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生命の無限の可能性を信じて
白樺会総合委員長 平栗 由美
[プロフル]
大学病院や創価大学の保健センター等で、看護師としての勤務を経験。看護師。保健師。千葉県在住。女性部副本部長。
発達障がいは、近年、どんな人にも身近なものであることが知られるようになりました。
昨年、文部科学省が実施した、発達障がいに関する調査では、「小・中学校の児童・生徒の約 11 人に 1 人は発達障がいの可能性がある」という事実が明かになりました。徐々に発達障がいへの理解は広がりつつあるものの、当事者や親は、どうしても不安を抱えてしまいます。
私は現在、市町の行政で、保健師として母子保健業務などに携わっています。中でも、発達の悩み事を抱えた親と子を対象とした、親子支援教室の仕事にかかわっています。「出会ったすべての親子が笑顔になれるように」「お子さん一人一人の個性が輝くように」と願い、多くの親と子に長年、寄り添ってきました。
心の声を聴きたい
親子支援教室には、自閉的な傾向のある子や言葉の発達の遅れが疑われる子など、2~3歳ぐらいの子どもと、さまざまな悩みを抱えた親とが来室されます。
教室での約1時間、見知らぬ場所になれることができず、ずっと泣きやまない子もいます。そうした行動には、その子なりの理由があり、原因もそれぞれです。でも、原因がわからないうちは、親は〝自分の子育てが悪いのでは……〟と自分を責めてしまい、出口の見えない育児に疲れ切ってしまうこともあります。
そうした親御さんに「一人で抱え込まないでほしい」「なんでも話してもいいんですよ」と声をかけ、少しでも心の支えになれるように努力しています。
お子さんがリラックスできるように、笑顔で寄り添い、絵本の読み聞かせやリズム遊びなどで一緒に遊びます。中には、慣れない場所や人の中で遊ぶのが難しいお子さんもいます。そういう時は、まず「よく来たね」と、親子に声をかけ温かく迎えています。
親御さんの気持ちに寄り添い、話をよく聴く。そうして親御さんの緊張が解け、肩の力がふっと抜けて安心されると、ぽつりと本当の気持ちを語って売れるのです。親の安堵は子どもに伝わっていきます。そして、自然と遊びの輪の中に入れるようになるのです。そこまで至るのに、時には半年かかることもあります。けれど、その時の親子の輝く笑顔は、私にとって忘れることのできない宝物になります。
これまでに出会い、関わった子どもたちは、自分らしく人生を歩んでいます。日蓮大聖人は、一人一人のありのままの生命を最大限に輝かせる「桜梅桃李」(新 1090 ・全 784 )の生命哲学を教えられておられます。親も子も、自分の生命に具わる無限の可能性を開いて、生きる力を見いだし、みなぎらせていけるように——そう強く祈りながら、〝心の声を聴きたい〟と、一人一人に向き合う日々です。
御書には、「鏡に向かって礼拝をなす時、浮かべる影また我を礼拝するなり」(新 1071 ・全 769 )とも仰せです。どこまでも目の前の一人の仏性を信じぬくことで、その一人の仏性を呼び覚ましていくことができるのです。この仏法の哲理を学んだからこそ、「私の使命は、ここにある!」と、日々の仕事に臨むことができます。
そう確信できたのは、看護制時代、実習の時に出会った A ちゃん親子とのかかわりがきっかけでした。
希望の灯をともす
当時 3 歳だった A ちゃんは、幼い頃の事故がきっかけで重度の脳性まひに。声かけにも反応がなく、自分で寝返りも討てず、将来、笑顔を見ることはないだろうといわれていたお子さんでした。
「私に何ができるのだろう」と悩みましたが、〝 A ちゃんが毎日楽しい、うれしいと感じられるように〟との思いで関わり続けました。
〝 A ちゃんの生命に届きますように〟と祈りつつ、耳元で童謡を口ずさんだり、音の出る手作りのおもちゃを鳴らしたり。また、ある時は、髪の毛を結び、頭をなでながら、「 A ちゃん、かわいいね」と声をかけました。
すると、日に日に A ちゃんの表情が和らいでいきました。そして、実習が終わる頃、私の祈りが届いたかのように、初めてニッコリと笑顔を見せてくれたのです。
一緒ン、わが目を疑いました。けれど確かに A ちゃんは笑っていたのです。お母さんと目を合わせ、手を取り合って、大喜びしました。
わずか 2 週間の関りでしたが、祈りは必ず通じる、生命と生命は深いところでつながっていると教わりました。
祈り、寄り添い、目の前の生命に、希望の灯をともす——この白樺の心こそ、社会を照らすと確信しています。
池田先生はかつて、「白樺の心よ、広がれ、広がれ。日本中、世界中を、美しき『人間の大地』にするために」と、白樺会への期待をつづってくださいました。
「いのちこそ宝! 生命の世紀の太陽たれ」「希望と安心! 創価の慈悲の天使たれ」との、白樺会指針を胸に、これからも、出会う全ての方に心を尽くし、皆の個性が色とりどりに輝く社会を目指して、進んでいきます!
視点
桜梅桃李
平栗さんが、発達障がいのある子と親とのかかわりの中で大切にしていることは、「まず、親子の、〝ありのまま〟を受け止めていくこと」。その「ありのままの個性」を、以下に輝かせていくか——。その道筋は誰一人として同じではないからこそ、題目をあげ抜き、全生命力をかけて、親子とのかかわりに臨んでいると語ってくれました。
池田先生は「桜梅桃李」(新 1090 ・全 784 )の一節を拝して、「大切なのは〝ありのままに生命を輝かせる〟ことです。桜も梅も桃も李も、それぞれが懸命に命を燃やし、咲き誇るからこそ美しい」と、教えています。妙法によって大生命力を湧き出だした一人の生命の輝きが、周囲の人々に広がっていくのです。
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