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「夜が更けるのも忘れて見ていた」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。泉川は、水かさが増していて、どうしようなどと言っている時に、 宇治から腕のいい船頭を連れて来ましたと言うが、舟は面倒なので、いつものように、さっと渡ってしまおうと、男たちは決めたようだ。だが、女たちが、やはり舟で渡りたいと言うので、仕方なく、それではと、皆船に乗り、はるばると川を下って行くが、時節がら気持ちのよいもだ。見どころがあって素晴らしいと言うと、船頭をはじめ、大声で歌う。宇治が近くなってきた所で舟を降り、また牛車に乗った。京の家は方角が悪いということで、宇治に泊まることとなった。 鵜飼の準備がしてあったので、鵜飼の舟が数おおく川一面に浮かび、賑やかな声が聞こえ騒いでいるので、近くで見物しましょうと、川岸に幕などを立てて、踏み台を置き、降りながら川を見おろした。わたしが立つ下で鵜飼をしている舟が行ったり来たりして、灯りに、群がる魚など、今まで見たこともなかったので、おもしろく思われる。旅で疲れ気味だったが、夜が更けるのも忘れて、ひたすら見ていると、侍女たちが、これ以上特別な事はありませんからお帰り下さいと言う。
2019.02.28
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「精進落としというが精進のままである」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。ようやく祓殿(はらえどの)にたどり着いたが、雨の状態もわからず、ただ川の音がとても激しいのを聞いて、ひどく降っていると思う。御堂に登る時に、気分がたまらなく辛く苦しい気持ちになる。切実に願うことがたくさんあるが、このように気分が悪いので意識も、朦朧としていたのだろうか、何もお願いしないうちに夜が明けてしまった。 雨は同じように変わらず降っているし、昨夜の気味悪さに懲りて、ずるずると出発を遅らせ、昼まで延ばしてしまった。 森の前を、物音を立てないで通らなければならないと思うと心が騒ぐ。ふだんは騒がしい一行であるが、さすがに、静かに、静かにと、手を振り、顔を振って、大勢の人たちが魚のように口をぱくぱくするので、黙って通るのは当然とはいえ、どうしようもなく可笑しく思われる。椿市に帰って、精進落としなどと人々は言っているが、わたしはまだ、精進落としできないままで、そこをはじめとして、もてなしてくれる所が、先に進めないほどたくさんあり、褒美の品などを与えると、こころのほか、一生懸命に接待をしてくれるようである。
2019.02.27
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「夢の中で道をたどるような感じで」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。飛鳥寺に灯明(とうみょう)をあげるので、その間わたしは、牛車の轅(ながえ)を釘貫(くぎぬき)に引きかけたまま、あたりを見まわすと、木立がとても美しい所であると気付き、境内がきれいで、泉の水もとても澄んで飲みたくなるほどだった。 飛鳥井に 宿りはすべし をけかけもよし 御水もよし 御秣もよし催馬楽の飛鳥井に詠われた馬子唄で、催馬楽は平安時代の初期に、庶民の間で歌われていた民謡や風俗歌の歌詞に、外来の楽器を、伴奏楽器にして新しい旋律の掛け合いを生み出すこととなった。激しい雨が降り止まず、ますます降ってくるので、どうしようもない。 やっとのことで、椿市に着いて、あれこれ参籠に必要な物を整えて、出発する頃には、日もすっかり暮れてしまっていた。雨や風はまだやまず、松明を灯していたものの、風が吹き消して、辺りは真っ暗なので、夢の中で道をたどるような感じで、気味が悪く、 いったい、どうなることだろうとまで思い途方にくれていた。
2019.02.26
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「雨が激しく降って風が強く吹いていた」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。夜明け前には、鵜舟の篝火が輝く夜の鵜飼とは打って変わって、網で魚を捕る網漁(いさり)というものをしているが、この上なく、おもしろく感心したが、夜が明けたので、急いで出かけて行く。贄野(にえの)の池や泉川が最初見た時と少しも変わってないのを、見るにつけても、じぶんの変わりようが身に沁みるばかりである。色々と物思うことが多いけれど、騒がしく賑やかな周囲に気が紛れる。道をそれて少し進んだ森に車を止めて、弁当などを食べる。誰もがおいしそうに食べている。春日神社に参詣ということで、ひどくむさくるしい宿坊に皆で泊まることとなった。 翌日、そこを出発すると、雨が激しく降って風が強く吹いていた。三笠山を目指して被り笠をさして行くが、その甲斐もなく、ずぶ濡れになる供人が大勢いるが、やっと神社に着いた。神に奉献する供物の幣帛(へいはく)を捧げて、初瀬の方に向かう。
