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組織とは一体誰のために存在するのか?
氏家法雄2020・4・17
(はじめに)最近、『テイール組織』という著作を読みましたが、恐怖支配から対等な相互協調の組織への進化を振り返ると、組織とはいったい誰のために存在するのだろうかと考えさせられました。
ビジネス書からの学び
仕事のために、ビジネス書を読むなどとは思ってもいませんでしたが、まあ、読み出すと、それはそれで「新しい世界」や「新しい知識」との出会いであり、楽しいものです。
このところマネジメントやマーケティングの書籍ばかり紐解いているのですが、最近、読み終えたのが、 フレデリック・ラルー(鈴木立哉訳、嘉村賢州解説)『テイール組織』(英治出版、 2018 年) です。
組織マネジメントの歴史を振り返り、その未来、あるいは進化を展望する一冊 で僕としては非常に勉強になりました。副題の通り「 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現 」を開陳する一冊でしょうかね。
ところで、「 テイール( Teal ) 」とはいったい、何でしょうか?
「テイール」とは「青緑色」の一種を表わす英単語で、それ自体にさほどの意味はないのですが、「圧倒的な力を持つトップが支配する組織」を底辺とすれば、組織進化の最終形態を Teal カラーで表象しているとでもいえばいいでしょう。
ラルーは、組織の進化過程を5つに分類した上で、それぞれのモデルを色分けしています。その中で、最も新しい組織モデルをティールと呼び、「 目的に向かって、組織の全メンバーがそれぞれ自己決定を行う自律的組織 」と定義しています。ティール組織は、上司が部下の管理を行わないなど、従来の組織マネジメントでは考えられなかった特徴をもっています。
支配から調和協調への組織進化
ラルーは、組織進化を5つの段階に色分けしています。最も底辺に位置するのが Red の 「衝動型」組織 です。「 圧倒的な力をもつトップによる恐怖政治 」がそれで、例えば狼の群れなどがその具体的な組織です。レッド組織は、現在にしか関心がありません。そのため衝動的な行動が多く見られます。
次の進化形態は Amber 「順応型」組織 で、軍隊に象徴されるように「 上意下達のヒエラルキー組織 」です。政府機関や宗教団体、そして軍隊がそれに該当しますが、階級秩序が重んじられる組織は、変化に対して柔軟に対処することが難しいことが多々あります。
次は Orange 「達成型」組織 で、アンバーと同じく基本的な階級構造はもちつつも、環境の変化に柔軟に適応できるように発展したものです。現代の一般的な企業がそれに該当します。ここでは、効率や成果が重視されます。徹底的な管理は時として人間疎外を引き起こしてしまうのも事実で、その例証には枚挙の暇がないといっても言い過ぎではないでしょう。
そして現状での最新形態が Green 「多元型」組織 になります。人間らしさを喪失したオレンジ組織に対して、より人間らしくあることを追求した組織形態がグリーン組織です。協働・協力を理念に掲げるグリーン組織では、多様なメンバーのコンセンサス(合意)を重視します。しかし、意思決定プロセスが膨大となることがデメリットととなり、企業であればビジネスチャンスを逃してしまう可能性もはらんでいるとのことです。
誰のために組織は存在するのか
では、組織進化の最新形態である Teal 「進化型」組織 とはいったいどのようなものでしょうか。
ラルーは組織を一つの生命体と捉えるのですが、これは組織のメンバーが自律的かつ調和的に働くためのメタファーとなっています。 ようは体の組織のように組織が働く とでもいえばいいでしょうか。 そして独裁やヒエラルキー、あるいは会社組織にみられるような強力なリーダーを認めません。リーダーの独断よりも現場のメンバーがほとんどすべてを決定することに特徴 があります。
そして コンセンサスの形成よりも、課題解決を重視 します。このことが意思決定の時間的ロスを防ぐ役割をもになっています。そのほか、魅力的な特徴が数多く指摘されていますが、詳しくは本書に譲りましょう。
なぜなら、ぜひご一読願いたいからです。
さて、本書を読む中で考えさせられたことがあります。
それは、組織とはいったい、誰のために存在するのかという問題です。
程度の度合いは、横に置くとしても、 Red の「衝動型」組織にしても、 Teal 「進化型」組織にしても、 いずれにしても組織は、個々人の幸福と無関係には存在し得ないことが組織形成の原点 になります。
その意味では、 組織に属する個々人は、組織の歯車などではなく、その幸福増進のために組織が形成されたと考えるべきではないか という話です。
レッドからテイールへの組織マネジメントの「進化」は、その意味では、組織形成の原点へ戻るものといってもよいでしょう。
そして、 組織とはいったい、誰のために存在するのかと問われた場合、その構成員(の幸福)のために存在する と答えるほかありません。
これまでの組織は、プロクルステスの寝台のように組織の都合に合わせて人間を切り刻んできたのが人間の歴史です。その方が効率がよいといった側面があったのも事実でしょうが、組織の進化と旧来の組織の解体という問題は、組織は人間のために存在しなければならないということを痛切に物語っています。
組織のために人間がプロクルステスの寝台となるのではなく、人間そのものが組織を織りなし、そして組織を作りほぐしていく――。それをテイール組織と呼んでもいいのかも知れません 。
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