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ドナルド・トランプ大統領の打ち出す政策に恐怖している人がいることは確かだろう。COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動を仕掛けた人びとやロシアと戦争させるためにウクライナのクーデター体制を支援してきた人びともその中に含まれているはずだが、トランプ大統領の発言には背後にシオニストの存在を窺わせるものがある。 少なからぬ人が指摘しているが、トランプはウクライナでの戦争を終わらせるため、ロシアを恫喝するとしている。かつて、ドワイト・アイゼンハワーやリチャード・ニクソンが使った手法だ。 ドワイト・アイゼンハワーは大統領に就任してまもない時期に、ハリー・トルーマン政権が始めた朝鮮戦争を休戦させようと考えた。そこで、中国に対して休戦に応じなければ核兵器を使うと脅したとされている。休戦は同年7月に実現した。アイゼンハワー政権で副大統領を務めていたリチャード・ニクソンはベトナム戦争から抜け出すため、カンボジアに対する秘密爆撃を実行しながらアイゼンハワーの手法を使っている。つまり核兵器で北ベトナムを恫喝したのだ。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) トランプはウラジミル・プーチン露大統領に対し、ウクライナでの戦争をやめなければ新たな「制裁」でロシアの置かれた状況をさらに悪化させると脅している。そのプランはウクライナ特使のキース・ケロッグ退役陸軍中将が考えた「和平計画」に基づくもので、この計画は同中将が2024年春に執筆した論文が基本になっている。問題は、この論文が事実に基づいていないということだ。恫喝がロシアにも通用すると考えている。 トランプはウクライナでの戦闘でロシア兵は100万人近くが戦死したと主張している。ウクライナ兵の戦死者約70万人を上回ると主張しているわけだが、これはありえない。ウクライナ兵の戦死者は80万人、あるいはそれ以上だと推定されているが、それを否定できないため、70万人と少なめの数字を提示、ロシア兵の戦死者数をそれ以上にする必要があると考えたのだろう。 ウクライナ軍の兵士不足は2023年10月1日、イギリスのベン・ウォレス元国防大臣も指摘している。ウォレスはテレグラム紙に寄稿した論稿の中でウクライナ兵の平均年齢はすでに40歳を超えていると指摘、もっと多くの若者を前線へ送り出せと要求している。 ウクライナの街中で男性が徴兵担当者に拉致される様子を撮影した少なからぬ映像がインターネット上で伝えられているが、ロシアの街頭でそうした光景は見られない。ロシア側の戦死者数はウクライナ側の1割程度、つまり10万人に達していないと推定されている。 ロシア軍とウクライナ軍が戦場で使用している砲弾の数はロシア側が6対1から10対1の優位性を持つと推定されている。死傷者数の比率は砲弾の比率に準ずると言われているので、この面からもトランプ大統領の判断は否定される。「ウクライナはロシアよりも兵士の死傷者数が少ないが、それでもロシアに負けている」ということはありえない。 しかも兵器の性能が違う。言うまでもなくロシア軍がウクライナ軍、つまりアメリカ/NATO軍を圧倒しているのだ。ロシア軍はミサイル、滑空弾、ドローン、戦闘機、戦車、防空システムなどでウクライナ軍を圧倒、制空権を握っている。 アメリカがロシアに対する戦争を始めたのは2014年2月のことだと言える。ナチス時代下のドイツは1941年6月からソ連への軍事侵攻を始めたが、最初に攻め込んだのはウクライナとベラルーシだ。バラク・オバマ政権が仕掛けたウクライナにおけるネオ・ナチを使ったクーデターは新たなバージョンのバルバロッサ作戦だと言えるだろう。ベラルーシでもクーデターが試みられたが、これは失敗に終わっている。 朝鮮戦争の場合と同じようにウクライナでも「休戦」して戦況を「凍結」し、イギリス、ドイツ、フランスといった国の兵士で構成される「平和維持軍」をウクライナへ入れることをロシア政府が認めるとは思えない。その部隊は「平和維持軍」というタグをつけたNATO軍にすぎないからだ。 トランプはロシアがアメリカの命令に従わない場合、経済的に締め上げると脅しているが、ロシア経済が好調だということをロシア在住の少なからぬアメリカ人が伝えていた。アメリカ人ジャーナリストのタッカー・カールソンもモスクワの豊かな生活を伝えている。アメリカ政府が西側の企業をロシアから撤退させたため、ロシアの国内産業が息を吹き返し、経済にとってプラスに働いたことは明らかだ。苦境に陥ったのはヨーロッパであり、アメリカにも悪い影響を及ぼしている。 トランプはガザからアラブ系住民を一掃してヨルダンやエジプトへ追放しようとしている。露骨な民族浄化計画であり、アメリカに従属しているアラブ諸国からも反対されているのだが、トランプは強引に推し進めようとしている。 アメリカで行われているのは「権力抗争」にすぎず、社会の仕組みを変える「革命」ではないのだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.31
第二次世界大戦中、ポーランドにはドイツの強制収容所が存在していた。その象徴的な存在がアウシュビッツ(オシフィエンチム)の施設にほかならない。ユダヤ人、ロマ(かつてはジプシーと呼ばれた)、ソ連兵、心身障害者、同性愛者などが収容されていたが、9割程度がユダヤ人だったという。 その強制収容所は1945年1月27日、ソ連軍によって解放された。解放から80年目にあたる今年、ポーランドのアウシュビッツ・ビルケナウ国立博物館で記念式典が開催されたのだが、ポーランド政府はロシアの代表を排除している。 ドイツ軍は1941年6月にソ連侵略作戦、いわゆるバルバロッサ作戦を開始した。この作戦で東へ向かったドイツ兵は約300万人、西部戦線に残った兵士は90万人と言われている。ドイツ軍の首脳は西部方面を防衛するために東へ向かう部隊に匹敵する数の将兵を配備するべきだと主張したが、アドルフ・ヒトラーがそれを退けたという。この非常識なヒトラーの「判断」は背後からイギリスなどが攻撃してこないことを「予知」していたからではないかと思える。 ドイツ軍は1941年7月にレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)を包囲、9月にはモスクワまで80キロメートルの地点まで迫る。ソ連軍は敗北し、再び立ち上がることはないと10月3日にアドルフ・ヒトラーはベルリンで語り、ウィンストン・チャーチル英首相の軍事首席補佐官で、後にNATOの初代事務総長に就任するヘイスティングス・イスメイは3週間以内にモスクワは陥落すると推測している。(Susan Butler, “Roosevelt And Stalin,” Alfred A. Knopf, 2015) ソ連の敗北を予想しながら動かなかったイギリスが動き始めるのは、1942年11月にソ連軍がレニングラードで猛反撃に転じ、ドイツ軍25万人が完全に包囲され、43年1月に生き残ったドイツの将兵9万1000名が降伏した後だ。ドイツの敗北が決定的になり、慌てたということだ。 チャーチル英首相はフランクリン・ルーズベルト米大統領やフランスのシャルル・ド・ゴールと1943年1月にモロッコのカサブランカで急遽会談している。「無条件降伏」という語句が出てきたのは、この会談の時。ドイツの降伏を遅らせ、米英が軍事作戦を行う時間的な余裕が欲しかったのだろうと言われている。そして1943年7月に米英両国軍はシチリア島へ上陸、ハリウッド映画で有名になったノルマンディー上陸作戦(オーバーロード作戦)は44年6月になってからだ。 ヒトラー率いるナチがドイツで実権を握ったのは1933年に国会議事堂が放火された後。ナチが実行したと見られているが、コミュニストの犯行だと宣伝され、それが成功したわけだ。この年の8月にシオニストはナチ政権との間でユダヤ系ドイツ人をパレスチナへ移住させることで合意している。「ハーバラ合意」だ。 ナチによる弾圧で少なからぬユダヤ人がヨーロッパから脱出したが、パレスチナへ向かった人は多くなかった。大半はオーストラリアやアメリカへ逃れたとされている。ヨーロッパの文化、風習、自然環境などに親しんだ人たちがそうした国へ逃れるのは当然だったが、それをシオニストは見通せなかったのだろう。大戦後、パレスチナに住むユダヤ人を集めるため、イラクなどでユダヤ人を狙ったテロ攻撃を実施している。 ナチはアウシュビッツだけで人びとを虐殺したわけではない。例えばウクライナではステファン・バンデラが率いていたOUNのバンデラ派(OUN/B)と手を組み、ユダヤ人、知識人、ロシア人、コミュニストなどを殺している。ウクライナでは、そのバンデラ派が2014年のクーデター以降、実権を握っている。そのウクライナをポーランド政府は支援してきた。 それに対し、ロシアのウラジミル・プーチン政権はウクライナからナチ勢力を一掃するとしている。その条件はロシアにとって譲れない。ドナルド・トランプ米大統領はロシアがウクライナでの戦闘で100万人を失い、西側の「制裁」で経済が破綻しているという前提でウクライナ問題を語っている。そうしたことを本当に信じているのだとすれば、彼の停戦案は相手にされない。ロシア政府は「ミンスク合意」の過ちを繰り返すことはないだろう。2022年2月以降に犠牲になったウクライナ兵は80万人程度、ロシア兵はその1割程度だ。 ロシアが苦境に陥っているという「御伽話」をトランプに吹き込んだ人物がいるとするならば、それはCIAの担当者か、彼がウクライナ担当特使に指名したキース・ケロッグ退役陸軍中将なのだと推測されている。 もし、トランプがそうした戦況を認識しているのだとすれば、そうした発言はカモフラージュで、ウクライナへの支援を止めて成り行きに任せるつもりかもしれない。そうした場合、1カ月程度でウクライナは戦争を継続できなくなる。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.30

厚生労働省は1月24日、今年11月分の「人口動態統計速報」を発表した。死亡者数は13万3177人。「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動」が始まる前年、2019年の同じ月に比べて1万3715名増えている。「COVID-19ワクチン」と称する遺伝子操作薬の接種数は一時期に比べて大きく減っているようだが、中期の副作用が続いているのだろう。今後、長期の副作用が起こるだろうが、それがどのようなものになるかは不明だ。 長年医薬品業界で研究開発に携わってきたサーシャ・ラティポワは早い段階からCOVID-19騒動と国防総省の関係を指摘していた。アメリカでは裁判所の命令で医薬品メーカーやFDA(食品医薬品局)が隠蔽しようとした文書が公開されたが、それを彼女は分析、バラク・オバマ大統領の時代から国防総省が「COVID-19ワクチン」の接種計画を始めたという結論に達していたのだ。 この「ワクチン」を接種させる口実として「SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)」が使われたのだが、診断手順を決めす時点でウイルスを単離できていなかったことをアメリカのCDC(疾病予防管理センター)は認めている。 しかも、本ブログでも繰り返し書いてきたが、診断に使っていたPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)は特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する技術。その増幅サイクル(Ct)を増やしていけば医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても陽性になり、偽陽性が増えていく。 偽陽性を排除するためにはCt値を17以下にしなければならず、35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されているのだが、国立感染症研究所(感染研)が2020年3月19日に出した「病原体検出マニュアル」のCt値は40。つまりその検査は無意味だ。 こうした事実を認識していたであろうWHOは責任を回避するためなのか、2020年12月14日にPCRのCt値を高くしすぎないようにと通告している。PCRを開発、1993年にノーベル化学賞を受賞したキャリー・マリスはこの技術は分析のものであり、診断を目的にしていないと語っていた。 アメリカではCDCがFDA(食品医薬品局)に「2019年新型コロナウイルス(2019-nCOV)リアルタイムRT-PCR診断パネル」のEUA(緊急使用許可)を発行させ、使用していたが、CDCは2021年7月にこのパネルを同年12月31日に取り下げると発表した。この診断パネルはインフルエンザA型とインフルエンザB型も検出できるとされていたが、区別できないためだとしている。COVID-19騒動でパンデミックを演出するために使われていたPCR検査が無意味だということを認めざるをえなくなったのだろう。 しかし、SARS-CoV-2と名付けられたウイルスが存在し、それが人工的に作られたものだということは早い段階から少なからぬ研究者が気づいていたと言われている。そのひとりと言われている学者がハーバード大学の化学/化学生物学部長を務めていたチャールズ・リーバーだ。 リーバーをFBIは2021年12月に逮捕している。容疑は納税申告書の不備と捜査官に対する虚偽の陳述だ。博士はNIH(国立衛生研究所)と国防総省から1500万ドル以上の助成金を受け取っているため、外国の政府や団体からの財政支援を含む金銭面の開示が求められていた。CIAの麻薬取引に肉薄したロサンゼルス警察の捜査官も納税申告の問題が指摘され、辞職に追い込まれている。リーバーの件でもFBIや司法の動きに不自然さを感じる人もいる。 ジョン・ラドクリフCIA長官を含む人びとは病原体のウイルスが中国の武漢研究所から漏れたとする説を支持してきたが、ウェルカム・トラストの理事長からWHO(世界保健機関)の主任科学者になったジェレミー・ファラーはCOVID-19の発生が中国にとって最悪のタイミングで発生したと強調していたとされている。多くの中国人が旅行する旧正月の直前に、主要な交通ハブである武漢で始まったのだ。 ファラーは騒動が始まった直後の数週間、自分の身の安全を非常に心配していたと言われ、イギリスの防諜機関MI5の元長官や現長官にアドバイスを求め、使い捨ての携帯電話を入手するなどの対策を講じた。中国に敵意を持つ人、あるいは組織が意図的に中国で病原体をまいたのではないかと疑ったのかもしれない。自然の中から発生したのでも中国人が研究所で作り出したのでもなく、彼が恐れなけらばならない人物、あるいは組織が実行したと疑ったのだろうと言われている。 イギリスでは2003年7月、同国の国防省で生物兵器防衛部門の責任者を務めていたデイビッド・ケリーが変死している。公式発表では手首の傷からの大量出血や鎮痛剤の注入が原因で、自殺だとされているが、手首の傷は小さく、死に至るほど出血したとは考えにくい。 しかも、彼は1991年に落馬して骨折、それが原因で右肘に障害が残り、右手でブリーフケースを持ったりドアを開けたりすることができなかった。携帯していた折りたたみ式のナイフの刃を研ぐこともできず、切れ味は悪かった。 アメリカ軍は従属国の軍隊を引き連れ、2003年3月にイラクを先制攻撃しているが、その際、攻撃を正当化するため、事実に反する内容の報告書が作成されている。その作成にイギリス政府が深く関与していた。 BBCの記者だったアンドリュー・ギリガンは2003年5月、ラジオ番組でその文書、いわゆる「9月文書」を取り上げ、粉飾されていることを明らかにした。アラステアー・キャンベル首席補佐官が情報機関の反対を押し切って「45分話」を挿入したと彼はサンデー・オン・メール紙で主張している。その報道があった直後にトニー・ブレア政権はギリガンの情報源がケリーだということを突き止め、ケリーは情報機関から尋問を受け、7月に外務特別委員会へ呼び出され、その2日後に死んだのだ。 COVID-19騒動の幕開きは2019年12月、中国の湖北省武漢の病院でSARS(重症急性呼吸器症候群)と似た重症の肺炎患者が発見されたところから始まる。患者から回収されたサンプルが「上海市公共衛生臨床中心」の張永振へ送られて検査したところ、すぐに「新型コロナウイルス」が発見され、そのウイルスが病気の原因だと断定されたとされている。 中国で伝染病対策の責任者を務めている疾病預防控制中心の高福主任は2020年1月22日、国務院新聞弁公室で開かれた記者会見の席上、武漢市内の海鮮市場で売られていた野生動物から人にウイルスが感染したとする見方を示した。この仮説を有力メディアは世界へ拡げた。 高福は1991年にオックスフォード大学へ留学して94年に博士号を取得、99年から2001年までハーバード大学で研究、その後04年までオックスフォード大学で教えている。また、NIAID(国立アレルギー感染症研究所)の所長を務めてきたアンソニー・ファウチの弟子とも言われている。 翌年の2月4日、横浜港から出港しようとしていたクルーズ船の「ダイヤモンド・プリンセス」でも似たような症状の患者が見つかり、人びとを恐怖させることになるが、その後、「SARSと似た重症の肺炎患者」が街にあふれ、死者が急増するという事態にはなっていない。例外的に重症者が集中的に出たのはイラン。議会の10%が感染し、12人以上の政府関係者や政治家が病気で死亡したとされている。感染力はあるものの毒性が弱いタイプと、感染力はないものの毒性の強いタイプがあったのではないだろうか。毒性の強いタイプは何者かが意図的に真いた可能性がある。 アメリカにおける生物化学兵器の研究開発はメリーランド州のキャンプ・デトリック(1955年からフォート・デトリックに格上げ)を中心に行われてきた。第2次世界大戦後、日本やドイツにおける生物化学兵器の研究成果を手に入れ、研究員を雇っている。 敗戦まで日本では軍医学校、東京帝大医学部、京都帝大医学部が中心になって生物化学兵器の研究開発が進められ、中国大陸では生体実験をするための部隊も存在していた。中でも有名な第七三一部隊の幹部は戦後、アメリカ軍に協力する一方、国立予防衛生研究所(予研)の中枢に収まった。その後進が感染研だ。 アメリカの国防総省がウクライナで生物化学兵器の研究開発を進め、その中心はDTRA(国防脅威削減局)だとロシア側は主張、ロシア議会は2023年4月に報告書を発表している。ロシア軍は2022年2月にウクライナをミサイル攻撃した後、ウクライナの研究施設から機密文書を回収した模様で、内容が詳細になっている。分析はイゴール・キリロフ中将が率いていたロシア軍のNBC防護部隊が中心になって行われてきた。 キリロフ中将は2022年3月7日に分析結果を公表、研究開発はDTRAから資金の提供を受け、CBEP(共同生物学的関与プログラム)の下で進められ、ウクライナにはDTRAにコントロールされた研究施設が約30カ所あったとされている。 キリロフが記者会見した翌日の3月8日、アメリカの上院外交委員会でビクトリア・ヌランド国務次官はウクライナの施設で研究されている生物化学兵器について語った。マルコ・ルビオ上院議員の質問を受け、兵器クラスの危険な病原体がロシア軍に押収されるかもしれないと語ったのだ。つまりウクライナの研究施設で生物化学兵器の研究開発が行われていたことを否定しなかった。 2022年8月4日にもキリロフは記者会見を開き、SARS-CoV-2は中国に対して意図的に放出されたアメリカの生物兵器であるという強い証拠があるようだと語っている。 そのキリロフは昨年12月17日、モスクワの自宅の前に仕掛けられていた爆発装置によって暗殺された。実行したのはウクライナの情報機関だが、アメリカ/NATOの承認なしにそうした挑発的な作戦を実行することは不可能だと考えられている。 SARS-CoV-2が人工的に作り出されたとするならば、ノースカロライナ大学のラルフ・バリックを無視することはできない。武漢病毒研究所(WIV)と彼は協力関係にあり、WIVの石正麗と2015年11月にSARSウイルスのスパイク・タンパク質をコウモリのウイルスのものと取り替えて新しいウイルスを作り出すことに成功している。石正麗へはアメリカのNIHから研究費として370万ドルが提供されていたと伝えられている。 中国ではSARS-CoV-2を人間へ感染させた自然界の動物は発見されていないのだが、北アメリカに生息するシカ、ノネズミ、コウモリを含む5種類の動物が感染していることが判明、それらの種はモンタナ州にあるロッキー・マウンテン研究所で実験動物として使用されていたことが突き止められた。この研究所は注目されている。 COVID-19プロジェクトを仕掛けたグループはアメリカの国防総省にいて、そのプロジェクトは終了していないと考えて良いだろう。それはバイオテロだとも言える。そのプロジェクトはビル・ゲイツたちが口にしてきた人口削減とも関係している可能性がある。 ロシアのNBC防護部隊副司令官のアレクセイ・ルティシェフ少将によると、アフリカ大陸におけるアメリカ軍の生物兵器活動は急速に拡大しているという。アメリカなど西側諸国はアフリカやインドで実験用医薬品の人体実験を行ってきた歴史がある。
2025.01.29