2019.02.25
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「目が冴え夜中過ぎまで物思いにふける」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。疲れているうえに、風が払うように吹いて、頭が痛くなるほどなので、風よけを作って、外を眺めていたが、あたりが暗くなると、何艘もの、鵜飼い舟が、篝火を灯しながら、川一面に棹(さお)をさして行く。この上なく面白く見える光景に、頭が痛いのも紛れたので、端の簾を、巻き上げて、外を眺めながら、私が思い立って初瀬へ参詣した時、帰りに、あがたの院をあの人が行ったり来たりしたのは、ここだったのだのだと、改めて思い起こしていた。ここに按察使(地方行政を監督する官職)さまがいらっしゃって、いろいろな贈物をくださったのには、身にしみて感激した。按察使(あぜち)は、のちに陸奥と出羽の2国だけになった。不幸なわたしの生涯でも、あんな楽しいことがあったのだと思う。思いを巡らしていると、目が冴え夜中過ぎまで物思いにふけっていたが、鵜飼い舟が川を上ったり下ったり行き違うのを見ながら、 うへしたと こがるることを たづぬれば 胸のほかには 鵜舟なりけり 水の上と下と、体の外と内とで焦がれるものはなにかと考えてみると わたしの胸の焔(ほむら)のほかには鵜舟の篝火だったなどと感じる。
2019.02.24
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「いかにも場所柄に相応しく見えた」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。あの人は香を急に投げ散らかし乱暴なことをしていたものの、その日は、訳が分からないまま過ごして、次の日に帰って行った。 その日より七、八日ほどして、初瀬へ出かけることになり、午前十時前後頃、従者を多く連れて、家を出た。きらびやかに行くようで午後二時前後頃に、あの按察使大納言さまが、所有していらっしゃる宇治の院に到着した。父の一行はこのように、賑やかだが、わたしの気持ちは寂しく、あたりを見渡すと、感慨深い。按察使(あんさつし)とは. 奈良時代の地方行政を監督する官職のこと。ここが大納言さまが心を込めて手入れなさっていると聞いた所なのだ。今月は、一周忌をなさっただろうが、そんなに経っていないのに、荒れてしまったと思うが、管理をしている人が、迎える用意をしてくれ、立ててある調度類で、あの大納言さまの物だと思われる。みくり簾や網代(あじろ)屏風、黒柿(くろがい)の横木に、朽葉色(くちばいろ)の帷子(かたびら)をかけてある几帳など、いかにも場所柄にふさわしのも、しみじみと趣深く見えた。
2019.02.23
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「一緒に初瀬のお参りに行くことにした」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。こうして、その日は物忌があいて、次の日また物忌になったと聞く。明くる日は、こちらの方角が塞がっていたが、その次の日には、 今日は来てくれるか待ってみようと性懲りなく思っていると、夜が更けてからあの人がやっと、供を携え来てくれた。先日の夜のことを、これこれだと弁解して、せめて今夜だけでもと、急いだので、忌違えに家の者がみな出かけるのを送り出して、そのまま、後のことは放っておいてやって来たなどと悪びれもしないで、平然と言うので、内心呆れて言葉も出ないほどだった。夜が明けると、知らない所に忌違えに出かけた人たちが、どうしているか、気になるからと言って来たので、あの人は、急いで帰って行った。 それから後、訪れもなく七、八日が経ったが、地方官歴任の父の所では、 初瀬のお参りに、一緒に行くことにして、精進をしている父の家に移った。場所を変えた甲斐もなく、正午前後頃に、急に先払いの騒がしい声がする。 呆れたことに、誰だ、あちらの門を開けたのはなどと、父も驚いている。あの人はすっと入って来て、私はここ数日、いつものように香を盛って、お勤めをしていたが、あの人は香を急に投げ散らかし、数珠も放り投げ、乱暴なことをするので、まったく意味が分からないまま過ぎた。
2019.02.22
