突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

PR

プロフィール

ふろぷしーもぷしー

ふろぷしーもぷしー

カレンダー

サイド自由欄



little_heart.gif


thumbnailリュキア伝説

リュキア伝説・本館

☆完結しました☆



rykia_contents.gif




鬼の棲む街バナー.gif



little_heart.gif






thumbnailレグルス王

真魚子さまの絵



thumbnailトキ

エメラルドeyesさんのブログ
『ねこマンサイ』
で紹介していただいた、
ふろぷしーもぷしーの過去日記
『迷い犬を保護してしまいました』2008.6.19~10.7



thumbnail鮎屋トキ

『いっしょに歩こう!』
2008.12~2009.1


キーワードサーチ

▼キーワード検索

バックナンバー

2024.11
2024.10
2024.09
2024.08
2024.07

お気に入りブログ

バランスパワーミニ … New! 千菊丸2151さん

小説「ゲノムと体験… マトリックスAさん

パンの日々 nako7447さん
道楽オヤジのお気楽… 車屋のオッサンさん
ゆっくりね ラブドルフィンさん

コメント新着

風とケーナ @ ご完結おめでとうございます.:*・☆ ふろぷしーさま、こんばんは♪ この度は、…
ふろぷしーもぷしー @ 千菊丸さま☆゚・*:.。. いつもありがとうございます☆ わずか一、…
2014.08.07
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類

 ラーメンをどんぶりに移した昇一さんが、返事のかわりのように小さくため息をつくと、おばさんが絶妙のタイミングでそのラーメンにスープを注ぎ入れ、後を引き継いだ。

 「それがねえ、かわいそうに、ひとりで寂しくなったんだかお腹がすいたんだか、古毛布の寝床からよちよち這い出して、トラックの往来が激しい大通りまで出て行っちゃったらしいんだよ。・・・ありゃちょうど昇一が学校から帰ってくる時間だったねえ、店もそろそろ忙しくなり始めるころだった。 大通りで突然、キーッ、て、すごいブレーキの音がしてねえ、あっ、また事故だと思って出て行ってみたら、ここの駐車場の前にトラックが止まってて、若いドライバーが、『何でもねえよ、猫だ、猫を轢いちまっただけだ。 おばさん悪いけど片付けといてくんない? 俺時間ないから。 ごめんね』とかなんとか、言い残してさっさと行っちまうんだね。 ウチの店だってちょうど忙しくなる時間だし、片付けてくれったって、ゴミじゃあるまいし、ねえ、・・・そうしたら、ちょうどそのとき学校から帰ってきた昇一が、真っ青になってすっ飛んできて猫にすがりついて、 クロちゃん、クロちゃん、って、 まあ、泣いて泣いて・・・そんな猫のことなんかきれいに忘れてたあたしまで、思わずつられて泣いちまうくらい、そりゃあもう、大変な悲しみようだったんだよ。 あの時は、あたしもお父ちゃんも、心から反省したもんだ。 もっと昇一の気持ちをよく聞いてやらなきゃいけなかった、ってさ。 ねえ、お父ちゃん?」


 またしても、はん、とか、あん、とか、おじさんが生返事をしたが、おばさんはそれには目もくれず、ラーメンにナルトを乗せ、チャーシューを乗せ、メンマを乗せ、最後に海苔と刻みネギを乗せて、美緒の前に、トン、と置いた。

 「はい、美緒ちゃん、大盛りラーメン、お待ち遠さま」



 「・・・きっとクロは、そのとき、昇一さんが帰ってくる時間だとわかっていて、迎えに出ようとしたんだな」

 虎雄がひっそりとつぶやいた。

 「きっと、早く会いたくて一刻も我慢できなかったんだろう。 いつも兄ちゃんと一緒にいたかったんだろうなあ」

 たとえ怨念になっても、と言う言葉を飲み込んで、虎雄がズズズ、とラーメンをすする。



 だけどね、と、昇一さんがきをとりなおしたように笑顔に戻って言った。

 「あの生垣のところにクロのお墓を作ったとき正樹が手伝ってくれて、そのことを覚えてくれていたおかげで、今度帰って来た時クロの供養をすることができて、とても良かったような気がするんだ。 不思議に身の回りがすっきり、きれいになった感じで、娘たちも、女房も、なんだかとても明るい表情になったような気がするんだよね。 気のせいだと言われりゃそれまでだけどさ」


 あら、ウチもだよ、と、おばさんが、ぽん、と両手を打ち合わせた。

 「ウチも、なんだか風通しが良くなった感じで、妙に爽やかな感じで仕事ができるんだよね。 お客さんたちまでなんだか前より明るい顔つきに見えるし、・・・あら? そういやここんとこ、お父ちゃんとも口げんかしてないねえ。 これも気のせいかね、お父ちゃん?」


 気のせいじゃない、と、珠子は思う。

 クロは、長い間、昇一さんに自分を思い出して、話しかけてもらいたかったのだ。 その望みがようやくかなって、今は、クロも幸せな気持ちでこの一家を見守っているのだろう。 だから、みんな気分がいいのだ。

『魚清』猫たち


人気ブログランキングへ






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2014.08.08 00:31:36
コメント(4) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:ファンタジー小説『猫』<124> エピローグ<7>(08/07)  
千菊丸2151  さん
長い間自分を思い出してくれなかった昇一たちへの怒りを、ずっとクロは抱えていたのですね。
そして、クロの御墓をたてて供養するようになってから、彼らへの恨みを消したのですね。

やっぱり、誰にも供養してくれないと、人間でも猫でも化けて出てきますね。 (2014.08.08 12:57:40)

Re:ファンタジー小説『猫』<124> エピローグ<7>(08/07)  
kunidondon  さん
深い愛情も大切ですが・・・

記憶から消されることほど虚しいことはないですね。。。

楽しい思い出、悲しい思い出・・・すべてがクロの存在意義だったのでしょうね。


明日から夏季休暇に入りますw・・・のでご訪問が不定期になる可能性がありますのでご了承を~♪

(2014.08.08 18:29:26)

千菊丸さま☆゚・*:.。.  
あたたかいコメントありがとうございます!
ほんとうに、千菊丸さまの仰せの通りだと思います。

一足先に逝ってしまった者たちの思い出話、
ときには、家族の間で楽しい話題として上らせてあげると、
その魂も輪に加わって
一緒になって楽しんでくれると言いますものね。

(2014.08.09 00:40:52)

kunidondonさま☆゚・*:.。.  
思わず考えこんでしまう深いコメント、ありがとうございます☆

まさしく
自分が愛する人に忘れ去られてしまうなんて
こんな哀しいことはないですよね。

ふろぷしーなども、もし死んだら
思い出してくれそうな人も見当たらず
そこでこんなしょうもない小説など書いてあがいているのかも 
  (+_+; ) ゞ(≧ε≦o)ぷぷっ!!ナイナイ



おお~っ夏季休暇・。+・゜★・。・☆・。+・゜キラキラ・。・゜★・+。・.

暑さと体調管理にお気をつけて、
ゆっくり☆のんびり☆わくわく☆わいわい☆
めいっぱい楽しんできてくださいね~ ( ´▽`).: ♪:+・イッテラッシャイマセ

お土産話、楽しみにしてまーす♪

(2014.08.09 00:56:53)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: