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シカゴの隠れ名曲選(其の5) 前回記事の「ぼくらの世界をバラ色に」によって、頭の中の考えがすっかりテリー・キャスの方に向いてしまいました。そんなわけで、一区切りのこの5回目も、テリー・キャスの楽曲で締めたいと思います。 1969年のデビューから1980年に至るまで、シカゴは概ね毎年1作品(ただし2枚組作品も多数)のハイペースでアルバムを出し続けました。そんな真っただ中の1976年のアルバム『シカゴX(カリブの旋風)』に収録されたのが今回のナンバーです。 上記アルバムからは「愛ある別れ」がという有名なヒット曲がありますが、今回は“隠れ名曲”がテーマです。アルバムの最後に収録されている「愛の終りに(ホープ・フォー・ラヴ)」をお聴きください。 この映像もまたジャケット写真のようなもの(実は諸作のアルバムジャケットを並べてデザインしたもの)だけで動きませんが、曲だけでも十分堪能できる好曲です。ちなみに、この曲が収録された盤のジャケットは、いちばん右の下から2つめ、そして最上段中央部のものです。 前項でも少し触れましたが、シカゴの当初から中心的なメンバーとして活動してきたテリー・キャスは、この後、1978年初頭に拳銃の暴発事故で亡くなりました。ロシアン・ルーレットのごとく冗談で“弾の入っていない”はずの(しかし実際には銃弾の入っていた)拳銃を頭部に撃って即死してしまいました。こうしたテリー・キャスの名曲を聴くにつけ、このような事件がなければまだまだいろんな曲が聴けたかもしれないのに…などとつい考えてしまいます。 ともあれ、今回のシカゴ曲選、ひとまずはこれで一区切りです。[収録アルバム]Chicago / Chicago X(カリブの旋風)(1976年リリース) シカゴX(カリブの旋風) [ シカゴ ] ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2024年11月25日
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往年のマイルスのメンバー+若きW・マルサリスの完成されたプレイ ライブ・アンダー・ザ・スカイ(1977~92年に開催されていた野外ジャズ・フェスティヴァル)で来日したメンバーが、東京のCBSソニー・スタジオで録音した演奏を収録したものが、1982年リリースの本作『カルテット(Quartet)』である。リーダーとしての名義は、ピアニストのハービー・ハンコック(Herbie Hancock)であるが、そのメンバーの内訳は、ロン・カーター(ベース)にトニー・ウィリアムス(ドラム)、加えてウィントン・マルサリス(トランペット)という4人組で、それゆえ、アルバム名も『カルテット』となっている。 これら4名のメンバーのうち、W・マルサリスを除く3名は長らく様々な作品で共演してきた顔ぶれである。これら3名のリズムセクションは1960年代のマイルス・デイヴィスのグループの屋台骨であり、なおかつハンコックのリーダー作でもその腕前を披露している(例えば、マイルス・デイヴィス『フォア&モア』、ハービー・ハンコック『処女航海』)。同じメンバーでライブをこなしているとはいえ、このメンバーに加わって演奏するマルサリスはさぞかし緊張したことだろう。何せこの時点でマルサリスはまだ20歳を迎える少し前だ。おまけに、かつてこれらのメンバーを率いた同じトランペットの大先輩マイルスが演奏したナンバーがいくつも含まれている。19歳でこのシチュエーションは、普通の神経では緊張を通り越しそうな気がする。 ところが演奏を聴いてさらに驚かされる。マルサリスが“完成品”と呼んでいい出来なのである。何より堂々とプレイしている。上記のシチュエーションからすれば、それだけでも大したものである。けれども、それに加えて、マルサリスが“出したい音を出せている”ことが何よりも素晴らしい。優れた演奏者は、頭の中にある(もしくは浮かんでくる)音をその通りに再現する。ここでのマルサリスの演奏はまさにそれだと思う。無論、さらに革新的なミュージシャンは、そうした“頭の中の音”を表現すべく様々な試行錯誤を繰り返す。ジャズ界で言えばマイルス・デイヴィス、ロック界で言えばジミ・ヘンドリクスがその代表例である。しかし、こうした演奏者の大前提にあるのは、既定の枠組みの中で自在に自分の音を表現できるということであって、その上で初めて新たな音や表現への探求が生まれるわけである。 そうした観点からしても、マルサリスが彼の楽器を自由自在に操り、おそらくはイメージした通りの演奏を繰り広げていること自体が素晴らしい。2.「ラウンド・ミッドナイト」をはじめ、マイルス・デイヴィスを意識したナンバーが含まれている(そして他のメンバーは上記のとおりマイルス・クインテットのメンバーだった)のも興味深い。奇抜な演奏や極端に枠をはみ出たプレイではないが、ウィントンの技巧と表現力の確かさが存分に発揮された1枚だと思う。 ウィントン・マルサリスは、特に近年の活動がいろいろと批評されているけれども、この録音時にはまだまだ若き新人に過ぎなかった。余分な雑音は放っておいて、当時のイメージで聴いてみれば新鮮に聞こえるに違いない。なお、LPでは2枚分だったが、現在はCD1枚に収録されているので、お買い得感も高い。内容・ヴォリュームとも充実の1枚で、ウィントン・マルサリスを最初に聴く人にも勧められる秀作である。[収録曲]1. Well You Needn't2. 'Round Midnight3. Clear Ways4. A Quick Sketch5. The Eye Of The Hurricane6. Parade7. The Sorcerer8. Pee Wee9. I Fall In Love Too Easily[パーソネル]Herbie Hancock (p)Ron Carter (b)Wynton Marsalis (tp)Tony Williams (ds) [録音]1981年7月25日 【楽天ブックスならいつでも送料無料】【輸入盤は全品ポイント5倍!】【輸入盤】Quartet [ Herbie Hancock ] 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年04月17日
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音楽家として完成の域に達したスティーヴィー 前作『トーキング・ブック』(こちらも名盤!)を発表した翌年(1973年)にリリースされたのが、本盤『インナーヴィジョンズ(Innervisions)』である。『トーキング・~』の項でも触れたスティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)の絶頂期である“クラシック・ピリオド”の中でも、特に頂点と称賛されるのが本アルバムである。幼くしてデビューしたスティーヴィーは、やがて自作自演のアーティストという方向性に目覚め、自ら曲を作り、アレンジし、歌い、様々な楽器を操ってアルバム制作を進めるようになっていた。本作においてももちろん、ジャケ裏側には、堂々と“Written, Produced & Arranged by Stevie Wonder”(作曲・プロデュース・編曲:スティーヴィー・ワンダー)と記されている。 アルバム・タイトルの『インナーヴィジョンズ』という表現の中の“ヴィジョン”というのは、“視野”とか“視覚”といった意味である。したがって、目に見えるものとしての“光景”や見る方法としての“ものの見方”なども意味する。つまり、本盤のタイトルは、“内なる眼”といった意味合いであり、生後間もなく視覚を失ったスティーヴィー自身の“内なる眼”を意味しているものと思われる。ジャケットの絵も、目が見えないと思しき人物(スティーヴィー本人)が窓から外を見上げて何かを見通している構図となっている。アルバム自体は、全米チャート4位(R&Bチャートでは1位)を記録し、リリース翌年の74年のグラミー賞では、年間最優秀アルバムと最優秀録音の二部門を獲得した。 1曲目の「トゥ・ハイ」からして、本当に“ハイ”である。音楽全体が“跳ねて”いる。確かに、抑えるべきところは抑えている(例えば、2.や7.)のだけれど、基本、全体が“跳ねている”のだ。一般論として、ドラムやリズム・セクションの跳ね具合がノリやファンキーさを醸し出すという評価の仕方はあるけれども、この作品の場合は、音楽全体がそうだと言えるように思う。無論、ヴォーカルもそれに該当し、スティーヴィーの歌自体の跳ね具合こそが、全体の強い躍動感を生み出す要因になっている。加えて、そのヴォーカルには新たことや実験的なことをやっているという雰囲気がなく、自信が満ち溢れ堂々としている印象が強い。こうした“跳ね”という観点から、特に素晴らしい出来の曲は、1.「トゥ・ハイ」のほか、3.「汚れた街」、4.「ゴールデン・レディ」、5.「ハイアー・グラウンド」(この曲はシングルとして全米4位にランクインした)、9.「いつわり」といったところである。逆に、リズムもヴォーカルも抑え気味になっている曲では、メロディの美しさとヴォーカルの伸びというもう一つの特徴も見られる。 さらに着目したいのは、かなりの楽器をスティーヴィー・ワンダー自身が演奏している点である。スティーヴィーと言えば、ムーグのシンセサイザーを駆使するイメージが強いという人も多いかもしれないが、実はドラムさえも見事にこなすマルチプレーヤーで、本作でもそうしたマルチぶりが発揮されている。とりわけ、収録曲の中で、3.「汚れた街」、5.「ハイアー・グラウンド」、6.「神の子供たち」は、完全にスティーヴィーの多重録音による独演である。同じ70年代前半には、トッド・ラングレン(例えば1972年の『サムシング/エニシング?(ハロー・イッツ・ミー)』)なども同様のマルチプレーヤーのスタイルを確立している。筆者の好みと感覚で言えば、トッド・ラングレンがどちらかと言えばマニアックな方を向いて一人で演奏・ヴォーカルの多重録音を試みたのに対し、スティーヴィー・ワンダーはより聴衆にオープンな方向性でそれを行なったように思える。 上で述べた“跳ね具合”というのは、人によって好みが分かれるかもしれない。しかし、一度は聴いておいて損のない名盤であることは間違いない。黒人音楽という枠にとらわれず、ロック、ポップス、ジャズ等様々な音楽を取り込み、なおかつ消化しきっている演奏は、“ブラック・ミュージック”、“ソウル”、“ファンク”などのレッテルのついた音楽に違和感を感じるリスナー層にも、十分受け入れられる素地がある。この時期のスティーヴィーや、スティーヴィーの音楽そのものを避けて通っていた人にも、ぜひ一聴してほしい一枚である。[収録曲]1. Too High2. Visions3. Living For The City4. Golden Lady5. Higher Ground6. Jesus Children Of America7. All In Love Is Fair8. Don't You Worry 'Bout A Thing9. He's Misstra Know-It-All1973年リリース。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】インナーヴィジョンズ [ スティーヴィー・ワンダー ] 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、バナーを“ぽちっと”クリックのほどよろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年06月02日
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初めて聴く人にもおすすめのコニッツ盤 リー・コニッツ(Lee Konitz)は、1927年シカゴ出身で、現在(2015年)も88歳で存命中のジャズ・サックス奏者。1950年代から2000年代までコンスタントに作品を発表しており(2010年代に入っても新しい作品が出ている)、比較的新しい(年配になってからの)作品は聴きやすいが、若い頃のコニッツは難解だなどと評されることもある。 でも、初期コニッツを聴かないのはもったいないと思う。本盤『インサイド・ハイ・ファイ(Inside Hi-Fi)』は、1956年録音でそうした“とっつきにくい”時代のコニッツ盤であるものの、比較的とっつきやすいんじゃないかと個人的には思っている作品なのである。 何よりもまず、コニッツの演奏は“くねくね”している。“真っ直ぐな感じではない”と言い換えてもいいかもしれない。具体的に言うと、テーマなのかアドリブなのかよく分からなかったり、メロディになっているのかなっていないのか微妙な境界線を彷徨うようなフレーズが現れる。ジャズ・サックスの世界ではチャーリー・パーカーの影響から免れなかった奏者はほぼ皆無ではないかと思われるけれど、このリー・コニッツのサックスは本当に我が道を行く感じで、アドリブの可能性を試すのにパーカーとは全然違う方向を向いていたんだろうと思う。 クール・ジャズの理知的なイメージはあるものの、それが美しいアドリブやさらりときまったフレーズになって体現されているかというと、あまりそうとは言えない。“くねくね”とした音の連なりがメロディとして成立していく瞬間みたいなものがコニッツの真骨頂という気がする(したがってどこまでがテーマかアドリブかよく分からない雰囲気で演奏が展開されていったりする)。本作品ではアルトとテナー・サックスおおむね半々というの注目点だが、どちらを手にしても、上記の特徴は一貫している。 前半(1.~4.)は、ピアノレスであることとギター(ビリー・バウアー)の存在とがいい効果を上げている。サックスとギターが二管のユニゾンのように響くのが何ともスリリング。個人的には、この前半では、特に1.「ケアリーズ・トランス」がお気に入りである。後半(5.~8.)はピアノを加えたよりスタンダードな編成だが、コニッツのテナーの演奏が聴かれる。賛否が分かれるところかもしれないが、ふだんアルトで聴きなれた例の“くねくね感”(もしくは“ひらりはらり”のメロディ)をよりふくよかさのあるテナーの音で聴くのは、個人的にはなかなか心地よいと思っている。[収録曲]1. Kary's Trance2. Everything Happens To Me3. Sweet And Lovely4. Cork 'N' Bib5. All Of MeKary's Trance6. Star Eyes7. Nesuhi's Instant8. Indiana[パーソネル、録音]1.~4.:Lee Konitz (as) Billy Bauer (g) Arnold Fishkind (b) Dick Scott (ds) 1956年10月16日録音。 5.~8.:Lee Konitz (ts) Sal Mosca (p), Peter Ind (b) , Dick Scott (ds) 1956年9月26日録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】【まとめ買いでポイント最大10倍】JAZZ BEST COLLECTION 1000::インサイド・ハイ・ファイ [ リー・コニッツ ] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2015年11月12日