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「夫婦の愛情が色あせていく嘆き」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。尚侍(ないしのかみ)とは、日本の律令制における官職で、内侍司の長官(かみ)を務めた女官の官名で、その方の手紙だった。どうして、そのような物思いのつのる住まいにいらっしゃるのでしょう。そんな物思いにも、くじけることなく夫に連れ添っていく人もいると、聞いていますのに、あなたが兄と疎遠になったようなことばかりおっしゃる。いったい、どうしたのかしらと心配でたまらないので手紙をしたためたと。 いもせがわ むかしながらの なかならば 人のゆききの 影は見てましあなたがた夫婦は昔のままの仲でしたら 絶えず通って行く、兄の姿を見ることができたでしょうに と詠んでいる。 さっそく、返事の歌を詠みしたためて届けた。よしや身の あせむ嘆きは いもせやま なかゆく水の 名も変はりけり わたしたち夫婦の愛情が、あせていく嘆きは どうしようもありません もうわたしたちは妹背〈夫婦〉とは言えない仲に変わってしまったのです。 山の住まいには秋の景色を見るまでいようと思いましたが、山でも、心が晴れないでふんぎりがつかないまま下山して、中途半端な状態です。わたしの深い悩みはどなたにもわからないと思っていましたが、どのようにお聞きになったのでしょうか、それとなく、おっしゃるのもごもっともなことですなどと申し上げた。
2019.02.21
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「穏やかにしていればよかったと思う」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。あの人は、どんなことがあって来られなかったのか、せめて、その理由だけでも知らせてくれたら気も休まるのにと思い乱れていた。そんな気がふさいでいる時なのに来客があった。 来客と聞いたときは、なぜこのような気分の時にと思うが、いろいろと話しているうちに、少し気分が紛れて来ていたから不思議だ。 夜が明けると、子供が何故父が来られなかったのか聞いて来ると出掛けた。 その返事を受けて戻って来て、昨夜は気分が悪かったそうですと言う。 急に、ひどく苦しくなったので、行けなくなったと話したようだ。 そんなことなら、なにも聞かないで穏やかにしていればよかったと思う。一言、差し障りができたなどと伝えて下さっていたのであれば、あれこれ、悩まなかったのにと不快に思っていた時に、尚侍様から手紙がある。手紙を開いて見ると、まだわたしが山里にいると思われたらしく、とてもしみじみとした趣で書いていらっしゃるので読み返した。
2019.02.20
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「悲しい思いがこみ上げてくる辛さ」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。昼頃に、殿がいらっしゃるはずですので、ここに控えているようにと、ご伝言がありましたと言って、あちらの従者たちも来たので、侍女たちが騒いで、日頃乱雑にしていた所までも、ばたばたと、整理しているのを見ると、いたたまれない思いでいた。すっかり暮れてしまったので、本邸から来ていた従者たちが、 お車の用意などもすっかりしてあったのに、どうして殿は今になっても、いらっしゃらないだろうなどと言っているうちに、だんだん夜も更けてきた。侍女たちが、やはりおかしい。誰かに様子を見に行かせましょうと言って、見に行かせた使いが帰って来て、ただ今、お車の支度を解いて、随身たちも、皆解散してしまいましたと言う。わたしは、いたたまれない気がして、悲しい思いがこみ上げてくる辛さは、とても言葉では言い尽くせない。 山にいたら、こんな胸がつまる悲しい目にあわないですんだのにと、山で予想した通りだと思うが、侍女たちも、訳がわからない、呆れた事だと、騒ぎあっているが、新婚三日ほどで婿が通って来なくなったような騒ぎである。
2019.02.19
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「道綱が本当にやつれたように見える」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。あの人が、いずれかの方角のどちらかが塞がっていると言うので、日数を数えてみると、思った通り、あの人の邸から、こちらの方角が塞がっていたので、どうしよう。ほんとうに困ったな。さあ、一緒にどこか近い所に方違え(かたたがえ)などと言う。わたしは返事もしないで、もう非常識なことをと思う。方塞がりなら、一人で帰ればいいのに、一緒にだなんてとんでもないと思って、横になったまま、まったく動かないでいると、一人で出かけるのは、億劫だが、方違えは無理にでもしなければならないと言う。方角が開いたらここへ来ればいいと思うが、そうすると例の六日間の、物忌になってしまうなどと、辛そうに言いながら出て行った。翌朝、手紙が来た。昨夜は夜が更けていたので、今朝は気分がよくない。あなたはどうだと、早く精進落としをしたほうがよいと書いてある。大夫(道綱)が本当にやつれたように見えるなどとも書いてあった。 こんな気配りも手紙だけのことと、気にもかけていなかったが、物忌の終わる日に、来てくれるかしらと半信半疑でいたところ、六日の物忌も過ぎて、七月三日になってしまった。
