ラッコの映画生活

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2008.05.10
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TROIS COULEURS: BLANC

89min
(所有VHS)

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キェシロフスキの「自由、平等、友愛」三部作『3つの色』の第2編『白』。テーマは「平等」だ。映画というのは時として、あるいはかなり頻繁に、その作りは複層的だ。この映画での「不」平等とは、まず最初は愛情関係におけるカロル(ズビグニエフ・ザマホフスキ)とドミニック(ジュリー・デルピー)間の不平等だ。しかしそれはパリ(あるいは西欧社会)でのポーランド等東欧系移民の置かれた不平等な立場でもあり、あるいはもっと広くフランス等の西側先進国と戦後ソ連体制下で苦しんだ東欧諸国の不平等でもある。そういう含意をはっきりとした象徴として描いた映画もあるが、多くは漠然と色々な層の内容が混ざっている。それは脚本家や監督の映画の構想から実現というのは、彼らの色々な思いの錯綜の結果だからだ。そういう意味で3作の中でこの『白』には監督の複雑な思いが色々込められているのかも知れない。

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この『白』は3作の中でやや毛色が違う。他の2作がフランスやスイスを舞台として、フランスの役者がフランス語で演じているのに対して、ここでの主要な部分はポーランドでのポーランド語だ。また『青』と『赤』がビノシュやジャコブという女性が主人公でほぼ出ずっぱりなのに対して、『白』ではデルピーは最初と最後に出てくるだけで男性ザマホフスキが主人公。その彼もカロル・カロルという名前で、チャーリー・チャップリンを文字ったもの。大真面目な他の2作に比べてややコミカルなテイスト。キェシロフスキはこうして三部作にメリハリを与えているのだろう。そんなことから、この『白』は一部では『青』や『赤』より人気がないが、ボクは『青』以上の名作だと思うけれど・・・。

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カロル・カロルは、風采こそ冴えないが有能な美容師。各地の美容コンテストで優勝を重ねてきた。あるコンテストで彼の実技を見つめていたのはパリの美容師ドミニック。二人はやがて恋に落ち、激しく愛し合うようになる。二人は結婚をしてパリに美容室を開店(あるいは既にドミニックが経営していた店かも知れない)。フランス語しか話せないドミニックとフランス語はほとんどわからず、ポーランド語しか出来ないカロル。異郷のパリに住むとあればカロルには不利な条件だ。結婚し、共に美容院で働き、生活をともにするという安定的環境になったとき、二人に必要なのは肉体的愛だけではなく、言葉で気持ちを伝え合うことで精神的に愛を深めることだった。

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しかしアイデンティティーを失ってしまったカロルは、その肉体的愛をも満たすことが出来なくなったしまう。もちろん論理的に考えれば、ポーランド語の出来ないドミニックにも責任の半分はある。しかし女の心理とは、少なくともドミニックの心理はそんなに論理的なものではない。場所はパリからフランス語の方が当然だ。しかも実際にカロルはドミニックに対して性的不能なわけだから、肉体の愛をもドミニックに与えることが出来ないのだ。ゴダールの名作映画のポスターが暗示するように、ドミニックのカロルへの愛は『軽蔑』へと変化する。しかしその嫌悪に近い感情は、恐らくドミニックがカロルを愛さなくなったのではなく、カロルの愛への期待がそうさせていたのだ。

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ここまでが映画が始まるまでの経緯だ。「結婚が完成する」とでも訳すことのできるフランス語の表現があって、心・肉ともに結婚が完成するという意味だ。だから反対に「結婚が完成していない」というのは、肉体的に結ばれていないという意味で、それを理由にドミニックは離婚訴訟を起こす。裁判所にやってきて玄関の階段を登る途中のカロルの肩に、空を舞う鳩の糞が落とされる。ここでも、悪い予兆をキェシロフスキは描いている。離婚訴訟の法廷では通訳がつけられていたが、カロルは思いのたけを十分に伝えられないという悲哀を味わされる。ことの事実関係が問題となる殺人事件の裁判とは違い、ここでは感情の機微を思い通り伝えられなければならないのだ。それはフランス語が出来ないということによる一種の差別なのかも知れない。少なくともカロルはそこに「平等」のないと感じる。