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類まれなるシンガー二度目の充実期 ロッド・スチュワート(Rod Stewart)は、1945年生まれのイギリス出身のロック・シンガーで、独特のハスキー・ボイスで多くの人々を魅了してきた。彼は、ジェフ・ベック・グループやフェイセズを経てソロ・シンガーとしての名声を確立していった。とりわけ日本では[セイリング」のヒットで知られ、1970年代後半が彼の絶頂期ということになるが、筆者としてはもう少し違う受け止め方をしている。 私的にはロッドの充実期は二度あった。1回目はソロ・デビュー後の70年代前半から70年代半ばを過ぎる頃までである。作品で言えば、『ガソリン・アレイ』から、上述の「セイリング」を収めた『アトランティック・クロッシング』あるいは『ナイト・オン・ザ・タウン』あたりである。 そして、2回目のロッドの充実期は1980年代後半から1990年代に入る頃までだったと考えている。アルバム・タイトルで言うと、『ロッド・スチュワート(Every Beat of My Heart)』、『アウト・オブ・オーダー』、『ヴァガボンド・ハート』といった頃に相当し、トム・ウェイツをカヴァーしたシングル曲「ダウンタウン・トレイン」もこの時期に含まれる。前年に亡くなった父親に捧げたという本盤『ヴァガボンド・ハート(Vagabond Heart)』は、この時期を締めくくる集大成的アルバムであるというのが筆者の認識である。 とにかく曲とヴォーカルの質が高い。1.「リズム・オブ・マイ・ハート」や5.「ホエン・ア・マンズ・イン・ラヴ」はロッドの本領発揮のヴォーカルで、70年代のセクシーさは弱まっているが、その分、自信たっぷりの円熟ぶりがよい。ついでながら言っておくと、その“円熟ぶり”はまだまだ勢いのある円熟ぶりであった。やがて2000年代にザ・グレイト・アメリカン・ソングブック集というアルバム群をリリースするに至るが、この頃になると甲状腺癌の手術による影響もあってか、勢いは失われていってしまう。それに対し、この頃のロッドは円熟の境地に入りつつも、まだまだ勢いがあるヴォーカルを見せていた。その一方で、6.「ユー・アー・エヴリシング」や12.「イフ・オンリー」のようなバラード調も相変わらずの名唱であるが、注目を引くのは、カヴァー曲。そもそもロッド・スチュワートはカヴァー曲も多くヒットさせている人である。10.「ハヴ・アイ・トールド・ユー・レイトリー」はヴァン・モリソンの曲。また、3.「ブロークン・アロウ」は、元ザ・バンドのロビー・ロバートソンの曲だが、ロバートソンの元のヴァージョン(彼名義の1987年のセルフ・タイトル盤に収録)の数倍カッコいいと個人的には思う。 他に注目をひくところでは、4.「イット・テイクス・トゥー」は、ティナ・ターナーとのデュエットで二人の掛け合いがスリリングなのがいい。とまあ、この勢いで曲を思い浮かべていくと、全曲に触れなければならない勢いなのだが、実際、捨て曲のない、ロッド・スチュワートの長いキャリアの中でも名盤に含まれる作品だと思う。 ちなみに、日本盤は13曲入り仕様になっているようである(筆者の手持ちは発売当時の輸入盤)。この場合は12.がヒット曲(トム・ウェイツのカヴァー曲)の「ダウンタウン・トレイン」、本来の12.が13曲目になっているようだ。[収録曲]1. Rhythm of My Heart2. Rebel Heart3. Broken Arrow4. It Takes Two5. When a Man's in Love6. You Are Everything7. The Motown Song8. Go Out Dancing9. No Holding Back10. Have I Told You Lately11. Moment of Glory12. If Only1991年リリース。 Rod Stewart ロッドスチュワート / Vagabond Heart 輸入盤 【CD】 【中古】【CD】ロッド・スチュワート/ヴァガボンド・ハート 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2012年06月02日
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70年代ロック&ポップス名曲選~Part 6(その9) ビートルズや元ビートルの楽曲はこのブログでは登場頻度が低いのですが、決して好きではないからというのが理由なわけではありません。いつかビートルズを全アルバム(あるいは全曲?)レビューするという野望を夢想しつつ、特にビートルズの楽曲についてはなかなか取り上げられないでいる次第です。 それはさておき、1970年代にフォーカスしている今回は、ジョン・レノン(John Lennon)のナンバーを1つピックアップしたいと思います。1973年のアルバム『ヌートピア宣言』(旧邦題はこうなっていましたが、原題は『マインド・ゲームス』)の表題曲、「マインド・ゲームス(Mind Games)」です。 “心の遊び(ゲーム)”とは、何ともわかりづらい感じで、これが収められたアルバム自体もジョンの作品の中では落ち着いた、やや地味な盤なのですが、この曲は、「イマジン」でも広く知られる愛と平和に対する姿勢を歌ったものです。後に本人が語っているところでは、元のタイトルは「メイク・ラヴ・ノット・ウォー」だったとのことで、結局それはボツにして詞を書き換えてこの曲になったんだそうです。 最後に、この曲のカバーを1つ、ご覧いただきたいと思います。毎年開催されているジョン・レノンの記念ライヴのうち、2017年のものからの映像です。パティ・スミス(Patti Smith)が歌う「マインド・ゲームス」をどうぞ。 [収録アルバム]John Lennon / Mind Games(ヌートピア宣言)(1973年) 【メール便送料無料】ジョン・レノン / マインド・ゲームス(ヌートピア宣言)[CD][初回出荷限定盤(初回限定盤)] 【輸入盤】Mind Games (Digi)(Rmt) [ John Lennon ] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2019年02月07日
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900万アクセス記念~いま聴きたいあのナンバー(その21) 今回は、エリック・クラプトン(Eric Clapton)によるクリスマス・ナンバーです。クラプトンは、2018年に『ハッピー・クリスマス』というクリスマス盤を発表していますが、その中に収められた「ホワイト・クリスマス(White Christmas)」です。 まずは公式のビデオ映像をご覧ください。 ブルース調のクリスマス・ソングというのは、好みの分かれるところかもしれません。しかしながら、クラプトンのものは嫌味なく、わりと万人受けしそうに仕上がっているというような気がします。ちなみに、このアレンジを手掛けたのは、クラプトンとサイモン・クライミーです。後者は、元クライミー・フィッシャーのメンバーで、こちらのNo. 1ヒット曲の作曲者としても知られるプロデューサーです。 続いては、本人が登場して演奏している映像をご覧ください。こちらはアコースティック・ギターを手にしてのパフォーマンスです。 [収録アルバム]Eric Clapton / Happy Xmas(2018年) ハッピー・クリスマス/エリック・クラプトン[SHM-CD]【返品種別A】 ハッピー・クリスマス [ エリック・クラプトン ] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2023年12月13日
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シカゴの隠れ名曲選(其の2) さて、時代はもう少し進んで、1980年発表のアルバム『シカゴ14』に収録されたナンバーです。このアルバムは、シカゴがコロンビア所属だった時代の最後の作品となりました。今回取り上げるのは、同盤に収められた「ソング・フォー・ユー(Song for You)」というナンバーです。 この盤から2年ほど後、レーベルがワーナーに変わってリリースされた次作からは、「素直になれなくて(ハード・トゥ・セイ・アイム・ソーリー)」という大ヒットが出たわけですが、それに比べると、「ソング・フォー・ユー」の方は、一応シングル化されたようなのですが、特にチャートアクションもなく、一般聴衆にはマイナーな曲にとどまってしまったようです。 ともあれ、その曲をお聴きください。ちなみに、動かない画像として表示されているのは、収録アルバムのジャケットで、指紋がシカゴの文字になっているデザインは、個人的には案外気に入っています。 今回のこの曲もピーター・セテラの楽曲・ヴォーカルですが、彼の声によるシカゴのバラードの魅力が既によく表れている1曲ではないかという気がします。シングルとしてヒットするには、曲の展開が少しあっさりし過ぎていたのかもしれませんが、なかなかの好曲だと個人的には思っています。[収録アルバム]Chicago / Chicago XIV(1980年リリース) シカゴ14/シカゴ[CD]【返品種別A】 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2024年11月20日
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移ろいゆく80年代後半LRB、意外に好盤 1970年代半ばに当時のオーストラリア発のバンドとしては例外的に米国進出を果たし、世界的な成功を収めたリトル・リバー・バンド(Little River Band, 頭文字を略してLRBと呼ばれることもある、参考過去記事)。しかし、1980年代初頭になると“バンドの声”であったオリジナル・メンバーのグレン・シャロックが脱退し、既にオーストラリアの有名歌手であったジョン・ファーナムをヴォーカルに迎えるも、86年にはファーナムが脱退してしまう。こうして、このバンドはオーストラリア国内ですら大きくヒットしない低迷期を経験した。 そんな中、上述のグレン・シャロック(ヴォーカル)、さらには、同じく一時脱退していたデレク・ペリッシ(ドラム)が復帰し、レコード会社を替えてMCAから1988年に発売された『モンスーン(Monsoon)』でバンドはちょっとした復活を果たす。米国ではチャートアクションなしだったものの、豪国内で久々にベスト10に入るヒット(アルバムは9位、シングルカットの3.「ラヴ・イズ・ア・ブリッジ」は全豪6位)となった。 1970年代後半全盛期のオリジナルメンバーのうち、グレアム・ゴーブル(この時点までずっと在籍していた)に加えて、グレン・シャロックとデレク・ペリッシが戻ったことで、かつてのLRBサウンドらしさが一気に戻ってきた作品になったと思う(なお、後々このバンドを存続させていくことになるウェイン・ネルソンもこの時点で在籍中)。もちろん、時代に沿って洗練された部分というのもあるのだけれど、基本は曲とハーモニーで勝負する楽曲が並び、そこにロック調も取り込んだ作品が混じるといった感じと言えそう。 個人的趣向で特におすすめ曲を挙げてみたい。1.「イッツ・コールド・アウト・トゥナイト」や5.「フェイス・イン・ザ・クラウド」(この曲は先に『ノー・レインズ』に収録されていて、筆者はそっちの方がさらに好みだけれど)は、リズムよし、かつメロディよしの筆頭。スロー~ミディアム系のナンバーとしては、LRBの隠れ名曲とも言える3.「ラヴ・イズ・ア・ブリッジ」、さらに本盤収録中ではこれと並ぶ好曲の9.「ソウル・サーチング」が聴き逃せない。 ちなみに邦盤(かつてよくあったCDとカセットのみ追加曲というパターン)には、1978年の大ヒット曲「追憶の甘い日々(Reminiscing)」のライヴ・ヴァージョンが収録されている。これはこの年のブリスベン万博でのライヴ演奏で、これがなかなかいい。LRBが好きな向きは必聴といいたくなるほどよくできたテイクで、個人的には強く推したい。[収録曲]1. It's Cold Out Tonight2. Parallel Lines3. Love is a Bridge 4. Rhythm King5. Face in the Crowd6. Cruel Madness7. Inside Story8. Son of a Famous Man9. Soul Searching10. Great Unknown11. Shadow in the Rain12. Reminiscing(追憶の甘い日々) *日本盤ボーナストラック1988年リリース。↓レア盤になってしまっているのか…?(と思いきや、状態を問わなければアマゾンで数百円で買えるみたいですね。)↓ 【中古】モンスーン/リトル・リバー・バンドCDアルバム/洋楽下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2014年09月04日
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60年代末、ヨーロッパでの“一期一会” スライド・ハンプトン(Slide Hampton,本名ロクスレイ・ウェリントン・ハンプトン)は、1932年ペンシルヴァニア生まれのトロンボーン奏者。音楽一家に育ち、幼い頃に家族とともにインディアナに移住した。そこで1950年代には、ライオネル・ハンプトン、バディ・ジョンソン、メイナード・ファーガソンのバンドで演奏した。その後、1960年代にはブッカー・リトルやフレディ・ハバートらとオクテットを形成したほか、多くの有名ジャズ奏者と共演している。 そんな彼は、1968年にウディ・ハーマンのバンドの一員として渡欧したが、そのままヨーロッパに10年ほど住み着くことになった。当時のアメリカにはもうジャズを真っ当に演奏できる場がない、という限界を感じてのヨーロッパ移住だったと言われる。その翌年初頭に録音されたのが本盤『ザ・ファビュラス・スライド・ハンプトン・カルテット(The Fabulous Slide Hampton Quartet)』ということになる。 スライド・ハンプトン自身の技巧も凄いのだが、何より4人の演奏者の顔ぶれが凄い。当時ロンドンにいたフィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)がパリに来て参加している。残る2人はヨーロッパ出身者である。ヨアヒム・キューンは東ドイツ出身で西ドイツに亡命したピアノ奏者、ニールス・ペデルセンはデンマーク出身のベース奏者で、それぞれ当時25歳と23歳と若い(録音時の年齢は、フィリー・ジョーが46歳、スライド・ハンプトンが37歳)。この4人の不思議な取り合わせが生んだのは、何とも強烈な音の塊と激しさに溢れた演奏であった。 冒頭の1.「イン・ケース・オブ・エマージェンシー」は、曲名(“非常事態”)そのままに突っ走るタイプの演奏で、スピード感のあるトロンボーンも凄いのだけれど、それを支えるリズムセクション(特にベースがいい)の精度の高さが目立つ。以降も勢いと迫力に飛んだ演奏が続くが、若干落ち着いた雰囲気を垣間見せるのが4.「ラメント」で、このナンバーのみスライド・ハンプトンの自作ではなく、J・J・ジョンソン曲。5.「インポッシブル・ワルツ」も曲名(“あり得ないワルツ”)そのままに、激しい演奏(特にヨアキム・キューンのピアノが絶好調)を繰り広げている。ハイテンションで激しい演奏が展開される中で、個々の演奏がばらばらにならず統一感が保たれたのは見事。その理由は何だったのかを考えてみると、最後はスライド・ハンプトンの冷静さ(それは本盤の随所で演奏に現れている)にあったんじゃないかと思う。[収録曲]1. In Case Of Emergency 2. Last Minute Blues 3. Chop Suey4. Lament 5. Impossible Waltz [パーソネル、録音]Slide Hampton (tb)Joachim Kuhn (p)Neils Henning Orsted Pedersen (b)Philly Joe Jones (ds)1969年1月6日録音。 [枚数限定][限定盤]ザ・ファビュラス・スライド・ハンプトン・カルテット/スライド・ハンプトン[SHM-CD]【返品種別A】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2016年09月05日
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12月の詩(うた) ~その1~ 12月と言えば、ジョン・レノンの命日。それに続き、クリスマスソングが続々と流れる…。今年の12月もあと数日となったところで、そんな一般的な12月イメージとは一味違った曲を2つばかり紹介したい。1曲目は、SION(シオン)の「12月」。1987年初頭に発表のセカンド・アルバム『春夏秋冬』に収録され、同年末の初のベスト盤(『SION '85>'87』)にもライヴ・ヴァージョンが収録されている。 SIONは、1960年、山口生まれのシンガーソングライター。19歳で上京し、25歳を迎える月に出した自主制作盤を足がかりとして、翌1986年にメジャー・デビューを果たした苦労人である。ハスキーな声と語りかけるような歌い方が特徴で、福山雅治をはじめ芸能界にもフォロアーが多い(福山はこの曲を弾き語りでカバーしている)。現在は俳優業などもこなし、音楽についてはレーベルを替えながらも精力的に活動を続けている。 現在のSIONはブログなども書いていて、猫好きで柔和な側面を見せている。けれども、デビュー当時の20才代のSIONは、メタル系かパンク系かのような衣装で、眉毛がなく、目はギラギラした凄みに満ちていた。髪が半分モヒカンなんてのもあった。とにかく、いかつくて近づきがたい風貌をしていた。 そんなデビュー当時から、SIONのシンガーソングライターとしての"詞"に筆者は惹かれていた。今回の「12月」という曲もそうだ。年末の浮かれた街の雰囲気には不釣合いな演奏をバックに、「ふたりに疲れてはひとりに戻り/まただれか恋しくてまた繰り返す」という、クリスマス・シーズンの裏側を鋭く突いた歌い出し。かと思うと、「屋根の上の猫がそんな俺を見て/めずらしいものでも見るよな顔して笑った」というシュールな展開(今となってはSIONが猫好き・動物好きだったということで納得できるのだが)。 何よりも強く印象に残っているのは、「12月/街はクリスマス気分」と歌った直後に、「あちこちから思い出したようにジョンの声」というくだり。ジョンとは、もちろん1980年12月8日に亡くなったジョン・レノンのことで、このシーズンになると思い出したようにジョン・レノンの曲ばかりかけるラジオ局やその他メディアをちくりと刺しているようなフレーズだ。けれど、その次の詞では個人的な感情を覗かせる。「そして俺ときたらいつもこのごろになると/なにかやり残したようなやわらかな後悔をする」。 この時期、たいてい筆者がやり残しているのは、大掃除(笑)だったりするのだが、クリスマス気分に浮かれる人々の陰の部分を語るように歌い、1年を振り返ることの大事さをさりげなく教えてくれる――筆者にとってはそんな1曲である。[収録アルバム]SION 『春夏秋冬』 (1987年)SION 『10 cd best』 (1994年)、 『俺の声』 (2001年) ←いずれもベスト盤SION 『SION '85>'87』 (1987年) ←「12月」のライヴ・ヴァージョン(86年6月)所収関連記事へのリンク:12月の詩(うた) ~その2~ へ ↓ ランキングサイトへのリンクです。↓ ↓ 気に入ったらぜひクリックで応援お願いします! ↓
