2010年04月04日
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カテゴリ: Career-Tracks
ようやく「1Q84」を読み終えた。
この本が、ジブンにとっての初めての村上春樹だっただけに、
多少面食らった部分もあった。

状況描写に対する意気込みが凄まじい。
それは「1Q84」だけ言えることなのか、それとも昔からこの人はこういう傾向にあるのか、
それは他を読んだことのないジブンにとっては分からないことだったが、
とにかく、あの手この手を使って、読み手に映像を届けようとしてくる。

読んでいる側は、空のフィルムを回しているだけで、そこに自動的に色がついていく。
村上春樹、という別のカテゴリーで捉えられるのもムリはない、と思った。


物語の中に一旦登場させたそれを、大切に、丁寧に最後まで扱う。
そしてアントン・チェーホフの引用さながらの結末さえ用意する。

時には男性のナイーブな描写を、内閣設立と重ね合わせたりもするし、
あるいはジャムの塗り方は、レンブラントの筆の動きと重なり合ってしまう。
ゆっくりと進む、一つの筋書きの上において
そういう比喩と隠喩が数えきれないくらいの容量で埋め込まれていた。

そういえばこの前、仕事を一緒にしたクリエイティブ・ディレクターも言ってたな。
「たとえ話では、負けないよ。クリエイティブってそういうことだからね。」

水の底でつながっている本質的な観念を
あらゆる形にして水面上に浮き上がらせること。
「ふかえり」の使うバターナイフとレンブラントの筆に意味のつながりを作り、

それが表現ということなのだろうか。

そんなことを考えたまま、KL市内のクラブに一人で出かけた。
最近、人と多く会いすぎた。
何かを考えることから、遠く離れたところにいた。
元来のジブンは、こういう時間を必要としていた。


その一角のテーブルに寄りかかり、ハイネケンをグッと飲んでみる。

隣のテーブルでは、行儀の良さそうな中国系マレーシア人がたむろしていた。
資本主義のちょっと先っぽにいることに幸せを感じながら、
ウイスキーのボトルを囲んで何やら話している。

少し太っているとも言えなくないガッチリした体型で、
非対称な前髪を残しながら短く刈り上げ、白地の襟付きシャツを羽織っている。
それがこの国のいわゆるイケメンの典型なのだろうか。

「日本の秋」をコンセプトにしたそのフロアの、
最先端(と呼びたいもの)と最先端と一緒にいたい人たちを眺めながら
ゆっくりと時間は過ぎていった。

落ち葉を模した赤い紙切れが、ガラスケースの中で舞い上がっている。
村上春樹には到底叶わないその表現を前にして、
僕は少し苦笑いをしてしまった。
それが表現ということなのだろうか。





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最終更新日  2010年04月05日 11時22分59秒
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