2019.02.18
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「わたしも呆れるほどおかしかった」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。妹も、暗いからかまわないだろうと同じ車に乗っていたので、あの人の冗談を、妹が時々受け答えなどする。遠い道のりを帰ってきて、着いた時は午後十時前後になっていた。京の家では、昼間あの人の来訪を知らせてくれた人々が待っていた。気を使って掃除をして、門も開けてあったので、夢のような気持ちで牛車から降りた。気分が悪く苦しいので、あの人との間に几帳を隔てて横になっていると、留守番をしていた侍女が、近づいてきて、撫子(なでしこ)の種を採ろうとしましたが、枯れて根もなくなり、呉竹も一本倒れていましたなどと言う。 なにも今言わなくてもいい事なのにと思うので、返事もしないでいると、あの人が、すばやく聞きつけて、襖を隔てて寝ている妹に話している。 聞きましたか。これは一大事だ。この世を捨てて家を出て菩提を求める人に、今ここの侍女たちが言うのを聞くと、撫子は撫でるように大切に育てたとか、呉竹は立て直したとか、こんな低俗なことが言えるものだねと話しかけると、聞いていた妹はひどく笑うが、わたしも呆れるほどおかしかった。わたしは我慢して、ほんの少しだって笑う様子は見せなかった。こうしているうちに、夜がだんだん更けて夜中になった。
2019.02.17
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「私がわたしではないような気がする」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。周囲に引き回してある引幕などもはずし、立ててある几帳や屏風などを、みしみしと取り払うので、わたしはあまりのことに、ただ呆然とた。あの人はわたしをちらちら見ながら、とても嬉しそうに笑って、子どもが片付ける様子を見ていたようである。 部屋を片付けたのだから、出て行くしかないようだなとか、仏にご挨拶を申し上げなさいと、決まりの作法だからねと冗談を言う。さんざんに冗談を言われたが、わたしはなにも言えないでいた。わたしは、涙ばかりがあふれ、それをじっとこらえているうちに、車を寄せてからずいぶん時間が経っていた。あの人は午後四時過ぎにやって来たが、もう灯をともす頃になっていた。わたしが知らない顔をして動かないので、 あの人は、もういいと言い、わたしは帰るから、後はおまえに任すと言って、出て行った。子どもが、早く早くと、今にも泣きそうにわたしの手を取って言う。仕方なく出て行く気持ちといったら、私がわたしではないような気がする。大門から車を引き出すと、あの人も乗り込んできて、道すがら、笑ってしまいそうな冗談をたくさん言うが、わたしは夢の道を、たどっているようなのでなにも言えないで聞いているだけだった。
2019.02.16
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「あの子は立ち上がって走り回り」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。浮きのように気持ちが揺らいで思い乱れていると、誰かがやって来る。外を見ると、あの人のようで、そう思うと気も動転してしまう。この間は物忌中なので車から降りなかったが、今回ははばかる事なく、歩いて来て、ずかずかと入って来るので、困ってしまった。几帳を引き寄せて少し隠れたけれど、何の役にも立たない。香を盛って、数珠を手に下げ、お経を置いたりしているのを見て、あの人は、まさかこれほどとは、ひどく近寄りがたい様子だなと言う。もしかして寺を出られるのではないかと思ってやって来たが、俗界に連れ戻してはかえって罰が当たりそうだ。どうだ、大夫(道綱)、こんな生活を続けているのをどう思うと尋ねる。 とても苦しいのですが、仕方がありませんと言って、うつむいている。その姿を見て、可哀そうにと言って、では、母上が下山するかしないかは、おまえの気持ち次第だが、母上が下山なさるつもりなら、車を寄せなさいと。まだ言い終わらないうちに、あの子は立ち上がって走り回り、散らばる物を、どんどん取って、包や袋に入れる物は入れて、車にみな積み込んでいる。
2019.02.15
