PR
カレンダー
サイド自由欄
キーワードサーチ
コメント新着
言い放つと、青緑色の目玉は不意に、二人の頭上からさらにすーっと上昇して、天井にまで達した。
同時に、部屋の中全体がぼうっと薄明るくなる。
ぎょっと見回すと、そこはもうあの『龍王』二階の暗い狭い部屋の中ではなかった。
それは、果てしなく広い、殺伐とした、荒野のようなところ ――― 木も草もない、風も水もない、岩も、石ころすらもない、日の光も、月星の明かりもない、ただ寒々とした薄明がどこまでも広がっているばかりの、奇妙な場所だった。
ああ、ここは、死んだ魂が行くという、幽界というところなのだろうか、と、たまこは思った。
それにしても、なんというさびしい眺めだろう。
ここに一人で立っていると、それだけで、さびしくて、心細くて、涙が止まらなくなるのだ。
こんなさびしいところでクロは、長い間一人ぼっちで、昇一お兄ちゃんを捜して呼んでいたのかと思うと、クロがかわいそうで、大声で泣きたくなった。
そうだよね。
こんなところに一人でいたら、そりゃ、通りかかる人なら誰でもいいからすがりつきたくなるよね。 他の幸せそうな猫を見たら、うらやまずにはいられないよね。
たまこがそう思ったとき、突然、はるか上空で不気味な雷鳴がとどろき、薄明の空に、青緑色の稲妻がぴかっと走った。
まばゆい稲妻の光に、一瞬、見上げるような巨大な、魔物の影が浮かび上がる。