次回の「櫻井ジャーナルトーク」は2月21日午後7時から駒込の「東京琉球館」で開催、テーマは「米新政権にのしかかる現実」を予定しています。予約受付は2月1日午前9時からですので、興味のある方は東京琉球館までEメールで連絡してください。東京琉球館https://dotouch.cocolog-nifty.com住所:東京都豊島区駒込2-17-8Eメール:makato@luna.zaq.jp アメリカは自由と民主主義の守護神であり、しかも経済力と軍事力で他国を圧倒しているというイメージが作られてきましたが、現実との乖離が大きくなりすぎました。帝国主義国だという実態を隠しきれなくなり、経済力や軍事力が弱まって求心力を失いつつあります。そうした状況について考えたいと思っています。 アメリカが軍事的にロシアより弱いことは2011年3月に始まったシリアでの戦闘で明らかになり、22年2月からのウクライナを舞台として戦闘で戦闘力の差が大きいだけでなく、経済力でロシアが西側を上回っていることも明確になりました。状況を逆転するため、米英支配層の中には核兵器、化学兵器、生物兵器を利用したテロを目論んでいる勢力が存在するとも言われています。 バラク・オバマ政権が2014年2月にウクライナでネオ・ナチを使って仕掛けたクーデターの結果、EUとロシアとを結びつけていた天然ガスの輸送ルートはアメリカによって遮断され、EUは弱体化しましたが、ロシアは中国と関係を強化、今では戦略的同盟関係を結んでいます。 1971年8月にリチャード・ニクソン大統領がドルと金との交換停止を発表した後、アメリカは製造業から金融へシフト、「繁栄」を演出してきましたが、それは上部だけで実態がありません。「通貨カルト」の国になったとも言えるでしょう。 その通貨カルトは金融危機を生み出しました。2008年のリーマン・ショックはそうした危機によって生じた出来事のひとつであり、その後危機の度合いは高まっています。 そうした中ロシアは製造業を柱にして復活しました。ウクライナで戦闘が始まった後でもロシアが経済的にも疲弊していないことはロシア在住のアメリカ人などがインターネットで伝えていましたが、ジャーナリストのタッカー・カールソンもモスクワの豊かな生活を伝えています。 軍事面ではアメリカがF-35戦闘機のような「高額兵器」を生産しているのに対し、ロシアは高性能の戦闘機や防空システム、あるいは極超音速ミサイルを開発、ロシアはアメリカを数十年リードしたという人もいます。有力メディアや映画界を利用したプロパガンダでこうした現実をカバーすることはできないでしょう。 アメリカはイギリスの戦略を引き継ぎ、ユーラシア大陸周辺を海軍力で支配して内陸部を締め上げようとしてきましたが、その戦略自体が揺らいでいます。櫻井 春彦
2025.01.28
ドナルド・トランプ米大統領は1月23日、ジョン・F・ケネディ大統領(JFK)、ロバート・F・ケネディ上院議員(RFK)、マーティン・ルーサー・キング牧師(MLK)の暗殺に関する記録の機密を解除するように命じる大統領令に署名した。この大統領令は、JFKの全暗殺記録を完全公開する計画を15日以内に提示し、RFKとMLKの暗殺に関しては記録を見直した上で完全公開する計画を45日以内に提示することを求めている。ジョン・F・ケネディ暗殺 JFKは1963年11月22日、MLKは1968年4月4日、RFKは1968年6月6日にそれぞれ暗殺されたが、いずれもアメリカの情報機関や治安機関が関係していると言われている。JFKの場合、有力な「親米国家」も関係していると推測する人もいる。これまで記録の公開が進まなかった理由のひとつはこうしたところにあるのだろう。 しかし、推測通りCIAやFBIを含む政府機関が暗殺に関与していたとしても最も重要な情報は口頭のみで行われ、文書にはされていない可能性が高い。それに準ずる重要な情報の書かれた文書はすでに廃棄されているだろうが、想定外の場所に文書が眠っている可能性がある。 ケネディ大統領は大統領に就任した直後、インフレを回避するために鉄鋼会社の経営者と労働者に協力を求めた。鉄鋼価格を引き上げないという前提で賃金を据え置いて欲しいと大統領は1962年4月に提案、労働者は受け入れたのだが、業界のトップ企業だったUSスチールの会長は4月、大統領と会談した翌日に3.5%の鋼材値上げを発表すると通告、実際に値上げを発表、業界第2位のベツレヘム・スチールなども後を追うのだが、この決定に大統領は怒り、鋼材の購入先をまだ値上げを発表していないルーケンスに変更した。このやり取りでケネディ政権と鉄鋼産業の関係は険悪になっている。 第2次世界大戦後、アメリカの軍や情報機関の好戦派はソ連に対する先制核攻撃を計画していた。これは本ブログでも繰り返し書いてきたことだが、それに対してソ連はキューバへ中距離ミサイルを持ち込む。この事実をアメリカがわは1962年8月に察知、9月には地対空ミサイル発射装置を確認した。(Jeffrey T. Richelson, "The Wizards of Langley," Westview Press, 2001) 1962年10月19日にケネディ大統領は統合参謀本部のメンバーと会うが、その多数派はカーチス・ルメイのような好戦派。運び込まれたミサイルを空爆で破壊すべきだと主張した。空爆してもソ連は手も足も出せないはずだというのだが、ケネディ大統領はこうした好戦派の主張を拒否する。 そして10月22日に大統領はキューバにミサイルが存在する事実をテレビで公表、海上封鎖を宣言したが、戦略空軍はDEFCON3(通常より高度な防衛準備態勢)へ引き上げ、24日には一段階上のDEFCON2にする一方、ソ連を空爆する準備をしている。 10月27日にはルドルフ・アンダーソンが乗った偵察機U2がキューバ上空で撃墜され、シベリア上空ではチャールズ・モールツビーが乗ったU2をソ連のミグ戦闘機が迎撃していた。モールツビーは事態を司令部に報告、引き返すように命じられてアラスカへ向かう。同時にアメリカ側はF102Aを護衛のために離陸させ、ミグよりも早く米軍機がU2を発見、無事帰還できた。こうした出来事を受け、ロバート・マクナマラ国防長官はU2の飛行停止を命令したが、その後も別のU2がモールツビー少佐と同じコースを飛行している。(Richard J. Aldrich, "The Hidden Hand," John Murray, 2001) 結局ケネディ大統領とソ連の最高指導者だったニキータ・フルシチョフはキューバ危機を外交的に解決するが、ダニエル・エルズバーグによると、その後、国防総省の内部ではクーデター的な雰囲気が広がっていたという。ちなみに、ジョン・フランケンハイマーが監督した映画「5月の7日間」はケネディ大統領自身の勧めで制作されているが、映画が完成する前にケネディは暗殺された。(Peter Dale Scott, “The American Deep State,” Rowman & Littlefield, 2015) ケネディ大統領はイスラエルの核兵器の開発を懸念していたことでも知られている。ダビッド・ベングリオン首相と後任のレビ・エシュコル首相に対し、半年ごとの査察を要求する手紙を送りつけ、核兵器開発疑惑が解消されない場合、アメリカ政府のイスラエル支援は危機的な状況になるという警告されていた。(John J. Mearsheimer & Stephen M. Walt, “The Israel Lobby”, Farrar, Straus And Giroux, 2007) その一方、ケネディ大統領はイスラエル建国のために故郷を追われて難民化したパレスチナ人の苦境に同情、住んでいた家へ戻り、隣人と平和的に暮らす意思のある難民の帰還を認めた国連決議194号の履行を支持している。(Seymour M. Hersh, “The Samson Option,” Random House, 1991) キューバ危機を外交的に解決したケネディ大統領は1963年6月にアメリカン大学の卒業式で「平和の戦略」と呼ばれる演説を行い、はソ連と平和共存する道を歩き始めると宣言した。 アメリカが軍事力で世界に押しつける「パックス・アメリカーナ(アメリカ支配による平和)」を否定することから演説は始まり、アメリカ市民は「まず内へ目を向けて、平和の可能性に対する、ソ連に対する、冷戦の経過に対する、また米国内の自由と平和に対する、自分自身の態度を検討しはじめるべき」(長谷川潔訳『英和対訳ケネディ大統領演説集』南雲堂、2007年)だと語りかけた。 平和は不可能であると同時に非現実的だとする考えを「危険な敗北主義的」だとケネディ大統領は批判、そうした考え方は人類の破滅という結論に続いていると訴え、「関係者すべての利益になる一連の具体的措置と有効な協定に基づく、実際的で達成可能な平和に力を注ごう」と主張する。これはケネディ以降の大統領とは正反対の考え方だ。 また、ケネディ大統領は通貨制度へもメスを入れようとする。1913年に連邦準備法が制定されて以来、アメリカでは通貨政策を民間の銀行が支配、連邦準備制度に加盟する市中銀行の出資する連邦準備銀行が紙幣も発行していた。第2次世界大戦後にドルが世界の基軸通貨になったことから米英の巨大金融資本が世界の金融に大きな影響力を及ぼすことになった。 この仕組みが財政問題の根本にあると考えたケネディ大統領は1963年6月にEO11110と呼ばれている大統領令を出し、連邦準備制度の枠外で銀兌換紙幣を発行するように命令するが、1963年11月22日に大統領は暗殺され、この命令は取り消されてしまう。市中に流通していた紙幣は回収された。マーチン・ルーサー・キング牧師暗殺 公民権運動の指導者として知られるマーチン・ルーサー・キング牧師は1967年4月4日、ニューヨークのリバーサイド教会で開かれた「ベトナムを憂慮する牧師と信徒」主催の集まりに参加した。主催者の発表した声明の冒頭部分に書かれていた「沈黙が背信である時が来ている」という主張にキング牧師は賛成、「なぜ私はベトナムにおける戦争に反対するのか」というタイトルで演説している。 ところがロン・ポール元下院議員によると、キング牧師の顧問たちは牧師に対し、ベトナム戦争に焦点を当てないよう懇願していたという。そうした発言はリンドン・ジョンソン大統領との関係を悪化させると判断したからだが、牧師はそうしたアドバイスを無視、「リベラル派」とされる人々と対立することになる。キング牧師が暗殺されたのはリバーサイド教会での説教から1年後の1968年4月4日のことだ。ダニエル・エルズバーグは宣誓供述書の中で、キング牧師を暗殺したのは非番、あるいは引退したFBI捜査官で編成されたJ・エドガー・フーバー長官直属のグループだと聞いたとしている。(William F. Pepper, “The Plot to Kill King,” Skyhorse, 2016)ロバート・ケネディ暗殺 キング牧師暗殺から2カ月後の1968年6月6日、その年に予定されていた大統領選挙で最有力候補だったロバート・ケネディ上院議員が暗殺された。検死をしたトーマス・ノグチによると、議員には3発の銃弾が命中、致命傷は右耳後方のもので、銃口は1インチ(2.5センチメートル)以内の距離にあり、残りの2発は議員の右脇に命中していたのだが、逮捕されたのは議員の60センチメートル以上前を歩いていたサーハン・サーハンだった。しかも命中した銃弾はサーハンのピストルから発射されたものでもなかった。 JFK、MLK、RFK、いずれの暗殺とも公式見解に説得力はなく、事実に基づく非公式の調査が続けられてきた。そうした事実に基づく調査を封印するため、JFK暗殺の直後から唱えられ始めた呪文が「陰謀論」である。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.27
アメリカの国務省は1月24日、イスラエルとエジプトへの軍事資金を除く対外援助すべてについて「作業停止」命令を出し、新規援助を一時停止したと伝えられている。ロイターによると、USAID(米国国際開発庁)でウクライナにおけるプロジェクトを担当している職員もすべての作業を停止するよう指示されたという。 凍結されたプロジェクトの中には学校への支援、緊急の母子ケア、医療支援などが含まれているとUSAIDの職員は主張しているというが、このUSAIDはCIAの工作資金を流すパイプとして機能、CIAはウクライナを舞台とした対ロシア戦争で重要な役割を果たしてきたが、その対ロシア戦争は惨憺たる状況になっている。 2014年2月にバラク・オバマ政権がネオ・ナチを使ってウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した当時、クーデター政権の軍事力は反クーデター派より劣っていた。ネオ・ナチ体制を嫌い、軍や治安機関から約7割のメンバーが離脱したからだと言われている。 そこでアメリカ/NATOの傀儡である新政権の軍事力を増強しなけらばならなくなったのだが、そのためには時間が必要。そこでミンスク合意だ。アンゲラ・メルケル元独首相は2022年12月7日、ツァイトに対して「ミンスク合意」は軍事力を強化するための時間稼ぎだったと認めている。その直後にフランソワ・オランド元仏大統領はメルケルの発言を事実だと確認した。アメリカ/NATOは8年かけてウクライナの戦力を増強したのである。 2022年に入るとキエフ政権がウクライナ東部のドンバスに対する砲撃の激しさを増す一方、ドンバス周辺に兵力を集めた。軍事の素人でもアメリカ/NATOがドンバスに対する本格的な戦争を始めるつもりだろうということは想像できたのだが、その直前、ロシア軍は準備が不十分な状態でウクライナをミサイル攻撃し始めている。何らかの緊急事態が生じた可能性がある。 それ以降、ロシア軍はミサイル、滑空弾、ドローン、戦闘機、戦車、防空システムなどでウクライナ軍を圧倒、砲弾は6対1から10対1の優位性を持つ。言うまでもなく、制空権はロシア軍が握っている。 ロシア軍が攻撃を始めた直後からウクライナ側とロシア側はイスラエルやトルコを仲介役として停戦交渉を開始、両国はほぼ合意している。その当時、イスラエルの首相だったナフタリ・ベネットは2023年2月4日、交渉がどのように展開したかを詳しく語っている。 ベネットは2022年3月5日にモスクワへ飛んでウラジミル・プーチン露大統領と数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけることに成功、その足でベネットはドイツへ向かってオラフ・ショルツ首相と会っている。 ところが、その3月5日にウクライナの治安機関であるSBUのメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームで中心的な役割を果たしていたデニス・キリーエフを射殺した。クーデター後、SBUはCIAの配下で活動している治安機関だ。 停戦交渉はトルコ政府の仲介でも行われ、やはり停戦でほぼ合意に達している。その際に仮調印されているのだが、その文書をプーチン大統領はアフリカ各国のリーダーで構成される代表団がロシアのサンクトペテルブルクを訪問した際に示している。2023年6月17日に会談した際、プーチン大統領は「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案を示しているのだ。その文書にはウクライナ代表団の署名があった。つまりウクライナ政府も停戦に合意していたのだ。 キリーエフが殺害されて間もない2022年4月9日にイギリスの首相を務めていたボリス・ジョンソンがキエフへ乗り込み、ロシアとの停戦交渉を止めるように命令。同年4月30日にはアメリカのナンシー・ペロシ下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓っている。 ゼレンスキーは2020年10月にイギリスを公式訪問しているが、その際、イギリスの対外情報機関MI6の長官、リチャード・ムーアを訪問、会談している。その訪問の様子が撮影された後、ゼレンスキーはMI6のエージェントであり、ムーア長官がハンドラーだと言われるようになった。その訪問後、ゼレンスキーの警護担当者はウクライナ人からイギリス人へ交代になったとも言われている。 インターネット・メディアのグレイゾーンによると、イギリス国防省の監督下、チャーリー・スティックランド中将が2022年2月26日、「プロジェクト・アルケミー(錬金術計画)」なる対ロシア計画を遂行するためのグループを組織した。ゼレンスキー政権はイギリス支配層の命令でロシアとの戦争を継続、アメリカのジョー・バイデン政権、つまりネオコンが支援していたように見える。 こうしたイギリスやアメリカの動きを見てロシアは話し合いでの解決は困難だと判断したようで、プーチン政権は2022年9月21日に部分的動員を発表、約30万人が集められて軍事訓練が実施されたのだが、実際に戦線へ投入された兵士はそのうち数万人にすぎない。ローテーションさせながら余裕を持って戦っている。 戦況から考えて、ロシア軍の死傷者数がウクライナ軍を上回ることは考えられない。砲弾数から考えて、ロシアの死傷者数はウクライナの1割から1割5分だろう。 元CIA分析官のラリー・ジョンソンは兵士の遺体引き渡しで、その比率がロシア兵49名に対し、ウクライナ兵757名だったと指摘、とウクライナ軍の遺体引き渡しから、ロシア側の戦死者1名に対し、ウクライナ側の戦死者は15名だとしている。 イギリスのベン・ウォレス元国防大臣は2023年10月1日、テレグラフ紙に寄稿した記事の中で、その当時、ウクライナ兵の平均年齢はすでに40歳を超えていると指摘、もっと多くの若者を前線へ送り出せと要求していた。それだけ死傷者数が多いと言うことをイギリスの元国防大臣も認めている。 明らかに負けているウクライナが勝っていると主張する人は日本にもいたが、ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領もそのように言い張っている。ドゥダはロシアがウクライナとの戦争に勝利すればさらなる攻撃を仕掛ける」と主張、「ロシアが勝利できないようにすること」が重要で、ロシアが勝利した、成功したと大声で宣伝できないようにしなければならないとしている。こうしたドゥダの発言について、プーチン大統領が受け入れられない取り引きをさせようとしているのではないかとジョンソンは推測している。実際、トランプの発言は彼がそうした罠に陥っていることを暗示している。 トランプに間違った情報を吹き込んでいる人たちがいるとしたら、それはCIAである。CIAの前身であるOSSはイギリスの情報機関からアドバイスを受けて設立されたのだが、CIA/OSSもイギリスの情報機関も背後には金融資本が存在している。 CIAは情報の収集と分析を行うという名目で設立されたが、1950年代に入ると破壊工作を担当する部門が作られ、肥大化していく。その破壊工作部門の中核になったのがOPCであり、その人脈はイギリスとアメリカの情報機関がレジスタンス対策で組織したジェドバラだ。 CIAが行なっていた秘密工作の一端は1970年代半ば、議会で明らかにされた。上院ではフランク・チャーチ議員が委員長を務める委員会、また下院ではオーティス・パイク議員が委員長を務める委員会がその舞台になった。そうした調査の中で、CIAは特殊部隊と連携し、軍とは別の戦争をベトナムで展開していたことが判明している。 リンドン・ジョンソン政権時代、国防総省の方針は毎週火曜日に開かれる昼食会で決められていた。その席には大統領のほか、国務長官、国防長官、国家安全保障補佐官、ホワイトハウス報道官、そしてNSC(国家安全保障会議)のロバート・コマーが参加していた。コマーはCIAの分析官だ。 コマーは1967年5月にDEPCORDS(民間工作と革命的開発支援担当のMACV副官)としてサイゴンへ入る。6月には彼の提案に基づいてMACVとCIAが共同で極秘プログラムICEXを始動させる。このプログラムは間もなく、「フェニックス・プログラム」と呼ばれるようになった。これは「ベトコンの村システムの基盤を崩壊させるため、注意深く計画されたプログラム」である。 この作戦のメンバーに参加していた将校や下士官は合わせて126名。殺人担当チームは軍の特殊部隊から引き抜いて編成され、命令はCIAから出ていた。つまり正規軍の指揮系統から外れていた。 そうした秘密工作の実働チームとして動いていたのは、CIAが1967年7月に組織したPRUという傭兵部隊。その隊員は殺人や性犯罪、窃盗、暴行などで投獄されていた囚人たちが中心だった。1968年3月にソンミ村のミ・ライ地区とミ・ケ地区で農民が虐殺されたが、これもフェニックス・プログラムの一環だった。(Douglas Valentine, "The Phoenix Program," William Morrow, 1990) 農民を虐殺したのはアメリカ陸軍の第23歩兵師団第11軽歩兵旅団に属すウィリアム・カリー大尉率いる小隊。犠牲者の数はアメリカ軍によるとミ・ライ地区だけで347人、ベトナム側の主張ではミ・ライ地区とミ・ケ地区を合わせて504人だとされている。 この虐殺を止めたのは現場の上空にさしかかったアメリカ軍のヘリコプターに乗っていた兵士。ヘリコプターからヒュー・トンプソンという乗組員が農民を助けるために地上へ降りたのだ。その際、トンプソンは同僚に対し、カリーの部隊が住民を傷つけるようなことがあったら、銃撃するように命令していたと言われている。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012) アメリカ軍に同行していた従軍記者や従軍カメラマンは非戦闘員が虐殺された事実を知っていたのだが、報道していない。虐殺事件をアメリカの議員らに告発したアメリカ軍兵士もいたが、政治家も動かない。 この記事を書いたのはフリーランスだった調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュ。ライフやルックといった有名な雑誌からは掲載を拒否され、ワシントンを拠点とするディスパッチ・ニュース・サービスという小さな通信社を通じて伝えている。1969年11月のことだ。 虐殺があったことをハーシュに伝えたのはジェフリー・コーワン。後に南カリフォルニア大学の教授になる人物だ。その当時はベトナム戦争に反対していたユージン・マッカーシー上院議員の選挙キャンペーンに参加、ハーシュもマッカーシー陣営に加わっていた。 虐殺を隠しきれなくなったアメリカ軍はウィリアム・ピアーズ将軍に調査を命じるが、この人物は第2次世界大戦中、OSSに所属、1950年代の初頭にはCIAの台湾支局長を務めていた。要するに、CIAの人間である。 ジョージ・W・ブッシュ政権で国務長官を務めるコリン・パウエルが少佐として1968年7月にベトナム入りしている。配属されたのはカリー大尉と同じ第23歩兵師団。パルエルは2004年5月4日、CNNのラリー・キング・ライブに出演した際、事件後に現場を訪れて衝撃を受けたと話している。 ジャーナリストのロバート・パリーらによると、パウエルは兵士の告発など軍上層部が聞きたくない声を握りつぶすことが役目だった。その役割が評価されて出世したと言われている。 1973年9月にCIA長官となったウィリアム・コルビーはアレン・ダレスの側近のひとりで、CIAのサイゴン支局長、極東局長、そして1968年から71年までフェニックス・プログラムを指揮していた。このコルビーはチャーチ上院議員が委員長を務める特別委員会でCIAの秘密工作について詳しく説明、議会の公聴会では「1968年8月から1971年5月までの間にフェニックス・プログラムによって2万0587名のベトナム人が殺され、そのほかに2万8978名が投獄された」と証言している。 コルビーは1976年1月にCIA長官を解任され、1975年まで中国駐在特命全権公使(連絡事務所長)を務めていたジョージ・H・W・ブッシュを後任に選ばれた。 ブッシュはエール大学でCIAのリクルート担当者だったボート部のコーチ、アレン・ウォルツと親しく、学生の秘密結社スカル・アンド・ボーンズのメンバーだった。また彼の父親であるプレスコット・ブッシュは上院議員になる前、ウォール街の大物として知られ、アレン・ダレスと親しくしていた。彼が重役を務めたユニオン・バンキングという金融機関はウォール街がナチスへ資金を流すパイプのひとつだったとされている。 ちなみに、コルビーは1984年に離婚、元外交官のサリー・シェルトンと再婚し、核兵器凍結運動などに関する講義をするようになった。そして1996年の春、カヌーで出かけたまま行方不明になり、数日後に彼の遺体が発見されている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.26
