突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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2009.06.20
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 不思議な香りが、あたりいっぱいにたちこめていた。
 決して不快な香りではない。 いや、むしろ、太古の密林を思わせるその香りは、妙に嗅覚を魅了して、ともすれば忘我の境に、ベベルギアを引きずり込もうとする。
 不快なのは、その香りではなく、耳もとで低く絶え間なく流れる声明の響きだ。 頭の芯にじわじわとしみこんで、こめかみの辺りを締め付ける、単調で耳障りな祈祷文。
 あらゆる思考を停止させるかと思われるその響きに、とうとう我慢できなくなって目を開けると、そこは見知らぬ部屋の中だった。
 冷たい、灰色の石に囲まれた、息の詰まるような薄暗い部屋。
 そこでベベルギアは寝台の上に横たわっているのだった。
 周りには誰もいない。
 ――― はて、ここはいったいどこだろう。 俺はいつの間にこんなところへ来たのだろう。
 目をしばたたきながら起き上がり、あたりをゆっくりと見回す。

 殺風景な部屋だ。
 ベベルギアが座っている、棺を思わせる石の寝台のほかには何もない。
 家具も、壁紙もない。
 窓もない。
 ランプひとつすらない。
 まるで石牢だ。
 ぼんやりと微かな光を放つ周囲の石壁が、醸し出す薄明だけが、がらんとしたこの部屋を満たしている。
 どこからともなく聞こえてくる声明の低い響きに、また、ふっと我を失いそうな気がして、ベベルギアは、ニ、三度、激しく頭を振った。

 ジャモーとソフィアの2人を荼毘に付する時からずっと、頭の中に響いていた声明だ。
 『火葬が済みました。 神殿の中でどうぞしばらくお休みになってください』 そう言って歩き始めたアナルケルの後に、黙って従ったときには、もう意識は朦朧としていた。 その後のことはまったく記憶にない。 ここがリュキア神殿の中の一室だろうということは見当がついたが、それ以上のことは何もわからなかった。

 ふと見ると寝台の脇に小さな石の台がひとつだけあって、その上に、水の入った水差しが乗っていた。 のどは渇いていたが、それを飲む気にはなれなかった。

 やけにしょぼしょぼする目をこすりながら、立ち上がる。
 とたんに、くらりとめまいに襲われて、思わずその場にしゃがみこんだ。
 部屋の輪郭が、くにゃりとゆがむ。
 と、そこにあった戸もふっと消えて、ただの石の壁に変わった。
 軽い驚きから、ふと気がゆるむと、また、この薄明の中に意識がとろとろと霞んで、忘我の淵へと引きずり込まれそうになった。

 恍惚とした声明の響きに全身全霊で抗う。 歯を食いしばって立ち上がる。
 よろぼいながら壁に近づくと、やはりそこに戸はあった。
 ジャムルビー族のための出入り口なのだろう、ベベルギアの顔の高さまでしかない小さな戸だ。
 手探りで取っ手を引く。 
 重い石の戸はびくとも動かない。
 鍵がかかっているのか。
 いや、取っ手は何の抵抗もなくなめらかに動く。
 動かないのは、戸の重みのせいだ。
 渾身の力を込めて押してみる。
 ありったけの体重をかけて引いてみる。
 びくともしない。
 どういうわけか、体中の力がすっかり抜けているのだ。
 だるい。
 体中の骨がばらばらに解体してしまいそうだ。
 荒い息をつくと、またふらふらと立ちくらみがして、再びその場にしゃがみこんで、休んだ。
 どうなっちまったんだ、とつぶやいて汗をぬぐう。
 間断なく続く声明が、よけい神経を逆なでする。
 意識がふっと遠のく。

 そのとき、目の前のその戸が、外からすっと音もなく開いた。
 のろのろと顔を上げる。
 そこに立っていたのはアナルケルだった。





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最終更新日  2009.06.20 15:23:16
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