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「自分の心一つを決めることができない」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。殿がそちらに行かれた後に下山なさるのは、よくないことです。世間の物笑いになりますなどと、どの人も同じことを書いてくるので、 どうしようかしら。今度は何も言わせないで連れ戻すだろうと落ち着かない。落ち着かない気持ちでいると、わたしが頼りにしている父が、任国の丹波から、たった今上京したその足でやって来て、いろいろと言葉を選ぶように、 この間、手紙に書いたように、暫くはお勤めもよいと思ったのだが、この若君がすっかりやつれてしい、やはり早く山を下りなさい。今日でも明日でも迎えに来るから、わたしと一緒に帰りなさいなどと、当然のことのようにおっしゃるので、すっかり気落ちしてしまった。 わたしの気落ちした様子に、やはり明日だなと言って、帰って行った。 伊勢の海に 釣りするあまの うけなれや 心ひとつを 定めかねつる私は伊勢の海で釣りをする漁師の浮きなのだろうか。自分の心一つを、安定させ決めることができない。揺れ動く心を海の浮きに例え、自らでは、どうにもならない焦りや心細さの心の様子を表す(古今集・読人しらず)
2019.02.14
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「二度と迎えには行かれないでしょう」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。あの人は、まさかこのまま終わってしまわないでしょうなどと、わたしの気持ちを勘違いしたのだろうかと、子どもへ、参上したら、よくたしなめてあげなさいなどと父がおっしゃっていましたと言う。 どうして、あの人からそのように言われなくても、そのうちにはなどと、話すと、それなら、今日お帰りください。このまま私がお供しましょう。なんといっても、この道綱が時々京に出て行き、夕方になると急いで、山寺に帰るのを見ると、ひどく不安な気がしてならないなどと思う。それでもわたしがなんの反応も示さないので、しばらくぐずぐずしていて、帰って行ったが、このように下山するのを悩んでばかりいて、訪ねて来る人は、殆どの人は皆来てしまったので、もう他に訪ねて来る人はいないと思った。 このように過ごしているうちに、京のこの人やあの人から手紙が来たので、開けて見ると、今日、殿がそちらに行かれるはずだと聞いています。今度も下山なさらないなら、本当に薄情な人だと、世間の人も思います。殿も、二度と迎えには行かれないでしょうなどと書いてある。
2019.02.13
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「言葉もつまって涙で声が変わる気がする」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。兵衛佐が、木陰にたたずむ様子は、京を思わせて、趣深く見える。この頃は、後でまたと言って帰った妹も、ここに来ていて、兵衛佐は妹に関心があるようなので、ひどく気取って立っている。よくいらっしゃいました。さあ早く、こちらへお入りください。これまでの罪障が、無事に消えるようにお祈りしましょうと言うと、兵衛佐は木陰から歩み出て、高欄に寄りかかって、まず手水(てみず)で、手を洗い清めてから入って来た。いろいろなことを話していくうちに、昔、わたしにお会いになった事を、覚えていらっしゃいますかと尋ねると、忘れるものですかという。とてもはっきり覚えています。今でこそ、このようになかなか、お目にかかれないのですが などと言うので、あれこれ思いめぐらす。言葉もつまって、涙で声が変わる気がするので、暫く気を静めていると、相手もひどくしんみりとしてすぐには何も言わない。しばらくして、お声などもお変わりになったのは、本当に無理もないことですが、けっしてそのように思われることはないと思います。
2019.02.12
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「ご無沙汰していたお詫びも兼ねて」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。次に下さったお返事に、東の大里よりと書いてあったのを思い出し、とてもおもしろいと思ったのも、お互いどんな気持ちでいたからだろうか。こんなふうに日が経ち、ますます物思いに沈んでいる時、この寺の修行者が、御嶽(みたけ)から熊野へ、大峰越えに出かけたが、その人がしたのだろう。戸山だに かかりけるをと 白雲の 深き心は 知るも知らぬも 里近い山でもこんなに寂しいのに 女性のあなたがそれに耐えて、山籠りなさっているお気持ちはどれほどかと 事情を知る者も、知らない者も察していますが これから奥深い山に入るわたしは、なおさらよくわかりますと書いて、置いてあった。 こんなことも、あんなこともあったなと思いながら過ごすうちに、ある日の昼頃、寺の正門のほうで、馬のいななく声がして、人が大勢やってくる気配がして、木の間から見通すと、あちこちに従者たちがたくさん見えて、こちらに歩いてくる。兵衛佐(ひょうえのすけ)のようで、子どもの道綱を呼び出す。兵衛佐とは、藤原道隆で兼家の長男、母は時姫。道綱より二歳年長のこと。今までご無沙汰していたお詫びも兼ねて、参上しましたと挨拶する。