ドナルド・トランプ米大統領はウクライナにおける戦闘を終結させようとしていると言われているが、その目的を達成することは難しいと見られている。彼のウクライナ情勢に関する発言は事実との乖離が大きいため、ウラジミル・プーチン露大統領との交渉は難航する可能性が高いからだ。交渉を失敗させるためにCIAが偽情報をトランプに吹き込んでいると疑う人もいる。 トランプはロシア軍の死傷者数を80万人に達し、ロシア経済は弱体化していると主張、そうした前提で「制裁」をちらつかせ、ロシアを屈服させようとしているのだが、ロシア側の死傷者は9万人弱だと反プーチン派の露メディアも推測している。 トランプはロシア軍の死傷者数について、ウクライナ大統領を名乗るウォロディミル・ゼレンスキーの発表した数値をそのまま垂れ流しているようだが、戦況に関する情報はこの数字が間違っていることを示している。「80万人」はウクライナ側の数字だろう。 ロシアはアメリカによる「制裁」で西側の企業が撤退したことで地元企業が活性化、兵器の生産は西側を大きく上回っている。ミサイル、滑空弾、ドローン、戦闘機、戦車、防空システムなどの兵器でロシアはアメリカ/NATOを質的にも量的にも圧倒しているのだ。砲弾の数を比較すると、ロシアが砲弾において6対1から10対1の優位性を持っていることは2年以上前からわかっている。この情報だけでもトランプの発言が間違っていることは明らかである。 IMFの予測でもロシア経済は西側の「制裁」を受けても順調。2024年の経済成長率は約4%、失業率は歴史的に低い2.6%。購買力平価で比較するとロシアはドイツや日本を上回り、世界第4位になると世界銀行は発表している。 ジョー・バイデンが大統領に就任した直後、彼や彼を担いでいたネオコンは「ルビコンを渡った」のであり、後へは引けない。ネオコンに従属し、ロシアとの戦争を始めたヨーロッパ諸国も同じ。こうした西側の国々は自分たちがロシアに楽勝すると思い込んでいたように見える。ロシアを屈服させればロシアの富、あるいは資源を奪えると算盤を弾いていたのだろうが、裏目に出た。 もっとも、EUの沈没はバラク・オバマ政権が2014年2月にネオ・ナチを使い、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したクーデターの目的のひとつだった。当時、EUとロシアは接近していたのだが、両者を結びつけていたのがロシア産の安い天然ガス。その天然ガスを輸送するパイプラインがウクライナを通過していたので、ウクライナを抑えれば天然ガスの輸送を抑えることができる。 そうしたリスクを考えてなのか、ドイツとロシアはウクライナを迂回してパイプライン、「ノードストリーム(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」をバルト海に建設したのだが、それに対し、アメリカ政府は破壊を予告していた。 例えば、国務次官を務めていたビクトリア・ヌランドは2022年1月27日、ロシアがウクライナを侵略したらノード・ストリーム2は前進しないと発言、同年2月7日にはジョー・バイデン大統領がノード・ストリーム2を終わらせると主張、記者に実行を約束している。そして2022年9月、NS1とNS2は爆破されてしまう。ドイツをはじめとするEUの経済は大きなダメージを受けた。アメリカにこれだけのことをされてもEUは何も言えなかった。EUに関しては、アメリカの思惑通り、沈没しつつある。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.25
ウクライナやパレスチナは戦乱で建造物だけでなく社会そのものが崩壊、東アジアもきな臭くなっている。いずれの地域でも中心的な役割をは対しているのはアングル・サクソン系国のアメリカとイギリスだ。 米英を含むヨーロッパは近代と呼ばれている時代を築いた。そうしたことを可能にした富の相当部分は16世紀以降、ラテン・アメリカから盗み出されている。 例えば、1545年に発見されたボリビアのポトシ銀山では18世紀までに少なくとも15万トンが運び出されたとされ、スペインが3世紀の間に南アメリカ全体で産出した銀の量は世界全体の80%に達したと言われている。全採掘量の約3分の1は「私的」にラプラタ川を経由してブエノスアイレスへ運ばれ、そこからポルトガルへ向かう船へ積み込まれた。 スペインも同じように略奪していたが、それらの国が財宝を運ぶ船を海賊に襲わせて富を築いたのがエリザベス1世時代のイギリスだ。中でも悪名高い海賊がジョン・ホーキンス、フランシス・ドレイク、ウォルター・ローリーである。 ホーキンスの場合、西アフリカでポルトガル船を襲って金や象牙などを盗み、人身売買のために拘束されていた黒人を拉致、その商品や黒人を西インド諸島で売り、金、真珠、エメラルドなどを手に入れている。 エリザベス1世の時代、イギリスではシオニズムが登場する。16世紀後半、イギリスではアングロ-サクソンを「イスラエルの失われた十支族」だと信じる人が現れ、自分たちこそがダビデ王の末裔だとする信仰がこの時期に出現した。ブリティッシュ・イスラエル主義ともいう。イギリスや西側世界にシオニズムを広めた人物として、ブリティッシュ外国聖書協会の第3代会長を務めた反カトリック派のアントニー・アシュリー-クーパー(シャフツバリー伯爵)が知られている。 17世紀初頭にイギリス王として君臨したジェームズ1世は自分を「イスラエルの王」だと信じていたという。その息子であるチャールズ1世はピューリタン革命で処刑されたが、その革命で中心的な役割を果たしたオリヴァー・クロムウェルなどピューリタンもジェームズ1世と同じように、「イスラエルの失われた十支族」話を信じていたようだ。 こうした信仰は19世紀に入ると帝国主義と一体化し、パレスチナ侵略が具体化してくる。イギリス政府は1838年、エルサレムに領事館を建設し、その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査、イギリスの首相を務めていたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収する。そして1917年11月、アーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ書簡を出した。いわゆる「バルフォア宣言」だ。 19世紀後半にイギリスを動かしていたグループ、「選民秘密協会」の中心はセシル・ローズ、ナサニエル・ロスチャイルド、ウィリアム・ステッドといった人たちだ。少し後からアルフレッド・ミルナーがグループを率いるようになった。アングロ・サクソンとユダヤのエリートが手を組んでいる。 セシル・ローズは1877年6月にフリーメーソンへ入会し、その直後に『信仰告白』を書いた。その中で彼は「私たち(アングロ・サクソン)は世界で最も優れた人種であり、私たちが住む世界が増えれば増えるほど、人類にとってより良いものになる」と主張している。 「より多くの領土を獲得するあらゆる機会を捉えることは我々の義務であり、より多くの領土は単にアングロサクソン人種の増加、つまり世界が所有する最も優れた、最も人間的で最も名誉ある人種の増加を意味するという考えを常に念頭に置くべきである」というのだ。 1899年にイギリスは南アフリカ戦争を仕掛け、トランスバールとオレンジを併合、すでにイギリス領になっていたケープ植民地とナタールと合わせて南アフリカ連邦を作り上げた。その後、オランダ系のボーア人とイギリス系の白人は手を組んでアパルトヘイト(人種隔離政策)を推進、有色人種を支配するシステムを作り上げていく。イスラエルがアパルトヘイト時代の南アフリカと似ているのは必然だ。 その後、金産出量の半分以上を南アフリカが占める時期が続き、イギリスの金融界は金本位制を採用する国々の通貨に大きな影響力を持つことになった。南アフリカの金産出量が中国に抜かれたのは2007年のことである。 イギリスの支配グループは20世紀に入ると海軍力を使った世界制覇計画を作り上げた。イギリスが「明治維新」を後押しして中国やロシアとの戦争へと導いた理由もそこにある。 その世界制覇計画をまとめた論考をハルフォード・マッキンダーは1904年に発表している。ユーラシア大陸の周辺部を海軍力と傭兵で支配、内陸部を締め上げ、最終的にはロシアを征服するというものだ。この計画はその後も生き続け、ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」も強く影響を受けている。ネオコンも引き継いだが、戦術が稚拙で、世界は核戦争の瀬戸際まで追い詰められた。 アングロ・サクソンがウクライナをクーデターで制圧、ベラルーシでも体制転覆を試み、ガザでの虐殺を支援しているのはひとつの戦略に基づいている。その戦略を達成するまで、彼らは侵略、破壊、虐殺、略奪をやめられないだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.24
イスラエルとハマスが合意した42日間の停戦協定は1月19日に発効したが、ハマスの幹部によると、イスラエルはガザ上空に偵察ドローンを継続的に飛ばし、非武装の住民に対して発砲するなど協定違反が発生している。ガザでは停戦が発表されてから24時間以内に122人の遺体が病院へ運ばれたという。 この協定が締結される際、ドナルド・トランプが中東特使に指名したスティーブン・ウィトコフが中心的な役割を果たし、トランプ政権に期待する声もあがったが、早くも行手に暗雲が垂れ込めている。 イスラエルの退役軍人で構成され、占領地での実態を告発する支援をしている団体「ブレイキング・ザ・サイレンス」によると、ヨルダン川西岸の都市ジェニンではイスラエル軍による大規模な軍事作戦が展開され、空爆とインフラの破壊で「ガザ化」されつつあると警告している。 また、トランプはウクライナでの戦闘をすぐに終えさせると言っていたが、最近は100日という数字を示している。ウラジミル・プーチンがトランプの提案を拒否した場合、ロシアに対するさらなる「制裁」とウクライナへの軍事援助で圧力をかけるという。リンドン・ジョンソンが偽旗作戦で始めたベトナム戦争を終えるためにリチャード・ニクソンが行ったようなことをするというわけだ。 しかし、トランプの方針はロシアが疲弊しているということが前提になっている。その前提が間違っている。彼は100万人近いロシア兵が戦死、ウクライナ兵の戦死者は約70万人だと主張しているが、さまざまな情報から考えて、これはありえない。 2014年2月にバラク・オバマ政権がネオ・ナチを使い、キエフでクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したが、その直後からヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部では反クーデターの住民が動き始めた。クリミアでは住民投票を経てロシアと一体化、東部では武装闘争が始まったのだが、その時点で軍や治安機関の約7割がクーデター体制を拒否して離脱、一部は反クーデター軍へ合流したとされている。そのまま内戦が続けば反クーデター軍が勝利、ネオ・ナチ体制が崩壊する可能性があった。 そこで、クーデターを仕掛けた西側としては、クーデター体制の戦力を増強するための時間が必要だった。兵器を供給、兵士を訓練するだけでなく、ヒトラーユーゲントのような年少者を育てる仕組みを作った。戦闘技術だけでなく、ナチズムを叩き込んだのである。時間稼ぎに使われたのが「ミンスク合意」にほかならない。 アンゲラ・メルケル元独首相は2022年12月7日、ツァイトに対して「ミンスク合意」は軍事力を強化するための時間稼ぎだったと認めた。その直後にフランソワ・オランド元仏大統領はメルケルの発言を事実だと語っている。アメリカ/NATOは8年かけてウクライナの戦力を増強した。 2022年に入ると、キエフ政権は東部の反クーデター派住民を攻撃する動きを見せた。ミンスク合意から8年後のことだ。ロシア軍が動いたのはその直後だった。当初、ロシア軍は戦闘の準備ができていなかったことから数的に劣勢だったが、ウクライナ軍を圧倒する。 ウクライナ政府はロシア政府と停戦交渉を開始、ほぼ合意したが、それをイギリス政府やアメリカ政府が妨害した。さらにイギリスの情報機関MI6はウォロディミル・ゼレンスキー大統領の周辺からウクライナ人を排除、イギリス人を配置した。 イギリスやアメリカはロシアを過小評価し、自分たちを過大評価。そしてウクライナのNATO化が促進される。NATO諸国は簡単に勝てると信じていたようだが、そうした展開にはならない。2022年9月21日にはロシア政府が部分的動員を発表。その動員で約30万人が集められ、訓練を実施されたが、実際に戦線へ投入された兵士はそのうち数万人にすぎず、ローテーションさせながら余裕を持って戦っている。 ウクライナ軍が壊滅的な状況になっていることをイギリスのベン・ウォレス前国防大臣は2023年10月1日、テレグラフ紙に寄稿した記事の中で明らかにしている。 ウォレスによると、その当時、ウクライナ兵の平均年齢はすでに40歳を超えていると指摘、もっと多くの若者を前線へ送り出せと要求している。それだけ兵士が死傷しているということだ。ウクライナの街頭で徴兵担当者に拉致される男性の映像がインターネットで流されている。ロシア兵の死傷者数はウクライナ兵の1割程度というのが常識的な見方である。 ウクライナは兵士も兵器も枯渇し、街頭では男性が拉致され、そうした光景を撮影した映像がインターネット上を流れている。不十分な訓練で最前線に送られ、1、2カ月で83%が戦死しているとネオコン系シンクタンクのISWも伝えている。 アメリカ/NATOにとってウクライナはロシアを疲弊させるための道具にすぎず、ウクライナ人に対し、最後にひとりまでロシア軍と戦えと命じている。 ロシアが経済的にも疲弊していないことはロシア在住のアメリカ人などがインターネットで伝えていたが、ジャーナリストのタッカー・カールソンはウラジミル・プーチン露大統領のインタビューだけでなく、モスクワの豊かな生活を伝えている。トランプもこうした話を知っていそうなのだが、彼の発言を聞く限り、知らないようだ。 元CIA分析官のラリー・ジョンソンもトランプがロシア人の死傷者数を100万人以上だとした発言を誤解だと指摘、彼がデタラメを言ったのか、CIAがトランプか彼のスタッフに嘘を教えたのかだとしている。 かつてリチャード・ニクソンは自分たちが望む方向へ世界を導くため、アメリカが何をしでかすかわからないと思わせれば良いと考え、イスラエルのモシェ・ダヤンの場合、イスラエルは狂犬のようにならなければならないと語ったという。ネオコンは「脅せば屈する」と信じた。そしてトランプは強面の発言が中国やロシアとの交渉で効果的だと本気で信じているのかもしれないが、本ブログでは繰り返し書いてきたように、中露には通用しない。 ドワイト・アイゼンハワーやニクソンは交渉相手を核兵器で脅して成功した(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017)が、ロシアを脅せば、核戦争の引き金になりかねない。 おそらく、トランプの背後にはネオコンの戦術を危険だと考える支配層グループが存在している。トランプもアメリカを中心とした支配システムを壊そうとはしていないはずだが、今、その支配システムは崩れ始めている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.23
アメリカで2008年に導入されたFISA(外国情報監視法)第702条によって、ハイテク企業は電話、テキスト・メッセージ、メールなどの通信記録をFBI(連邦捜査局)、CIA(中央情報局)、NSA(国家安全保障局)などアメリカの情報機関へ引き渡さなければならなくなった。人びとの通信内容を監視することを許すわけで、民主主義とは相容れない憲法に違反した法律だ。 この『1984』を想起させる法律に反対していたトゥルシー・ギャバード元下院議員をドナルド・トランプは国家情報長官に指名した。そこでFISAを廃止させるのではないかと期待する人がいたようだが、ここにきて彼女は問題の法律を支持すると述べている。こうした発言は議会の承認を得るためには良いのかもしれないが、これまでギャバードを支援していた人に対する裏切りだとも考えられている。既存の支配システムを前にして、彼女は屈服せざるをえなかった。 アメリカでは2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された後、国内では監視体制が強化されて収容所化が進行、国外では侵略戦争が本格化している。 国内を収容所化しようとする計画は以前からあった。例えばリチャード・ニクソンが大統領だった1970年当時、令状なしの盗聴、信書の開封、さまざまな監視、予防拘束などをFBIやCIAなどの機関に許そうという「ヒューストン計画」が作成されている。この計画はジョン・ミッチェル司法長官が反対、ニクソン大統領を説得して公布の4日前、廃案にしている。(Len Colodny & Tom Schachtman, “The Forty Years Wars,” HarperCollins, 2009) その一方、支配層に歯向かう人びとを拘束する計画も練られていた。1967年4月にベトナム戦争に反対する声を上げようと訴えたマーチン・ルーサー・キング牧師はその丁度1年後に暗殺されたが、それを切っ掛けにして始まった暴動を鎮圧するために「ガーデン・プロット」が作成され、2旅団が編成され、ケント州立大学やジャクソン州立大学での銃撃につながる。 ニクソン政権は1971年にこの部隊を解散させたのだが、78年に復活する。サミュエル・ハンチントンがジミー・カーター政権で「治安調整官」に就任、ズビグネフ・ブレジンスキーと一緒に「FEMA(連邦緊急事態管理庁)」を作り上げたのだ。(Peter Dale Scott, “The American Deep State,”Rowman & Littlefield, 2015) ロナルド・レーガン政権になると、FEMAはCOG(政府継続計画)へと発展する。1982年にレーガンはNSDD55を出してCOGプロジェクトを承認、NPO(国家計画局)が創設された。(Andrew Cockburn, “Rumsfeld”, Scribner, 2007) このプロジェクトは核戦争で正規の政府が機能しなくなった場合という条件で、地下政府を始動させることを定めているのだが、1988年にプロジェクトは変質する。大統領令12656が出され、始動する条件が核戦争から国家安全保障上の緊急事態に変更されたのだ。そして2001年9月11日に国家安全保障上の緊急事態が引き起こされた。 アメリカの外交や軍事を支配しているネオコンはソ連が消滅した直後の1992年2月にアメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクトを作成した。この草案はポール・ウォルフォウィッツが中心になって書き上げられたことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれる。 このドクトリンの第一の目的はソ連と同程度の脅威をもたらす新たなライバルが再び出現するのを防ぐこと。そのため、資源が存在する地域を潜在的なライバルが支配することを防ぐように努め、ドイツや日本をアメリカ主導の集団安全保障体制、つまり戦争マシーンに組み入れるとしている。DPG草案で想定されている地域には西ヨーロッパ、東アジア、旧ソ連の領土、および南西アジアも含まれる。このドクトリンも2001年9月11日に始動した。 トランプはウクライナでの戦闘をすぐに終えると主張しているが、それは難しい。ロシア政府が西側に対する信頼をなくしているからだ。東西ドイツを統一する際、NATO諸国はNATOを東へ1インチたりとも拡大させないと約束したが、守らず、ミンスク合意はウクライナのクーデター体制の戦力を増強するために時間稼ぎにすぎなかった。しかもウクライナ軍は壊滅状態であり、ロシアは軍も経済も健全だ。ロシアが譲歩する要素はないと指摘されている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.22