2009年12月29日
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CCRの短編芸術性(その2) CCR(クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル、Creedence Clearwater Revival)の名曲シリーズ、第2回目です。 日本語では「ローディ」で定着してしまっていますが、正しくは「ローダイ(Lodi)」と読みます。そして、そのローダイというのは、米国カリフォルニア州、サンフランシスコの東方百数十キロにある町の名前なのです。ジョン・フォガティ自身は訪れたことはなく、この町の名の響きがカッコよかったから曲になったのだとか。まあ、サンフランシスコ出身のバンド(南部っぽいサウンドですが、念のため、カリフォルニア出身のバンドです)ということを考えれば、地元に近い町の名前に着想を得たというのもなるほどといったところでしょうか。 もう一つの動画ですが、今回はジョン・フォガティによるアコースティック・ヴァージョンをお聴きください。ギター1本になっても、アコースティックになっても、やっぱりこのロックンロール魂は一緒というのが何ともいいですね。 CCRの3分名曲選、まだしばらく続けます。ぜひお付き合いください。[収録アルバム]Creedence Clearwater Revival / Green River(1969年) ポイント5倍(2/17 10:00-2/20 9:59)【メール便送料無料】Creedence Clearwater Revival / Green River (w/Bonus Tracks) (輸入盤CD)(クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル) 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2017年02月20日
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200万アクセス記念 いま聴きたいあのナンバー~拡大版(8/30) 前回に引き続き、メキシカン・ポップスのナンバーです。グロリア・トレビと同様、20数年前の女性ポップ・シンガーの、個人的には妙に印象に残っているこの1曲です。 ダニエラ・ロモ(Daniela Romo,本名テレサ・プレスマネス・コローナTeresa Presmanes Corona)は1959年メキシコシティ生まれの女性シンガー。11歳からコーラス・グループに属し、1979年には、結果として売れなかったものの、CBSからデビューしました。1985年にはメキシコ代表として日本でのポップ音楽のコンテストに参加し、決勝まで進んだとのことです。 そんな彼女の音楽を筆者が聴いたのは1990年代に入ってからのことでした。その時以来、第一印象としてずっと頭に残っている曲が、この「キエロ・アマネセール・コン・アルギエン(Quiero amanecer con alguien)」です。 続いて、往時のTVショウと思しきライヴでの歌唱もどうぞ。 何だかいかにもラテンな情感いっぱい、ジェスチャーたっぷりの歌唱ですが、そういう大げさな部分も含め、ラテン系の人たちのハートを以下にも掴みそうな感じといったところでしょうか。[収録アルバム]Daniela Romo / Quiero amanecer con alguien(1989年) ↓こちらの編集盤にも収録されているようです↓ 【メール便送料無料】Daniela Romo / Romances (輸入盤CD) 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2017年10月31日
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900万アクセス記念~いま聴きたいあのナンバー(その26) さて、再び趣向を変えて、あらためて本邦のクリスマス・ソングです。谷村新司が1991年に発表したアルバムに収録されていたナンバーで、「Christmas Kiss」をお聴きください。 周知の通り、今年(2023年)10月に谷村新司は74歳で亡くなられました。若い頃は堀内孝雄とともにアリスとして人気を得て(解散はせず、後に活動も再開)、1980年代以降はソロとしても活躍し、さらには様々なコラボ企画などにも携わりました。 そのようなわけで、アリスの代表曲の一つでもある「チャンピオン」、ソロの代表曲で、紅白歌合戦で5回も歌われた「昴」、さらには、24時間テレビのテーマ曲として作られ、加山雄三とコラボした「サライ」の3つを続けてお聴きください。 クリスマスシーズンということで、「Christmas Kiss」を思い出すと同時に、あらためて谷村新司のご冥福をお祈りいたします。[収録アルバム]谷村新司 / 『君を忘れない』(1991年)←Christmas Kiss収録。 【中古】 君を忘れない/谷村新司 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2023年12月18日
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900万アクセス記念~いま聴きたいあのナンバー(その27) 今回も日本の楽曲を取り上げたいと思います。浜田省吾は1970年代から活躍しているシンガーソングライターで、ライヴ活動やCD制作に力を入れ、テレビなどにはほとんど出てこないアーティストとしても知られています。 「MIDNIGHT FLIGHT-ひとりぼっちのクリスマス・イブ」という今回の曲は、1985年に発表されたミニアルバム(『CLUB SNOWBOUND』という、表題からもわかるように、ウィンター・シーズン向けの企画でした)に収録されていました。 さらにその数年後、セルフカバー作(1989年の『Wasted Tears』)が発表された際、この曲も収められました。ヴァージョン違いの「MIDNIGHT FLIGHT-ひとりぼっちのクリスマス・イブ」もお聴きください。 悲しげなナンバーではあるものの、筆者的にはクリスマスシーズンを思い起こす曲の一つだったりします。最後に、これまた本人の姿は登場しないのですが、ライヴ音源のものもお聴きいただこうと思います。 [収録アルバム]浜田省吾 / 『CLUB SNOWBOUND』(1985年)浜田省吾 / 『Wasted Tears』(1989年) WASTED TEARS [ 浜田省吾 ] CLUB SURF & SNOWBOUND [ 浜田省吾 ] 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”お願いします! ↓ ↓
2023年12月20日
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安らぎでも緊張でもなく、その中間の微妙なバランス ジョン・コルトレーンのアルバムでよく聴かれているものの一つは『バラード』だと言われる。これに対し、"第二の『バラード』"と称されるのが、『クレッセント』である。『バラード』が録音されたのは、概ね1962年(ただし、前年の録音曲も含む)。本作『クレッセント』の方は1964年だ。つまり2年ほどしか間は空いていないのだが、本盤のすぐ後、コルトレーンは『至上の愛』を吹き込み、フリー・ジャズへと突入していく。言い換えれば、コルトレーンがさらなる変容を遂げていく時期のアルバムであり、数年前の『バラード』を再現するようなアルバムではなかった。 確かに『クレッセント』は、『バラード』と同様、ミディアム・スロー系の曲を中心に構成され、同じメンバー(「クラシック・カルテット」と呼ばれる、下記のパーソネルを参照)で演奏されている。だが、本質的にこれら2枚は大きく違う。『バラード』はコルトレーンのアルバムのうち最初に聴かれる可能性が高く、確かに親しみやすい。これに対し、『クレッセント』は、"最初に聴いてはいけない"盤の代表格と言っていいように思う。 1.の表題曲「クレッセント」は、出だしだけ聴くと、"コルトレーンの落ち着いてリリカルな演奏もいいなあ"とか、"なかなか聴きやすい盤かな"などと思ってしまう。しかし時が流れ曲が進んでいくにつれて、その雰囲気が怪しくなってくる。だんだんとコルトレーン節が随所で姿を見せ始める。しかし、そのコルトレーンらしい部分というのは、少なくとも本盤においては"緊張感たっぷりにひた走る"というものではない。どこかに緊張感と全面的安らぎの中間とでも言えばいいような雰囲気が漂っている。そして、曲の最後になると、"やっぱりバラードだったんだ"と我に返らされる。2.「ワイズ・ワン」も静かなバラードで上記のリリカルさがよく現れていながらも、途中から盛り上がり始める。4.「ロニーズ・ラメント」はもう少しまったりとした感じでかつ幻想的に幕を開け、途中、ピアノ(マッコイ・タイナー)がいい味を出しながら盛り上げていく。 ちなみに、3.「ベッシーズ・ブルース」と5.「ドラム・シング」は、バラード集というイメージからは少し離れた曲と言っていいかもしれない。前者は典型的ブルース、後者はタイトルそのままにドラム(エルヴィン・ジョーンズ)が大きくフィーチャーされた演奏である。 ともあれ、いずれの曲の演奏も、実際に聴いてみると、リラックス感や安らぎといったキーワードだけでは説明できないものだいうのがわかるだとう。それゆえ、"安らぎ"(それはある意味で"聴きやすさ"にもつながると思う)を求めて本盤を手にするとしたら、おそらくその期待は聴き始めて数分で裏切られることだろう。逆に、疾走する、前進あるのみのコルトレーンを本作に期待してもいけないわけだが、それを求める人は、そもそも本盤を聴こうとしないはずなので、こちらの心配はなさそうだろう。 ということは、安らぎを求める人がうっかりこれを最初に聴いてしまわない方がいい、という点を強調しておかねばならない。その意味で、上に述べたように、『クレッセント』は"最初に聴いてはいけない盤"なのだと思う。コルトレーンの演奏に耳がいくらか慣れたあたりで聴いてみると、好き嫌いがはっきりするタイプのアルバムであり、最初に聴くと、上記のようにがっかりさせられる公算が強い。 そんなことを言いながらも、『クレッセント』が駄作と言っているわけではない。いや、それどころか筆者はこれが実に気に入っている。『バラード』と『クレッセント』を比べるならば、『クレッセント』の方が好きだ。ただ単に"美しい"とか"リリカル"なだけではない演奏、バラードを"歌い"ながらも、コルトレーン節が出たり入ったりするこの中間的な感覚。そこに本盤の魅力があると思う。カルテットの息の合い方が見事な上、安らぎでも緊張でもない"中間的感覚"がやみつきになる。筆者にとっては、そんな1枚である。[収録曲]1. Crescent2. Wise One3. Bessie's Blues4. Lonnie's Lament5.The Drum ThingJohn Coltrane (ts, ss)McCoy Tyner (p)Jimmy Garrison (b)Elvin Jones (ds)録音: 1964年4月27日(3.~5.)、6月1日(1., 2.) クレッセント/ジョン・コルトレーン[SHM-CD]【返品種別A】
2009年12月07日
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プレスティッジ期の最後を飾るワンホーン盤 ベスト編集ものを別にすれば、ソニー・クリス(Sonny Criss)の1960年代のプレスティッジ所属期の最後を飾ることになったのが、1969年に録音およびリリースされた『アイル・キャッチ・ザ・サン(I’ll Catch the Sun)』という盤である。彼のスタイルは、基本的には変に時代に流されないハード・バップで、彼ならではの泣きのアルトが特徴である。本盤はそうした傾向を如実に示している作品だと言える。 注目したいのは、リズム・セクションの面子である。とりわけ、ピアノのハンプトン・ホーズとドラムのシェリー・マンの存在感が大きい。前者は、軽快に聴き手を楽しませるピアノが身上で、その特徴は本盤でもしっかり発揮されている。後者は西海岸(ウェスト・コースト)ジャズの代名詞的ドラマーだが、軽快で確かなドラミングがこれまたしっかりと発揮されている。そして、その上を踊るのがソニー・クリスのサクソフォンというわけである。 全編通じて35分程度なので、通して聴いても決して長い時間ではない。その中から、注目したい曲をいくつか挙げておきたい。1.「ドント・レイン・オン・マイ・パレード」は、安定したリズム隊の上でキャッチーなリフをソニー・クリスが奏でるという、ある種わかりやすい展開。これと似たタイプの演奏としては、4.「カリフォルニア・スクリーミン」も収められていて、本盤の主たるイメージを表す部分だと言えると思う。それと同時に、ソニー・クリスがクラシックにかつ朗々と吹くというタイプの演奏も耳につく。その代表例としては、表題曲の6.「アイル・キャッチ・ザ・サン」が挙げられる。 正直なところ、“革新”を求める人たちからすれば、この演奏は、必ずしも魅力的な音楽には見えないかもしれない。けれども、筆者としては、このソニー・クリスのサックスの音そのものが中毒的であるのとともに、敢えて自身のスタイルを無理してまで時代に合わせる必要を感じていない頑なさにも妙に共感してしまったりするのである。[収録曲]1. Don't Rain on My Parade2. Blue Sunset3. I Thought About You4. California Screamin'5. Cry Me a River6. I'll Catch the Sun[パーソネル、録音]Sonny Criss (as), Hampton Hawes (p), Monty Budwig (b), Shelly Manne (ds)1969年1月20日録音。 【輸入盤CD】Sonny Criss / I'll Catch The Sun 【中古】 BEST VALUE 1500::アイル・キャッチ・ザ・サン! /ソニー・クリス(as),ハンプトン・ホーズ(p),モンティ・バドウィッグ(b),シェリー 【中古】afb 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーをクリックして応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2022年06月17日
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オリビア・ニュートン=ジョン追悼 オリビア・ニュートン=ジョン(Olivia Newton-John)がカリフォルニア州の自宅で亡くなったと報じられました。享年73歳で、長らくの闘病の末、(2022年)8月8日に癌で亡くなったとのことです。1970年代に多くの若者を虜にした“妖精”を偲んで、いくつかの楽曲を振り返ってみたいと思います。 まずは、代表曲の一つで、今回の逝去の報でも繰り返し流されている「そよ風の誘惑(Have You Never Been Mellow)」です。1975年に発売され、全米1位の記録を始め、世界中でヒットしました。往時の映像と後世の歌唱の様子の両方を見比べてご覧ください。 オリビアのヒット曲はいくつもありすぎて、何曲か挙げるだけでも賛否両論になってしまいそうなのですが、個人的にはこれはぜひということで、1980年の「ザナドゥ(Xanadu)」です。ELO(エレクトリック・ライト・オーケストラ)との共演ナンバーで、同名映画のサントラに収録された曲です。 代表曲を思い起こしていくだけでも、「愛の告白」も、「愛のデュエット」も、「フィジカル」(こちらは過去記事あり)もとなるのですが、ここでは、別のナンバーをもう一つ。 オリビアは、やがて環境保護活動や癌の啓発活動も展開していくことになりました。そうした社会活動へと向かい始めた頃のアルバムに、『美しい星と子供たちに〜ウォーム・アンド・テンダー』という、娘の誕生を契機として生まれたアルバムがあります。1980年代初頭までのヒット志向とは違う彼女の姿がそこにはあり、筆者のお気に入りです。そんなわけで、同盤に収められた「虹のかなたに(Over the Rainbow)」をお聴きください。 オリビア・ニュートン=ジョンのご冥福を心からお祈りします。R.I.P. そよ風の誘惑 [ オリビア・ニュートン・ジョン ] 【輸入盤CD】Olivia Newton-John / Icon (オリヴィア・ニュートンジョン) 【中古】 ウォーム・アンド・テンダー(美しい星と子供達に)/オリヴィア・ニュートン=ジョン 【中古】afb 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーをクリックして応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2022年08月09日
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900万アクセス記念~いま聴きたいあのナンバー(その22) 前回に続き、今回も「ホワイト・クリスマス」です。スペイン語で歌われていますので、表題は「ブランカ・ナビダー(Blanca Navidad)」(文字通り“白いクリスマス”の意味)です。 歌っているのは、ダニエラ・ロモ(Daniela Romo)という女優、女性シンガー。彼女は、1970年代末から様々なドラマに出演し、1980年代以降は歌手としてアルバムも多くリリースしています。 この曲は言わずと知れたクリスマスの定番曲で、アーヴィング・バーリンが作曲し、1940年代にビング・クロスビーが歌ったものです。このダニエラ・ロモによるカバーは、1980年代に発表されてから、メキシコではクリスマス・シーズンによく聴かれる定番のカバー・バージョンとなっています。 さて、ライヴの映像はないかと探してみたのですが、どうも見当たりません。そんなわけで、苦し紛れではあるのですが、最近(といっても数年前なのですが)のダニエラ・ロモの姿と肉声を映像で見ておく、ということにしたいと思います。2021年、まだコロナ禍が続いていた時のダニエラ・ロモからのクリスマス・メッセージです。 [収録アルバム]V. A. / Eterna Navidad(1986年) ↓ベスト盤(この曲は含まず)です。↓ 【中古】 Serie De Oro: Grandes Exitos Daniela Romo / Daniela Romo / EMI Argentina [CD]【メール便送料無料】【あす楽対応】 ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2023年12月14日
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ポップ・クリエイターとしてのトッド・ラングレンの本領発揮盤 トッド・ラングレン(Todd Rundgren)が『サムシング/エニシング?』(1972年)以来の一人マルチレコーディングに臨み、1978年に発表したのがこの『ミンク・ホロウの世捨て人(Hermit of Mink Hollow)』である。トッド・ラングレンという人は作品ごとに(さらには同一アルバム内でも曲ごとに)結構作風が変わったりする。そのせいなのかもしれないが、日本では一定のイメージで超有名になることもなく、結果的には正当に評価されていない感じがする。あるいは、本人のキャラにマニアックな部分が強いから一般受けしないのだろうかとも思ったりする。けれども、メロディメイカーとしても、演奏者としても、歌い手としても、プロデューサーとしても、本当にマルチな才能を備えたミュージシャンなのだ。 決して悪い意味で言うのではないが、この人は本当にマニアックである。ソロとしてメジャーになる以前にはジャニス・ジョップリンのプロデューサーに抜擢されたこともあるが、ジャニスと折り合いがつかず降板したという拘りを感じさせるエピソードもある。また、本盤がそうであるように、一人でマルチレコーディングという作業を根気強くこなして名作を作り上げる。70年代に自宅に専用スタジオを作っているほか、80年代にはMIDIを駆使してワンマン・コンサートも行っている。作品のところどころには60年代ポップ・ミュージックへの偏愛が見られ、さらに私生活では古くからのマッキントッシュ・マニアであるらしい。こんな事実関係いくつかを通観しただけでもトッドのマニアぶりが感じ取られるだろう。“職人”というよりも“マニア”。繰り返し言うが、マニアが悪いと言っているのではない。それどころか、こうしたマニアックさが本盤のような秀作を生み出す原動力そのものではないかと思う。 おまけに本作に関しては、ジャケットが“怖い”。面長で長髪の男(もちろんトッド自身)が暗~い写真の中でまっすぐにこちらを見つめている。ふつうのリスナーなら、この写真から美しくかつ創造的な音楽(とりわけ2.「キャン・ウィー・スティル・ビー・フレンズ(友達でいさせて)」のごときナンバー)が流れてくるとは思わないだろう。おまけにアルバム表題が“世捨て人”ときたものだ。原語ではHermit(隠遁者)であり、一人でこつこつ録音・編集作業している姿を想像しやすいタイトルとは思うが、直截的なイメージが抱きにくいのも事実だ。 アナログ盤ではA面(1.~6.)が“イージー・サイド(The Easy Side)”、B面(7.~12.)が“ディフィカルト・サイド(The Difficult Side)”と命名されていた。けれども、今になってCDで通して聴くと、なぜか全編通して違和感なく続いているように思うのだが、どこが“簡単(イージー)”で、どこが“難しい(ディフィカルト)”だったのだろうか。全編一人で作曲から編曲・演奏・多重録音の編集までしただけあって、確かにどの曲も凝っていて、その意味では“ディフィカルト”たり得る。5.「擬声(Onomatopoeia)」などはその最たるもので、“これがなぜイージー・サイドに入っているのか?”と普通なら疑問を持つ。逆に、8.「バッグ・レディ」みたいな美しい曲が“ディフィカルト”側に収録というのも自然な疑問だろう。 以下は聴き手側の勝手な想像である。もしかして、この“イージー”と“ディフィカルト”という区分は、トッド自身にとっての区分だったのではなかったろうか。もしそうだとすれば、たとえ凝った複雑なことをやっていても、作者にとっては“イージー”だった曲もあり得る。また、出来上がった結果だけを聴いて“ディフィカルト”との印象はなくとも、実は作者にとっては“ディフィカルト”だった曲も逆にあり得ただろう。そう考えると、1.や2.に典型的に表れているように、前半(アナログA面)の曲は流れるように進んでいるのも納得できるし、後半(同B面)では曲調の波幅が大きいのも頷ける。つまるところ、作者トッドから見た“安産”がイージー、“難産”がディフィカルトだったのではないだろうか。筆者のこの想像が当たっているとするならば、やっぱりトッドはどこまでもマニアックな人物だということか…。[収録曲]1. All the Children Sing2. Can We Still Be Friends3. Hurting for You4. Too Far Gone5. Onomatopoeia6. Determination7. Bread8. Bag Lady9. You Cried Wolf10. Lucky Guy11. Out of Control12. Fade Away1978年リリース。 【送料無料選択可!】ミンク・ホロウの世捨て人 [初回生産限定盤] / トッド・ラングレン 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年07月05日
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40万アクセス記念、いま聴きたいジャズ・ナンバー(其の8)~ルー・ドナルドソン編 この晩秋にぴったりの1曲をいってみたいと思います。タイトルもずばり「秋の夜想曲」、つまり「オータム・ノクターン(Autumn Nocturne)」です。 この演奏を思い出したのは、先日、カサンドラ・ウィルソンの昔の盤(彼女の最初のスタンダード集『ブルー・スカイ(Blue Skies)』、1988年)を聴いていた時です。カサンドラによるこの曲が出てきたら、今度はルー・ドナルドソン(Lou Donaldson)のサックス演奏によるこれを思い出し、無性に聴きたくなったというものです。 この演奏は、ルー・ドナルドソンの代表作の一つ『ブルース・ウォーク』に収録されていて、ピアノのハーマン・フォスター(Herman Foster)がなかなかいい味を出しています。この二人のコンビは、こういうしっとりなはずの曲をやっても、どこかべったり(失礼!、でも、もちろんいい意味で)というか、粘っこさみたいなのが顔を出すように思います。何だか回りくどい言い方になってしまいますが、さらりと仕上がっていないところに逆に魅力がある、といった感じでしょうか。 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2013年11月17日
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個性派ピアニストと美しき名曲 エロール・ガーナー(エロル・ガーナ―とも、Erroll Garner)は、1921年ピッツバーグ出身のジャズ・ピアノ奏者および作曲家で、1977年に死去している。後に再評価されたとはいえ、現在もジャズ・ピアノの世界では決して有名どころという感じではなく、中途半端に評価されているミュージシャンの一人と言えそうだ。彼の代表作としては、『コンサート・バイ・ザ・シー』(1955年)が圧倒的に有名だが、2枚目・3枚目を考えた時に外せない盤となるのが、その前年に録音されたこの『ミスティ(Plays Misty)』という盤である。 一番の聴きどころととなるのが表題曲の1.「ミスティ」。ジャズ・スタンダードとして知られるナンバーだが、ガーナーの作曲後ほどなくして詞が付けられ、ジョニー・マティスがポップ・ソングとして1959年にヒットさせた。このシンガーの他にも、エラ・フィッツジェラルドやサラ・ヴォーンもこれを歌い、さらに1975年にはレイ・スティーヴンスがカントリーのカバーをしている。この曲の誕生秘話なるものがよく語られるが、それによると、飛行機移動中のガーナーはこの曲を思いついた。ところが楽譜の読み書きが苦手なガーナーはその場でこの曲を書き留めることができず、飛行機を降りてから慌ててテープレコーダーに録音し、無事にこのメロディが留められたと言う。ともあれ、これを聴くだけでも、とりあえず本盤の価値はある。 その一方、その他のいくつかの曲の演奏からは“ガーナー節”が存分に感じられる。よく言われるように“ビハインド・ザ・ビート”の呼び名で知られる独特の左手の演奏である。聴き手によって好き嫌いが生じるのは承知の上で述べるけれど、“右手と左手は別々に動く”という、考えてみれば当たり前の行為が実にヴィヴィッドに伝わってくる。3.「ユー・アー・マイ・サンシャイン」の躍動感は特筆ものだと思う。ちなみに8.「ラヴ・イン・ルーム」や10.「ザット・オールド・フィーリング」も同じような感覚に襲われる。 繰り返すけれども、この“ずれた左手の感覚”は人それぞれで好みがあると思う。けれども、右手と左手が有機的に組み合わさっていくのを感じ取るという意味では実に興味深く、かつ思わず惹き込まれてしまう演奏だというのが個人的な感想である。この不思議な世界、好き嫌いはともかくも、ぜひ一度は体感してみるのがいいと思うのだけれどもいかがだろうか。[収録曲]1. Misty2. Exactly Like You3. You Are My Sunshine4. What Is This Thing Called Love5. Frantonality6. Again7. Where Or When8. Love In Bloom9. Through A Long And Sleepless Night10. That Old Feeling[パーソネル・録音]Erroll Garner (p)Wyatt Ruther (b)Eugene “Fats” Smith (ds)1954年録音。 ユニバーサルミュージック エロール・ガーナー(p)/ミスティ 生産限定盤 【CD】 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、“ぽち”応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2016年11月21日
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400万アクセス記念~いま聴きたいあの曲(その6) 台風一過ではあるものの、多くの被害があったようで、日本各地の被災された方々にお見舞い申し上げます。 さて、いま聴きたい曲の6曲目は、台風とは関係なく、1~2週間ほど前から思い出していたこのナンバーです。1970年代半ば、映画「香港から来た男」(オーストラリア・香港の合作で、原題はThe Man from Hong Kongですが、米国ではDragon Fliesの表題だったそうです)のテーマとしてヒットし、ビルボード3位となったのがジグソー(Jigsaw)による「スカイ・ハイ(Sky High)」という曲でした。 このジグソーというのは、1966年にイギリスで結成されたソフトロック系のバンドで、目立ったヒットはこの1曲だけでした。1975年にこの曲がヒットした後、1981年に解散しています。ちなみに、上記の映画の頃、オーストラリアにはジグソーという別のバンドが存在したため、現地では“ブリティッシュ・ジグソー”と呼ばれていたとのことです。ともあれ、曲をお聴きください。 この曲は、とても印象に残りやすいドラマチックなイントロのせいもあってか、いろんなところで使用されました。CMやら野球選手の登場曲などといった具合です。とはいえ、頻繁に来日していたメキシコの覆面プロレスラー、ミル・マスカラスの入場曲に他ならないという昭和世代の方も多いのではないでしょうか。そんなわけで、“仮面貴族”の雄姿とともにこの曲をお聴きください。 余談ながら、今年になってからメキシコの新聞記事に出ていたのですが、ミル・マスカラスは健在で、77歳となっても引退の予定はないのだそうです。[収録アルバム]Jigsaw / Sky High(1975年) スカイ・ハイ+アンリリースド・トラックス +8 [ ジグソー ] 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーをクリックして応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2019年10月13日
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It’s Christmas Time 2019(その5) 前回のラウラ・パウジーニの「ホワイト・クリスマス」に続き、イタリア人が歌うクリスマス・ソングが連続することになってしまいますが、第5回は、盲目の大物テナー歌手、アンドレア・ボチェッリ(Andrea Bocelli)が歌う有名クリスマス曲です。 トリノ五輪の閉会式でも登場したイタリアを代表する歌手の彼は、様々なクリスマス・ソングを歌っていて、2009年にはクリスマス曲集を発表しています。今回は、その中にも収録されている「もみの木(O Tannenbaum)」を、ライヴで披露しているシーンをどうぞ。 ご存知の方も多いでしょうが、この曲はドイツの有名なクリスマス曲で、英語では「オー・タンネンバウム」ではなく「オー・クリスマス・ツリー」の表題になっていたりします。今回のものは、ドイツ由来ということで、歌詞の一部もボチェッリはドイツ語で歌っています。 今年のクリスマス曲集、目標の5回目まで達することができました。明日はイブ、明後日はクリスマスです。どうぞ楽しいクリスマスをお過ごしください。[収録アルバム]Andrea Bocelli / My Christmas(2009年) 【輸入盤CD】【ネコポス送料無料】Andrea Bocelli / My Christmas (アンドレア・ボチェッリ)【お部屋で】 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年12月23日