2019.02.11
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「心細いことをあれこれ書いて」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。鳴滝の奥深い山路を、誰があなたに教えたのでしょうと書いてある。鳴滝というのは、この寺の前を流れて行く川である。返事も、一生懸命心を込めて書いてある。お訪ね下さったにつけても、おっしゃるとおり、どうしてこんな、山籠もりをしてしまったのだろうかと思うのですが。 もの思ひの 深さくらべに 来て見れば 夏のしげりも ものならなくに わたしの物思いと 夏草が茂っているのと どちらが深いかを、比べに来たのですが 夏草など比較にもなりませんでした。山を下りるのはいつとは決めていませんが、あなたがあのように、下山をお勧めくださったことを思うと迷いそうになります。 身ひとつの かくなるたきを 尋ぬれば さらにかへらぬ 水もすみけり わたしだけがこんな身の上になり 鳴滝に来てみると わたしばかりか元へは帰らない川の水が澄んで流れていましたと思いますと。なんだか和歌のお手本があるような気がしましてなどと書いて送った。また、尚侍(ないしのかみ)さまがお見舞いくださったお返事に、心細いことをあれこれ書いて、手紙の表書きに、「西山より」と、書いたのを、どのように思われたのだろうかと心配する。
2019.02.10
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「世の中は思いもしないことになるもの」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。遠い親戚の人たちは、思いやりも深い分別のある人だから、本当に、私のことをかわいそうに思って帰っていることだろうと思っていたら、翌日、山寺で当分は過ごせるような必要な品々を、沢山届けてくれたのは、わたしには、言葉では言い尽くせないくらい、愛おしく身にしみた。 あまりの悲しさにどうやって帰ったのかわからないほどで、あなたが、はるばるこの木の高い山道を分け入って来られたのだと思うと、ますますたまらない気持ちになってなどと、いろいろ書いてあった。 よのなかの よのなかならば 夏草の しげき山辺も たづねざらまし ご夫婦の仲が世間のような普通の仲でしたら 夏草の繁った山辺まで、お出かけになったりはなさらないものを、このように山籠りする、あなたを拝見していながら、後に残して帰ってしまうなんてと思います。そんな事を思い巡らしていると、涙で目もかすみ見えないほどでした。あなたが、深く考えて悩んでいらっしゃるのがよくわかります。 世の中は 思ひのほかに なるたきの 深き山路を 誰知らせけむ 世の中は思いもしないことになるもの 鳴滝の奥深い山路を、誰が、あなたに教えたのでしょうなどと、まるで向かい合って話しているよう。
2019.02.09
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「とても悲しい別れの言葉をたくさん言う」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。子どもに手紙を託すが、この前のように、雨がひどく降り続く。雷がとてもひどく鳴るので、胸がつまり心配していたが、雨や雷が少し静まって、暗くなる頃に帰って来た。 子どもが光孝天皇稜辺りを抜けるのが不気味でなんとも言えず、恐ろしかったと言うので、かわいそうでならない思いがしていた。あの人からの返事を見ると、先日の様子より、弱気に見えるのは、勤行で疲れたのではと書いて、気の毒でならないとも書いてある。 その日が暮れて次の日、遠い親戚にあたる人が、見舞いにやって来た。わりご弁当などを、たくさん持って来てくれたが、どうしてこのような、山籠りなどなさるのでしょう。特別な事情がないとしたら、とてもよくないことですと言うので、わたしが心に思っていることや、現在の身の上を、少しずつぽつりぽつりと話し出した。 聞くうちに、なるほど無理もないと言うようになって、同情するかのように、とても激しく泣き一日中話し合って、夕暮れの頃、ここを訪れた人が、帰る時に、いつも言うように、とても悲しい別れの言葉を、たくさん言って、入相の鐘が鳴り終わる頃に帰って行く。
2019.02.08
