突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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2009.05.06
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 闇の底で、ごろごろと竜が低く唸る。
 どこかで金色の目が二つ、ふわりと光ってすぐに消えた。 と、突然、耳をつんざく咆哮が、ばりばりと天地を揺るがした。
 その音にはっと目覚めたベベルギアは、椅子から立ち上がりざま、腰の剣を引き抜いた。

 ―――雨が、激しく屋根をたたいていた。
 窓の外、漆黒の闇を切り裂いて閃光が走る。
 青白い光が一瞬、かっ、と小屋の中を照らし出し、それから、あたりは再び深い闇に閉ざされた。

 動くものは何もなかった。
 いつのころからこの小屋に住み着いたのか、燃え尽きたランプのかたわらにうずくまった黒猫が、にゃあ、と鳴いて、うさんくさげにベベルギアを見上げた。

 はるか頭上のぶあつい雲の中でまた、ごろごろと竜が唸る。

 茫々と広がる草の海の向こうで、鎌首を持ち上げた蛇のように天に向かってそそり立つ崩れかけた石柱は、呪われたリュキア城の跡だ。
 言うまでもなく、そこにはどんな生き物の姿もあろうはずはなかった。

 ――――どうやら、また居眠りして寝ぼけたらしい。
 ベベルギアは、額にじっとりにじんだ冷や汗をぬぐい、剣を鞘に収めてランプをつけ、また、窓辺の見張り用椅子に腰を下ろした。

 ベベルギアは、この仕事が嫌いだった。
 結局、俺はいっぱい食わされたんだ、と思う。
 武勇を誇るバルドーラ族としてこの世に生を受けた者なら、誰でも望まずにはいられない、リュキア軍の戦士という肩書きをエサに、まんまと釣り上げられた、俺は、まぬけな魚だ。 だいたい、俺みたいな、特に武芸に秀でたわけでもなければ何かの才能があるわけでもない、その日暮らしの遊び人の肩をいきなりぽんと叩いて、その場で、栄光のリュキア軍戦士の証である紋章を授けてくれるなんて、そんなうまい話は誰が考えたって変じゃないか。 どうしてそのとき、それは当たり前の戦士ならみなそっぽを向くようなろくでもない役目を押し付けるだめだと考えつかなかったのか。
 ―――リュキア城跡警備隊。
 世の中にこんな胸くその悪い仕事があるなんて、ベベルギアは、想像したこともなかった。
 リュキア軍の戦士といえば、ぴかぴかの鎧兜に身を固めて、腰には、見るものを震え上がらせる剣、胸には伝統ある宝剣の紋章をきらめかせて、威風堂々街の中を闊歩する姿しか知らなかった。 人々はかしこまって道を譲り、競って贈り物をする。 戦士と親しくしている家には、泥棒も強盗も押し売りも恐れて足を踏み入れないからだ。 同じ理由で金持ちは戦士を自分の邸内に住まわせるのが常識になっている。 大金をはたいて優れた戦士を雇い入れ、屋敷の一角に立派な離れを建てて、専用の小間使いをつけ、馬車を買い与え、下へも置かぬ待遇で処してくれる。 下っ端の、あまりぱっとしない戦士にだって、それなりのスポンサーはつく。 戦士とは皆、そういうものだと思っていた。 だからこそ、バルドーラの若者は皆、リュキア軍に入隊することを夢見る。 入隊資格のある年齢に達するとすぐに戦士に志願する。 志願者が殺到すれば競争率は高くなる。 試験はとてつもなく難しいものになって、その結果、戦士の質はますます高くなる。 ますます人の尊敬を集める。
 ところがベベルギアはうっかり、その試験を受けずに戦士の資格を手に入れるという落とし穴に落ち込んでしまった。 その結果が、この、城跡警備隊への配属だ。

 城跡警備兵には休日がない。 いや、ないことはないが、ここのは休日なんてものじゃない。 いつ非常招集がかかるかわからないという理由で外出が禁止されているからだ。 好き勝手に遊びに出かけることもできない休日を、どうして休日などと呼ぶことができるだろう。 与えられた自分の部屋の中で、一日をただ無為に過ごすだけなら、それは囚人と同じではないか。
 さらに、腹の立つことに警備兵には辞任というものが認められていない。 当然だ。 ベベルギアだって、もし辞任が許されるなら配属されたその日に辞表をたたきつけただろう。 いつのことになるかわからない配置換えの日までは、警備兵がこの胸の悪くなるような仕事を辞めるのは、軍を脱走する時か、死ぬ時だけだ。





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最終更新日  2009.05.06 20:28:28
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