アメリカのコリ・ブッシュ前下院議員はジャーナリストのマイケル・トレーシーに対し、彼女や民主党の議員がウクライナへの軍事支援に賛成したのは、ウクライナが敗北してアメリカの「黒人と褐色人種」がロシア軍と戦わなければならなくなると恐れたからだと語っている。資金の相当部分が兵器の代金としてアメリカの軍事産業へ還流し、ロビー団体等を通じて議員の懐へも流れ込んでくると見られているが、彼女はその点に触れなかったようだ。 ウクライナが降伏することをドナルド・トランプ大統領も望んでいないはず。アメリカでの報道によると、朝鮮戦争のような、平和条約を締結しない戦闘の凍結という形をアメリカ側は望んでいるというが、すでに何度も欧米諸国の政府に騙されているロシア政府がその案を呑むとは思えない。 朝鮮戦争は1950年6月から53年7月まで続いたとされている。1949年に中国で国民党の敗北が決定的になった時点でコミュニストの指導者が揃ったところで砲撃により暗殺、偽装帰順させていた部隊を一斉蜂起させる計画を立てていたが、これは事前に発覚して失敗、その時点でアメリカの破壊工作機関OPCは朝鮮半島で挑発作戦を始めている。 その段階で中国への軍事侵攻が計画されていたと見られ、アメリカ軍は日本を兵站の拠点と考えたはず。そこで、ストライキで物流が止まらないように、海運の拠点である横浜をFに、神戸をTに抑えさせる。陸の輸送を担う国鉄は労働組合が強かったが、1949年7月に下山事件と三鷹事件、8月に松川事件が引き起こされ、いずれも労働組合が実行したことにされて組合は弾圧された。 しかし、アメリカ軍は山岳での戦闘に慣れていないこともあって劣勢になり、朝鮮半島の南端に追い詰められる。この戦況を好転させたのは旧日本軍の参謀たちだと言われている。 1953年1月に大統領はハリー・トルーマンからドワイト・アイゼンハワーへ交代、泥沼化していた戦争の早期停戦を目指す。そこで、新大統領は中国に対して休戦に応じなければ核兵器を使うと脅したとされている。休戦は同年7月に実現した。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) アイゼンハワー政権で副大統領を務めたリチャード・ニクソンはベトナム戦争から抜け出すため、カンボジアに対する秘密爆撃を実行しながらアイゼンハワーの手法、つまり核兵器で恫喝したとされている。(前掲書) ロシアが戦争の凍結に応じないと少なからぬ人が推測している。これまで西側から何度も騙され、煮湯を飲まされてきたからだ。朝鮮や北ベトナムとは違い、ロシアを核兵器で脅しても効果はない。 イギリス、ドイツ、フランスといった国の兵士で構成される「平和維持軍」をウクライナへ入れることも考えられない。イギリス、ドイツ、フランスはアメリカと同様、ウクライナでロシアと戦っている相手だ。ロシアから見ると、敵を引き入れることになる。 そもそもウクライナで大統領を名乗っているウォロディミル・ゼレンスキーは2020年10月に大統領としてイギリスを公式訪問した際、イギリスの対外情報機関MI6のリチャード・ムーア長官と密談している。会談はジャーナリストに察知され、道でインタビューされている。ゼレンスキーはMI6のエージェントであり、ムーア長官がハンドラーだと信じられている。 また、ウクライナの治安機関SBU(ウクライナ保安庁)や情報機関HUR(ウクライナ国防省情報総局)はCIAの配下にある。ウクライナ政府とロシア政府が停戦でほぼ合意した2022年3月5日、SBUのメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺した。4月9日にはイギリスのボリス・ジョンソン首相がキエフへ乗り込み、ロシアとの停戦交渉を止めるように命令している。 こうした流れの中、ゼレンスキーの周辺にいる警護のチームはイギリス訛りの英語を話し、ウクライナ国旗の上下を逆さにするような人たちで構成されるようになった。 ウクライナでロシアが戦っている相手はイギリスとアメリカだとも言えるだろう。ウクライナがロシアに降伏するということは、イギリスとアメリカがロシアに降伏することを意味すると言われても仕方がない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.21

COVID-19騒動で世界が疲弊する中、ウクライナ、シリア、パレスチナで戦闘が続いてきた。ウクライナではロシアとアメリカ/NATOが衝突してロシアの勝利が決定的であり、シリアではアメリカ/NATOが操る傭兵集団がバシャール・アル・アサド政権を倒し、パレスチナでは米英が支援するイスラエルがパレスチナを破壊し、住民を虐殺している。 こうした中、イランのマスード・ペゼシュキアン大統領とロシアのウラジミール・プーチン大統領は包括的戦略パートナーシップ協定にモスクワで署名した。INSTC(南北輸送回廊)の構築、貿易、エネルギー、技術、インフラなどを含む様々な分野での協力を強化することを目指す一方、相互防衛を誓約した。一方の国が攻撃を受けた場合、もう一方の国はいかなる形でも攻撃者を支援しないとされている。ウクライナ ウクライナの戦乱が始まったのは2014年2月のクーデターからだ。ロシアを制圧するプロジェクトの一環として、中立政策を掲げる体制をネオ・ナチによって倒したところから始まるのだが、計画通りに進んだとは言い難い。軍や治安機関の約7割はネオ・ナチ体制を嫌って離脱、一部は東部ドンバスの反クーデター軍に合流したと言われている。当初は反クーデター軍が優勢だった。 そこで、アメリカ/NATOは2014年から22年にかけてウクライナへ兵器を供与して兵士を訓練、ヒトラーユーゲントのような団体を組織して年少者に思想教育や軍事訓練を施し、さらにマリウポリ、ソレダル、マリインカ、アウディーウカに築いた地下要塞を結ぶ要塞線を構築して戦力を増強した。 そうした時間を稼ぐために利用されたのが「ミンスク合意」にほかならない。これはアンゲラ・メルケル元独首相やフランソワ・オランド元仏大統領も証言している。この合意によって戦闘は凍結されたのだが、それによってウクライナの東部や南部に住む少なからぬ人びとが死傷している。再び戦闘を凍結するような愚かなことをロシア政府は行わないだろう。 しかし、アメリカ/NATOが行った時間稼ぎによる戦力増強策は失敗してしまい、すでにウクライナなる国は存在しないとまで言われる状況になっている。もっとも、ウクライナの大統領を名乗ってウォロディミル・ゼレンスキーはイギリスの情報機関MI6のエージェントであり、そのハンドラーはリチャード・ムーアMI6長官である可能性が高い。シリア アメリカの対外政策を支配してきたネオコンは1980年代からイラクやイランと同じようにシリアを制圧、親イスラエル体制を樹立させようとしていた。ロラン・デュマ元仏外相によると、2009年にイギリスを訪問した際、イギリス政府の高官からシリアで工作の準備をしていると告げられ、バラク・オバマは大統領として2010年8月にPSD-11を承認、ムスリム同胞団を利用し、地中海の南部や東部の沿岸で体制転覆工作を仕掛けた。ターゲット国のひとつがシリアにほかならない。2011年3月にシリアは外国勢力が送り込んだ傭兵に侵略されるものの、持ちこたえた。 そこで、オバマ大統領はアメリカ/NATO軍を介入させるため、住民虐殺や化学兵器の使用といった話を広めようとするものの、いずれも嘘が短期間のうちに発覚している。 その一方、オバマ大統領はリビアから戦闘員や兵器を輸送するだけでなく、政権転覆を目指す傀儡軍への支援を強化したが、そうした行為は危険だと警告するアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)は政府に警告している。 DIAはオバマ政権のジハード傭兵を利用した計画を危険だとする報告書を2012年に政府へ提出。反シリア政府軍の主力はAQIであり、その集団の中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だと指摘、さらにオバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになると警告したのだ。その時にDIAを率いていた軍人がマイケル・フリン中将にほかならない。 この警告通り、2014年には新たな武装集団ダーイッシュが登場、この集団はこの年の1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧。その際にトヨタ製の真新しい小型トラック、ハイラックスを連ねてパレードし、その後、残虐さをアピールする。そうした危険な武装勢力を制圧するためにアメリカ/NATO軍が介入する必要があるという筋書きだったが、アメリカ/NATO軍が介入するより前にロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入、ダーイッシュを含むアル・カイダ系武装集団を敗走させた。 ところが、シリア政府はイドリブに立てこもったアル・カイダ系武装集団を壊滅させず、戦闘は凍結された。その武装集団が昨年12月8日にアサド政権を倒し、カリフ制を導入する。イドリブで傭兵たちはCIAの訓練を受け、ウクライナから供給されたドローンで武装していた。反アサド勢力の中核でトルコを後ろ盾とするHTS(ハヤト・タハリール・アル・シャム)やアメリカやイギリスを後ろ盾とするRCA(革命コマンド軍)もイドリブにいた。 なお、HTSはアル・カイダ系のアル・ヌスラ戦線を改名した組織。そのアル・ヌスラはシリアで活動を始める前、AQI(イラクのアル・カイダ)」と呼ばれていた。この集団には、首を切り落とすことで知られている新疆ウイグルの人間も含まれているという。 西側の政府、有力メディア、人権団体などはシリア政府の残虐を宣伝していたが、そうした主張を裏付ける証拠は見つかっていない。アサド政権が崩壊した直後、ヨルダンで待機していた西側の「ジャーナリスト」がアサド政権を攻撃していたが、CNNの捏造報道がすぐに発覚するなど、怪しげな話のオンパレードだ。シリアで拘束されていた囚人の多くがダーイッシュのメンバーだったことは確認されている。パレスチナ 著名な医学雑誌「ランセット」は1月9日、2023年10月7日から24年6月30日までの間にガザで外傷によって死亡した人数の推計値が6万4260人に達し、そのうち女性、18歳未満、65歳以上が59.1%だとする論文を発表した。ガザの保健省は24年6月30日時点の戦争による死亡者数を3万7877人と報告していたが、これはランセットの推計値の59%にすぎない。現在、4万5338名が殺されたと言われているので、それにランセットの推計を適用すると7万7000人近くになる。 パレスチナでは1月16日、イスラエルとハマスが停戦協定を結んだという。42日間の停戦と捕虜交換が含まれているのだが、残念ながら、イスラエルやアメリカは約束を守らない。しかも、合意の中にはイスラエルが合意を破棄し、爆撃と軍事作戦を再開する「権利」が含まれているという。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.20
イスラエルとハマスは1月16日、停戦協定が締結されたと発表した。42日間の停戦と捕虜交換が協定には含まれている。この協定締結で中心的な役割を果たしたと言われているスティーブン・ウィトコフはドナルド・トランプ次期大統領が中東特使に指名した人物。1月10日にカタールからイスラエルへ電話、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の側近に対し、翌日の午後にイスラエルを訪れて停戦交渉について会談すると伝えたところから話し合いが始まったという。 この停戦協定について好意的に評価する人が少なくないようだが、懐疑的な人も少なくない。例えば、ジャーナリストのクリス・ヘッジズはイスラエルがパレスチナ人との合意を履行してこなかったと指摘しているが、イスラエルだけでなくアメリカも外交的な合意事項を守らなかった過去がある。しかも合意の中には、イスラエルが合意を破棄し、爆撃と軍事作戦を再開する「権利」が含まれているという。 ちなみに、ヘッジズは1990年からニューヨーク・タイムズ紙で記者として働いていたが、2003年3月にアメリカのジョージ・W・ブッシュ政権が「大量破壊兵器」という作り話を口実にしてイラクを先制攻撃した際に政府を批判、編集部と衝突して辞職している。 ソ連大統領としてミハイル・ゴルバチョフが東西ドイツの統一を1990年に認めた際、西側はNATOを東へ拡大させないと約束していた。その約束をゴルバチョフたちソ連の首脳部は無邪気にも信じ、ソ連を消滅させて国民に塗炭の苦しみを舐めさせることになる。 例えば、ドイツのシュピーゲル誌によると、アメリカはそのように約束したとソ連駐在アメリカ大使だったジャック・マトロックが語っているほか、ドイツの外務大臣だったハンス-ディートリヒ・ゲンシャーは1990年2月にエドゥアルド・シェワルナゼと会った際、「NATOは東へ拡大しない」と確約し、シェワルナゼはゲンシャーの話を全て信じると応じたとされている。(“NATO’s Eastward Expansion,” Spiegel, November 26, 2009) そのほか、アメリカの国務長官を務めていたジェイムズ・ベイカーは1990年2月、NATOの支配地域を東へ1インチたりとも拡大させないと語ったとする記録が存在、ジョージ・ワシントン大学のナショナル・セキュリティー・アーカイブはその記録を2017年12月に公開した。 イスラエルのメディアYnetによると、ドナルド・トランプ次期大統領はベンヤミン・ネタニヤフ首相とロン・ダーマー外相に対し、停戦に応じ、ガザからイスラエル軍を撤退することに合意すれば、イスラエルが戦闘の再開を決定した場合、トランプ政権はイスラエルを支援すると約束している。 イスラエルはレバノンとも停戦で合意、それを利用してシリアを攻撃したが、そのレバノンでも合意を無視して攻撃を繰り返し、ガザでも停戦合意が発表された後、ガザ北部に大規模な爆撃を実施して30名以上を殺害したと報じられている。 アメリカやイスラエルは約束を守る、西側は民主主義体制だ、悪いことをしてもロシアや中国よりはマシだと唱え、欧米への信仰から抜け出そうとしない人が少なくないが、欧米やイスラエルの話は眉に唾をつけながら聞く必要がある。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.19
21世紀に入ってから世界は大きく揺れている。その始まりは2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎に対する攻撃だろう。これによってアメリカではシオニストの一派であるネオコンが主導権を握り、国内では収容所化が進み、国外では侵略戦争が本格化している。そうした動きを加速させたのがCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動にほかならない。 アメリカのバラク・オバマ政権は2014年2月、ウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ政権をネオ・ナチを利用したクーデターで倒した。そのウクライナでアメリカの国防総省は生物化学兵器の研究開発を進めている。そのために15から46の研究所が建設され、ウクライナ兵を利用して人体実験も行われていたと言われている。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はMI6のエージェントだと信じられている。2020年10月に大統領としてイギリスを公式訪問した際、イギリスの対外情報機関MI6のリチャード・ムーア長官と会談している。 中東は2003年3月にジョージ・W・ブッシュ政権が「大量破壊兵器」という嘘を人びとに信じ込ませた上でイラクを先制攻撃、戦乱はリビアやシリアなどへ広がり、イランも狙われている。その間、パレスチナでは米英独など西側諸国に支援されたイスラエルがガザで破壊、殺戮、略奪の三光作戦を実行してきた。 そして東アジアでもアメリカ、イギリス、オーストラリアといったアングロ・サクソン系諸国が軍事的な緊張を高めている。その手先として想定されていたのが日本と韓国だが、韓国ではアメリカの傀儡、尹錫悦大統領がクーデターを企てて失敗してしまった。 COVID-19騒動ではアメリカとイギリスが主導、ウクライナや中東でもイギリスの動きが目立つのだが、COVID-19騒動では接種が推進された「ワクチン」と称する遺伝子操作薬の危険性が広く知られるようになって破綻、ウクライナでは米英が主導するNATOがロシアに敗北、パレスチナでは大量殺戮を続けるイスラエルの後ろ盾としてアメリカやイギリスに厳しい目が向けられている。 イスラエルはシオニストの国である。「シオンの地」にユダヤ人の国を作ろうと活動してきた人びとをシオニストと呼び、1896年に『ユダヤ人国家』という本を出版したセオドール・ヘルツルが近代シオニズムの創設者とされているが、シオニズムの始まりはエリザベス1世の時代に始まった「ブリティッシュ・イスラエル主義」だ。アングロ-サクソン-ケルトは「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だとする彼らは信じていた。この信仰はイギリス国教会が誕生した頃に始まり、それから間もなくしてイギリスは世界侵略を始めている。 イギリスのエリートにはブリティッシュ・イスラエル主義を信じる人が少なくなかったようで、イングランド王ジェームズ1世は自分を「イスラエルの王」だと信じていたという。その息子であるチャールズ1世はピューリタン革命で処刑されるが、そのピューリタンを率いていたオリヴァー・クロムウェルの周辺にもブリティッシュ・イスラエル主義を信じる人がいたようだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.18
