はっぴぃーマニア

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<第十一話>~最終章~

ことわざ物語

第一話
袖すり合うも多生の縁
第二話
馬の耳に念仏
第三話
転ばぬ先の杖
第四話
天は自ら助くる者を助く
第五話
前車の轍を踏む
第六話
雀百まで 踊り忘れず
第七話
見て捨てる神あれば拾う神あり
第八話
知らぬが仏
第九話
グランプリ (競馬~第十話へつづく~)
ひょうたんからコマ
第十話
あの日のように (競馬~第十一話へつづく~)
人間万事塞翁が馬
第十一話
足長おじさん ~第1章~(競馬)
塵も積もれば山となる
足長おじさん ~第2章~(競馬)
足長おじさん ~第3章~(競馬)
足長おじさん ~最終章~(競馬)
足長おじさん ~あとがき~(競馬)

<第十一話>足長おじさん~最終章~


「突然なんだけど、来月、アメリカで手術する事になったの。今週土曜日の夜の便で向こうに立つわ。『こんなに早く手術が受けられるなんて、奇跡的ですよ。』って、さっき病院から連絡があって。」
彼女から電話でそう聞いたのは、宝塚記念が行われる前週の月曜日のことだった。
そう聞いて、私はとっさにこう言いました。
「僕も一緒に行くよ。君ひとりでは心細いだろう?」
私のこの言葉に、今まで弱い所など見せた事のない彼女が、電話の向こう側で大きな声を出して泣きました。

渡航前日の金曜日の夜、両親が夢の中に現れました。
「明日、渡航前にウインズに行って、宝塚記念の馬券を買うんだな。」
私が考えていたとおりの事を父が言いました。
私は、何があっても宝塚記念で2000万円にしようと、安田記念の馬券は換金しないまま手元に置いていたのでした。
そして母が、
「必ず手に入れるのよ。あの子の命を、そして、彼女を救ってあげなさい。あなたが私達にとってかけがえのない息子であるのと同じ、あなたにとって、あの子が、彼女が、かけがえのない存在になるはずだから。」
父がこう続けました。
「宝塚で買う馬は自分で決めなさい。今までの人生を振り返れば、おのずと答えは見えてくるはずだ。そして、あの子を、彼女を救ってやりなさい。私達からの最後の言葉だ。幸せになれ!!私達が幸せを取り戻したあの日のように・・・」

渡航当日の午前中、私は病院に行く前にウインズに立ち寄りました。
発券窓口へ向かい、安田記念の的中馬券を差し出し、こう言いました。
「この的中馬券の払戻し金全額で、明日の宝塚記念10番の単勝馬券を買います。」
すると、発券窓口の奥で少し混乱が起こった後、係の人が窓口に来てこう言いました。
「1222万円全額ですか?」
私は即答しました。
「はい、1222万円全額を10番の単勝馬券に。」

束になった馬券を受け取り、私は病院へ向かいました。

彼女の息子は渡米後、数日間の検査を経て手術を受けました。
そして、手術は成功し、今は日本で治療を続けています。
手術費用は全てあの馬券でまかないました。

彼女は息子にこう言っています。
「足長おじさんがあなたの命を救ってくれたのよ。」
と。

ことわざ辞典
塵も積もれば山となる「ちりもつもればやまとなる」
どんなにわずかな物でも、積もり積もれば大きなものになる。日々の小さな努力を重ねていけば必ずいつかは大成する。の意味。
彼は、わずか300円のお金を、最終的に・・・。最終的に幾らになったのか、結果がまだでした。そして、なぜ宝塚記念で10番の馬を買ったのかも。
以上のことは、足長おじさん~あとがき~で。


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