突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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2009.07.22
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 腕をさすりながら立ち上がると、そのバルドーラが奇妙な顔つきでじろじろとミラを見ていた。
 そうか、この人きっと、さっきの僕の火の玉を見てたんだ。 それで変な顔してるんだな。
 そう気がついたらミラは、魔法使いのくせに大事なところでしくじったことが急に恥ずかしくなって、このまま消えてしまいたくなった。
 でも、そういうわけにはいかない。 助けてもらったお礼はちゃんと言わなくちゃ。
 ミラはごくりと生唾を飲み込み、小柄とはいってもミラの倍近くもありそうな、そのバルドーラの顔をおそるおそる見上げた。 けれどミラが勇気を振り絞って声を出す前に、そのバルドーラのほうから先に口を開いた。
 「こんな夜更けに、子どもが1人でうろつくような場所じゃないぜ。 さっさと自分のねぐらへ帰りな」
 そう言うとバルドーラはそのままミラの横を通り抜け、酒場に向かって歩き出した。 
 ミラはあわててその背中に言った。
 「あのう、アンタレスさん、どうもありがとうございました。 おかげで助かりました」

 「えーとあの、さっきの酔っ払いたちがあなたを見て、アンタレスだと言ったので、それがあなたのお名前かと思ったんです」
 ああ、そうか、という顔をして、アンタレスが酒場の扉に手をかけた。
 ミラはまた、急いでその後姿に向かって続けた。
 「それでえーと、僕はミラというんですが、今夜は先輩が急病になって、お酒を飲まないと治らない病気なので、僕がお酒を買いに来たところだったんです。 だけど、一人で酒場に入っていくのがちょっと・・・」
 怖かった、と言うのが恥ずかしくて口ごもったミラを見下ろして、このとき急にアンタレスの、彫像のような固い表情がふっと緩んだように、ミラには思えた。
 「・・・ふーん、じゃ、いっしょに入って来れば?」
 嬉しくて、ミラの顔にぱーっと血が上った。
 小躍りしてアンタレスのあとから酒場に入っていくと、そのとたん、にぎやかだった酒場の中が、一瞬、水を打ったように、しん、と静まり返った。
 あれあれ? とミラは、アンタレスの背中に隠れて酒場の中を見渡した。
 グラスやお皿が乱雑に散らかったテーブルについた酔客たちはみんな、恐ろしい顔つきのバルドーラばかりだったが、なぜか、アンタレスを見ると急におしゃべりをやめ、臆病なウサギのようにおどおど目をそらしたり、ぎょっとすくみあがったりするのだ。 中には本当に、こそこそ物陰に隠れてしまうやつまでいる。 しまいには、アンタレスの後から入って行った小さなミラにまでお追従笑いを浮かべたり、あわてて道をあけて隅のほうによけたりしはじめた。 
 一瞬にして酒場の中にひろがった不穏な空気の、そのすべてを完全に無視して、すたすた店の奥の席へと歩いていくアンタレスの、ほっそりした背中を見上げて、ミラは首をかしげながら考えた。

 カウンターの向こうで、あいそのいいゾーハルまでが眉をひそめてアンタレスをにらみ、それから、その後ろのミラに気づいて目を丸くした。
 「やや! 君は確か、ヴェガのお弟子さんの、ミラだったね!? こんな夜更けに、どうしたの? 一人で来たのかい? ヴェガはどうしたんだね?」
 ゾーハルの素っ頓狂な声で、酒場の中の張りつめた空気がふっと緩み、次いで、アンタレスが奥のほうのテーブル席に腰を落ち着けると、ようやく、酒場の中に、遠慮がちな喧騒が少しずつ戻ってきた。
 ミラは、ゾーハルがすぐに自分を思い出してくれたことが嬉しくて、まっすぐカウンターに駆け寄り、ヴェガに教わったとおり酒代を差し出した。
 「ゾーハルさん、こんばんは! ヴェガは病気になっちゃったんだよ。 お酒を飲まないと治らないんだ。 だから今日は僕がお酒を買いに来たんだ」

 「へえ? お酒を飲まないと治らない病気だって? ・・・まったく、困ったもんだね、ヴェガのやつには。 だけど、今度からは夜ヴェガにお使いを頼まれても断ったほうがいいよ。 私からもヴェガに、夜はそういう病気にならないようによく言い聞かせてやろう」
 おかしなゾーハルさん、病気になるなと言ったって、病気は自分じゃ止められないよ、とミラはくすくす笑い、ゾーハルの差し出してくれた苺ジュースに手を伸ばした。
 ゾーハルはカウンターの上に酒瓶を2本出し、ミラのほうに押しやりながら言った。
 「じゃあ、この1本は今夜ヴェガに頼まれた分のお酒。 それからもう1本は、私からミラへのプレゼントだ。 これはどこかヴェガに見つからないところにしまっておいて、今度また、夜に、お酒を買いに行けと言いつけられたときに出してやりなさい。 もう夜は一人でここに来ちゃいけないよ。 いいね? 昼間ならいつでも大歓迎だけどね。 昼間だったら、ヴェガのお使いに限らず、いつでも遊びにおいで。 いつでも苺ジュースをご馳走してあげるよ」
 「ゾーハルさん、ありがとう! じゃあ、今度来る時は、カウンターの上に飾る花をたくさん摘んできてあげるね! ご馳走さまでした!」
 お酒を買うと、ミラはもう一度アンタレスと話がしたくて、アンタレスの座っている席へ近づき、また、さっきのお礼を述べた。 さらにそのあともミラは、アンタレスのそばを離れがたくてもじもじしていたが、アンタレスは、用事がすんだらさっさと帰りな、といったきり、もう相手にしてくれなかった。 ミラはすごすごと酒場をあとにするしかなかった。





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最終更新日  2009.07.22 16:42:19
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