イスラエルとハマスが合意した42日間の停戦は1月19日に発効するという。1月11日にイスラエルへ乗り込んだドナルド・トランプ次期大統領の中東特使、スティーブン・ウィトコフが実現したと言われている。ジョー・バイデン政権が1年以上かけてできなかったことを1日で成し遂げたというわけだ。 しかし、これでイスラエル軍によるパレスチナ人虐殺が終わると考える人は多くないだろう。2023年10月、ガザで戦闘が始まった直後、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、ユダヤ人の敵だとされている「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神は命じたと主張してパレスチナ人虐殺を正当化しているのだ。 サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることであり、これは彼らの「大イスラエル構想」につながる。その目的を彼らは達成していない。 著名な医学雑誌「ランセット」は1月9日、2023年10月7日から24年6月30日までの間にガザで外傷によって死亡した人数の推計値が6万4260人に達し、そのうち女性、18歳未満、65歳以上が59.1%だとする論文を発表した。 ガザの保健省は24年6月30日時点の戦争による死亡者数を3万7877人と報告しているが、これはランセットの推計値の59%にすぎない。この時点で国連などは1万人以上の遺体が瓦礫の下に埋まっていると推定されていた。病気、あるいは飢餓で死亡する人は戦闘で殺される人よりも多いと見られている。現在、パレスチナ側は4万5338名が殺されたと発表しているので、それにランセットの推計を適用すると7万7000人近くに達する。 生活物資や軍事物資を国外からの支援に頼っているイスラエルは自力で戦争することはできない。そうした支援国はイスラエルによる破壊、虐殺、略奪の共犯者だ。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)によると、軍事物資の69%はアメリカから、30%はドイツから供給されている。輸送などでの支援にイギリスが果たしている役割も小さくない。 ガザでの戦闘が始まった直後、キプロスのアクロティリ基地にはアメリカの輸送機が40機以上、イギリスの輸送機が20機、そして7機の大型輸送ヘリコプターが到着した。装備品、武器、兵員を輸送したと見られている。そのほかオランダの輸送機が4機、緊急対応部隊を乗せたドイツの輸送機が4機派遣され、カナダ空軍は数機の輸送機を向かわせた。キプロスにはイギリス陸軍のSAS(特種空挺部隊)も待機中だと伝えられている。 そのほか、ヨルダンの空軍基地には25機以上のアメリカ軍の大型輸送機が飛来、通常はイギリスにいるアメリカ空軍のF-15E飛行隊がヨルダン基地に配備され、ドイツの輸送機9機も同基地に到着したという。イギリス空軍は連日ガザ上空を偵察飛行してきたとも伝えられている。 イスラエルの挑発で始まったガザにおけるイスラエル軍による住民虐殺を西側の有力メディアはきちんと伝えてこなかった。イギリスのBBCもそうしたメディアに含まれる。 そのBBCで中東デスクを率いるラフィ・バーグはガザでの戦闘に関するオンライン報道をほぼ完全にコントロール、全ての報道をイスラエルにとって有利になるように編集していると告発されている。会社側は否定しているようだが、こうした偏向報道は構造的なものであり、長年にわたって強制されてきたという。 BBCにおいてガザでの報道をコントロールしているこの上級編集者はこの放送局へ入る3年前、アメリカ国務省のFBIS(外国放送情報局)に勤務していた。この部署はCIAが隠れ蓑に使っていたのだが、2005年11月に新しく設立されたオープン・ソース・センターに統合されると発表されている。バーグは自分がCIAで働いていたことを否定していないが、イスラエルの情報機関、モサドとも関係している。 ガザの問題に限らず、西側の有力メディアは西側支配層にとって都合の悪い情報を隠蔽、あるいは書き換えてきた。バラク・オバマ政権が仕掛けたクーデターで始まったウクライナにおける戦乱の実態、あるいはアメリカの国防総省が始めたCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)プロジェクトもそうだ。 アメリカでは第2次世界大戦後、組織的な情報操作が始まる。「モッキンバード」だ。これは1948年にスタートしたCIAの極秘プロジェクトで、責任者はコード・メイヤー。実際の工作で中心的な役割を果たしたのはアレン・ダレス、ダレスの側近だったフランク・ウィズナーとリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだという。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) グラハムの死後、妻のキャサリーンが社主に就任、その下でワシントン・ポスト紙は「ウォーターゲート事件」を暴くのだが、その取材で中心的な役割を果たしたカール・バーンスタインは1977年に同紙を辞めて「CIAとメディア」というタイトルの記事をローリング・ストーン誌に書いている。 その記事によると、1977年までの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上に達し、1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供したという。ニューズウィーク誌の編集者だったマルコム・ミュアは責任ある立場にある全記者と緊密な関係をCIAは維持していたと思うと述べたとしている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) またフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だったウド・ウルフコテは2014年2月、ドイツにおけるCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出版、その中で多くの国のジャーナリストがCIAに買収されていて、そうした工作が危険な状況を作り出していると告発している。 ウルフコテによると、CIAに買収されたジャーナリストは人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開し、ロシアとの戦争へと導いて引き返すことのできないところまで来ていると彼は警鐘を鳴らしていた。実際、オバマ政権やバイデン政権はロシアを挑発、核戦争の危機はかつてないほど高まっている。 アメリカのメディアは19世紀からプロパガンダ機関として機能している。ニューヨーク・タイムズ紙の主任論説委員を務めたジョン・スウィントンは1883年4月12日にニューヨークのトワイライト・クラブで次のように語っている。「アメリカには、田舎町にでもない限り、独立した報道機関など存在しない。君たちはみな奴隷だ。君たちはそれを知っているし、私も知っている。君たちの中で正直な意見を表明する勇気のある人はひとりもいない。もし表明したとしても、それが印刷物に載ることはないと前もって知っているはずだ。」 最近ではインターネット企業にもCIAの「元職員」が入り込み、どのコンテンツが見られ、何が抑制されるかを決定するアルゴリズムを事実上制御しているという。シリコンバレーの巨大企業はアメリカの情報機関と一体化しつつある。そうした流れにTikTokも飲み込まれたと伝えられている。 2012年6月、シリアへ入って戦乱の実態を調査したメルキト・ギリシャ典礼カトリック教会のフィリップ・トゥルニョル・クロス大主教はローマ教皇庁のフィデス通信に対し、「誰もが真実を語ればシリアの平和は守られる。紛争の1年後、現地の現実は、西側メディアの偽情報が押し付けるイメージとはかけ離れている」と報告している。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.17
パレスチナ人はガザとヨルダン川西岸の地区に押し込められ、そこに住む人々をイスラエル人は虐殺してきた。ここにきてイスラエル軍はヨルダン川西岸のジェニンへ侵攻、難民キャンプを襲撃して住民を殺傷、パレスチナ側の抵抗勢力と交戦している。イスラエル軍はガザで侵略、破壊、虐殺の「三光作戦」を続けているが、ヨルダン川西岸でも残虐行為を繰り広げているのだ。その残虐行為にパレスチナ自治政府の治安部隊は協力している。 ドナルド・トランプ次期大統領が中東特使に指名したスティーブン・ウィトコフは1月10日にカタールからイスラエルへ電話、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の側近に対し、翌日の午後にイスラエルを訪れて停戦交渉について会談すると伝えたという。ユダヤ教では金曜日の日没から土曜日の日没までが安息日(シャバット)だったが、ウィトコフは安息日に興味はないと言い切ったともされている。当日、ネタニヤフはウィトコフと会談するためにオフィスへ出向いた。 イスラエルの新聞、タイムズ・オブ・イスラエル紙によると会談は緊迫したもので、ウィトコフはネタニヤフに対し、1月20日のアメリカ大統領の就任式までに人質交渉を成立させるため、必要な妥協を受け入れるよう強く迫ったという。ジョー・バイデン政権はイスラエル政府に妥協を強く迫らなかったということになりそうだ。 トランプ側がイスラエルに示した条件には、段階的な人質解放、数週間の停戦、ガザからのイスラエル国防軍の部分的撤退、少なくとも数百人のパレスチナ人囚人の解放が含まれているという。またトランプはイスラエル側に対し、停戦とガザからのイスラエル軍撤退に合意すれば、イスラエルが戦闘再開を決定した場合、速やかに支援すると約束したとされている。「停戦」と「撤退」という形が欲しいだけだとも言えるのだが、この条件をハマスは受け入れたとも伝えられている。 こうした交渉の一方、イスラエル軍はヨルダン川西岸をガザのようにしようと目論み、シリアではアルマンタラ・ダムを奪取、水源のひとつを手にしている。カタール、イスラエル、レバノンの水不足は特に深刻だ。水の豊かな日本では水源を放射性物質で汚し、巨大な地下建造物で水脈を断ち切りつつあるが、世界では水争いが展開されている。 アメリカでは食糧生産を支えているオガララ帯水層の水位低下が深刻。シェール・ガスやシェール・オイルの開発に伴う水汚染が状況をさらに悪化させ、この帯水層は2050年から70年の間に枯渇する可能性があるとも言われている。カリフォルニア州の水危機はそれ以上に深刻だ。アメリカやイギリスの支配層がウクライナやロシアの穀倉地帯に執着している理由のひとつはここにあるのだろう。 イスラエルやネオコンは1980年代からイラク、シリア、イランを破壊してイスラエルの影響下に置こうとしてきた。中東を支配することで世界を動かせるだけのエネルギー資源を手に入れようと計画したのだろうが、その一方、水の支配も重視されていた。シオニズムを貫徹し、世界を支配するためには水も支配しなければならない。 本ブログでは以前から指摘してきたが、シオニズムは16世紀の後半にイギリスのキリスト教徒が作り出した妄想であり、19世紀には帝国主義と結びついた。19世紀の終盤から20世紀の初頭にイギリスで考え出された世界制覇プラン、海軍力を利用してユーラシア大陸の周辺を支配して内陸部を締め上げていくという計画は今でもアングロ・サクソンの世界では生きている。内陸部を攻めるときには複数のターゲット国を互いに戦わせたり、傭兵を使ってきた。 その計画を実現するため、西側の有力メディアは情報を操作してきたが、最近では荒唐無稽な話を恥ずかしげもなく伝えるようになっている。被支配者を馬鹿にしているのか、もっともらしい話を考え出す能力がなくなったのだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】【追加】イスラエルとハマスはカタール、エジプト、アメリカの仲介で、42日間の停戦に合意した。ベンヤミン・ネタニヤフ政権はシリアで軍事作戦を展開中で、「大イスラエル構想」を放棄したわけでもない。停戦終了後に破壊、虐殺、略奪の「三光作戦」を再開する可能性は高い。イスラエルが戦闘再開を決定した場合、ドナルド・トランプは速やかにイスラエルを支援すると約束したとされている。
2025.01.16

経済戦争に負けたシリア ピーター・フォードは2003年から06年までシリア駐在イギリス大使を務めた元外交官である。彼はバシャール・アル・アサド政権の最後が脆かった理由について、10年以上にわたる西側諸国の経済攻撃(兵糧攻め)によってシリア経済が悲惨な状況に陥って空洞化、国民の不満が高まり、軍も疲弊したからだとしている。しかも、東部の油田地帯はアメリカ軍とその傀儡であるクルドが抑えていた。オバマ政権の体制転覆作戦 シリアでの戦乱はバラク・オバマ大統領が2010年8月にPSD-11を承認、ムスリム同胞団を利用し、地中海の南部や東部の沿岸で体制転覆工作を仕掛けたところから始まる。体制の転覆を目指す動きを西側の有力メディアは「アラブの春」と呼んでいた。 ロラン・デュマ元仏外相によると、2009年にイギリスを訪問した際に彼はイギリス政府の高官からシリアで工作の準備をしていると告げられたというが、ネオコンは1980年代からイラク、シリア、イランを制圧する計画を立てていた。 また、欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の最高司令官を務めたウェズリー・クラークによると、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎が攻撃されてから10日ほど後、彼は統合参謀本部で見た攻撃予定国のリストを見ている。そのリストにはイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そして最後にイランが記載されていた。(3月、10月)北アフリカや中東の地中海沿岸で体制転覆運動が自然に発生したわけではない。 ネオコンは1980年代からイラクのサダム・フセイン体制を倒して親イスラエル体制を築いてシリアとイランを分断、その上で両国を破壊するという計画を持っていたのだが、副大統領だったジョージ・H・W・ブッシュ、ジェームズ・ベイカー財務長官、ロバート・ゲーツCIA副長官はフセインをペルシャ湾岸の利権を守る手先だと認識して対立していた。その対立により、一部勢力によるイラクへの武器密輸が反フセイン派に暴露されている。いわゆる「イラクゲート事件」だ。 ジョージ・W・ブッシュ(ジュニア)政権は2003年3月にイラクを先制攻撃、フセイン体制の打倒に成功するが、親イスラエル体制の樹立には失敗。そこでブッシュ・ジュニア政権は戦術を変更、フセインの残党を含むスンニ派の戦闘集団を編成し、手先として使い始めた。 シーモア・ハーシュが2007年3月にニューヨーカー誌で書いた記事によると、ブッシュ政権はイスラエルやサウジアラビアと手を組み、シリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラを叩き潰そうと考えた。これはズビグネフ・ブレジンスキーが1970年代に始めた戦術。2009年にアメリカ大統領となったオバマの師はそのブレジンスキーだ。 シリアでは2011年3月にムスリム同胞団やアル・カイダ系武装勢力による侵略戦争が始まった。これに「内戦」というタグをつけることは正しくない。西側の有力メディアはそうしたことを理解していただろう。読者や視聴者をミスリードすることが彼らの目的だったと考えざるをえない。 シリアより1カ月早く侵略戦争が始まったリビアでは2011年10月にムアンマル・アル・カダフィ政権が崩壊、カダフィ本人は惨殺されているが、シリア政府は倒れなかった。それだけシリア政府軍は強く、国民にも支持されていた。侵略軍の後ろ盾はアメリカのほか、サイクス・ピコ協定コンビのイギリスとフランス、ムスリム同胞団と関係が深く、パイプライン建設でおシリアと対立していたカタールやトルコだ。 こうした外部の侵攻勢力はアメリカ/NATO軍を介入させるため、住民虐殺や化学兵器の使用といった話を広めようとするが、いずれも嘘が短期間のうちに発覚している。そうした中、オバマ政権は政権転覆を目指す侵略軍への支援を強化したが、そうした行為は危険だと警告する機関がアメリカにも存在した。アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)である。 DIAはオバマ政権のジハード傭兵を利用した計画を危険だとする報告書を2012年に政府へ提出している。反シリア政府軍の主力はAQIであり、その集団の中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だと指摘、さらにオバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになると警告したのだ。その時にDIAを率いていた軍人がマイケル・フリン中将にほかならない。 この警告通り、2014年には新たな武装集団ダーイッシュが登場、この集団はこの年の1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧。その際にトヨタ製の真新しい小型トラック、ハイラックスを連ねてパレードし、その後、残虐さをアピールする。そうした危険な武装勢力を制圧するためにアメリカ/NATO軍が介入する必要があるという筋書きだった。 そうした動きに合わせ、オバマ大統領は2015年2月に国防長官をチャック・ヘーゲルからアシュトン・カーターへ、同年9月には統合参謀本部議長をマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへというように戦争慎重派から好戦派へ交代させているが、アメリカ/NATO軍が介入する前にロシア軍がシリア政府の要請で介入、侵略勢力の手先は敗走、イドリブへ逃げ込んだ。イドリブを攻撃しようとする動きもあったのだが、実行されない。アサド政権にとってこれが致命傷になった。ジハード傭兵とイスラエル ハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)の後ろ盾はトルコだと言われているが、フォード元大使はその指導者、モハメド・アブ・ジョラニ)の背後にはイギリスの顧問がいる可能性が高く、声明文の語学的な分析からアメリカの情報機関、CIAが関係していることも推測できる。トルコと軍事衝突がすでに始まっているクルドもアメリカを後ろ盾にしている。 HTSはズビグネフ・ブレジンスキーが1970年代に作った傭兵の登録リスト、いわゆるアル・カイダから出てきたわけで、アメリカやイギリスの影響を受けていても不思議ではない。こうした国々のほか、イスラエルも関係していると見られている。HTSはイスラエルに対して友好的な姿勢を見せ、パレスチナ人が虐殺されていることを気にしていない。 ダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)を含むアル・カイダ系武装集団はこれまでイスラエルと戦っていない。相手はイスラム教徒やキリスト教徒だ。HTSやRCA(革命コマンド軍)はアル・カイダやダーイッシュの旗を掲げながら脅迫、威嚇、没収、略奪を繰り広げているほか、降伏したキリスト教徒やアラウィ派の兵士を路上での処刑している。一部の例外を除いてキリスト教の高位聖職者たちはジハード傭兵に従う道を選び、結果として自分たちのコミュニティを裏切ったと見なされている。ジハード傭兵が掲げるスローガンは「キリスト教徒をベイルートへ、アラウィー派は墓場へ」だ。 ジャーナリストのエバ・バートレットはシリアの「新政府」によって少数民族が追い詰められ、拷問され、殺害されていると報告、そうしたことを記録した映像の存在も指摘している。アラウィー派だというだけで殺され、キリスト教徒が弾圧されているが、パレスチナ人と同じように、西側の「民主主義国」はそうした虐殺を気にしないようだ。 その一方、イスラエル軍がシリア軍の生き残りやインフラを破壊、シリアの領土を奪いつつあり、HTSと衝突する可能性もある。イスラエルの新聞、エルサレム・ポスト紙によると、ヤコブ・ナゲル議員を委員長とする「ナゲル委員会」は、トルコがオスマン帝国時代の影響力を回復しようとする野望によってイスラエルとの緊張が高まる可能性があると指摘、直接対決に備える必要があると警告しているが、そこにはイスラエルの「大イスラエル構想」も隠れている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.15

フォルクスワーゲンの工場閉鎖 ドイツの大手自動車メーカー、フォルクスワーゲンがドイツ国内にある10工場のうち少なくとも3工場を閉鎖すると従業員評議会の代表に伝えたと報じられたのは昨年10月のことだった。中国製電気自動車との競争が激化しているとする主張もあるが、最大の原因は安価なロシア産天然ガスの供給が大幅に減少したことにある。その原因を作ったのはアメリカだ。 BSW(ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟)の党首、ザフラ・ワーゲンクネヒトはドイツ経済を苦境に陥れたのはアメリカの「対ロシア制裁」だと主張、これはドイツとヨーロッパの企業にとって致命的な政策だとし、ロシアからの天然ガス輸入を復活させるように求めている。同時にウクライナにおける戦争に絡んでロシアを非難することを拒否した。またAfD(ドイツのための選択肢)の共同代表、アリス・ワイデルは、2月の総選挙で同党が勝利した場合、ノード・ストリームを再開すると約束した。米政権のクーデター アメリカのバラク・オバマ政権は2013年11月から14年2月にかけてウクライナでクーデターを実行した。ロシアにも西側にも与しない中立政策の継続を掲げていたビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除することが目的だ。 クーデターはユーロマイダンで始まったカーニバル的な集まりから始まったのだが、2014年に入るとステパン・バンデラを信奉するネオ・ナチのグループが前面に現れて様相は一変。2月に入るとそのメンバーはチェーン、ナイフ、棍棒を手に石や火炎瓶を投げ始め、さらにトラクターやトラックを持ち出し、2月中旬になると広場で無差別の狙撃を始めた。狙撃を指揮したのはネオ・ナチのアンドレイ・パルビーだということがのちに判明。2月25日にキエフ入りして調査したエストニアのウルマス・パエト外相もネオ・ナチが実行した可能性が高いと報告している。世界制覇計画 1991年12月にソ連が消滅した直後の92年2月、アメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクトを作成した。この草案はポール・ウォルフォウィッツが中心になって書き上げられたことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれる。 その第一の目的はソ連と同程度の脅威をもたらす新たなライバルが再び出現するのを防ぐことにある。そのため、資源が存在する地域を潜在的なライバルが支配することを防ぐように努め、ドイツや日本をアメリカ主導の集団安全保障体制、つまり戦争マシーンに組み入れるとしている。DPG草案で想定されている地域には西ヨーロッパ、東アジア、旧ソ連の領土、および南西アジアも含まれる。この計画は2001年9月11日、ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)に対する攻撃(9/11)で始動した。 9/11から10日ほど後、ウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官は統合参謀本部で攻撃予定国のリストを見たと語っている。その予定国とは、イラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そして最後にイラン。