2005年09月28日
XML
カテゴリ: 旅 / 小さな旅
天明4年、当時の学問所の館長で町医者出身の儒学者 亀井南冥は、
その就任わずか4日後であったにもかかわらず、
金印が発見された時には、いちはやく後漢の光武帝が授与されたものだ、と
「金印弁」に発表したらしい。

「祖先が漢の属国になるはずがない」とか、
「鋳つぶして武具の飾りにでも」という過激な声が周囲から出たとき、
南冥は、百両出して買い取ってでも金印を守ろうとしたそうである。

黒田家からの委託を受けて、
金印が、今日なお博物館に無事保管され続けているのは、


しかしその彼は、8年の館長在任後70歳で没するまでの間、
ちょっとしたことがもとで大宰府に蟄居(ちっきょ)する羽目となり、
恵まれない晩年を過ごしたようである。
金印の輝きとは余りにも対照的で気の毒な思いがする。


「友誼の歌」

2,35センチの小さな方形の中に秘められた、
まだ解き明かされていない金印の謎を思う。
博多湾とその海に浮かぶ能古島(のこのしま)を臨み、
林を渡る心地よい風に暫し疲れを癒した。

家族連れ、グループなど、休日とあって来訪者も結構多い。
四阿(あずまや)では初老の男性がスケッチをしている。

多分その島を描いているのだろう。
公園の竹林も近景に入っているのだろうか。

暫くすると、一際声の高い婦人達が石段を登ってきた。
制服姿のタクシーの運転手らしき人の解説を時々頷きながら聞き、
印影のレリーフを念入りに触ると、


四阿の初老の男性は、何事もなかったかのようにスケッチを続けている。
自分の世界に入り込んでいれば、
外野の喧騒も耳に入ることはないのだろう。
よかった、
小さな安堵感が私の気持ちを静めた。

金印のレリーフの左後方と真後ろに、
かなり大きな碑が建てられてある。
日中友好の記念のようだが、
その一方の筆跡の見事さに誘われて歩みよった。

「戦後頻傳(伝)友誼歌 北京聲(声)浪倒銀河・・」
品格のある行書で、しかも懐が広い。
これを彫った石工(いしく)もかなり熟練したセンスのいい人と見える。
ゆったりと時間が流れていった。

筆者との思いを共有するかのように、
その筆跡に惹かれて私は読み進めていった。
「海山雲霧宗朝集 市井霓虹入夜多 ・・」

跋(ばつ)には、1955年冬に福岡を訪問、
18年後の1974年冬再訪、
帰国後この詩をしたためて送ってきた、とある。
七言律詩のそれは、郭沫若(かくまつじゃく) のものであった。

(続)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2005年09月28日 20時09分27秒
コメント(4) | コメントを書く
[旅 / 小さな旅] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

raku-sa

raku-sa

お気に入りブログ

今日の天気・・・・… New! ニッチョさん

地方暮らしが変える1… かじけいこさん
古稀琉憧(元昼寝の… しっぽ2さん
とし坊の青春 としひでちゃんさん
MAYU Healing Voice… MAYULOVECOMさん
情報NOW-ファッ… 楽天情報5303さん
たか・たか・たかし _たかし_さん
KIMさんのおうち ゆなママ2003さん
あたたかな光と相思… 運命を変える力さん
ほっこりお茶でも飲… こぞう01さん

コメント新着

わだつみ判官 @ Re:人生の開拓者に  (11/10) 不景気、そして雇用不安の社会にあって、…
百太郎@ 『人間賛歌 生きているから』拝読しました。 とても感銘を受けました。 具体的な感…
百太郎@ Re[2]:「生きているから」(08/15) raku-saさん お忙しい中、コメントの書…
raku-sa @ Re[1]:「生きているから」(08/15) 百太郎様 お久しぶりです。 お訪ねく…
百太郎@ Re:「生きているから」(08/15) たいへんご無沙汰しております。 以前…
カズ姫1 @ Re:お雛さま(02/11) お久し振りです。 節分が終わると、今度…
わだつみ判官 @ 明けましておめでとうございます。 お忙しい日々をお送りの事とは存じますが…
モモタロウ@ Re:ヴァンジの大男たち・・クレマチスの丘        (12/01) 「ある時期から、人間をテーマにおいたと…

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: