2006/09/23
XML
テーマ: 社交ダンス(8598)
カテゴリ: その他
ー たった一人のお知り合い -

マンション住まいになって驚いたことは、近所付き合いが全くないことでした。

引っ越してきた日に両隣のお家にご挨拶に行ったのですが、左隣の方はそれ以来一度もお会いしていないし、右隣の方なんて、知らない間に別の方に変わっていました。

ここは14階建てで,各階に10世帯くらいずつ入っていて、もう住んで何年にもなるのにお付き合いのある家庭は一つもないのです。

生まれてこの方、ずっとべたべたのご近所付き合いの中で暮らしてきた私にとって、かなり不自然な感じでした。

たった一人の知り合いと言えば、毎朝エントランスの掃除をしてくれているおじさんだけ。

このおじさん、ただものじゃないんです。

毎朝ここの住人が何時何分にそこを通るのか、全部記憶しているようで、私が『おはようございます!』と言って通ると、おじさんは必ず腕時計をチラッと見て、

「あれ、今日はちょっと遅いんじゃない?」



いつも、丁寧にガラスを磨いて、エントランスに敷いてあるマットも新品みたいにきれいに掃除されているので、私はそれを踏まないように端っこを回って歩いていました。

日曜日だけはおじさんが休みなのか、出かけるとき入り口の階段に枯葉が吹き溜まっていたりゴミが落ちていたりするのでその差は歴然でした。

ある日、そのことをおじさんに話して、『いつもきれいにして頂いてありがとうございます。』というと、すっかり照れてしまわれて、耳まで真っ赤にして少年のように目を輝かせておられました。

私はなんだかとてもうれしくて、その日は一日幸せな気持ちでした。

マンションの前には大きな国道が走っていて、駅に向かうにはそれを渡らなければ行けないんですが,その信号が長いんです。

また別のある日、丁度信号が赤になったばかりで、しばらく待たなければならず、雨も降っていたのでおじさんと少しお話をしました。

この仕事は、会社勤めが定年になってから始めたんだよとかいう話です。

どこまで通ってるんだと聞かれたので、○○市と答えると、『随分遠くまで通ってるんだね。』なんて言われました。

おじさんのお兄さんがそこで学校の校長先生をされているそうで、よくご存知だったんです。

その後も、入り口を通るたびにおじさんは腕時計を見て、時間どおりだとにっこり笑い、雨が降りそうな日は『傘持った?』なんて声をかけてくださいました。

引越しの日が後2週間にせまり、たった一人のお知り合いのおじさんにだけはご挨拶していかなくちゃと思っていた矢先、おじさんは突然来なくなって,別の人に代わってしまったんです。



いったいどうなっちゃったんだか、とても気になっています。

今思い返してみると、最後にお会いした日だけ、おじさんは腕時計を見ませんでした。

私は不思議に思ったんですが、丁度信号が青だったので、走って行ってしまったんです。

もっと早くに引っ越すこと言っておけば、そんなことにならなかったかもしれないと悔やまれます。

引越しまであと1週間、おじさんが戻ってきてくれることを願ってやみません。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2006/09/23 01:36:46 AM
コメント(20) | コメントを書く
[その他] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

StarTrees

StarTrees

Calendar


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: