突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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2009.06.06
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 おだやかな朝の光を浴びながら、小さなミラはさっきから泉で洗濯をしていた。
 頭の上の、クヌギの木の枝で、一羽のシジュウカラがしきりにミラを遊びに誘っている。 顔を上げると、シジュウカラは止まっていた木の枝からもう一本下の枝に、ちょん、と飛び移って、また、チピー、チピー、と楽しげに歌った。
 ミラは、くすっと笑ってシジュウカラに言った。
 「だめだよ。 僕は今忙しいんだから。 君といっしょに遊んでいるわけにはいかないんだ。 ほら、見てごらん。 こんなに山のように洗濯物があるんだ」
 シジュウカラは、ミラを見て、それから、ミラのわきの洗濯物の山を見て、つまらなそうにもう一度、チピー、と鳴いてから、ぱっと飛び立って、森の奥のほうへ向かって飛んでいってしまった。
 それを見送ってから、ミラはまた、洗濯物の山に目を戻し、小さなため息をついて、洗い終わった薄い緑色のローブを、今、シジュウカラの止まっていた木の枝に向かってポーンと投げ上げた。 ローブはひらひらと木の枝に舞い上がって、そこで全身をぶるぶると震わせて水を弾き飛ばし、それから、今度は思いきり伸びをしてシワを伸ばすと、お行儀よく枝にぶら下がった。 よしよし、とうなずいて、ミラはまた洗濯物の山のてっぺんからもう一枚の汚れたローブを取り上げ、泉の中へと放り込んだ。 ローブはちょっと戸惑ったように水の上をふわふわ漂っていたが、やがて、恐る恐る水の中に体を沈め、少ししてから、自分で汚れたところをたたいたりひっかいたりし始めた。
 ミラはまた、草の上にころんと寝転がって青いきれいな空を見上げた。

 ミラは、『魔法使いの森』に住むリシャーナ族の子どもで、魔法使いの見習いだ。 リシャーナ族の大人は、それぞれいろんな仕事をしているけれどみんな魔法使いで、この泉からずっと離れた森の奥のほうにある小さな村に暮らしている。 ミラはまだ子どもなので、この村に行くのは、魔法の先生、パンセの家へ行くときだけ。 あとはほとんど一日中森の中を駆け回ってウサギやリスと遊んでいる。
 ミラと同じようにパンセのところに通っているのは、10歳から14歳までの、成人前の子どもたちだ。 パンセの弟子が何人いるのか、正確なところはミラにはわからない。 パンセにも本当はよくわからないんじゃないだろうか。 子どもたちはみんなそれぞれ森の中で勝手気ままに暮らしていて、パンセの家に行く時間もばらばらだし、授業は完全に個人指導でしかもほんの短い時間に過ぎないから、何かの儀式の時でもない限り弟子同士がパンセの家で顔を合わせることはほとんどないのだ。 毎日魔法の先生の家に通うことだけはリシャーナの掟で定められているのだけれど、なかにはあんまりまじめに通っていないやつもいるらしい。 もう来年は成人してパンセのところを卒業するはずのミラでさえ、いまだに、通ってくる弟子たちの中に、初めて見る顔を見つけることがあるのだ。

 ミラは早く、村の大人たちのような一人前の魔法使いになりたいと思っている。 だから10歳になったとき初めて長老のところへ行って魔力を授かり、パンセに弟子入りすると、他の誰よりも熱心に魔法の練習をした。 みんなが嫌がる重たい水汲みでも、洗濯でも掃除でも、パンセの言うことならそれも魔法の練習の一つだと思って、なんでも一生懸命やった。 だからミラは、同じ年ごろの他の子どもたちがまだ初歩の魔法に悪戦苦闘しているうちに、基本的な子供の魔法は全部できるようになってしまった。 それなのにパンセは、そのあと、まるでミラのことなんか忘れてしまったように、ぱったりと魔法を教えてくれなくなってしまったのだ。 たまに思い出したように、今やっている洗濯魔法とか、掃除魔法とか、薪割り魔法とか、仕事が楽になる魔法をちょこっと教えてくれるだけ。 たまりかねてミラは前に一度だけパンセに、火おこし魔法を教えてください、と頼んだことがある。 火おこし魔法は大人の魔法の初歩だ。 大人になったら誰でも一番初めに教わる魔法だが、子どもは火に触ることさえ許されていない。 ミラは毎朝パンセが、囲炉裏に火をつけるのだけは必ずだれにもやらせず自分でやり、しかも子どもたちには火をつけるところを絶対見られないように気をつけているのをちゃんと知っていた。 知っていて、わざと言ってみたのだ。 思ったとおり、そのときパンセは急に厳しい顔になってミラに言った。
 「火おこし魔法は大人の魔法だよ。 ミラ、君がそれを知らないはずはないね」
 真っ赤になってうつむいたミラに、パンセはさらに厳しい声で続けた。
 「ミラ、背伸びをしてはだめだ。 子どもには子どもが覚えなければならない魔法があるだろう? 大人の魔法は大人になってから、だよ」
 ミラは素直に、すみませんでした、と謝ったけれど、本当はやっぱり不満だった。 だって、その、子どもが覚えなければならない魔法を全部覚えてしまったから、だから少し早いけど大人の魔法だってきっとできるから試しにやらせてみてくださいと頼んでるのに。

 ミラの足もとで、すっかりきれいになったローブが袖の先でぴちゃぴちゃと水をたたいて、もう洗い終わったから水から出してと催促していた。 ミラは起き上がって、ローブを水から取り出し、木の上に放り投げた。 ローブはミラの顔に勢いよく水をはねかけて、木の上にぴゅーっと飛んでいった。  
 ――― ちぇっ、冷たいなあ、なんて行儀の悪いローブなんだろう。 あれは暴れん坊のシリウスのローブかな。 それとも、いたずらっ子のジョジョのローブかな。
 ミラは顔をぬぐいながらぶつぶつ文句を言い、それからまた、次のローブを泉に放り込んで、どてん、とひっくり返った。 目を閉じると、だんだん高いところに昇っていくお日さまの光が、ぽかぽかあったかくてとても気持ちがいい。





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最終更新日  2009.06.06 16:07:02
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