」に当てられました。ひな飾りの段飾りに「左近の桜、右近の橘」とあるのが日本の橘です。 この橘は、果実を食用にするより、花を愛でるものでした。緑鮮やかな葉の中に咲く白い花と香りが重要だったのです。「枕草子」にも、「木の花は…」の段で、「橘の葉の濃く青きに、花のいと白う咲きたるが、雨うち降りたるつとめてなどは、世になう心あるさまに、をかし」と言われます。 「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」以降、橘は昔の恋人への思慕、懐旧の思いと共に歌に詠まれてきました。☆柚…ユウ、ゆず 「裸で柚子の木に登る」ということわざがあります。柚の木には棘(とげ)が多いため、「無謀、無茶なこと」という意味になります。橙(だいだい) 八朔(はっさく)三宝柑
February 8, 2024
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「命長ければ蓬莱(ほうらい)を見る」は、「生きていれば良いことがある」という意味です。 「蓬莱」は中国の伝説上の山。東方の渤海にあり、仙人が住んだという海中の島です。日本にも伝わり『竹取物語』にも出てきます。その後「吉祥」の象徴となり、蓬莱山をかたどった土台に松竹梅・鶴亀などを飾って祝儀の場に置いたようです。 日本の庭園にも「蓬莱島」「蓬莱池」が登場します。蓬莱島(小石川後楽園) 蓬莱池(五島美術館の庭) 仙境を表す「蓬莱」ですが、「蓬」と「莱」の漢字の原義はアカザ科の植物。「蓬」は「ムカシヨモギ」→①ムカシヨモギで作った粗末な門(蓬門)ムカシヨモギで作った粗末な戸(蓬戸)②ムカシヨモギのように乱れた髪(蓬髪)のような熟語に③アカザ科の植物。秋に枯れると根ごと抜けて風に吹かれて飛ぶといいます。 「莱」もアカザ科の荒れ地などに自生する植物で、葉を食用にしたり薬用に使われます。「雑草の生い茂る荒れ地→つまらないもののたとえ」の意味にもなります。 日本では古代に食用にするため栽培されたものが野生化したと言われます。シロザの変種で、新葉が赤い粉に覆われたものがアカザ。莱(アカザ)(小石川植物園) 「蓬」も「莱」も「粗末な」、「つまらないもの」などと言われてしまう物ですが、「蓬莱」になると大出世ですね。私のようなつまらない人間でも、生きていれば「蓬莱」を見られるかもしれません。
February 1, 2024
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☆輔…ホ、フ、たす(ける) ☆弼…ヒツ、たす(ける)、たす(け) ☆匡…キョウ、ただ(す)、すく(う) 常用漢字外にも「たすける」漢字はあります。 車の添え木からきた漢字「輔」は、「力を添えてたすける」のですが、現代表記では「補」に書き換えられることが多くなりました。 「輔弼」=君主に助言して国政を助ける、の「弼」もまた「たすける」です。「過ちを正してたすける」意味合いがあり、同じように「悪いところをただす。正して救う。」意味の「匡」に通じます。 「弼匡」=補佐してただす。天子の補佐役。 ちょっとスケールの大きい「たすける」ですね。
January 26, 2024
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鳳凰(ほうおう)は、昔中国でめでたいとき、優れた天子の世に現れると考えられた想像上の鳥です。「鳳」が雄、「凰」が雌です。中国から、日本を初めとする東アジア広域にわたって登場します。鳳凰 「鳳」は天子に関する事物につける語にもなり、聖人や優れた人の例えにも使われます。※鳳駕(ほうが)…屋根に金の鳳凰の飾りがついた天子の乗り物。または、仙人の乗り物。※鳳輦(ほうれん)…天皇の儀式用の輿。現在は、神社の祭礼などの際に使われる鳳凰の飾りのある神輿を指します。 「凰」の字は元は「皇」でしたが、「鳳」に揃えて「凰」になりました。「鳳」の部首は鳥、「凰」の部首は𠘨(かぜがまえ)です。どちらも「おおとり」の読みがあります。 「鳳」の古字が「鵬」です。私の年代だと、不動の横綱「大鵬」でおなじみの字です。※鵬翼…①おおとりの翼→②大きな計画、大事業の企て。③日本に入ってからの意味で、飛行機の翼
January 18, 2024
