つきあたりの陳列室

つきあたりの陳列室

2009.06.28
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テーマ: 本日の1冊(3697)
カテゴリ: Book
(2009,河出書房新社)



明らかに普通じゃない書評を狙っていますから,最初に何を紹介してるかでその心意気が推し量れるはずです。そしてそれは『地下鉄のザジ』(クノー)でした。

「なんて臭えやつらだ」で始まり「歳をとったわ」で終わる,口汚い少女と大人たちの,パリをめぐるお話とのこと。ちょいと立ち読みしてみたところ,私の好きな『長距離走者の孤独』にちょっと雰囲気似てたので,買うことにしました。



時代がかった話し言葉とか,私の苦手な嶽本のばらを彷彿とさせるボキャブラリー(「スヰート」とか)満載の文体ながら,私はこの著者が大層気に入りました。高慢でありながら,仮想敵たちへの皮肉がじつに面白いのです。人を気持ち良く笑わせるということは,度量が大きくないとできない技術です。

あきれることに,本書で紹介された作品に,私の読んだことあるものは一つもありません。知っている作品も『悲しみよこんにちは』『ティファニーで朝食を』『高慢と偏見』など片手の指ほど。サキもポーもほとんど読んでない私は今,この本にたくさんの印をつけまくってます。

尻切れとんぼで何を言いたいか全く不明な文も多いのは欠点ですが,引用が巧みで,悔しいほど興味をそそられます。一連の引用からおぼろげに感じられる未知の雰囲気からは,私が少女漫画の世界をはじめて知った時の興奮を思い出しました。

ま,あんな興奮を味わうには私も歳をとりすぎたかもしれないけど,注文した「ザジ」が届くまでの数日間,そんな期待に体をあずけてもいいじゃないかと思っています。







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Last updated  2009.06.28 21:27:06
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inalennon @ Re[1]:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子(09/19) フィンちさん >この世は なんてままなら…
フィンち@ Re:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子 「人生のままならなさ」への強烈な疑問と,…
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