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1980年代にクラプトンが積み重ねたもの 一人のアーティスト(あるいは一組のバンド)の“最盛期”や“ベストな時期”というのは、その活動期間が長ければ長いほど多様な見解が出てきて厄介な問題になる。音楽が市場に放たれたとたん、その解釈は聴き手に委ねられる。また、その“聴き手”というのも、世代や個々の音楽遍歴によって、どの時期にそのアーティストの作品を集中的に聴くのかが変わってくる。そんなことを考えるにつけ、エリック・クラプトン(Eric Clapton)は、様々な評価がなされるアーティストの典型かもしれないと思ったりする。“神童”や“スローハンド”といった文言に象徴されるコアでシリアスなギタリストとしての側面を見る人からすると、“シンガー”と化したクラプトンは酷評の対象となり得る。しかし、どちらかというと“歌もの”的な彼の楽曲に先に慣れ親しんだ人からすると、ヤードバーズやクリームでの演奏を耳にすると“へえ~、昔はこんなのだったんだ”と思うかもしれない。 そんな風に少し客観視することを念頭に置きつつ、1989年発表の『ジャーニーマン(Journeyman)』を見直してみたい。1970年代に“レイドバック”してヴォーカルを聴かせるようになり、おそらくは自らを“商品化”することに目覚め(この点は筆者の偏見も入っているかもしれない)、1980年代以降はとくに“歌もの”でヒット曲も残すようになっていった…。そのような時の流れの中で、1980年代のクラプトンはとりわけポップな方向へ進んだ時期だったように思われる。『ビハインド・ザ・サン』(1985年)、『オーガスト』(1986年)でフィル・コリンズをプロデューサーに迎え、音楽的にはポップな方向に傾いた。この『ジャーニーマン』では、プロデュースはラス・タイトルマンを起用しているが、フィル・コリンズもミュージシャンとしては参加している。 注目したい曲を独断と偏見でピックアップしてみると、1.「プリテンディング」、4.「ラニング・オン・フェイス」、6.「ハウンド・ドッグ」、7.「ノー・アリバイ」、9.「オールド・ラヴ」、12.「ビフォー・ユー・アキューズ・ミー」といったところだろうか。いずれも、良くも悪くも“スマート”に仕上がっていると思う。言い換えると、泥臭かったりマニアックだったりしないのである。ギターを聴かせる場面(かつてのブラッキーの音ではないけれど)はあるし、ブルースをちゃんと入れていたりもするのだけれど、トータルでは万人受けしそうな演奏にサウンドとなっている。そして、何よりも歌メインなつくりがはっきりしている。 とまあ、このように、1980年代に進んだ“クラプトンのポップ化”が結実したのがこの作品と言っていいのかもしれない。そして、このアルバムの発表時点で、クラプトンは44歳。もはや若者ではなく、年齢相応の円熟味が出てきている。そのようなわけで、結局のところ、この時期に彼自身が目指していた方向性がきちんと作品として打ち出されていて、その意味では成功した作品と言うべきなのだろう。そして、本作の頃と“昔の”クラプトンの作品群と比べての評価というのは難しく、結局は聴き手それぞれの好みでどっちがいいかという話にしかならないのかもしれない。[収録曲]1. Pretending2. Anything for Your Love3. Bad Love4. Running on Faith5. Hard Times6. Hound Dog7. No Alibis8. Run So Far9. Old Love10. Breaking Point11. Lead Me on12. Before You Accuse Me1989年リリース。 【輸入盤CD】【ネコポス100円】Eric Clapton / Journeyman (エリック・クラプトン) 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2020年06月22日
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500万アクセス記念~いま聴きたい曲(その24) 引き続きジャズの分野から、今回は帝王マイルス・デイヴィス(Miles Davis)の演奏です。1980年代のものですが、曲自体はジャズ・スタンダードやジャズ・ミュージシャンによるものではなく、その当時のシンディ・ローパーによるヒット曲です。 まずは、マイルスのアルバム『ユア・アンダー・アレスト』に収録されている「タイム・アフター・タイム(Time After Time)」をお聴きください。 続いては、ライヴ演奏のビデオです。1985年、モントリオールでのライヴ演奏の模様で8分の長尺です。幻想的な雰囲気を醸し出す演奏で、ジョン・スコフィールドのギターもいいです。 1991年にマイルスは亡くなりましたが、時の流れは早いもので、来年で没後30年となります。まだまだ本ブログで取り上げたい彼の作品もたくさんありますので、少しずつ記事にしていけたらと思っていたりします。[収録アルバム]Miles Davis / You’re Under Arrest(1984~85年録音) ユア・アンダー・アレスト [ マイルス・デイビス ] ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2020年08月20日
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エディ・ヴァン・ヘイレン追悼 ヴァン・ヘイレンの中心メンバーでハードロック界の伝説的ギタリスト、エディ・ヴァン・ヘイレン(Eddie Van Halen,エドワード・ファン・ハーレン)の訃報が報じられました(参考ニュース記事)。ライトハンド奏法で一世を風靡し、ロック・ギター演奏に大きな革新をもたらしたギター奏者でしたが、帰らぬ人となりました。2000年代に入ってから、闘病などの時期が長かったですが、癌により、2020年10月6日、65歳で逝去とのことです。 エディの追悼ということで、何曲か動画とともに振り返りたいと思います。 まずは、初期の有名なナンバーから。ヴァン・ヘイレンのデビュー盤(『炎の導火線』)からのナンバーで、「イラプション(Eruption)」(邦題は「暗闇の爆撃」)です。デビュー盤は1978年でしたが、映像は1986年のライヴのものとのこと。エディのギター・ソロ満開の演奏場面です。 続いては、上のライヴ演奏とは時期が前後しますが、デイヴ・リー・ロスが若々しく上半身半裸で飛び回っていたころの映像です。セカンド作『伝説の爆撃機』からのシングル曲、「踊り明かそう(Dance The Night Away)」です。 そんなデイヴとエディの比較的最近に近いものということで、2010年代に入ってからのライヴ演奏の模様です。アルバム『1984』からのヒット曲の「ジャンプ(Jump)」です。デイヴの独特の動きも、エディの職人ぶりも、長い年月で見た目は変化しても、その本質は変わらずといったところでしょうか。 最後にもう一つ。ヴァン・ヘイレンなるバンドの声と言えば、圧倒的にこのデイヴを思い浮かべる人が多いでしょうが、筆者はサミー・ヘイガーの時代も好みでした(正確にはサミー・ヘイガーの声が好きというだけでもあるのですが)。1985年にデイヴが抜け、サミーが加入、空白期もありましたが、サミーは2000年代初頭までメンバーとしてかかわりました。そんなサミー・ヘイガーとエディ・ヴァン・ヘイレンが共演して、「ロックン・ロール」(L・ツェッペリンのあの曲のことです)を演奏しているというビデオです。 ギター・フリークにとっては、エディ死去というのは、何だか一つの時代が終わったという感じかもしれません。まだ60歳代半ばという年齢でこのタイミングが来てしまったことは残念ですが、安らかに眠らんことをお祈りします。R.I.P.[収録アルバム]Van Halen / Van Halen(炎の導火線)(1978年) ←「暗闇の爆撃」収録Van Halen / Van Halen II(伝説の爆撃機)(1979年) ←「踊り明かそう」収録Van Halen / 1984(1984年) ←「ジャンプ」収録 【輸入盤CD】Van Halen / Van Halen (ヴァン・ヘイレン) 【輸入盤CD】Van Halen / II (ヴァン・ヘイレン) Van Halen バンヘイレン / 1984 輸入盤 【CD】 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓
2020年10月07日
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気まぐれ80s~Chapter 14(その3) ボブ・シーガー(Bob Seger)は、1970年代から1980年代にかけて人気を博したデトロイト生まれのロック・アーティスト。2004年にロックの殿堂入りを果たしています。 若い頃の前へ前へといった感じの彼も好きなのですが、この人の魅力は1980年代、1990年代と時を重ねていく中で、ロックの魂を保ちつつも、円熟味を増していったところにあります。いい感じで肩の力の抜ける場面が出てきたとでも言い換えるとよいでしょうか。そんな気配が見え始めたナンバーの一つがこの「ロール・ミー・アウェイ(Roll Me Away)」ではないかと思ったりするわけです。まだまだ肩に力の入ったロックだ、と言われてしまうかもしれませんが、筆者的には前へ前へと押すだけではない余裕が少し出始めているように感じます。もちろん、ボブ・シーガーの楽曲のなかでも私的には上位のお気に入り曲です。 そして、年を重ねた後年の映像をご覧ください。2011年ということですので、この楽曲発表から30年近くを経た時点での映像です。ボブ・シーガーは1945年生まれですから、60歳代後半に差し掛かった年齢の姿ということになります。オール白髪と見た目も若い頃とは大きく異なっていますが、素晴らしいステージでのパフォーマンスを披露していると思います。 [収録アルバム]Bob Seger & the Silver Bullet Band / The Distance(1982年) 【中古】 ザ・ディスタンス/ボブ・シーガー&ザ・シルヴァー・ブレット・バンド 【輸入盤CD】Bob Seger & The Silver Bullet Band / Greatest Hits(ボブ・シーガー) ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2024年06月08日
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特徴が凝縮されたサード作 ライ・クーダー(Ry Cooder)は、1947年ロサンゼルス生まれのギタリスト、ミュージシャン。1970年にデビューし、70年代~80年代に主要ソロ作を制作したが、本盤『流れ者の物語(Boomer's Story)』は三作目に当たり、1972年にリリースされた。これといったセールスを上げることはなかったが、後から振り返ってみれば、ライ・クーダーの基本となるスタイルや特徴がうまく詰め込まれた名盤だと言える。 ライ・クーダーは、自分で作詞作曲して演じる(シンガーソングライター)というタイプではなく、既存のものを取り上げてきて、得意のスライド・ギター演奏も含め、アコースティック・ギター、エレキ・ギターの音で独自の解釈を示すのを得意とした。1970年代に差し掛かり、多くのアーティストがルーツ音楽やブルースなどに根ざして現代的解釈をしようとしていたが、ハード・ロックの流れに顕著にみられるのとは全く逆の解釈の仕方もあったことをライ・クーダーは体現していた。この盤はそのスタイルが如実に示された1枚である。 注目曲をいくつか挙げてみたい。インストルメンタルの2.「チェリー・ボール・ブルース」は、デルタ・ブルースの曲であるが、べったりブルースなのではなく、さらりと聴かせる巧妙な解釈を見せる。また、同じくインスト曲として演奏される6.「ザ・ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート」では、スライド・ギターの演奏が聴きどころとなっている。 4.「アクス・スウィート・ママ」は、1930年代に活躍したテネシー出身のブルース・シンガー、スリーピー・ジョー・エスティス(1899年?生まれ、1977年死去)のナンバーで、マンドリン演奏が印象的。なおこの人物は9.「ケネディ大統領(プレジデント・ケネディ)」でヴォーカルとギターで参加もしていて、同曲でもライ・クーダーはマンドリンを披露している。 表題曲の1.「流れ者の物語(ブーマーズ・ストーリー)」は、放浪癖が身に沁みついた男の物語で、アメリカを旅してまわり、死んだ際には汽車の行き交う線路脇に葬ってほしいとさえ願う男の物語が余裕たっぷりに演奏される。そして、アルバムの最後を飾る10.「グッド・モーニング・ミスター・レイルロード・マン」も、ゆったりとした雰囲気の中、列車で放浪する男をテーマとした詞の内容の曲の演奏で締めくくられているのが興味深い。[収録曲]1. Boomer's Story (流れ者の物語)2. Cherry Ball Blues 3. Crow Black Chicken (ブラック・チキン)4. Ax Sweet Mama (スウィート・ママ)5. Maria Elena 6. The Dark End of the Street 7. Rally 'Round the Flag (旗のもとに集まろう)8. Comin' in on a Wing and a Prayer (翼と祈りに支えられ)9. President Kennedy (ケネディ大統領)10. Good Morning Mr. Railroad Man (ミスター・レイルロード・マン)1972年リリース。 Forever YOUNG::流れ者の物語 [ ライ・クーダー ] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2017年12月11日
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新年始動のジャズ・ナンバー(後編) 新年スタートのジャズ曲選の第2弾です。今回は、まずはジャック・ウィルソンのリーダー作『イースタリー・ウィンズ』所収のナンバーです。同盤はトランペットがリー・モーガン、サックスがジャッキー・マクリーンで、録音時期は少々遅いのですが、私的お気に入り盤の一つです。その冒頭のテンポ良い「ドー・イット」というナンバーをどうぞ。 続いては、お気に入りの名盤『スティット、パウエル&JJ』からの有名なナンバーです。表題の通り、ソニー・スティット(本盤ではテナー・サックス)、バド・パウエル(ピアノ)、J・J・ジョンソン(トロンボーン)が参加した盤ですが、実際には、スティットを中心にアルバム前半がパウエルとの共演、後半がジョンソンとの共演で、今回の曲は前半に該当(ジョンソンは参加していない)します。好調のパウエルのプレイに注目してどうぞ。 さらにもう1曲は、一気に新しい時代のもので、1990年代のミシェル・カミーロ(ミッシェル・カミロ)の演奏です。これまた気が引き締まる緊張感に満ちたピアノ演奏だと思います。『ランデヴー』というお気に入り盤に収録の「フロム・ウィズイン」というナンバーです。 あらためまして今年も本ブログをよろしくお願いします。[収録アルバム]Jack Wilson / Easterly Winds(1967年録音)Sonny Stitt / Sonny Stitt, Bud Powell and J.J.Johnson(1949~50年録音)Michel Camilo / Rendezvous(1993年リリース) スティット、パウエル&J.J.+3/ソニー・スティット[SHM-CD]【返品種別A】 【輸入盤】Rendezvous [ Michel Camilo ] 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2018年01月03日
