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           ●特別企画!クロベエ氏の小説・第ニ部
           「 犯行場面 - 路地から学苑通り~府中刑務所前」


                                    (不定期で掲載します。)


      ---- 辺りは薄暗く、まるで夕方のようだった。

     雨脚は一層激しさを増し、アスファルトから跳ね上がった水飛沫が
     陽炎のように背景を歪ませている。その中を何台もの車が横切る。
     だが、肝心の車はまだ現れない。もしや、既に通過したのではあるまいか。

     ---- 一抹の不安が脳裏を掠める。



明星角・輸送車右折ヘッドセットマイクが揺れ、唇に当たった。
右手をヘルメットにもっていき、
取り付け部の小さなネジを回した。

左からタクシーが横切った。次の瞬間だった。

来た! 標的である黒いセドリックが視界に
入ってきた。目を凝らし、素早く車内を確認する。
ハンドルを握っていたのは見覚えのある男だった。
                     間違いない。

オートバイを発進させる。気持ちが急(せ)いていたのだろう、
     後輪がホイールスピンして車体が左右に振られた。 

     糞っ、遅れたか。セドリックとの間に、白い幌を付けた軽トラックに
     入られてしまった。・・構わん、こうなれば一気に二台を抜くまでだ。


出動左手でハンドルに取り付けたスイッチを
入れる。上手く点灯したかどうかは確認
できなかった。もしかすると、雨による
接触不良の可能性もある。
しかしそんなことはもはやどうでもいい。
今はセドリックに追いつくことである。

 首を右に傾けて反対車線を確認する。
大丈夫、対向車はいない。
急いでオートバイを右にバンクさせた。


すると、幌付き軽トラックが速度を落とした。きっと、スピード違反をしたと思ったに
     違いない。そう思っているうち、幌付き軽トラックが後方に流れた。斜め前方にセド
     リックが走行している。その距離およそ50メートル。私は必死にアクセルを捻った。
     豪雨が全身を打ちつけてくる。


制止1セドリックの後部が瞬く間に近づいてきた。
乗っている者たちはこの白バイに気付いた
のだろう。四つの頭が盛んに揺れている。
 並走する位置となった。

視線だけを運転席に向ける。運転手が不安
そうにこちらを見ている。それを無視して
さらに加速する。セドリックを追い越した。
すぐさま左手を水平に伸ばし、上下に二回
振った。片手運転のままオートバイを左に
                               傾け、セドリックの進路を塞ぐ。


ミラーの中で黒い影が小さくなり、やがて止まった。
     それを確認した私は左側のガードレールにオートバイを寄せた。
     スタンドを蹴り出す。これからが本番なのだ。
     私は深呼吸を一つし、オートバイから降りた。

     その瞬間、心臓が破裂するほどの驚きが私を襲った。
     引き摺ったボディカバーの後端付近に紙袋があるではないか。

     その袋はトランジスターメガホンや工具類を入れるために準備したものだ。
     私は頭をフル回転させた。大丈夫、あの袋に入っているものに指紋は残して
     いないし、あれらから足が付くこともない。私は大きく息を吐いたのち、片手で
     ヘルメットを押さえつつ、後ろに停まっているセドリックへと駆け寄った。


制止3さあ、時がやってきた。
この時のために何度も予行演習を
繰り返してきたのだ。心配することはない、
落ち着いていつものようにやればいい。

そう自分に言い聞かせながら、セドリックの
運転席横に立つ。湿気のためか、窓ガラスが
半分ほど曇っていた。その向こうに運転手を
始め、行員たちが不安げな表情を浮かべてい
るのが見てとれた。


信託の,,上体を折り、右手の拳で窓を二度叩く。

窓が少しだけ下りた。
僅かな隙間を豪雨が襲い、運転手が
しかめっ面をした。
私は腰を屈め、右手を額に寄せて
小さな敬礼を作った。

「日本信託銀行の車ですね」
「はい、そうですが……」
      (つづく)


 ※写真は1975年 東映映画 「実録三億円事件・時効成立」より。 
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最終更新日  2010年11月17日 11時39分35秒
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