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「あなかしこなどと書き添えて」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。侍女が殿の手紙を、読んで聞かせるので、またしても悲しくなる。こんなちょっとしたことでも、これほど身に沁みることがあるものだ。 卑しいわたしには、この手紙のように悲しみを深く理解するのは難しい。侍女から、奥方さまも、涙をこらえきれないほど、感じていらっしゃる。そんなお姿を拝見するわたしの気持ちも、どうか察してください。 思ひ出づる ときぞ悲しき 奥山の このしたつゆの いとどしげきに 華やかだった昔を思い出すと悲しくなります この奥山は木の下露が、ひとしお繁く 涙に濡れる毎日だからと書いて送ったようである。 子どもが、先日のお返事を、ぜひください。また父上から叱られますから、持って行きたいのですと言うので、いいですよと言って書きだした。 すぐにもお返事をと思いながら、どういうわけなのでしょうか、子どもがすっかり、そちらに参上しにくく思っているようなので遅くなって。山を出るのは、いつと決めかねていますので、申し上げようがありませんと、書いて、添え書きに何が書いてあったというのだろう、添え書きは、どんなことだったかしら、と思い出しても、不愉快になりそうですから、何も申し上げません。あなかしこなどと書き添えて、子どもを送り出した。
2019.02.07
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「世の辛さを知っているわけでもない」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。あなたがたもどんなお気持ちで、お世話なさっていることでしょう。 いにしへの しづのおだまき いやしきも よきもさかりは ありしものなり遠い昔、しづのをだまきは、倭文(しづ)という織物の材料の糸の、巻いた玉を指していおり、恐らく一本の糸が青や赤にまだらに、染められて、色ごとに玉があったのだろうと思う。この歌では倭文(しづ)は、賤(しづ)に掛けられて、賤しきを導いている。あるいは賤の男(を)までが掛けられているのかもしれない。歌の意味は言葉通りで、身分の低いものも高いものも、盛りの時期は、あったものだということで、ありしと過去形になっているので、今では年老いて、どちらも似たようなものになっているけれど、という含みがあるような気もする。 古今和歌集の配列から言えばこの歌は、読人知らずの、いにしへの 野中の清水 ぬるけれど、という歌と同じ出だしを持ち、読人知らず(作者不詳)の中の老いの歌の入口に位置している。身分の低い人も高い人も 盛りのときはあるものだを引用している。 身を捨てて うきをも知らぬ 旅だにも 山路に深く 思ひこそ入れ 出家したわけでも 世の辛さを知っているわけでもない旅でも 山路に深く、入りたいと思うものですが ましてご主人さまは どんな辛い思いで、お入りになったことでしょうと言ってきた。
2019.02.06
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「身にしみて悲しく物思いに沈んでいる」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。京からの手紙には、さまざまに見舞ってくれており、翌日、返事を出す。 いつまでもそんなふうにと言ってきた人に、このように、籠もってばかり、いようとは思わないのですが、物思いにふけっているうちに、時は、はかなく過ぎて、日数が経ってしまいました。 かけてだに 思ひやはせし 山深く いりあひの鐘に 音をそへむとは いくら思いを巡らしていてさえ、思いもしなかったことです 山深く入って 入相の鐘に わたしの泣き声を添えるとはと文を送った。 あまりの悲しさになんと申し上げたらよいのかわからない。入相の歌に胸が張り裂けるような気がしてと返事の脇に歌が書かれていた。言ふよりも 聞くぞ悲しき 敷島の 世にふるさとの 人やなになり 入相の鐘(日暮れ時に寺でつく鐘)とともに泣いていると言われる、あなたより、それを聞くわたしのほうが悲しくてなりません。この古里にとどまっていても 何になるのでしょうと書いてある。とても身にしみて悲しく物思いに沈んでいると、大勢いた侍女の中で、宿直をつとめてくれた人が、よほど思いやりのある人だったのだろうか、ここにいる侍女に、手紙で、いつも疎かには思ったことのないお邸ですが、お暇をいただいてからは、ますますめったにいらっしゃらない、お気の毒なお方だと、お偲(しの)びしています。
2019.02.05
