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ふいに、二人を守るバリアーが、ゆらっ、と、目に見えるほど大きく揺れた。
その一瞬を狙って、龍が、かっ、と大きく口を開ける。
次の瞬間、その口から、目もくらむような真っ赤な閃光が放たれた。
いや、単なる光ではなかった。
それは、龍の吐く、怒りの炎 ――― 触れたものすべてを一瞬のうちに灰に変えてしまう、地獄の火炎なのだった。
龍の口から吐き出された、地の底まで焼き尽くすような巨大な火炎が、ゴーッとすさまじい音を立てて二人に襲いかかる。
二人の足もとが、ぐらり、と大きく揺れ、と思ったせつな、バリアーが、ふっ、と消失した。
龍の、長年にわたって積もり、固まり、極度にゆがんだ憎しみのパワーのほうが、愛の力よりも強かったのだ。
無防備になった二人の全身を、焼けつくような熱風が直撃する。
襲いかかってきた地獄の炎を、すんでのところで、右と左に飛びのいてかわした、たまことミケの間に、一瞬、小さな間隙が生じた。
その空隙をついて、二人の間を裂くように、ビシッ、と、深い亀裂が走った。
ゴゴゴ・・・という重い地響きと激しい揺れを伴って、足もとに走った亀裂が、底なしの闇へふたりを飲み込もうと、その入り口を大きく広げる。
「ミケ!」
「お嬢さま!」
激しい揺れに耐え切れず地に伏せたたまこと、地獄の炎にあおられて地面に投げ出されたミケとの距離が、激しい地鳴りとともに一気に引き離される。
その間に龍が、ところどころうろこの剥げ落ちた巨体を、のそり、と割り込ませた。