そのリスト通りに破壊されてきた。残るはイランだ。(3月、10月)EUとロシアの分断 その一方、アメリカは2013年11月、ロシアに対する作戦を始動させた。ウクライナでのクーデターだが、軍や治安機関の約7割はネオ・ナチ体制を嫌って離脱、一部は東部ドンバスの反クーデター軍に合流したと言われている。東部や南部はヤヌコビッチの支持基盤であり、ロシア文化圏だ。 そこで、アメリカ/NATOは2014年から22年にかけてウクライナへ兵器を供与して兵士を訓練、さらにマリウポリ、ソレダル、マリインカ、アウディーウカに築いた地下要塞を結ぶ要塞線を構築、「ヒトラーユーゲント」的なプロジェクトも始めた。そうした時間を稼ぐために利用されたのが「ミンスク合意」だ。これはアンゲラ・メルケル元独首相やフランソワ・オランド元仏大統領も証言している。天然ガス その当時、EUとロシアは接近していた。両者を結びつけていたのがロシア産の天然ガスにほかならない。2022年2月以前、ドイツは天然ガスの55%をロシアに依存していた。 ロシアからEUへの輸送に使われるパイプラインの多くはウクライナを通過していた。そのパイプラインをアメリカは管理、EUから安価な天然ガスの供給源を奪い、ロシアからマーケットを奪うことになる。 しかし、ドイツとロシアはウクライナを迂回するパイプラインも建設していた。1997年にスタートしたノード・ストリーム1である。最初のパイプランは2011年11月に、また次のラインは翌年の10月に完成した。オバマ政権がクーデターを実行する前の話である。 輸送力を増強するため、アメリカの妨害を跳ね除けて2018年位は新たなパイプライン、ノード・ストリーム2の建設が始まる。2021年9月に完成したが、ドイツのオラフ・ショルツ首相は認証しない。そして2022年9月、ノード・ストリーム1とノード・ストリーム2は爆破されてしまう。アメリカが実行した可能性が高い。 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは2023年2月8日、アメリカ海軍のダイバーがノルウェーの手を借りてノードストリームを爆破したとする記事を発表した。 ハーシュによると、工作の拠点はノルウェー。ジョー・バイデン米大統領は2021年後半にジェイク・サリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成し、その中には統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加。12月にはどのような工作を実行するか話し合い、2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対してパイプライン爆破を具申した。 ノルウェー海軍はアメリカと連携、デンマークのボーンホルム島から数キロメートル離れたバルト海の浅瀬で3本のパイプラインにプラスチック爆弾C4を設置、2022年9月26日にノルウェー海軍のP8偵察機が一ソナーブイを投下、信号はノード・ストリーム1とノード・ストリーム2に伝わり、数時間後に爆発したという。 ウクライナの工作員がノード・ストリーム1とノード・ストリーム2を爆破したことにしようとドイツの当局は目論んでいるが、技術的に不可能。アメリカやその「同盟国」が実行したとなると、ドイツ政府へも責任が波及する可能性がある。フォルクスワーゲンやBASFのような大手企業も工場を閉鎖しなけらばならない事態を作り出す工作をドイツ政府は容認したと言われても仕方がなくなる。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.14

安倍晋三は2020年9月16日、体調が悪化したとして総理大臣の座から降り、22年7月8日に射殺された。東京理科大学の村上康文名誉教授から「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」の危険性を知らされた安倍は「ワクチン」の接種に消極的であり、またロシアや中国との関係を継続しようとしていたと言われている。 辞任は、西側の政府や有力メディアがSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)を悪霊化する宣伝を展開、COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動を煽る中でのこと。その翌年、イスラエルやアメリカなどより遅れて日本も「COVID-19ワクチン」と称する遺伝子操作薬の接種を本格化させている。 そして2022年7月8日、安倍は奈良県奈良市の大和西大寺駅前で演説中に暗殺された。暗殺の直前、日本の経済界はアメリカの圧力を跳ね除け、サハリンでの石油や天然ガスの開発に向かっている。 ロシア産天然ガスは世界支配を目論むアメリカの支配層にとって目障りな存在だった。この天然ガスがロシアをヨーロッパや日本と結びつける大きなファクターになっていたからだ。 アメリカ政府はロシアへ圧力を加えるためにウクライナの制圧を目論み、2004年から05年にかけて「オレンジ革命」を実行したものの、支配は長続きしない。そこで2013年11月から14年2月にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行、ロシアからEUへの天然ガス輸送ルートをコントロールしようとした。その結果、EUの経済は破綻へ向かうのだが、ロシアは中国との関係を強化して対応する。しかもアメリカによる経済封鎖はロシアの企業を成長させることになった。 クーデター後、ウクライナでは軍や治安機関で約7割がネオ・ナチ体制を嫌って離脱、一部は反クーデター軍に合流したと言われている。東部や南部のロシア文化圏はそうした傾向が特に強く、戦力を強化しなければならなくなる。そこでアメリカ/NATOは2014年から22年にかけてウクライナへ兵器を供与し、兵士を訓練、マリウポリ、ソレダル、マリインカ、アウディーウカに築いた地下要塞を結ぶ要塞線を構築、「ヒトラーユーゲント」的なプロジェクトも始めた。そうした時間を稼ぐために利用されたのが「ミンスク合意」だ。 アンゲラ・メルケル元独首相は2022年12月7日、ツァイトに対してミンスク合意は軍事力を強化するための時間稼ぎだったと認めている。その直後にフランソワ・オランド元仏大統領はメルケルの発言を事実だと語った。 ウクライナ軍は2022年に入るとドンバスの周辺に部隊を集結させ、砲撃を激化させ始める。ドンバスの市民を虐殺してロシア軍を要塞線の中へ誘い出して身動きが取れないようにし、別動体にクリミアを攻撃させる計画だったとも推測されているが、ロシア軍は2022年2月24日、ウクライナに対するミサイル攻撃を始めた。「後の先」だ。 サハリン1を運営する会社の出資比率はアメリカのエクソンモービルが30%、日本のSODECO(サハリン石油ガス開発/伊藤忠商事、丸紅、石油資源開発などが共同出資)は30%、ロシアのロスネフチ関連会社が20%、インドのONGCが20%。このうちエクソンモービルは3月に撤退を表明している。 サハリン2の場合、2月28日にシェルはこのプロジェクトを含むロシアでの全事業から撤退することを表明。アメリカ政府は日本に対しても撤退を求めたと思われるが、三井物産と三菱商事は2022年8月までに「サハリン2」の新会社に参画することをそれぞれ決めている。 開発を進めるため、1994年にサハリン・エナジーが設立されたが、その出資比率はシェルが55%、三井物産25%、三菱商事20%。2006年にはロシアのガスプロムが参画することになり、ガスプロムが50%プラス1株、シェル27.5%、三井物産12.5%、三菱商事10%へ変更された。 アメリカがウクライナで実行したクーデター、またノード・ストリーム1や2の破壊などによってヨーロッパ経済は大きなダメージを受け、ドイツの大手自動車会社フォルクスワーゲンは従業員代表に対し、ドイツ国内の少なくとも3つの工場を閉鎖、労働者を解雇する意向を伝えたと報道されている。ドイツ経済の破綻はEU経済の破綻でもある。それでもネオコンに従属しているのがEUのエリートだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.13
ロンドン第一審裁判所のフォス裁判長はCPS(王立公訴局)に対し、WikiLeaksのジュリアン・アッサンジを14年にわたって追及した理由を明らかにする重要なファイルを破棄するに至った経緯を説明し、回収不可能であることを証明するように求めた。それができなければ文書を提出しなければならない。もし、2月21日までに提出しなければ、法廷侮辱罪とみなされる。 2010年11月にスウェーデンの検察当局はアッサンジに対する逮捕令状を出した。ふたりの女性が2010年8月にスウェーデンの警察へ出向いて被害を訴え、「臨時検事」が逮捕令状を出したのだが、主任検事はその翌日、容疑が曖昧だということで令状を取り消している。ところが、取り消しの前に警察がスウェーデンのタブロイド紙へリーク、「レイプ事件」として報道、騒動が始まった。 アッサンジは警察から事情を聞かれ、容疑を否認しているが、その翌日、9月1日に検事局長だったマリアンヌ・ナイが介入して主任検事の決定を翻し、捜査再開を決めた。その捜査の打ち切りをスウェーデン当局は2017年5月に決めている。 しかし、その後もイギリスの司法当局はアッサンジを逮捕する意思を変えず、2019年4月11日にロンドン警視庁はアッサンジをエクアドル大使館の中で逮捕した。エクアドルのラファエル・コレア大統領は2012年、アッサンジの政治亡命を認め、大使館が保護していたのだが、次の大統領、レニン・モレノ大統領は亡命を取り消して逮捕させたのだ。アメリカからの引き渡し要請に基づくものだ。イギリスでは、その翌月からアッサンジの引き渡しに関する審理が始まった。 アメリカがアッサンジの逮捕しようと画策し始め、アッサンジがエクアドルの大使館へ逃げ込んだ当時のCPS(王立公訴局)長官は現首相のキール・スターマーにほかならない。スターマーは2008年11月から13年11月まで長官を務め、その間、2009年、11年、12年、13年、4度にわたって彼はワシントンDCを訪問している。2011年の時にはイギリスの代表団を率いて訪米、司法長官だったエリック・ホルダーらと45分にわたって会談。代表団にはアッサンジの身柄引き渡しを担当するイギリスの対米連絡検察官も含まれていたという。この4回の訪米に関するイギリス側の資料は全て破棄されている。 CPSのメール数通は破棄されず、情報公開規則に基づいて公開されているが、それらによると、スウェーデンの検察当局は消極的だったのだが、イギリスの当局は積極的で、アッサンジを訴追するように圧力をかけていた。スウェーデン側からの要請とは言えなかった。 そのスウェーデンもアッサンジに関する情報の公開を拒否しているのだが、2023年に開かれた法廷審問で、スウェーデンの検察官はCPSが削除したのと同じ文書を破棄したと主張していることが明らかになっている。 スターマーが長官に就任する前年、つまり2007年、BBCの人気パーソナリティだったジミー・サビルから暴行やレイプを受けたと証言する少なからぬ女性が警察と接触していた。サビルは警察から事情聴取を受け、彼の関係していた複数の施設に公式調査が行われているが、捜査は打ち切られ、捜査資料は2010年に破棄された。警察当局がCPSの指示で捜査を打ち切ったことは確かだと見られている。この事件が広く知られるようになったのは2012年10月にITVがドキュメンタリーを制作、発表してからだ。 ここにきて問題になっているのは、パキスタン系の若者を中心とする集団、いわゆる「グルーミング・ギャング」による少女に対する大規模なレイプ暴行事件。こうしたことが過去30年にわたって行われてきたのだが、適切の捜査が行われず、容疑者の起訴は「人種差別」と見なされると恐れた政治家や警察は事件を隠蔽したとされている。こうした問題をイーロン・マスクは取り上げ、スターマーを批判、辞任すべきだと主張した。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.12
著名な医学雑誌「ランセット」は1月9日、2023年10月7日から24年6月30日までの間にガザで外傷によって死亡した人数の推計値が6万4260人に達し、そのうち女性、18歳未満、65歳以上が59.1%だとする論文を発表した。ガザの保健省は24年6月30日時点の戦争による死亡者数を3万7877人と報告しているが、これはランセットの推計値の59%にすぎないということ。この時点で国連などは1万人以上の遺体が瓦礫の下に埋まっていると推定されていた。病気、あるいは飢餓で死亡する人は戦闘で殺される人よりも多いと見られている。非戦闘員の犠牲者が多い理由は、イスラエルがそうした人びとを狙っているからにほかならない。現在、4万5338名が殺されたと言われているので、それにランセットの推計を適用すると7万7000人近くになる。 ガザで戦闘が始まった直後、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、その中でユダヤ人と敵だとされている「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神は命じたと主張、パレスチナ人虐殺を正当化している。 サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだと言えるだろう。ネタニヤフによると「われわれは光の民であり、彼らは闇の民」なのである。 そうした中、ローマ教皇フランシスコは2023年12月21日、ガザでの爆撃は残虐行為であり、戦争ではないと非難、ピエルバティスタ・ピッツァバラ枢機卿がガザへ入れなかったことを批判した。22日にイスラエル当局は枢機卿のガザ入りを許可したが、その日、教皇はイスラエルがガザで続けている子どもの虐殺を改めて非難している。 今年1月10日にジョー・バイデン米大統領はローマ教皇庁を訪問する予定になっていた。アイルランド系でカトリック教徒の家に生まれた人物が大統領に就任したのはジョン・F・ケネディ以来だが、行ったことは正反対だった。その彼が教皇庁訪問をキャンセルしたようだ。バイデンがバチカンを訪問した場合、教皇フランシスコはイスラエルによるガザでの虐殺、そしてその虐殺を支援しているバイデン政権を非難しなければならなかった。教皇もバイデンも訪問を中止したかっただろうと考えられている。 イスラエルは生活物資や軍事物資を国外からの支援に頼っている。そうした支援をする国や団体が存在しなければ、破壊、殺戮、略奪という三光作戦を実行することは不可能だ。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)によると、軍事物資の69%はアメリカから、30%はドイツから供給されている。輸送などでの支援にイギリスが果たしている役割も小さくない。この3カ国の責任は特に重い。 中東で戦火が燃え上がったのは2003年3月のことだ。ジョージ・W・ブッシュ政権がアメリカ主導軍にイラクを先制攻撃させ、サダム・フセイン体制を倒したのだ。侵略の口実として「大量破壊兵器」が使われたが、これは嘘だった。当初の予定ではイラクに親イスラエル体制を築くことになっていたが、これは失敗に終わる。 この侵略に対し、ギリシャ正教総主教区の公式広報官を務めていたテオドシオス・ハンナ大修道院長はアメリカのジョージ・W・ブッシュ大統領、ドナルド・ラムズフェルド国防長官、イギリスのトニー・ブレア首相、ジャック・ストロー外相がキリスト教の聖地、エルサレムの聖誕教会へ入ることを禁じた。この政治家たちをハンナらは破門し、堕落者とみなしたという。この事実を西側の有力メディアは大半が無視したが、イギリスのインディペンデント紙はイスラムの動きに絡め、固有名詞抜きで簡単に触れている。 シリアに対する外部勢力の軍事作戦が始まった翌年の6月、シリアへ入って調査したメルキト・ギリシャ典礼カトリック教会のフィリップ・トゥルニョル・クロス大主教はローマ教皇庁のフィデス通信に対し、「誰もが真実を語ればシリアの平和は守られる。紛争の1年後、現地の現実は、西側メディアの偽情報が押し付けるイメージとはかけ離れている」と報告している。それ以降、現在に至るまで西側の有力メディアは真実を語ろうとしていない。イスラエル絡みだけではないのだ。 自国軍を投入したジョージ・W・ブッシュ大統領とは違い、バラク・オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を承認してムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を傭兵として使い、体制転覆プロジェクトを始めた。リビアやシリアもそのターゲット国だった。西側では「自由の戦士」扱いのHTS(ハヤト・タハリール・アル・シャム)やRCA(革命コマンド軍)も基本的にそうした傭兵集団だと言える。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.11
バシャール・アル・アサド政権が倒れた後、シリアではアラウィー派住民の虐殺が伝えられているが、それだけではなく、混乱の度合いが高まっているようだ。反アサド勢力にはいくつかの勢力が存在、それらをまとめる存在が今のところ見当たらないことが大きい。 反アサド勢力の中核だったHTS(ハヤト・タハリール・アル・シャム)はトルコを後ろ盾とする武装勢力で、アル・カイダ系のアル・ヌスラ戦線を改名した組織。そのアル・ヌスラはシリアで活動を始める前、AQI(イラクのアル・カイダ)」と呼ばれていた。そのほかアメリカやイギリスを後ろ盾とするRCA(革命コマンド軍)、アメリカが手先として利用してきたクルド、さらにバシャール・アル・アサド政権の残党やイスラエルが活動している。こうした反アサド勢力による内乱が起こると予想する人は少なくない。 シリアの北部ではHTSとクルドの戦闘が激しくなっているようだが、これはトルコとアメリカの対立とも言えるが、両国はNATOの加盟国であり、状況によってはNATO加盟国同士の戦闘もありえる。南部ではレバノンへ侵入したHTSの戦闘員が逮捕されるという出来事もあったようだ。アサド政権が倒される前からシリアへ入っていたイスラエルはダマスカスの近くまで侵攻している。 アメリカの外交や安全保障の分野を支配してきたネオコンは1980年代からイラク、シリア、イランを制圧する計画を立てていたが、欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の最高司令官を務めたウェズリー・クラークによると、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎が攻撃されてから10日ほど後、彼は統合参謀本部で見た攻撃予定国のリストを見たという。そこにはイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そして最後にイランが記載されていた。(3月、10月) イラクは2003年3月にジョージ・W・ブッシュ政権がアメリカ主導軍で先制攻撃して破壊、シリアやリビアは2011年春から軍事侵略を受けている。このリストで侵略されていないのはイランだけだ。 ブッシュ政権は自国軍を動かしたが、バラク・オバマ政権はサラフィ主義者やムスリム同胞団を主力とする傭兵を使った。そのため、オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を承認、地中海の南部や東部の沿岸で体制転覆プロジェクトを始めた。いわゆる「アラブの春」だ。2011年2月にはリビア、そして同年3月にはシリアを傭兵に攻撃させている。HTSもそうしたジハード傭兵の流れに属す。 2011年3月からシリアで政府軍と戦っていたジハード傭兵の雇い主はアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟にイギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、パイプラインの建設をシリアに拒否されたカタール、そしてトルコなどだ。 ジハード傭兵はシリア東部の油田地帯を制圧、2015年になるとオバマ政権は政府を好戦的な布陣に変える。2015年2月に国防長官をチャック・ヘーゲルからアシュトン・カーターへ、同年9月には統合参謀本部議長をマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへといった具合だが、デンプシーが解任された直後の9月末にロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入、アル・カイダ系武装勢力や新たに出現したダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)を敗走させた。 そこでアメリカはクルドと手を組み、地上部隊を油田地帯のデリゾールへ入れて基地を建設した。2016年9月には2機のF-16戦闘機と2機のA10対地攻撃機で政府軍部隊を攻撃、80名以上の兵士を殺害している。アメリカ軍は交通の要衝、アル・タンフにも基地があり、戦闘員の訓練などにも使われてきた。 シリアの混乱はイスラム諸国の西側に対する信頼、あるいは信仰の結果だったようだ。イランの経済分野には親米勢力がまだ存在していると見られている。反帝国主義を掲げるマフムード・アフマディネジャドを2005年に攻撃したのもそうした勢力だった。その際、ロイターはアフマディネジャド大統領の発言を捏造している。2009年にはカラー革命も試みられ、13年に彼は排除された。そして登場したのがハッサン・ロウハニだ。 経済分野に巣食う親米派や大統領の交代も問題だが、防諜部門の問題も深刻。2011年に任命された防諜の責任者は21年までその職にあったが、この人物はイスラエルのスパイだった。2021年に彼は約20名のチームを率いてイスラエルへ亡命している。こうしたイスラエルのネットワークが消えたとは思えない。 2024年5月19日にエブラヒム・ライシ大統領やホセイン・アミール-アブドラヒヤン外相らを乗せたベル212ヘリコプターがイラン北西部で墜落、全員が死亡。7月31日にはハマスのイスマイル・ハニヤがテヘランで暗殺され、ハッサン・ナスララを含むヒズボラの指導者が立て続けに殺されたが、イランの情報機関から漏れた可能性もある。ライシの次の大統領、マスウード・ペゼシュキヤーンは親欧米派だ。 また、シリアのアサドは数年前からエジプト、アラブ首長国連邦、サウジアラビアなど親欧米派の影響下にあったとする情報もある。その親欧米派はアサドに対し、イランとロシアとの関係を断ち切るよう促していたというのだ。アサド政権は収入源である石油や農業をアメリカ軍に抑えられ、しかもアメリカ主導の経済制裁で苦しんでいた。そこで「経済制裁の解除」という餌に食いついたのかもしれない。HTSがアレッポを制圧するまでアサドは楽観していたとする情報もある。 かつてリビアに君臨していたムアンマル・アル・カダフィは欧米諸国やイスラエルの計画を見抜いていた。まずレバノンとシリアを破壊し、イスラエルとトルコが国境で面することになり、シリアは5つの小国になると語っていた。大イスラエル構想とオスマン帝国構想の衝突とも言える。また、2008年のアラブ首脳会議でカダフィは、サダム・フセインと同じように処刑の順番が回ってくると各国の首脳に語った。「サダムに起こったことはあなた方にも起こるだろう」というわけだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.10