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「日が経つにつれてひどく心配になる」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。魚でも食べて来なさいと、京へ送り出して、物思いにふけっていると、空が暗くなり、松風の音が高く鳴り、雷がごろごろと鳴る。今にも雨が降り出しそうなので、途中で雨が降らないだろうか、雷がもっとひどく鳴らないだろうかと思うと、とても心配になってきた。悲しくもなり、仏にお祈りしたためか、晴れて、まもなく帰って来た。どうだったのと尋ねると、雨がひどく降るのではないかと思ったので、雷の音を聞くとすぐに、あちらを出て来ましたと言うのを聞くと、とてもかわいそうになるが、今回、あの人からの手紙がある。 使いがひどく呆れて帰って来たから、この上また迎えに行っても、同じだろうが、わたしをひどく嫌だと思い込んでいるようだ。もし万一帰る日が決まったら、知らせてほしい。迎えに行こう。恐ろしいほど思いつめているようだから、当分はそちらへ行く気がしない。などと書いてあり、また、ほかの人たちからの手紙を見ると、いつまでもそんなふうにお過ごしになるつもりですかとか、日が経つにつれてひどく心配していますなどと書いてある。
2019.02.04
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「行いを慎み身を清めていた」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。今回の使いが帰った後は、今までよりもいっそう寂しく感じられるので、わたし以外の侍女たちは、今にも泣き出しそうな思いだった。 いろいろな人に、下山するよう勧められるが、気持ちは変わらない。父の言葉は、悪いと言われても良いと言われても反対できないのだが、父は最近京にいらっしゃらないので、手紙で知らせていた。父から、そのようにしばらくひっそりお勤めも良いのではと、返事があったので、とても気が楽になっていた。 あの人はわたしの気を引こうと、もう一度迎えに行くと言ったのだろう。すっかり腹を立てたようで、山籠りしている所を見届けて帰ったまま、どうしているとも尋ねてこない。わたしにもしものことがあっても、何もしてはくれないだろうなどと思って過ごしていた。 わたしが、これよりもっと山奥に入る事があっても京には帰らないと思った。 今日は十五日、精進潔斎で肉食を断ち、行いを慎んで身を清めていたが、子どもには無理に勧めて、魚など食べていらっしゃいと京へ送り出した。
2019.02.03
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「若君が訳の分からない精進は可哀そう」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。わたしは殿の使者に、今のところ、なにも考えていませんと伝え、そのうち帰らなければならないことが起きたら、帰ります。今は帰ってもなにもすることがありませんからなどと言った。心の中では、一人で帰っても迎えが来て帰っても、どんな帰り方をしても、下山するのは愚かなことで、帰るに帰れない気でいるのに、そんなわたしの、気持ちも知らないで、出家はしないだろうと思っているあの人が、そのようなことを言わせているのだろうと思った。また家に帰っても、あの人は、どうせ通って来ないのだから、お勤めよりほかに、何をすることがあるだろうと思うので、こうしていられる間だけ、いたいと思っていますと言うと、いつまでもこの山寺に籠っていらっしゃるつもりですねと言われた。なによりも、この若君がわけのわからない精進をしていらっしゃるのが、かわいそうでと、気が強い一方、泣きながら車に乗るので、こちらの、侍女たちが見送りに出ると、あなたたちも皆殿からお叱りを受けますよと、よくお話しして、早く出るように言いなさいと、言って帰って行く。
2019.02.02
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「こんな贈物をもらう境遇ではない」 「Dog photography and Essay」では、愛犬ホープと歩いた道と「愛犬もも」との物語を公開してます。こんなことばかりしている人が、どこにいるでしょう。世間の噂のように、世を捨ててしまわれたのなら、仕方がないでしょう。こんな状態で殿のお言葉がなくなった時に、お帰りになって、お暮らしになるのも、ばかげたことです。それにしても、殿はもう一度はお越しになるでしょう。その時にも、お帰りにならなければ、本当に世間の物笑いになってしまうでしょうと、 偉そうにまくし立てていると、西の京にお仕えの人たちが、ここへ、いらっしゃったのを知って、献上した物ですと言う。献上した物を見ると豪華なものがたくさんある。山奥に入ろうと、思っているようなわたしのために、はるばる届けてくれたのだが、こんな贈物をもらう境遇ではないので、わが身の辛さがまず思われる。夕方になり、帰りを急ぎますので、今日はこれでと言い置き、毎日は伺えませんから心配です。ここにいるのは、やはりとても、よくないことです。いつ帰るとも決めていらっしゃらないのですかと言う。
2019.02.01
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