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グリフィンの本当の魅力とは ジョニー・グリフィン(Johnny Griffin)と言えば、“リトル・ジャイアント(小さな巨人)”というニックネームの印象から、小柄な体がテナー・サックスと一体になったかのようなオーバーブロウ、さらには勢いそのままにスピーディーな演奏といったものをイメージする人も多いかもしれない。この印象は確かにその通りだし、かつて“もっとも速いサックス奏者”と呼ばれたことも確かなのだけれど、果たしてそれこそがグリフィンの本当の魅力だろうか。実は、以前、筆者はグリフィンがなかなか好きになれなかった。それは、豪快なブロウにばかりに耳が行っていたからだったと今では思う。 その辺の考えが変わったのは、『ザ・コングリゲーション』や『ザ・ケリー・ダンサーズ』といった盤を気に入り始めた頃と一致する。これらの盤の特徴は、強烈なブロウ(単純化して言えば、音のでかさや勢い)よりも、グリフィンの“歌いっぷり”(もちろん、サックスっで歌うという意味)が前に出ている点である。つまりは、独特の音色を持ちながらも、その真髄はフレージングや歌心にあるとも言えるのかもしれない。 さて、本盤『ウェイ・アウト!(Way Out!)』は1958年のリバーサイドへの吹き込み。時期的に言うと、上述の『ザ・コングリゲーション』の数ヵ月後であるが、この間には所属レーベルの変化があって、ブルーノートからリヴァーサイドへと活躍の場を移した。そのリバーサイドでの最初のリーダー盤は『ジョニー・グリフィン・セクステット』で、ドナルド・バード(トランペット)とペッパー・アダムス(バリトン・サックス)を含めた三管編成だった。実は、本盤『ウェイ・アウト!』は、この録音の翌日と翌々日に吹き込まれ、バックのメンバーは同一だが、管楽器はグリフィンのテナーのみという編成で演奏されたものである。 グリフィンの故郷であるシカゴ(彼は1928年シカゴ出身)色が強い作品で、複数の曲がシカゴの作曲家によるもの。グリフィンだけでなく、本盤に参加の個性的なベーシスト、ウィルバー・ウェアも同じくシカゴの出身。何よりも、グリフィンの演奏に関して、力の抜けた部分と豪快なブロウとのバランスがうまく詰め込まれている。最初に述べたイメージからすると4.「チェロキー」の豪快でスピーディーな演奏が彼の本領だと言うことになってしまうのだが、むしろ筆者は、軽快なフレージングの1.「ホエアズ・ユア・オーヴァーコート、ボーイ?」、感傷的な3.「サニー・マンデイ」の方が好みである。あと、外せないのはケニー・ドリューのピアノで、とくに6.「リトル・ジョン」では、安定したフィリー・ジョー・ジョーンズのドラミングにのって抜群の跳ね具合のピアノ演奏を披露している。 最後に余談ながら、このジャケットの前衛的過ぎる絵(下記商品リンクのうち上のもの)はいったい何なのだろうか。オリジナルのライナーによれば、現代オランダの彫刻家によるチューリップの描写(??)ということだが…。芸術性のカケラも持ち合わせていない筆者には、やっぱりどうもよくわからない。まあ、リバーサイドは一目でそうとわかるこういう斬新なジャケットを作っていたので、リバーサイドらしいということで、何だっていいのだけれど(笑)。[収録曲]1. Where's Your Overcoat, Boy?2. Hot Sasuage3. Sunny Monday4. Cherokee5. Teri's Tune6. Little John[パーソネル、録音]Johnny Griffin (ts)Kenny Drew (p)Wilbur Ware (b)Philly Joe Jones (ds)1958年2月26・27日録音。 JONNY GRIFFIN / WAY OUT 新古品 【送料無料】ザ・コングリゲーション+1 [ ジョニー・グリフィン ] 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2012年08月12日
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気まぐれ80s~第9シーズン(その1) 80年代の名曲選、第9回目のシリーズを始めてみたいと思います。10回×9シーズンですから、合計すると相当な曲数になるわけですが、2つほど言い訳といいますか、理由を述べてみたいと思います。ひとつは本ブログが始まってそろそろ9年になろうかということ。年に1回やったとしても、第9シーズンになってしまう訳です。それから、やはり80年代はMTVなどシングルで印象の強い曲が多く残された点もあるように思います。そのようなわけで、相変わらずではありますが、全10回、ぜひともお付き合いください。 1回目は「ヴィーナス(Venus)」というナンバーです。1969年にオランダのロック・グループのショッキング・ブルー(The Shocking Blue)が発表し、1970年に全米1位を記録した有名なナンバーです。この曲は、1986年にバナナラマ(Bananarama)なるイギリスの女性3人組がカバーし、再び全米1位に輝きました。まずは、ポップ/ダンス調のバナナラマによる「ヴィーナス」をどうぞ。 折角ですので、ショッキング・ブルーによる演奏もお聴きください。ロック好きとしては、やっぱりこの人たちのものが断然かっこいいですね。 とはいえ、時代はダンス調が広く受け入れられていました。日本でもバナナラマをさらにカバーした次のような「ヴィーナス」もリリースされました。後に演歌歌手に転向した長山洋子による「ヴィーナス」です。 [収録アルバム]Bananarama / True Confessions(1986年) 【メール便送料無料】Bananarama / True Confessions (輸入盤CD) (バナナラマ) 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2018年04月21日
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800万アクセス記念~いま聴きたいこの1曲(其の4) ジャンル面での迷走は続きますが、ご容赦ください(苦笑)。今回は、少し前に紹介したニール・ヤング(Niel Young)のアルバム、『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』に収録されているナンバーで、「サザン・マン(Southern Man)」です。 まずは、元のアルバムに収録されたヴァージョンをお聴きください。 続いては、ライヴでの演奏シーンをご覧いただきたいと思います。ブッカー・Tらが参加してている渾身のライヴの演奏です。1993年の演奏とのことですので、最初の発表から20年以上が経過した時点でのライヴということになります。 今回はライヴの演奏をもう一つ。2000年のCSN&Y(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング)によるライヴの演奏の場面です。 [収録アルバム]Neil Young / After the Gold Rush(1970年) アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ [ ニール・ヤング ] Neil Young ニールヤング / After The Gold Rush 輸入盤 【CD】 ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2022年09月22日
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新年早々、大きな地震に航空機事故と決して明るいとは言えないニュースが続いています。新しい年を景気よく始めたいと思っていたのですが、ひとまずは応援ソングということで、中島みゆきの「ファイト!」です。 東日本大震災の直後にも一度アップした(過去記事参照)のですが、とっくにリンクも切れているので、あらためて本記事とします。 能登半島地震ではまだ救出活動も続いていて、という状況ですが、音楽ができることはと言えば、それを聴いた人に元気や勇気を与えることぐらいです。この記事が何かの役に立つかどうかはわかりませんが、取り急ぎ更新する次第です。 ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2024年01月03日
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シカゴの隠れ名曲選(其の4) 今回はぐっと時代をさかのぼり、1970年の第2作(『シカゴII(シカゴと23の誓い)』)に収められたナンバーです。 1969年のデビュー盤に続いて2枚組の大作となったこのアルバムには、組曲になったものがいくつも収められています。個人的にはこういう大作志向というか、壮大な作りになっているのはなかなか好きだったりします。 さて、そうした組曲の一つがアナログ盤B面の大部部を占める「バレエ・フォー・ア・ガール・イン・ブキャノン」です。今回は、その中に含まれる「ぼくらの世界をバラ色に(カラー・マイ・ワールド)」をお聴きください(アルバムのジャケットの画像しか映りませんが、音は2002年のリマスターのものです)。 テリー・キャスによる曲で、彼がヴォーカルも務めています。1978年に急逝するまで、デビュー以来シカゴの中核メンバーとして活躍した人物です。 そんな彼の雄姿もご覧いただきたく、1970年当時のライヴ映像も今回はご覧ください。このライヴ映像では、同じ組曲「バレエ・フォー・ア・ガール・イン・ブキャノン」に含まれている「ぼくらに微笑みを(メイク・ミー・スマイル)」とのメドレー形式で演奏されています。 [収録アルバム]Chicago / Chicago(シカゴと23の誓い)(1970年リリース) シカゴII(シカゴと23の誓い)-スティーヴン・ウィルソン・リミックス/シカゴ[CD]【返品種別A】 シカゴII(シカゴと23の誓い) [ シカゴ ] 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2024年11月24日
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ギターとコーラスの美しさに素直に耳を傾ける アメリカ(America)とは何ともベタなグループ名だけれども、実はアメリカで結成されたのではない。ロンドン駐留の米軍で仕事をしていた父親たちとイギリスの母親たちの間に生まれた少年たち3人がアメリカの地を思いながらつけた名前である(ただし、全員かどうかはわからないが、米国は“まだ見ぬ地”という訳ではなかったらしい)。その3人とはジェリー・ベックリー、デューイ・バネル、ダン・ピークであり、ロンドンのアメリカン・スクールの仲間だった。 「名前のない馬(A Horse With No Name)」は、アメリカの1stアルバム所収のシングル曲であると同時に、彼らの代表曲である。細かいことを言うと少々ややこしいのだが、実はセルフ・タイトルのデビュー・アルバム『アメリカ』は1971年末にいったんリリースされ、この曲は含まれていなかった。たが、年が明けてから1972年初頭にシングル「名前のない馬」がヒットし、その結果、この曲を加えてアルバム自体が再リリースされたという経緯を持つ(その結果、同アルバムの邦題も『名前のない馬』となった)。 当時はサウンド面でCSNY(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング)と比較されたり、その弟分的に見られたりしたという。確かに、音楽的な展開を考えると、西海岸サウンドの流れの中に位置づけられるというのも納得できる部分はある。また、この曲のタイトルにある“馬”が当時の隠語で“ヘロイン”を意味しており、したがってドラッグ・ソングではないかとの噂も飛んだ(それゆえ話題を集めてヒットにつながったとの見方もある)。 筆者はこの頃をリアルタイムでは知らず、そのせいかもしれないが、最初に聴いて以来ずっとこの曲にはほんの少しの“陰り”を湛えた“爽やかさ”というイメージを抱いている。砂漠を行く無名の馬に乗っての旅。素直にそのメッセージを字義通りに受け、見事なコーラスワークと12弦ギターの響きに身を任せる。そんな素直な聴き方しかしていないのだが、それでも名曲は名曲。他にない美しさを醸し出していると思う。この手のサウンドの曲がヒットしたというのは1970年代初頭ならではの現象だったかもしれない。けれども、時代を反映していながらも、何十年経った現時点でこれだけ懐かしさや素朴さの感覚がすんなり聴き手に届き続けている曲はそう多くない。他にもこのグループの名曲と言えるものはあるのだけれど、この「名前のない馬」はとりわけ、これからも聴き継がれていく名曲なのだろうと思う。[収録アルバム]America / America (1971年)America / History America’s Greatest Hits (1975年、ベスト盤)その他のベスト盤類にも収録。 【送料無料】名前のない馬/アメリカ[CD]【返品種別A】 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年09月08日
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70年代ロック&ポップス名曲選~Part 6(その2) 1970年代の名曲選、続いての2回目は、少々マイナーかもしれませんが、マリア・マルダー(Maria Muldaur)の代表曲です。先に夫婦デュオで活動していた彼女ですが、1973年に最初のソロ・アルバムを発表し、これが大きなヒットとなります。同盤に収録のナンバーで、シングルとして全米6位になった「真夜中のオアシス(Midnight at the Oasis)」をどうぞ。 この曲を聴いて、マリア・マルダーの歌声だけでなく、魅惑的なギター・ソロも気になってしまいますが、それもそのはず、これを演奏しているのはエイモス・ギャレットです。アン・マレーの「スノーバード」のギターもこの人だとのことですが、主役でなくとも限られた時間の中で見事なまでに存在感を出すプレイです。 さて。もう1本は往時のステージでの歌唱をどうぞ。この曲がヒットした1974年当時、彼女は31歳だったわけですが、歌のうまさもさることながらどこかチャーミングな印象もします。 [収録アルバム]Maria Muldaur / Maria Muldaur(オールド・タイム・レイディ)(1973年) 【メール便送料無料】Maria Muldaur / Maria Muldaur (輸入盤CD) (マリア・マルダー) 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2019年01月28日
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90年代“アメリカン・バンド”の代表作 もはや昔のことなのでいま一つ定かな記憶ではないのだけれど、記憶違いでなければ、筆者が初めて聴いたブルース・トラベラー(ブルース・トラヴェラー、Blues Traveler)の作品は、確かこのアルバムだった。そのような初体験の盤であるものの、今回取り上げる理由は、個人的思い入れが強いというよりは、後述の通り、時間を経ても“安心して聴ける盤”であり続けている点にある。 ブルース・トラベラーは、1987年に米東海岸のニュー・ジャージーで結成され、1990年のデビュー以降、現在まで活動を続けているアメリカのロック・バンドである。日本では残念ながら過小評価されているというか、本邦での知名度はなぜか低いのだけれど、そのキャリアの中で最も人気を集めた時期はと言うと、1994年発表の本作『フォー(four)』(全米8位)およびその次作にあたる1997年発表の『ストレイト・オン・ティル・モーニング』(全米11位)の頃だったということになるだろう。 かくして、筆者もこの頃に話題になった(本作の後にはグラミーも受賞した)のを受けてCDを手に取ってみた口だったのだと思うが、発表から20年以上経たいま聴いても、本盤の特徴である“安心できる感覚”というのには、不思議なことに何ら変わりがない。彼らのベースにあるのは、ブルース・ロック的なベースと各種ロックの伝統。70年代~80年代を経て一巡したロックの諸要素――サイケ・ロック、サザン・ロック、フォーク・ロック、カントリー・ロック、もちろん“正統派”アメリカン・ロック音楽の王道も――がひとしきり絡み合って彼らの音楽を形成していると言える。まるっきり新しいわけではないが、単なる過去の繰り返しや再生でもない。抽象的な表現ではあるが、パーツごとにはすべてどこかに親しみを感じるのだけれど、聴いているのは決して古いものの再生ではない90年代の音楽、というのが、彼らの特徴と言えるだろう。 個人的な好みのナンバーを少し挙げておこうと思う。1.「ランアラウンド」は、アルバムのオープニング曲にして、シングル・カットもされて全米8位となったナンバー。落ち着いたテンポで適度に肩の力が抜けた感じがいい。他に聴き逃がせないと思うのは、ミッドテンポの3.「ルック・アラウンド」および11.「ジャスト・ウェイト」、上記の“安心感”の象徴と言ってもいい5.「ザ・マウンテンズ・ウィン・アゲイン」、シングル・カットされた9.「フック」(全米23位止まりだったとはもったいない…)。 ともあれ、1990年代当時の作品であると同時に20年、30年(いや、きっとそれ以上)経っても同じように安心して聴ける“新たなスタンダード盤”と言える1枚だと思う。[収録曲]1. Run-Around2. Stand3. Look Around4. Fallible5. The Mountains Win Again6. Freedom7. Crash Burn8. Price to Pay9. Hook10. The Good, the Bad and the Ugly11. Just Wait12. Brother John1994年リリース。 【中古】 【輸入盤】four /ブルース・トラヴェラー 【中古】afb 下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、 バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2019年05月04日
