突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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2009.07.16
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 ミラは嬉しくて、パンセの家を出るとすぐさま“木隠れ”を唱え、まっすぐヴェガのケヤキの木へと、文字通り吹っ飛んでいった。
 ケヤキの木の上に作られた古い小さな家(これはもちろんヴェガが建てたんじゃない。 ヴェガの生まれるずっと前に誰かが建てて住んでいた小屋が空き家になっていて、そこにヴェガがそのまま居ついただけだ。 でも、この気難しそうな古いケヤキの木はなぜかヴェガを気に入ったらしくて、ずぼらであまり木の手入れもしてやらないヴェガを追い出そうともしないようだ)に飛び込んでいくと、ヴェガは、もうこんなにお日さまが高く上っているというのに、まだベッドの中でぐっすり眠っていた。
 「ヴェガ、起きて! 僕ここに引っ越してくることに決めたよ! 今、パンセに報告してきたんだ。 僕のざくろの木はぴょん太とお嫁さんにあげることにしたよ。 朝ごはんを食べたらすぐ僕の荷物をここに運んで来ていいでしょ? ねえ、ヴェガ、起きてよ!」
 大声で叫びながらヴェガを揺り起こすと、ヴェガは不機嫌そうに顔をしかめながらベッドの上に半身だけ起き上がった。
 「なんだよ、朝っぱらから、うるせえなあ。 せっかく気持ちよく寝てたのに、起こしやがって・・・」
 ミラはさらに声を張り上げ、ヴェガの肩を揺すった。
 「ここに引っ越してくることに決めた、って言ったんだよ! さあ、ヴェガ、早く起きて、顔を洗いに泉へ行って。 その間に僕が部屋の中を片付けて朝ごはんの用意をしておくから。 ご飯を食べたら引越しだ! 今日は忙しくなるよ!」
 ねぼけまなこのヴェガを外に追い出すと、ミラはおおいそぎで取り散らかった部屋の中を片付け、からになった酒瓶を表に出し、ほこりだらけのテーブルの上を拭いて、今朝採ってきたばかりの苺を並べ、二つのコップにきれいな水を注いだ。 くしゃくしゃのベッドを整えていると、ヴェガがさっぱりした顔になって戻ってきた。
 「ああ、さっぱりした。 ミラ、たまにゃ早起きして水浴びってのもいいもんだな、夕べの酒がぜーんぶ体の外へ流れ出ていったようで、おお、爽快、爽快!」

 ミラは声を上げて笑い、それからヴェガの手を引いて朝ごはんのテーブルにつかせた。
 「ヴェガ、朝ごはんを食べたらすぐに仕事に出かけていいよ。 後片付けは僕がするから。 それから、ここに引っ越してくるよ! ねえ、あっちの窓のそばに僕のベッドを作っていい? ヴェガの水がめに二人分の水は入る? 僕の水がめも持ってきたほうがいい? 僕のカップやお皿は、あの食器戸棚の中に入れさせてね。 大きい戸棚だからスペースは十分・・・でも、あの中もきれいにしなくちゃ。 ほこりだらけだ。 それと、僕の着替えはどこにしまったらいいだろう。 ねえ、ヴェガ、ここにはクロゼットはないの? 新しいクロゼット、つくろうよ! ヴェガのと僕のと二人分入る、大きいやつ。 椅子は?  二つ、あるね。 それから、窓にもカーテンをつけて・・・」
 ヴェガも笑いながら、わかったわかった、と手をふった。
 「何でも好きなようにしな。 ここはもうお前の家でもあるんだ。 ・・・さて、それじゃ、めしの前にまず、熱いお茶を一杯淹れてもらおうかな。 俺、朝は必ず熱いお茶を飲まねえと、目が覚めねえたちなのよ。 早速火おこし魔法を教えてやろうな」
 ミラはあわててヴェガの口を両手でふさいだ。
 「だめだめ! パンセに黙ってヴェガに大人の魔法を教わったりしないって、今約束してきたばかりなんだから」
 ヴェガは、額にしわを寄せてミラの手をどけながらぶつぶつ言った。
 「え? 俺に魔法を教わっちゃいけねえって? ・・・ちぇっ、パンセのやつ、余計な口出ししやがって。 俺には俺の予定、ってものがあるのになぁ」
 それから、ヴェガはまた笑顔に戻ってミラの頭を撫でた。
 「ま、いいさ、そんな約束、気にすることはねえんだよ。 どのみちパンセには俺たちがここで何してるかなんてわかりゃしねえもの。 黙ってりゃいいだけのこった。 火おこし魔法なんて、お前、暖炉に火をつけるだけだぜ。 そんな大げさに考えんなよ。 ただ、こんなふうに構えて、呪文《イーガルドエッテボン》を唱えるだけ。 それだけさ」
 ミラはあわてて耳をふさぎ、固く目を閉じた。

 ヴェガはもう一度、つまらなそうに、ちぇっ、と舌打ちして、今ついたばかりの暖炉の火に小さな薪の切れ端をくべた。
 「しょうがねえな、お前がそう言うんじゃ俺にはどうしようもねえ。 お茶は今までどおり自分で淹れるしかねえやな。 ・・・まあ、気が変わったらいつでも言いなよ。 すぐに教えてやるから」
 気が向いたらね、とミラは答え、そろそろと両手を耳から離して、暖炉の中でちろちろ燃え始めた火を眺めた。
 しっかりと目を閉じていたからヴェガの手つきは見えなかったけれど、《イーガルドエッテボン》という魅惑的な呪文の響きだけはしっかりと耳の奥にこびりついて、いつまでも離れなかった。





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最終更新日  2009.07.16 19:46:23
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