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高校 3 年になり、大学進学を希望する息子に、父は「駄目だ」の一点張り。当時、心臓を患う母の治療費がかさみ、タクシー運転手の父が働けど働けど家計は火の車だった。だが諦められず、泣いて訴えると父は言った。「うちみたいな貧乏人、弱い人のための医者になれ」。息子とは、医師で作家の鎌田實さんである(『一個人主義』 KK ベストセラーズ)。
医師となった鎌田さんは地域医療に従事。難民キャンプで診察するため海外へも飛んだ。父の言葉通り、貧しい人や病める弱者に尽くす生き方を貫く。
広布草創期、学会は“貧乏人と病人の集まり”とやゆされた。だが一人一人が現実の苦悩に挑み、変毒為薬し、自他共の幸福を築いたからこそ学会は“人類の希望”となった。
御聖訓に「よからんは不思議わるからんは一定とをもへ」(御書 1190 頁)と。逆境が当然と捉えれば、どんな試練も幸せの因にして見せると腹が決まる。これが逆に“よからんは一定”であれば大変である。憂き目にいちいち動揺し、信心に不信も起こしかねない。
鎌田さんの自著の題名に「あきらめない」という言葉をよく使う。本人の信念を表すキーワードでもあろう。断じて諦めない——その強い心が一切の勝利への扉を開く重要な「鍵」である。
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