ウクライナ、シリア、ガザ、いずれの戦乱ともエネルギー資源が深く関係している。 ウクライナの戦乱は2013年11月、ユーロマイダンで始まったカーニバル的な集まりから始まった。ロシア軍云々と西側の有力メディアは主張し続けているが、これは事実に反したプロパガンダにすぎない。 2014年に入るとステパン・バンデラを信奉するネオ・ナチのグループが前面に現れて様相は一変。2月に入るとそのメンバーはチェーン、ナイフ、棍棒を手に石や火炎瓶を投げ始め、さらにトラクターやトラックを持ち出す。 2月中旬になると広場で無差別の狙撃が始まり、抗議活動の参加者も警官隊も狙われている。西側の政府やメディアはビクトル・ヤヌコビッチ大統領が狙撃の黒幕だと宣伝していたが、後にネオ・ナチのアンドレイ・パルビーが指揮していたことが判明。2月25日にキエフ入りして調査したエストニアのウルマス・パエト外相もネオ・ナチが実行した可能性が高いと報告している。 ネオ・ナチを操っていたのはアメリカのバラク・オバマ政権。クーデターでウクライナをアメリカの属国にすることが目的であり、ロシアから見ると新たなバルバロッサ作戦の始まりだ。 1991年12月にソ連が消滅するが、その前、90年にウクライナ議会はソ連からの独立を可決した。それに対し、南部のクリミアでは91年1月にウクライナからの独立を問う住民投票を実施、94%以上が賛成している。西側はウクライナ議会の議決を承認する一方、クリミアの議決を拒否した。クリミアを含む南部、そしてロシアに近い東部はロシア文化圏に属し、住民の大半は自分たちをロシア人だと考えていた。 そうした状況だったことから独立を宣言した後のウクライナは中立を掲げるのだが、それは西側の支配層にとって受け入れ難いことだった。そこで、中立政策を潰すためにアメリカはオレンジ革命、そしてネオ・ナチを使ったクーデターを仕掛けたのだ。ウクライナを自分たちの属国にするひとつの理由はロシアに対する軍事的な圧力を強めることにあったが、それ以外にも目的があった。 アメリカにとってヨーロッパは自分たちの属国なのだが、当時、ロシアとの関係を強めていた。ヨーロッパとロシアを結びつけていたのは天然ガスにほかならない。その天然ガスを輸送するパイプラインの多くはウクライナを通過、そこで、ウクライナを制圧することで天然ガスの輸送をアメリカが管理することができる。 クーデター後、ベラルーシとポーランドを経由してドイツへつながるヤマル-ヨーロッパ・パイプライン、ウクライナを経由するソユーズ・パイプラインがアメリカによって寸断された。 それに対し、ロシアとドイツはウクライナを迂回するパイプラインのプロジェクトがあった。1997年にスタートしたノード・ストリームである。最初のパイプランは2011年11月に、また次のラインは翌年の10月に完成した。オバマ政権がクーデターを実行する前の話である。これが「ノルド・ストリーム1」だ。 輸送力を増強するため、2018年位は新たなパイプラインの建設が始まり、21年9月に完成するが、ドイツのオラフ・ショルツ首相は認証しない。2022年9月には「ノード・ストリーム1」と「ノード・ストリーム2」は爆破されてしまう。 ふたつのパイプラインの破壊をアメリカ政府は予告していた。例えばビクトリア・ヌランド国務次官は2022年1月27日、ロシアがウクライナを侵略したらノード・ストリーム2は前進しないと発言、同年2月7日にはジョー・バイデン大統領がノード・ストリーム2を終わらせると主張、記者に実行を約束している。 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは2023年2月8日、アメリカ海軍のダイバーがノルウェーの手を借りてノードストリームを爆破したとする記事を発表した。工作の拠点はノルウェーだという。ハーシュによると、ジョー・バイデン米大統領は2021年後半にジェイク・サリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成し、その中には統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加している。12月にはどのような工作を実行するか話し合い、2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を具申した。 ノルウェー海軍はアメリカと連携、デンマークのボーンホルム島から数キロメートル離れたバルト海の浅瀬で3本のパイプラインにプラスチック爆弾C4を設置、2022年9月26日にノルウェー海軍のP8偵察機が一ソナーブイを投下、信号はノード・ストリーム1とノード・ストリーム2に伝わり、数時間後に爆発したという。 バラク・オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を承認、ムスリム同胞団を利用し、地中海の南部や東部の沿岸で体制転覆プロジェクトを始めた。いわゆる「アラブの春」だ。2011年2月にはリビア、そして同年3月にはシリアを傭兵に攻撃させている。傭兵の主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団で、アル・カイダ系武装集団とも言える。ハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)もその流れだ。 シリアへの軍事侵略にはアメリカのほか、サイクス・ピコ協定コンビのイギリスやフランス、ムスリム同胞団と関係が深いカタールやトルコが関係している。 このうちカタールとトルコはシリア経由でカタール産天然ガスを運ぶパイプラインを建設する計画を立てていたのだが、同じ時期にイラン産天然ガスをイラクとシリアを経由してヨーロッパへパイプラインで運計画があり、シリアはカタールとトルコの計画を拒否した。カタールとトルコがシリア侵略に加担した理由のひとつはここにあるとされている。 イスラエルはガザを攻撃、すでに4万5338名のパレスチナ人を殺害している。そのうち約4割が子どもであり、女性を含めると約7割に達し、そのほか医療関係者やジャーナリストも狙われている。 ガザでの戦闘は2023年10月7日に始まったが、同年4月にイスラエルの警官隊がイスラムの聖地であるアル・アクサ・モスクへ突入している。その年の10月3日にはイスラエル軍に保護されながら同じモスクへ832人のイスラエル人が侵入してイスラム教徒を挑発、そして10月7日のハマスによる「奇襲攻撃」に繋がった。 ガザ沖に推定埋蔵量約4500億立方メートルの大規模なガス田を存在するとノーブル・エナジーが発表したのは2010年のことだった。USGS(アメリカ地質調査所)の推定によると、エジプトからギリシャにかけての海域には9兆8000億立方メートルの天然ガスと34億バーレルの原油が眠っている。ビル・クリントン元米大統領はノーブル・エナジーのロビイストだ。 10月7日にハマスがイスラエルを攻撃した直後、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出した。聖書の中でユダヤ人と敵だとされている「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を彼は引用、「アマレク人」をイスラエルが敵視しているパレスチナ人に重ねたのである。その記述の中で、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神は命じている。 サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだと言えるだろう。ネタニヤフによると「われわれは光の民であり、彼らは闇の民」なのである。 いずれの戦乱ともエネルギー資源が関係している。アメリカがベネズエラを執拗に乗っ取ろうとしている理由もそこにあるだろう。ウクライナは現在、そのエネルギー資源を使い、ヨーロッパを恫喝、EU加盟国との関係が悪化している。アメリカからの圧力にもかかわらず、ロシアは今でもヨーロッパにとって重要な天然ガス供給国なのだが、その供給を止めたなら、ヨーロッパは衰退で止まらず、崩壊する可能性がある。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.09
ウクライナ軍は1月5日朝、戦車、空挺部隊を乗せた装甲兵員輸送車輌、地雷除去車輌などを使い、クルスクに対する新たな攻撃を開始、地雷原を突破したようだが、200名近い兵士が戦死、装甲車輌数十輛が破壊され、同日の夕方には撃退されたと伝えられている。 シリア情勢に対応してロシア軍がシリアへ戦力を割くと考えたのかもしれないが、そうしたことは起こっていない。今回、ウクライナ軍は電子戦を展開、ドローンを無力化しようと試みたようだが、ロシア軍は光ファイバー・ドローンで対応しているとされている。 昨年8月6日にもウクライナ軍はクルスクへ軍事侵攻しているが、その際、ロシア側には国境警備隊が配備されていただけである程度侵入を許した。その後、ロシア軍は航空兵力などで反撃を開始、さらに予備部隊が投入されてウクライナ軍は壊滅的な打撃を受け、多くの死傷者が出ている。新たな攻勢で戦況を変えられるようには思えない。ウクライナの敗北は決定的だ。 ウクライナを舞台としたアメリカとロシアの戦争は2014年2月、バラク・オバマ政権が仕掛けたクーデターを切っ掛けにして始まったと言えるが、ロシア軍が直接ウクライナを攻撃し始めたのは2022年2月24日のことである。ミサイルなどでドンバス周辺に集結していたウクライナ軍の部隊を壊滅させ、航空基地、レーダー施設、あるいは生物兵器の研究開発施設を破壊し始めた。 この段階でロシア軍の勝利は確定的。そこでイスラエルの首相だったナフタリ・ベネットを仲介役として停戦交渉が始まり、双方とも妥協して停戦の見通しが立った。ベネットは3月5日にモスクワへ飛んでウラジミル・プーチンと数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけることに成功。その足でベネットはドイツへ向かい、オラフ・ショルツ首相と会うのだが、その3月5日にウクライナの治安機関であるSBUのメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺した。クーデター後、SBUはCIAの下部機関として機能している。 停戦交渉はトルコ政府の仲介でも行われた。アフリカ各国のリーダーで構成される代表団がロシアのサンクトペテルブルクを訪問、ウラジミル・プーチン大統領と6月17日に会談しているが、その際、プーチン大統領は「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案を示している。その文書にはウクライナ代表団の署名があった。つまりウクライナ政府も停戦に合意していたのだ。 ロシアとウクライナだけなら、ここで戦闘は終わっているのだが、言うまでもなく、終わらなかった。こうした停戦交渉を潰すため、2022年4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相がキエフへ乗り込んでロシアとの停戦交渉を止めるように命令している。ホワイトハウスの指示だと見られている。同年4月30日にはアメリカのナンシー・ペロシ下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓った。それ以降、西側はウクライナに対し、ロシアを疲弊させるため、戦い続けるように要求している。 この当時、アメリカを中心とする西側諸国は自分たちの兵器を投入すればロシア軍を粉砕できると本気で信じていた可能性が高い。翌年の途中まではそう信じていたのだろうが、彼らが2014年から8年かけて構築したマリウポリ、ソレダル、マリインカ、アウディーウカにある地下要塞を結ぶ要塞戦が2024年2月までに突破され、万事休す。それでもアメリカ/NATOはウクライナ政府に対し、最後のひとりまでロシア軍と戦えと命じていた。 かつて、アメリカは泥沼化した戦争を停戦へ持ち込むため、核兵器を利用したことがある。例えば1953年1月に新大統領のドワイト・アイゼンハワーがこの手法を使っている。 ハリー・トルーマン政権が始めた朝鮮戦争は泥沼化、早期停戦を望むアイゼンハワーは中国に対し、休戦に応じなければ核兵器を使うと脅したとされている。休戦は同年7月に実現した。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) そのアイゼンハワー政権で副大統領だったリチャード・ニクソンはベトナム戦争から抜け出すため、カンボジアに対する秘密爆撃を実行しながらアイゼンハワーの手法、つまり核兵器で北ベトナムを恫喝した。そのニクソンは自分たちが望む方向へ世界を導くため、アメリカが何をしでかすかわからないと思わせれば良いと考えたともいう。イスラエルのモシェ・ダヤンの場合、イスラエルは狂犬のようにならなければならないと語ったという。そしてネオコンは「脅せば屈する」と信じている。 ネオコンは中国やロシアも「脅せば屈する」と信じているようだが、中露はそうした脅しに屈しない。その結果、世界は全面核戦争へ近づいている。西側の支配層内でも危機感が高まっているようだが、ネオコンの暴走を止められるかどうかはわからない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.08
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は米英支配層が打ち出す政策に従い、ロシアに敵対し、イスラエルを支持し、そして「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」を推進してきた。この「ワクチン」をめぐる汚職容疑で彼女は告発されている。 この「ワクチン」をフォン・デア・ライエンは2022年、EU諸国と合意しないままファイザーのアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)と、安全性の確認されていない350億ユーロ相当の「COVID-19ワクチン」の購入契約を秘密裏に締結した。 彼女の夫、ハイコ・フォン・デア・ライエンはハノーバー臨床試験センター(HCTC)を経てオルジェネシス社のメディカル・ディレクターを務めているが、この会社はファイザーと提携している。ウルズラは夫のハイコにもメッセージを送っているが、そのメッセージはすでに削除されている。 彼女が結んだファイザーとの契約が問題にされているのだが、EU検察庁は彼女がこの件で免責特権を有すると主張、この主張が適切かどうかを検討する審理が開かれる。 アメリカでは裁判所の命令で医薬品メーカーやFDA(食品医薬品局)が隠蔽しようとした文書が公開された。その文書を分析したサーシャ・ラティポワは、バラク・オバマ大統領の時代から国防総省が「COVID-19ワクチン」の接種計画を始めたと主張している。彼女は製薬業界で25年以上にわたってデータ分析、臨床試験、技術に携わってきた人物だ。 ロシア軍はウクライナで回収した機密文書の分析を進め、アメリカ国防総省のDTRA(国防脅威削減局)がウクライナ国内で生物兵器の研究開発を進めていたことをつかむ。同国の議会は2023年4月に報告書を発表している。その報告書の中で、アメリカの研究者が人だけでなく動物や農作物にも感染でき、大規模で取り返しのつかない経済的損害を与える「万能生物兵器」を遺伝子組換え技術を利用して開発していたと指摘されている。そうした兵器を秘密裏に使い、「核の冬」に匹敵する結果をもたらすつもりだという。この特性は「レプリコン・ワクチン(自己増幅型COVIDワクチン)」と似ていないだろうか。 ロシア軍で分析を指揮していたのは核生物化学防護部隊のイゴール・キリロフ中将だ。キリロフは未公表の機密文書を所有、更なる発表も予想されていたが、12月17日にモスクワで暗殺された。 この機密文書にはウクライナだけでなく、ジョージアのトビリシにあるルガー研究所が関与しているとされる文書も含まれ、ジョージアとアメリカの合同軍事研究プロジェクトについても記載されている。このプロジェクトにはDTRAやCDCなどが資金を提供しているようだ。 キリロフ中将は生前、2022年2月にロシアがウクライナに対するミサイル攻撃を始める前にアメリカはロシアで最大1万6000の生物学的サンプルを入手、その目的はロシア民族とウクライナ民族にとって特に危険な細菌やウイルスを作るために利用することにあったと語っている。 フォン・デア・ライエンがファイザーと行った契約はアメリカ国防総省が進めてきたプロジェクトの中で行われていると言え、EU検察庁が彼女の免責特権を主張するのは必然だろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.07
ラスベガスに立つトランプ国際ホテルの前に停車したテスラ・サイバートラックが爆発したのは1月1日のことだった。トランプとテスラ。そこに何らかの意図を感じない人はいないだろう。 その爆発でアメリカ陸軍特殊部隊(グリーンベレー)に所属していたマシュー・リベルスバーガーが死亡したとされている。2006年に陸軍へ入隊した後、アフガニスタン、ウクライナ、タジキスタン、ジョージア、コンゴへ派遣され、ウクライナでドローン・オペレーターを務めていたという。 彼はデザートイーグル0.50口径という拳銃で自分の頭を撃ち、花火の打ち上げ筒や燃料缶で作られたIED(即席爆発装置)が爆発したとされているのだが、グリーンベレーに18年間所属、さまざまな銃器の取り扱いやIEDの組み立てに慣れているはずの軍人が作ったにしては粗雑なものだとCIAの元分析官、ラリー・ジョンソンは指摘する。また銃口の閃光は記録されていない。 車内に残された遺体は身元が分からないほど焼け焦げていたが、身分証明書が残っていたので名前が判明したとされている。リベルスバーガーが所属していた第10グループは軍事用品店がある小さな管理センターで、兵士を収容したり訓練する場所ではないという。 リベルスバーガーはウクライナでドローン・オペレーターを務め、UAP/USAP(未確認空中現象/非承認特別アクセス プログラム)のTS/SCI(極秘/機密情報)許可を持っていたとされている。 アメリカ陸軍の元情報将校、サム・シューメイトによると、リベルスバーガーが送ってきたメールの中で、中国はアメリカ東海岸沿いの潜水艦から「GDIC推進システム」を使用する先進的なドローンを発射、この技術を持っているのは中国とアメリカだけだと主張している。ステルス性、探知回避能力、無制限の積載能力から「国家安全保障に対する最も危険な脅威」としている。昨年11月中旬以降、アメリカ東海岸上空を飛行する謎のドローンが複数目撃されている。 また、アメリカ軍が2019年にアフガニスタンのニムルーズ州で実行した空爆にリベルスバーガーも関与したが、その空爆で女性や子どもを含む民間人が犠牲になったと主張、その事実を国防総省、DEA、CIAが隠蔽したとしている。彼はメキシコへ向かっているが、FBIと国土安全保障省が自分を監視、追跡していると非難していた。 シューメイトの情報が正しいなら、リベルスバーガーは内部告発しようとしていたということになるだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.06