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BGM用ジャズっぽいが、それは制作の意図通り? 良い悪いとは別に、正直、個人的に“騙された盤”というイメージが強い一つがこの『ジャズ・フォー・リラクゼーション(Jazz for Relaxation)』である。こういう言い方をすると、最初から印象が悪いかもしれないけれど、特にジャズのアルバム(無論ジャズには限らないけれど)は、勝手な印象でもって、購入者が勝手に思い浮かべた内容を期待するというケースが多いような印象を受ける。いわゆる“ジャケ買い”と呼ばれるのが、その典型例であるが、本盤は、ソファに横たわる全裸女性という、中途半端にエロチックなジャケット写真である。 その上で、ピアノ奏者のマーティ・ペイチ(Marty Paich)を筆頭に、本盤のジャケットには3人の名がプリントされている。筆者はピアノ・トリオ盤だと思って最初に手にしてしまった。ところが、聴き進めると、突如としてヴィブラフォンが響き始める(そのうちにギターも入ってくる)。リラックスしてマーティ・ペイチの本領発揮のピアノ盤かと思いきや、どうやらまったく異なる意図の盤らしいと気づくのにさほど時間はかからなかった。 結論から言えば、意図的に作られた“BGM盤”と言えるように思う。その内容は、西海岸風テイストを存分に活かし、さらりと聴かせるアルバム。収録時間もやたら短く、アルバム全体で20数分という収録時間で、各曲の演奏時間も短いので、通して聴いても“あっという間の体験”となる。 ちなみに、ヴィブラフォンを担当しているのは、ラリー・バンカー(2., 3., 5.)、ギターはハワード・ロバーツ(7., 8.)である。ジャケットには、3人(ピアノのマーティ・ペイチ、ヴィブラフォンのラリー・バンカー、ベースのジョン・モンドラゴン)の名があるが、上記の筆者の思い違いは、ラリー・バンカーをドラムスと思ってしまったことだと判明するには、演奏者のデータにたどり着いてからのことだった(苦笑)。[収録曲]1. Dool's Blues2. Jump for Me3. There'll Never Be Another You4. The Lamp Is Low5. What's New6. Theme from Lighthouse7. Lullaby of the Leaves8. I'll Remember April[パーソネル、録音]Marty Paich (p), Joe Mondragon (b), Frank Capp (ds), Larry Bunker (vib: # 2, 3, 5), Howard Roberts (g: # 7, 8)1956年録音。 【輸入盤】Jazz For Relaxation [ Marty Paich ] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2020年02月19日
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700万アクセス記念~いま聴きたいあの曲(その7) 今回は、ジャズ奏者によるクリスマス・ナンバーを見てみたいと思います。ピアノ奏者のデイヴ・ブルーベック(Dave Brubeck)による「サンタが街にやってくる(Santa Claus Is Comin' to Town)」です。彼はこの曲がお気に入りだったのでしょうか、よくわかりませんが、「サンタが街にやってくる」を演奏した音源が複数残されています。 まずは、ポール・デスモンド(アルト・サックス)とのカルテットでの演奏をどうぞ。 続いては、デイヴ・ブルーベックのピアノによる「サンタが街にやってくる」です。ピアノだけだと静かに落ち着いた演奏になるのかと思いきや、静かな中にも躍動感があるという、ピアニストの本領発揮といった演奏になっているように思います。 今回はさらにもう一つ。ジェリー・マリガン(バリトン・サックス)とのデュオ(2人組)での「サンタが街にやってくる」です。ブルーベックのピアノの“街にやってくる”感をバックにマリガンの優しいバリトンのメロディとアドリブがなかなか個人的には気に入っています。 [収録アルバム]Various Artists / Jingle Bell Jazz(1962年、コンピ盤)Various Artists / Santa's Bag: An All-Star Jazz Christmas(1994年、コンピ盤)Dave Brubeck / A Dave Brubeck Christmas(1996年) 【中古】 ジングル・ベル・ジャズ /(オムニバス) 【中古】afb ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓ 人気ブログランキング
2021年12月21日
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死後10数年を経て世に出たお蔵入り盤 兄リチャードと妹カレンによるデュオ、カーペンターズ(Carpenters)のカレン・カーペンター(Karen Carpenter)による初ソロ作となるはずだったのが、1980年に一度は完成した『遠い初恋(Karen Carpenter)』というセルフタイトル作(邦題は、収録ナンバーの邦訳がそのままアルバムのタイトルとなっている)である。 本盤作成の経緯というのは、次のようなものだった。1979年、薬物依存症からの回復のため、カンザス州のリハビリ施設に留まり、カーペンターズの活動は一時的に休止することになった。その間にカレンはニューヨークへ渡り、フィル・ラモーンをプロデューサーとしてソロ作の制作に取り掛かった。けれども、完成したアルバムは、レコード会社(A&M)にとっても、兄リチャードにとっても納得のいくものではなく、結局カレンは発表しないことを決断してお蔵入りとなった。 1983年のカレン死去の後、本盤の収録曲のうち1.「ラヴラインズ」などいくつかのナンバーは、未発表曲集アルバム『ラヴラインズ』に収められた。そして、カレンの没後13年が経った1996年、お蔵入りとなった1980年作の本盤は正式リリースとなった。その背景には、日本でカーペンターズのリヴァイヴァルがあり、これに伴って日本だけでなく米国でもリリースされることになったらしい。 お蔵入りとなったこのアルバムのどこがよくなかったのか。その当時はカレンも悩んでいたというが、全体としてカーペンターズと大きく作風が違っているのは明白である。1980年頃のディスコ調サウンドやフュージョン的なサウンドが特徴的である。このイメージチェンジの捉え方は、聴き手によってさまざまなのだろうけれど、少なくとも当時のレーベルや兄リチャードには前向きに捉えられるものではなかったということなのだろう。カレンの没後となっては、貴重な音源ということでリリースされたが、聴衆にとってみれば、おそらくはカレンの歌声がさらに聴けてよかったという人もいれば、カーペンターズとのイメージの違いに違和感を感じる人もいるという、そんな作品と言えるのかもしれない。[収録曲]1. Lovelines2. All Because of You3. If I Had You4. Making Love in the Afternoon5. If We Try6. Remember When Lovin' Took All Night(愛の想い出)7. Still in Love With You8. My Body Keeps Changing My Mind9. Make Believe It's Your First Time(遠い初恋)10. Guess I Just Lost My Head11. Still Crazy After All These Years(時の流れに)12. Last One Singin' the Blues1996年リリース。 遠い初恋 [ カレン・カーペンター ] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2022年02月11日
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緊張感のない空間に漂う緊張感 こんな超有名盤のことを書くのはどうかとも思ったけれど、やっぱりいいものはいいので、紹介したいと思う。コンピレーションものは除くとして、“とりあえずジャズでも聴いてみよっか”と思った人が手に取るアルバムのたぶん1位にランクされるほどのド名盤がこの『ワルツ・フォー・デビイ(Waltz For Debby)』である(ちなみに、マイルス・デイヴィスを最初に手に取る可能性も高いが、複数アルバムに分散するだろうから、やっぱり『ワルツ・フォー・デビイ』がダントツ1位でだろう)。 ピアノ(ビル・エヴァンス)とベース(スコット・ラファロ)のインタープレイ―奏者同士の音と心の対話―の極致とされる演奏で、この演奏の後すぐにスコット・ラファロが亡くなってしまったため、二人の名演はこれ以上生まれなかった(ちなみに、本盤の同日録音の姉妹盤『サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』というのもある)。とまあ、ジャズ史的にはこういう位置づけのなされる盤だろうが、上記のように“ジャズを聴いてみよっか”という人にとってはインタープレイとか小難しい話は関係ないかもしれない。でも耳を皿にして(?)聴けば、単なる心地いいピアノ盤でないのはすぐにお分かりいただけると思う。 少しヴォリュームを上げてみる。するとすぐに雑音が耳につく。グラスの触れ合う音、人々のざわめき、挙げ句の果てには観客の話し声。そう、ある意味、緊張感のない空間の雑音である。それに比べ、演奏そのものの緊張感のレベルは非常に高い。演奏が終わる最後の一音まで演奏者間の緊張の糸はぴーんと張り詰めている。曲が終わる瞬間にそれがふっと解けるので、曲の最後に注目すればそのことがよくわかる。大げさに言ってしまえば、耳触りのよさだけで終わるのではなく、この緊張感の高い演奏こそがジャズであると言ってもいいかもしれない。“ジャズでも聴いてみよっか”と何となく本盤を手に取ってみた人が、このことに気づけば、本盤は思いつき購入アルバムから、一気に“長く聴き続けられる”一枚に変化するだろう。 それはそうと、以前から気に入らないのだけれど、CDにはよくLP未収録曲がついている。ただで付いてくるのだからお得と思いたいのだけれど、そうはいかないことが多い。というのも、発売元によっては、アルバムの途中にそれら未収録曲を挟んでしまうのだ。そうなると元の演奏順序とは異なるし、しかも同じ曲の別テイクを二つ続けて聴くことになる。有名盤なだけに、また初めてジャズを聴く人がよく手にするアルバム名だけに、本盤でのこの問題は深刻である。 無論、こうした問題は、本盤に限ったことではないのだけれど、初めて聴くジャズ・アルバムの可能性が高い本盤に関しては特に避けてほしい。国内盤のほか、輸入盤に中古盤と、購入者にはいろんな選択肢があるわけだけれど、どんな曲順になっているのかをお確かめの上、購入いただきたい。この『ワルツ・フォー・デビイ』に関しては、筆者の記憶では現行国内盤は大丈夫だったように思う(LP収録順の後に追加曲を収録しているので、要は途中までしか聴かなければOK)。いずれにせよ、これから買うという場合には、ご確認を忘れずに…。[収録曲]1. My Foolish Heart2. Waltz For Debby3. Detour Ahead4. My Romance5. Some Other Time6. Milestones~以下、CDの追加収録曲~7. Waltz For Debby ―別テイク-8. Detour Ahead -別テイク-9. My Romance -別テイク-10. Porgy (I Love You, Porgy) [パーソネル・録音]Bill Evans (p)Scott LaFaro (b)Paul Motian (ds)1961年6月25日、ニューヨーク、ヴィレッジ・ヴァンガードでの録音。 【送料無料】JAZZ THE BEST Legendary 150::ワルツ・フォー・デビイ+4 [ ビル・エヴァンス ] 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年11月23日
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愛しの名曲たち(7・最終回) カーペンターズ(Carpenters)の名曲を振り返る不定期企画、ほぼ2カ月がかりでようやくひとまずの最終回に辿りついいた。とか何とか言って、実のところ、最初から締めくくりにしたい曲が筆者の頭の中にはあって、半ばそれは最初から決まっていた。それがこの「オンリー・イエスタデイ(Only Yesterday)」である。客観的なことを何も考えず、個人的な好みと感性でとにかく1曲選べ、と言われたら、おそらくは「イエスタデイ・ワンス・モア」とこの「オンリー・イエスタデイ」の間で悩むこととなるだろう。そのくらい、筆者はこの歌の虜になってしまている。 カレン・カーペンターのヴォーカルの魅力には、“憂い”の感覚がある。その部分は、既に紹介した「スーパースター」のところで述べた通りなのだけれど、その“憂い”の感覚を醸し出すにはヴォーカリストとしての重要な要素があった。“低音の魅力”である。カレンの歌は低音域が実にしっかりしている(カレンいわく、この低音域は彼女の“basement”だった)。この「オンリー・イエスタデイ」においても、それは存分に発揮されていて、サビにいたるまでの低音の部分が実にいい味を出している。並のシンガーならばここまで引っ張れないだろうと思うほど、低音部の多い歌でも聴かせることができる。実際、カレンは3オクターブの音域を持っていながらも、高音部を特に強調しようとは考えなかったという。この曲の歌声を聴けば、それもなるほどと納得がいく。 詞の内容の微妙な感じもいい。ただハッピーというわけでもなければ、ただ憂鬱な内容でもない。“悲しい昨日と明日への希望”とでもいったモチーフである。「悲しくて孤独だったのはもう昨日のこと/あなたのおかげで過去と涙から離れることができる/明日はきっと今日よりずっと明るくなる/悲しみは昨日に置いてきたのだから/それはもう昨日のこと・・・」というのがサビの内容。 さらに注目なのは、ギター・ソロの部分。エレクトリック・ギターがソロ・パートをとっているが、これもまたさらりといい味を出している。実は1972年のシングル「愛にさよならを(グッバイ・トゥ・ラヴ)」でファズなギター・ソロを起用してカーペンターズは一部のリスナーから批判を浴びたことがあった。結果的に、その後はギター・ソロの使い方がうまくなったのではないかと思う。本曲でもこのソロ部分でギターサウンドが効果的に使われて功を奏している。 1975年のアルバム『緑の地平線~ホライゾン』からの先行シングルとして発売され、全米チャートでは4位、同イージーリスニング・チャートでは1位を記録した。1970年の「遥かなる影」以降、数々のヒット曲を世に送り出したが、全米TOP10入りはこの曲が最後となっている。アルバムのヴァージョン(アルバムとシングルでミックスが若干異なるそう)を映像つきでどうぞ。 ちょっと意訳し過ぎ?な感じもしますが、日本語(字幕)で大意を知りたい向きはこちら。 *リンク切れにつき、以下、オフィシャルビデオ映像を追加しておきます。 [収録アルバム]Carpenters / Horizon (1975年)Carpenters / Yesterday Once More(1984年)など各種ベスト盤類に収録。1975年シングル・リリース。[関連過去記事] カーペンターズ~愛しの名曲たち(1):「涙の乗車券」 カーペンターズ~愛しの名曲たち(2):「遥かなる影」 カーペンターズ~愛しの名曲たち(3):「雨の日と月曜日は」 カーペンターズ~愛しの名曲たち(4):「スーパースター」 カーペンターズ~愛しの名曲たち(5):「シング」 カーペンターズ~愛しの名曲たち(6):「トップ・オブ・ザ・ワールド」 【Joshin webはネット通販1位(アフターサービスランキング)/日経ビジネス誌2012】【送料無料】緑の地平線(ホライゾン)/カーペンターズ[SHM-CD]【返品種別A】 【送料無料】ポップス定番ベストセレクション::カーペンターズ 20/20ベスト・オブ・ベスト・セレクション [ カーペンターズ ] 下記ランキングに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2012年08月05日