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ポーランドに戻ったカロルはある計画を持った。しかしその経緯に関するボクの見方は、多くの方がレビュー等に書かれておられるのとはちょっと違う。 (この辺からやや、少しずつネタバレ) 、カロルは最初からドミニックに復讐しようと考えたのではないのだと思う。カロルが必死になってやるのは、金を稼ぐことと、フランス語の勉強だ。周到な計画でドミニックに復讐をするだけならフランス語は不必要だ。その地がポーランドであれフランスであれ、フランス語でドミニックと意志の疏通ができるようになった上で、稼いだ金でドミニックとの幸せな愛の生活をやり直すという計画なのだと思う。しかしそれを狂わせたのは、かなりフランス語ができるようになったカロルが、思い余ってした電話でのドミニックの反応だった。しっかりフランス語で話したにもかかわらず、カロルからだとわかるとドミニックは聞く耳を持たず、最初の応答の「もしもし」を言っただけで、何も言わずに一方的に電話を切ってしまった。カロルとの接触をこれほどまでに嫌うドミニックの心理の背後に、ドミニックのカロルに対する気持ちがあることまで理解出来るカロルでは、まだなかった。

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(以下完全ネタバレ) そしてカロルは残酷な計画へと心変わりする。一計を案じてドミニックをポーランドへ呼び寄せ、彼女をカロル殺しの殺人犯とすることだ。計画は半ば成功するが、半ば失敗に終わる。それはカロルのドミニックに対する捨て切れない思いが原因だ。死んだことになったカロルの葬儀が行われる頃には、予定では偽造パスポートで海外に高飛びしてポーランドを離れているはずだったが、カロルはドミニック見たさにその自分の擬装葬式の様子を隠れて双眼鏡で見ていた。そしてカロルが目にしたのは涙を流し、崩折れんばかりに悲しむドミニックの姿だった。そしてこのとき、たぶん二人は互いの愛をはっきりと知った。いたたまれなくなったカロルはホテルのドミニックの部屋に忍び込んでベッドで彼女を待った。驚く彼女だが、もちろん本物のカロルであるとドミニックにはすぐわかった。二人は激しく燃えた。

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しかし変更された計画は着実に進んでいた。カロルは充実した愛の一夜の余韻に浸り眠るドミニックを残して部屋を去った。カロル殺しの容疑で警察がやってくるはずだからだ。生きている自分をその場で現してしまえば、自分はもとより、計画遂行に尽力してくれたミコワイ等をも罪に落とすことになる。だから自分の身分回復とドミニックの無罪証明は改めて別の形でする他なかった。ドミニックを逮捕に警官がやってくる。通訳も同行し、やがてフランス領事館の職員もやってくる。カロルを殺した容疑がかけられ、そのカロルは死んだものとして葬儀にも参列したのに、そのカロルが生きていて昨夜ベッドをともにしたと、わけのわからないことでしか身の潔白を証明できないのだ。しかも言葉もわからず通訳を介してだ。カロルがドミニックの愛を疑って案じた計画が皮肉にも成功してしまい、ここに、冒頭でカロルが置かれたのと同じ状況に彼女は置かれる。「平等」の成立。

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カロルは高飛びせずポーランドに残り、兄との「弁護料は高くつく」という会話で仄めかされるように、これから自分の身分回復とドミニックの無罪釈放に尽力することになるのだろう。そしてそれが成功したらしいことは『赤』の最後で示される。カロルは身分を偽って、監獄の看守を買収し、遠く窓越しにドミニックに会いに行く。平等ということを知り、互いの愛を知り、あるべき愛とは何かを知って成長した二人、ドミニックとカロルは互いの愛をもう疑っていなかった。そしてその愛をもっと成長させ本物とするべく、「愛の可能性」のある二人として、運命(あるいは神?)は二人を難船したドーバー海峡の方舟から救ったのだ。(関連の記述があるので、 まえがき 『青の愛』 もお読み下さい。)

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Last updated  2008.05.17 04:36:17
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