アメリカの食品医薬品局(FDA)ホワイト・オーク・キャンパス研究所で実施された研究に基づく論文がジャーナル・オブ・ハイ・スクール・サイエンスに掲載された。 その論文によると、ファイザー社が製造したmRNA方式の「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」には規制上の安全基準の6倍から470倍を超える残留DNAが含まれている。この研究はFDAの科学者が監督する下で学生研究者が実施された。研究者らは理論上はDNA断片がヒトDNAに組み込まれ、遺伝子変異のリスクを高める可能性があると警告してきた。 DNAの混入は2023年にゲノム学者のケビン・マッカーナンが発表している。ファイザーとモデルナの製造した「mRNAワクチン」にプラスミドDNAが混入しているというのだが、その後、その事実は確認されてきたが、今回の論文が話題になっているのは、FDAの研究所が同じ主張をしているからだ。 この「ワクチン」と称する遺伝子操作薬にはLNP(脂質ナノ粒子)の毒性、グラフェン誘導体の混入という問題もあるが、そもそも「mRNAワクチン」の仕組みが問題。 この遺伝子操作薬は人間の細胞に病気の原因であるスパイク・タンパク質を製造させ、抗体を作るとされているが、このスパイク・タンパク質が病気の原因になる。そこで人間の免疫システムは細胞を病気の原因だと認識して攻撃、炎症を引き起こす。接種が始まる前からADE(抗体依存性感染増強)も懸念されていた。 そのまま放置すると非接種者を死に至らしめる可能性があり、そうした炎症を免疫の低下が抑えなければならない。そこで新薬には免疫を低下させる仕組みが組み込まれているのだが、人間の免疫システムも免疫を下げて炎症を抑制するためにIgG4交代を産生する。これも人体の防衛反応なのだろう。いわばAIDS状態にするわけで、VAIDS(ワクチン後天性免疫不全症候群)なる造語も作られた。免疫が低下すれば炎症を抑えられるが、病原体の増殖を推されらない。AIDSと同じように感染しやすくなり、癌の増殖を促進すると懸念されている。 ロシア軍の放射線・化学・生物防衛部隊を率いていたイゴール・キリロフ中将が12月17日にモスクワで暗殺されたが、この軍人はアメリカがウクライナで行っていた生物兵器の研究開発を明らかにし、そうした研究所の問題だけでなく、ウクライナや西側諸国を含む地政学的な利益とのつながりを指摘、機密の軍事研究に関連する潜在的な動機を浮き彫りにしつつあった。この暗殺にはアメリカやイギリスの情報機関が関与していると疑われている。 アンソニー・ファウチが所長を務めていたNIAID(国立アレルギー感染症研究所)は2014年からコロナウイルスの研究費としてエコヘルス連合へ数百万ドルを提供、その一部は「武漢病毒研究所(WIV)」の研究員へ提供されていたと伝えられている。エコヘルス連合を率いていたピーター・ダザックはウクライナ人の父親を持つ人物で、WIVの研究者とも親しくしていたようだ。 エコヘルス連合はWHO(世界保健機関)へアドバイスする立場にある団体で、NIAIDの上部機関であるNIHからWIVの石正麗へ研究費として370万ドルが提供されていたとも伝えられていた。 長年医薬品業界で研究開発に携わってきたサーシャ・ラティポワはその前にCOVID-19と国防総省の関係を指摘していた。アメリカでは裁判所の命令で医薬品メーカーやFDA(食品医薬品局)が隠蔽しようとした文書が公開されたが、それを彼女は分析、バラク・オバマ大統領の時代から国防総省が「COVID-19ワクチン」の接種計画を始めたと主張してきた。 そのほか、CDC(疾病予防管理センター)の所長を2018年3月から21年1月まで務めたロバート・レッドフィールドがこの問題について語っている。COVID-19は人工的に作られたもので、「バイオ防衛プログラムの一環として意図的に作られた」と彼は示唆、そうした発言をダナ・パリシュは11月15日に公開した。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.05

ドナルド・トランプの大統領就任を間近に控えたアメリカで立て続けに自動車を使ったテロ事件が引き起こされた。ニューオーリンズでは1月1日午前3時頃、シャムスード-ディン・ジャバーが運転するフォードのF-150ピックアップが人混みの中へ突入して15名以上を殺害、その数時間後にはラスベガスのトランプ国際ホテルの前にマシュー・リベルスバーガーが止めたテスラ・サイバートラックが爆発してひとりが死亡したのだが、ジャバーとリベルスバーガーには奇妙な共通点があり、話題になっている。ジャバーには共犯者がいたとも言われている。 いずれの車両ともカー・シェアリング会社TUROで借りられていたのだが、それだけでなく、ふたりともノースカロライナ州のフォート・ブラッグ(現在の名称はフォート・リバティ)に配属されていたことがあるのだ。フォート・ブラッグ基地にはアメリカ陸軍特殊作戦部隊の司令部がある。 ジャバーが軍に所属していたのは2007年から20年で、09年2月から10年1月までアフガニスタンへ派遣されていた。第82空挺師団第1旅団戦闘団の情報技術チーム長だったことがあるとされている。彼はフェイスブックのアカウントでISIS(ダーイッシュ、IS、ISIL、イスラム国とも表記)に加わったとされ、現場からダーイッシュの旗が見つかっているが、実際にダーイッシュに所属していたのかどうかは不明だ。 リベルスバーガーは2006年に通信の専門家として陸軍特殊部隊(グリーンベレー)へ入隊して11年まで所属、その後州兵と陸軍予備役に短期間所属した後、12年後半に現役へ復帰したという。 フォート・ブラッグで両者が接触していたことを示す証拠はないとされているが、事件を引き起こしたタイミングが近いこともあり、何らかの関係があると疑う人は少なくない。 似たような事件がドイツでも引き起こされている。昨年12月20日、ドイツのマクデブルクでSUVが群衆へ突っ込み、5人が死亡している。自動車を運転していた人物はタレブ・アル・アブドゥルモフセンで、反イスラム活動家だとされている。今年2月23日に予定されている連邦議会選挙との関係も指摘された。恐怖で社会を不安定化させることが目的ではないかと考える人もいる。実際、監視システムや法律の強化、言論統制を求める声が高まったようだ。 イタリアではNATOの秘密部隊「グラディオ」が1960年代から80年代にかけて爆弾テロを繰り返し、クーデターを計画して恐怖で社会を緊張させ、左翼陣営に壊滅的な打撃を与えている。緊張戦略だが、同じ子が行われている可能性もある。 バラク・オバマ政権はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を使って体制転覆工作を開始強いた。2010年には「アラブの春」、11年春にはリビアやシリアに対する軍事侵攻を開始、2013年11月にはウクライナでネオ・ナチを使ってクーデターを実行している。 シリアでの工作が思惑通りに進まず、2014年にはダーイッシュを始動させ、残虐さをアピール。その残虐なダーイッシュを倒すためだという口実で2015年にはNATOを軍事介入させようとするが、その前にロシア軍がシリア政府の要請で介入、NATOの軍事介入はなかった。ただアメリカ軍が侵入、基地を建設して石油などの盗掘を始めている。 そうした中、2013年4月、ボストン・マラソンのゴール・ライン近くで爆発があり、3名が死亡し、百数十名が負傷した。ゴール・ラインの近くには複数の爆発物探知犬がいたほか、黒いバックパックを背負い、キャップを被った複数の人間が目撃されている。後に黒いバックパックの一団は州兵だったことが明らかにされた。「訓練なので心配しないように」というアナウンスが流れていたともいう。 爆発の2時間前、ボストン・グローブ紙はツイッター(X)で、爆弾処理班による活動の一環として、1分以内に図書館の向かい側で制御爆破があると書き込んでいる。死傷者の出た爆破もボストン公共図書館の向かい側で起こった。 2015年1月には、「風刺画」の雑誌を出しているフランスのシャルリー・エブドの編集部が襲われて11名がビルの中、また1名が外で殺害されている。 襲撃したふたりはAK-47、ショットガン、RPG(対戦車ロケット弾発射器)で武装し、マスクをしていたという。歩道上に倒れていた警官の頭部がAK-47で撃たれて殺されたことになっているが、映像を見る限りその痕跡はない。骨や脳が飛び散ったり、血が吹き出たりしていないのだ。地面に当たって破片が致命傷を負わせたとしても大量の出血があるだろう。事件の捜査を担当したエルリク・フレドゥが執務室で拳銃自殺したことも疑惑を深める一因になった。 また、11月13日にはパリの施設が襲撃されて約130名が殺されたとされているが、その痕跡が見あたらなかった。映像をチェックしても「血の海」と言える光景はなく、犠牲者の氏名も明確でなかった。 これら以外にもテロが続いた。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.04

イギリスのフィナンシャル・タイムズ紙は12月31日、ロシア軍の計画担当者が日本や韓国との戦争を想定し、160か所の標的をリスト化したと報じた。秘密文書を見た同紙の判断だという。目標には軍事施設のほか関門トンネルや茨城県東海村の原子力施設などが含まれているとされている。この報道の信憑性は不明だが、その当時、すでにアメリカがロシアとの戦争に動いていた可能性は高い。 アメリカのバラク・オバマ政権は2013年11月、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒すためにキエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)でクーデターを始めていた。当初は人を集めるためにカーニバル的な雰囲気を作り出したが、年明け後にステパン・バンデラを信奉するネオ・ナチが前面に出てくる。 2月に入るとネオ・ナチはチェーン、ナイフ、棍棒を手に石や火炎瓶を投げ、トラクターやトラックを持ち出してくる。ピストルやライフルを撃っている様子を撮影した映像がインターネット上に流れた。 このネオ・ナチは2004年からバルト3国にあるNATOの訓練施設でアメリカ/NATOの軍事訓練を受けていたと伝えられているが、それだけでなく、ポーランド外務省は2013年9月にクーデター派の86人を大学の交換学生を装って招待、ワルシャワ郊外にある警察の訓練センターで4週間にわたって暴動の訓練を受けたとも伝えられていた。アメリカの有力メディアによると、内戦勃発後の2015年からCIAはウクライナの特殊部隊をアメリカの南部にある秘密基地で訓練してきたという。ロシアにとってアメリカ/NATOがウクライナを制圧するということは対ロシア戦争、いわば「ネオ・バルバロッサ作戦」の開始を意味する。 ジョー・バイデンが大統領に就任した翌年、2022年の4月にアメリカ国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲するという計画を公表した。この計画はドナルド・トランプ、バラク・オバマ、あるいはそれ以前に建てられていたのだろう。アメリカがウクライナでクーデターを成功させた2014年以降、中国とロシアは急接近し、戦略的な同盟関係に入ったことを考えると、アメリカ側の計画はロシアとの戦争を意図していると言える。日本では自衛隊は2016年に与那国島でミサイル発射施設を建設、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させているが、これはアメリカの軍事戦略に基づくものだ。 南西諸島にミサイル発射基地が建設されつつあった2017年11月、アメリカはオーストラリア、インド、日本とクワドの復活を協議、18年5月にはアメリカ太平洋軍をインド太平洋軍へ名称変更した。インド洋と太平洋を一体のものとして扱うということだろう。 2020年6月にNATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長はオーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言。2021年9月にはアメリカ、イギリス、オーストラリアのアングロ・サクソン3カ国が太平洋でAUKUSなる軍事同盟を創設したとする発表があった。 アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられたが、そうした潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦になる。その原子力潜水艦を受け入れる可能性があると山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日に表明した。 与那国島にミサイル発射施設を建設する前年、2015年の6月、総理大臣だった故安倍晋三は赤坂の「赤坂飯店」で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で、「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたと報道されている。安倍首相は南シナ海における中国との軍事衝突を見通していた。 岸田文雄政権は2022年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにした。 2022年10月には、「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。 こうした動きに対し、ロシア国家安全保障会議の議長を務めていたニコライ・パトロシェフは2021年9月、AUKUSは中国やロシアを仮想敵とする「アジアのNATO」だと指摘、ロシアは朝鮮との関係を急ピッチで強化している。 日本から台湾にかけては米英両国にとって中国侵略の拠点であり、朝鮮半島は橋頭堡にほかならない。日本には自衛隊というアメリカ軍の補完部隊が存在、韓国には現役の軍人が50万人、そして予備役が310万人いる。その韓国を動かすためにアメリカは尹錫悦を大統領に据え、日米韓の「三国同盟」を推進しようとしたのだろうが、尹大統領の従米政策は国民の反発を招く。 そこで尹は12月3日にソウルの大統領室庁舎で緊急談話を発表、朝鮮に追従する「従北勢力を撲滅し、自由憲政秩序を守るため非常戒厳を宣布する」と宣言、朴安洙陸軍参謀総長を戒厳司令官に任命。その戒厳司令官は国会、地方議会、政党の活動、そして政治的結社、集会、デモなど一切の政治活動を禁じ、すべてのメディアと出版は戒厳司令部によって統制されると発表した。 尹はクーデターを試みたと考えられているが、戒厳令宣言に反対する人びとが素早く抗議活動を開始、宣言から数時間後に議会は議員300人のうち190名が出席して戒厳令を撤回させる動議を全会一致で可決している。クーデターは失敗に終わった。 この戒厳令宣言の黒幕は韓国駐在アメリカ大使のフィリップ・ゴールドバーグではないかと考える人もいる。この人物は2006年10月からボリビア駐在大使を務めていたのだが、2008年9月、ボリビア大統領だったエボ・モラレスはクーデターを支援したとして彼を国外へ追放している。また2013年12月から16年10月にかけてフィリピン駐在大使を務めていた際、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領からCIAがドゥテルテの追放、あるいは暗殺を企てていると非難されていた。 尹錫悦が逮捕された場合、アメリカの工作が明らかにされる可能性もあり、それを正当化する話を流し始めている可能性もあるだろう。フィナンシャル・タイムズ紙はシティ(イギリスの金融界)と緊密な関係にある。イギリスの支配層は中国を侵略して略奪するため、1839年9月から42年8月にかけて「第1次アヘン戦争」を、また1856年10月から60ねん10月まで「第2次アヘン戦争」を仕掛けているが、内陸を占領することはできなかった。その後、イギリスやアメリカを後ろ盾とする勢力が「明治維新」を成功させ、新体制の日本は中国侵略を始めている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.03

バラク・オバマ政権がウクライナでクーデターを実行、支配下に置いた理由はいくつかあるが、そのひとつはヨーロッパとロシアを結びつけていた天然ガスの輸送を断ち切ることにあった。クーデター後、ベラルーシとポーランドを経由してドイツへつながるヤマル-ヨーロッパ・パイプライン、ウクライナを経由するソユーズ・パイプラインがまず寸断されている。2022年9月には、ウクライナを迂回し、バルト海経由でロシアからドイツへ天然ガスを輸送する「ノード・ストリーム1」と「ノード・ストリーム2」が爆破された。 それでも完全に輸送が断ち切られたわけではなかったのだが、1月1日にPJSCガスプロムとウクライナのナフトガスとの契約などが終了、ウクライナ経由でヨーロッパへ運ばれていた天然ガスの供給を停止されたと伝えられている。残されたロシア産天然ガスを輸送するルートはトルコ経由のパイプラインや船で運ばれる液化天然ガスだけになる。 こうした契約の更新をウクライナ政府は繰り返し拒否していたが、その結果だ。安価なロシア産天然ガスから高価なアメリカ産ガスに切り替えられたとしてもヨーロッパの状況はこれまで以上に厳しくなると見られている。 ノード・ストリーム1とノード・ストリーム2の爆破はアメリカ政府から予告されていた。例えば、ビクトリア・ヌランド国務次官は2022年1月27日、ロシアがウクライナを侵略したらノード・ストリーム2は前進しないと発言、同年2月7日にはジョー・バイデン大統領がノード・ストリーム2を終わらせると主張、記者に実行を約束している。 事故の可能性は小さく、ロシアには破壊する理由がない。調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは2023年2月8日、アメリカ海軍のダイバーがノルウェーの手を借りてノードストリームを爆破したとする記事を発表した。工作の拠点はノルウェーだという。 ハーシュによると、ジョー・バイデン米大統領は2021年後半にジェイク・サリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成し、その中には統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加している。12月にはどのような工作を実行するか話し合い、2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を具申している。 ノルウェーの海軍はアメリカと連携、デンマークのボーンホルム島から数キロメートル離れたバルト海の浅瀬で3本のパイプラインにプラスチック爆弾C4を設置、2022年9月26日にノルウェー海軍のP8偵察機が一ソナーブイを投下、信号はノード・ストリーム1とノード・ストリーム2に伝わり、数時間後に爆発した。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.02

シリアではホムス郊外の村で非武装の民間人が誘拐され、殺害されていると報告されている。バシャール・アル・アサド政権打倒で中心的な役割を果たしたのはトルコを後ろ盾とするハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)で、その指導者とされているアブ・ムハンマド・アル・ジュラニはロシアと協調する姿勢を見せているものの、アメリカやイギリスに雇われているRCA(革命コマンド軍)はシーア派住民を虐殺し、キリスト教徒を弾圧している。 オランダのカスパー・フェルドカンプ外相はシリアに対する制裁解除の条件としてロシア軍の撤退を求めているが、アメリカやイギリスも同じように考えているだろう。クルドをトルコは敵視、アメリカは手先として利用、この件でも両国は対立している。さらにフランス軍は敵対する武装勢力への空爆を始めたという。こうした対立は反アサド武装勢力の内部抗争に発展する可能性が指摘されている。こうした欧米諸国だけでなく、イスラエルも大規模な空爆を実施、地上部隊もシリアへ侵攻させた。 中東の問題はシオニストによるイスラエル建国を抜きに語ることはできないのだが、最近の出来事に限ってもイスラエルが中東を破壊しようとしていることがわかる。 2022年12月にイスラエルの首相となったベンヤミン・ネタニヤフはその4カ月後にイスラエルの警官隊をイスラムの聖地であるアル・アクサ・モスクへ突入させた。2023年10月3日にはイスラエル軍に保護されながら同じモスクへ832人のイスラエル人が侵入してイスラム教徒を挑発、そして10月7日にハマスがイスラエルを陸海空から奇襲攻撃したわけだ。 10月7日の攻撃の際、約1400名のイスラエル人が死亡したとされ、その後1200名に訂正されたが、イスラエルのハーレツ紙によると、イスラエル軍は侵入した武装グループを壊滅させるため、占拠された建物を人質もろとも砲撃、あるいは戦闘ヘリからの攻撃で破壊している。イスラエル軍は自国民の殺害を命令したというのだ。いわゆるハンニバル指令である。ハーレツの記事を補充した報道もある。 そこからイスラエル軍はガザで住民虐殺を始めた。すでに4万5338名が殺されたとされ、そのうち約4割が子どもであり、女性を含めると約7割に達すると見られている。そのほか医療関係者やジャーナリストも狙われている。こうした人びとは「戦争の巻き添え」で殺されているわけではない。ガザの子どもたちは、十分な衣服や避難所もなく、凍えるような冬の寒さに凍え、乳児が死亡している。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.01
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