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「鳶(とび)が鷹(たか)を生む」ということわざがあります。「平凡な親から、親よりずっと立派な子が生まれる」ことです。 「鳶」も「鷹」も同じタカの仲間なのですが、身体の大きさが鷹のほうが大きいため、より立派な人の例えになったようです。 「鷲(わし)」もタカの仲間で、大きさによって「鷲」か「鷹」になります。◇ 鳶…エン、とび、とんび ◇ 鷹…ヨウ、オウ、たか ◇ 鷲…シュウ、わし鳶・鷹・鷲の熟語から。※鳶職(とびしょく)…「鳶の者」で、江戸時代では火消しを指しました。現代では、建築作業で高い場所で仕事をする人。※鳶肩(えんけん)…怒り肩←鳶が肩をいからせているように見えることから※紙鳶(しえん)…凧、いかのぼり。中国で始まった凧は鳥の形をしており、「紙の鳶」で紙鳶と呼ばれたそうです。軍事目的で作られたとも言われます。※鳶飛魚躍(エンピギョヤク、とびとんで、うおおどる)…鳥や魚が、悠々と満足している様子→君子の徳が天下に行き渡っていること※鳶色(とびいろ)…鳶の体色のような茶褐色、焦げ茶色。※鷹揚(おうよう)…(鷹が悠然と空を飛ぶ姿のように)落ち着いてゆったりしているさま ※鷹派(たかは)…相手の主張を受け入れず、自分たちの意見を強硬に主張する人々↔鳩派(はとは)鷹 鷲のくちばし※鷲鼻(わしばな)…鷲のくちばしのような鼻の形。かぎ鼻※鷲摑(わしづか)み…鷲が獲物を捕るように、手のひらを大きく開いて荒々しくつかみ取ること。鷲摑み!
January 14, 2024
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一番多くの日本人が神社に出向くのは初詣、多くの人が神主さんに会うのが1月です。 関東では、神社に奉仕する神官は皆「神主さん」と呼びますが、神官には階位があります。 階位が高い方から、宮司、権宮司、禰宜(ねぎ)、権禰宜などがあります。「禰宜」の名称は「労(ね)ぐ」に由来し、神意を慰めるという意味だそうです。 「宮司」や「禰宜」になるためには、「神社本庁」の階位検定を受ける必要があります。 大学の神道学部でも階位の習得が可能です。私の出身大学には、神道文化学部と別科(2年)がありました。 校内に小さなお社があり、私は文学科でしたが「神道概論」は必須科目でした。 「禰」の漢字が使われるのは「禰宜」か、漱石の『三四郎』のヒロイン美禰子さんくらいしか思い出せません。 「禰」の漢字には元々は「父親のみたまや」という意味があるのですが、日本では「ね」の音を表す万葉仮名として活躍しました。
January 6, 2024
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☆晦…カイ、つごもり、くら(い)、くら(ます) ☆朔…サク、ついたち、きた 「大晦日(おおみそか)」はよく目にする漢字です。月の終わりが「つごもり」「みそか」で、年の終わりが「おおつごもり」「大晦日」、現在は新暦の12月31日です。 「晦日(みそか)」は、三十日をみそかと読んだことからきていますが、旧暦の月の終わりの日の意味で使われました。(29日までしかない月は29日がみそかでした) 「つごもり」は、月ごもり、月が段々欠けて見えなくなってきた日を言います。 「晦」は、つごもりで月が見えないため、暗くなることから「暗くてよくわからない」「くらます」の意味もあります。*晦渋(かいじゅう)…言葉や文章が難しく、意味や内容がわかりにくい。(この言葉自体聞き慣れないので「晦渋」かも) 「晦」の反対が「朔」で、月初めの日、ついたち。「北」の意味もあります。
December 31, 2023
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おせちには欠かせない蒲鉾(かまぼこ)ですが、なぜこんな漢字を使うのでしょう。☆蒲…ホ、ブ、フ、かま、がま ☆鉾…ボウ、ム、ほこ 昔、蒲の穂からふとんの綿をとったのですね。それでふとんは、「布団」とも書きますが「蒲団」の字も使われます。 因幡の白ウサギが皮をはがれたとき、蒲の穂綿にくるまりなさいと教えられた話も思い出します。蒲(がま) 祇園祭の山鉾 蒲鉾は、魚肉のすり身を成形して加熱した練り製品の一種です。広義には、竹輪やつみれ、なるとなどを含み、狭義では、蒸し板蒲鉾を指します。 平安時代には既に文献に登場しますが、形は現代の竹輪の形でした。原材料を竹の棒に筒状に巻き付け、作った形が「蒲の穂」に似ていることから「がまのほ」と呼ばれました。 後に鉾にも似ていることから「がまほこ」で「蒲鉾(かまぼこ)」の漢字が当てられたとされます。(ほかにも説があります)
December 28, 2023
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