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偏見の払拭や居場所づくりを
精神科医 田村 毅
解決に向けて
ひきこもりの長期化・高齢化は日本の文化的特性に深く根差しています。ひきこもりは欧米の社会に少なく、アジア地域、ことに韓国、台湾、中国など儒教文化圏に多く、中でも日本が抜きんでています。そこには三つの背景があります。
第一に日本社会の集団主義です。個人主義的な欧米では場の空気を読む習慣がなく、周りと異なることに価値が置かれます。他者と同調圧力が強く、空気を読むことを求められる日本社会では、人との関わりが大きなストレスになります。
第二に日本社会の豊かさです。経済成長・勤勉が価値であった時代には、社会から撤退するという選択肢はなく、人と関わる不安は対人恐怖症や赤面恐怖症などに表れていました。経済成長の神話が崩壊した 1990 年代以降、豊かさの代償として対人恐怖症が不登校・ひきこもりに取って代わりました。
第三に親子関係の強さです。欧米では子どもが成長し独立した後は、困っても親が手助けしません。親孝行を規範とする儒教文化圏では、親子の相互扶助は一生涯続きます。欧米では若者のホームレスが多く、アジア圏ではひきこもりが多いのも、その端的な例です。
家族の外にいるのがホームレス、家族のなかにいるのがひきこもりです。欧米では若者の失業、犯罪、薬物中毒などが大きな社会問題となっています。日本では若者を保護する優しい家族がこれらの問題を抑止し、その代償がひきこもり問題とも考えられます。
ひきこもり問題の解決には社会全体の根本的な意識改革が必要です。一つ目は、ひきこもりやメンタル問題に対する偏見の払拭です。二つ目は、ひきこもる人が安心して社会参加できる居場所づくりです。三つ目は、家族への支援です。
家族が孤立せず、相談できる体制の充実、特に高齢者とその家族を含んだ社会支援が大切です。これは高齢化するひきこもり問題ばかりでなく、高齢者への虐待抑止にもつながります。 ( おわり )
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