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“つぶやきロッカー”ルーの代表作の一つ ルー・リード(Lou Reed)は、1942年、ニューヨークはブルックリン生まれのロック・アーティスト。1965年の結成から1970年の脱退までヴェルヴェット・アンダーグラウンドの主要メンバーとして活動し、脱退後はソロ・アーティストに転向。以降、1996年にはロックの殿堂入りを果たし、現在に至るまで根強い人気を誇るロッカーである。1989年発表の本盤『ニューヨーク(New York)』はそんな彼の代表作の一つとしてよく名が挙げられるアルバムである。 ルー・リードの大きな特徴と言えば、つぶやくようなヴォーカル。平たく言ってしまえば、“歌う”よりも“語る”という感じで、初めて聴くと詩の朗読か、はたまた、悪く言う人の言葉を借りれば、“お経”のような響きすらする。“つぶやく”と言えば、一昔前なら“つぶやきシロー”、今時ならツイッターを思い浮かべる人もいるかもしれない。ルー・リードは、これらいずれとも決定的に違う。前二者に共通するのはただ何かひとこと短く言い放つということである。その一言が人々に受け入れるか否かという、いわば一発芸である。これに対し、ルー・リードの作品は、練られ考え込まれた一言一言のつぶやきが発せられ、それらがつながり、一つのストーリーとなり、結果、大きな語りを構成する。つまり、ルー・リードというアーティストは詩人であり、偉大な語り部ということができる。実際、『ニューヨーク』には、“1冊の本もしくは1編の映画のように58分(14曲)で聴かれることを意図したもの”との注意書きがわざわざなされている。 上記のように“語り”の要素が強いということは、それだけ詞の内容が表わすメッセージへの比重が高くなるということでもある。つまり、聴き手がその語りを理解し、そこに入り込むには相応の時間がかかる。言い換えれば、ルー・リードの音楽は、聴いてすぐに好きになるタイプの音楽というのではなく、私たち非英語圏のリスナーにとってはなおさらそうである。正直、この人の詞は文学的な表現も多く、個人的には、辞書を片手に理解に難儀するが、その意味するところを知って“なるほど”ということが多い。ひとたびその語りの世界に入り込んでしまうと熱心なファンになってしまって抜け出せなくなる人が多いという。ルー・リードが熱心なファン層を抱えている理由は、きっとこの詩的世界にあるのだろう。 ソロだけを見ても既に40年という長いキャリアを持つルー・リードだが、その40年の中でも『ニューヨーク』は、彼の代表作として挙げられることが多い。かつての退廃的雰囲気はだいぶ引っこんでいるが、その分、ストレートなロック色が強いため、彼の作品の中では比較的とっつきやすい方だと思う。収録曲はいずれもニューヨークという街の断章で、ジャーナリスティックな批判的視線を投げかけている。上のライナーの文面にあるように、全編通して聴くべきものではあろうが、詞が印象的なのは、1.「ロミオ・ハド・ジュリエット」、9.「シック・オブ・ユー」、10.「ホールド・オン」(ただし歌詞はすべて消化しきってはいないので、今後別のお気に入りがでてくるかも)。曲調含め個人的に特にかっこいいと感じるのは、1.「ロミオ・ハド・ジュリエット」、3.「ダーティ・ブルヴァード」、5.「ゼア・イズ・ノー・タイム」、13.「ストローマン」といったところ。[収録曲]1. Romeo Had Juliette2. Halloween Parade3. Dirty Blvd.4. Endless Cycle5. There Is No Time6. Last Great American Whale7. Beginning of a Great Adventure8. Busload of Faith9. Sick of You10. Hold On11. Good Evening Mr. Waldheim12. Xmas in February13. Strawman14. Dime Store Mystery1989年リリース。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】NEW YORK [ ルー・リード ] 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ ↓
2011年01月10日
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“時代の遺産”は、輝かしき過去の英雄の記録でもある… ゲイリー・US・ボンズ(Gary U.S. Bonds)といっても、本邦ではあまり知られた存在ではないかもしれない。フロリダ出身で、ヴァージニアを拠点にして1950年代に音楽活動を始め、1960年代初頭に複数の曲をヒットさせたアーティストである。当時、まだまだ黒人向けの音楽だったR&Bを白人リスナー向けに紹介したり、黎明期にあったロックンロールを若者向きに広めていく役割を担ったりしたシンガーの一人と言える。ちなみに、本名はゲイリー・リーヴォン・アンダーソン(Gary Levone Anderson)というそうだけれど、ウケ狙い(?)で“アメリカ国債”(U.S.bonds)という芸名にしたらしい。 本盤『クオーター・トゥ・スリー(Dance 'til Quarter To Three with U.S.Bonds)』は、1961年に発売されたLPで、彼のヒット曲である8.「ニューオーリンズ」(1960年、全米6位)、1.「クオーター・トゥ・スリー」(1961年、全米1位)、12.「スクール・イズ・アウト」(1961年、全米5位)といった楽曲が収められている。 上記3曲について少し見ていくと、8.「ニューオーリンズ」は何か南部の深遠な音楽かというとそんなことはなく、ミシシッピやニューオーリンズをキーワードに、お決まりのホーンも含んだダンシングなロックンロールを披露している。1.の「クオーター・トゥ・スリー」という曲のタイトルは、“3時15分前”の意味だけれど、要するに、“明け方の3時前まで踊りまくったぜ”という何ともわかりやすい内容の曲。12.「スクール・イズ・アウト」は、学校が休み期間になるので万歳(冒頭に喜ぶ子どもたちの歓声が入る)という内容で、明らかにティーンをターゲットにしたような内容の楽曲といった具合である。 そのようなわけで、何か本格的に音楽面での開拓をしたとかいうタイプの音楽を披露しているわけではない。音楽的過渡期の遺産に過ぎないと見る向きもあるだろうが、こうしたアーティストたちによる若者への新たな音楽の普及は、次世代を着実に生み出したという側面もあることは心に留めておいてよいように思う。ブルース・スプリングスティーンなどはこうした音楽に胸をときめかせた少年の一人だったようで、実際、彼のライヴでも「クオーター・トゥ・スリー」は定番のレパートリーとなった。そんな意味では、時代の遺産と化した音楽であると同時に、往時の子どもたちにとっての輝かしい過去の英雄の記録でもあったと言えるのだろう。ちなみに、“時代の遺産”なら仕方ないのかもしれないのだけれど、それにしても、もうちょっとクリアで籠っていない音でこの音楽を聴けないものだろうか…。[収録曲]1. Quarter To Three2. A Trip To The Moon3. Cecilia 4. That's All Right5. I Know Why Dreamers Cry6. Minnie The Moocher7. What A Dream *CD追加曲?8. New Orleans9. One Million Tears10. Not Me 11. Please Forgive Me12. School Is Out13. Don't Go To Strangers14. Time Old Story *CD追加曲?1961年リリース。 【輸入盤】Dance 'til Quarter To Three / Twist Up Calypso [ Gary Us Bonds ] 【輸入盤CD】Gary U.S. Bonds / Very Best Of 【K2016/6/24発売】( ゲーリー・U.S.ボンズ ) 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2020年09月17日
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70年代ロック&ポップス名曲選~Part 8(その10) 今回の名曲選、最後は1970年代末のスティクス(Styx)のヒット・ナンバーです。1970年代後半に人気を獲得していき、1979年にシングル1位を獲得したのが、この「ベイブ(Babe)」という曲でした。 まずは、1970年代から80年代への橋を渡す役割を果たした(と個人的には思っています)この名バラードのスタジオ・ヴァージョンをお聴きください。 続いては、往時のスティクスの雄姿をご覧ください。トミー・ショウもデニス・デ・ヤングも、みんな若いです。1980年当時の映像とのことです。 最後にもう一本。2014年のロサンゼルスでのステージの様子です。35年の時の経過を感じさせない「ベイブ」をお聴きください。 [収録アルバム]Styx / Cornerstone(1979年) STYX スティックス / Cornerstone 【SHM-CD】 【輸入盤CD】Styx / Greatest Hits (スティクス) 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2023年09月22日
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INDEXページ(ジャンル別、アーティストのアルファベット順)を更新しました。ここ最近の記事を追加しています。INDEXページへは、下のリンク、もしくは本ブログのトップページ(フリーページ欄)からお入りください。アーティスト別INDEX~ジャズ編(A-G)へ → つづき(H-M)・つづき(N-Z)アーティスト別INDEX~ロック・ポップス編(A)へ → つづき(B)・つづき(C-D)・つづき(E-I)・つづき(J-K)・つづき(L-N)・つづき(O-S)・つづき(T-Z)アーティスト別INDEX~ラテン系ロック・ポップス編(A-I)へ → つづき(J-N)・つづき(O-Z)アーティスト別INDEX~邦ロック・ポップス編へ下記ランキングに参加しています。応援くださる方は、いずれかのバナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2024年11月17日
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シカゴの隠れ名曲選(其の3) さらに時代は下り、今回は2008年に発表された『シカゴ32 ストーン・オブ・シシファス』に収録された「ビガー・ザン・エルヴィス(Bigger than Elvis)」という曲です。 実は上記のアルバムは、リリースの際に“32枚目”ということで“XXXII”という名前がつきましたが、本来は、1990年代前半に発表されるはずだったものでした。つまりは、“XXII”となるアルバムになるはずだったというわけです。 さらに、この「ビガー・ザン・エルヴィス(Bigger than Elvis)」という曲に関しては、日本国内向けに編まれたベスト盤に収録されたレア・ナンバーだったのですが、お蔵入りになったアルバムは、上の通り2008年に正式にリリースされました。こうして、正式なアルバムの収録曲として日の目を浴びることになったいうわけです。 シカゴを脱退したピーター・セテラの後釜として1985年に加入したジェイソン・シェフがヴォーカルを務めている楽曲です。“シカゴの声”としてのセテラの印象が強かっただけに、その当時、この人のヴォーカルについては賛否両論いろいろ言われました。けれども、その美声はシカゴのバラード曲などには向いていたのではないかと思います。このナンバーも存分に彼の実力が発揮された美曲だと言えるのではないでしょうか。[収録アルバム]Chicago / Chicago XXXII: Stone of Sisyphus(2008年リリース) シカゴ32 ストーン・オブ・シシファス/シカゴ[CD]【返品種別A】 【中古】 【輸入盤】Stone of Sisyphus (XXXII)/シカゴ ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2024年11月22日
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200万アクセス記念 いま聴きたいあのナンバー~拡大版(20/30) ビリー・ヒューズ(Billie Hughes)は1948年生まれのアメリカ人アーティスト。ラザラス(Lazarus)というグループで活動した後、ソロ活動をしました。死因はよくわからないのですが、1998年に50歳にという若さで残念ながら亡くなっています。 ヒットしたドラマ『もう誰も愛さない』で使われた(ちなみにそのドラマでは、この名曲も挿入歌に使われていました)ということで、日本限定で火がついて大ヒットしたナンバー、「とどかぬ想い(Welcome to the Edge)」です。 いまあらためて聴いてみて、結構よく出来たAOR曲ではないかという気もします。ドラマのイメージが強いという人が多いかもしれませんが、それと関係なくラヴソングとして魅力的なナンバーだと思います。 そんなわけで、続いては、別のアーティストによるこの曲のカバーをお聴きいただこうと思います。カバーはビル・チャンプリン(Bill Champlin)によるものです。1980~90年代のシカゴで活躍した彼は、2009年に同バンドを抜け、その後は再びソロの活動に戻っているようです。 [収録アルバム]Billie Hughes / Welcome To The Edge(1991年) 【中古】 とどかぬ想い /ビリー・ヒューズ 【中古】afb 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2017年11月14日
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シカゴの隠れ名曲選(其の1) シカゴ(Chicago)といえば、1960年代の末から現在まで長いキャリアを持つバンドですが、これまで本ブログでは、複数のアルバムを取り上げてきたほか、70年代のバラード選をやってみたり、80年代のポップ寄りなバラードを取り上げたりもしました。今回は、少し趣向を変え、“隠れ名曲選”と題して、このバンドによる少々マイナーなナンバーを中心に5曲ほどピックアップしてみたいと思います。 でもって、第1回目はこのシリーズを思い立ったきっかけのナンバーです。第7作となった2枚組の『シカゴVII(市俄古への長い道)』に収められた「ハッピー・マン(Happy Man)」です。 ヴォーカルはピーター・セテラ、この曲を書いたのも彼です(そういえば、この人のヴォーカルは“100万ドルの歌声”なんて言われたりもしましたね)。「長い夜」、「愛ある別れ(イフ・ユー・リーヴ・ミー)」などシカゴの有名曲の多くでヴォーカルを担当した彼ですが、そうした目立つところに出るわけではなかった今回のような曲においても、その実力を発揮しています。 ちなみに詞の内容は、“あなたに恋をしたハッピーな男”という何とも純真でストレートな内容。とはいっても、陳腐な感じにならないのは、やはり曲のよさ、演奏のよさ、そしてヴォーカルのよさといったところだと思います。[収録アルバム]Chicago / Chicago VII(市俄古への長い道))(1974年リリース) シカゴVII(市俄古への長い道) [ シカゴ ] ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2024年11月18日
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