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二宮翁夜話巻の5
【205】 下野国 某 の 郷村 、 風俗 頽廃 する 事 甚 し、 葬地 定所 なく、 或 は 山林 原野 、 田畑 宅地 皆 埋葬 して 忌 まず、 数年 を 経 れば 墓 を 崩 し 菽 麦 を 植 ゑて 又 忌 まず、 故 に 荒地 開拓 、 堀割 り、 畑捲 り 等 の 工事 に、 骸骨 を 掘 り 出 す 事 毎々 あり、 翁 之 を 見 て 曰 く、
夫 れ 骸骨 腐朽 すといへども、 頭骨 と 脛骨 とは 必 ず 存 す、 如何 となれば、 頭 は 衆体 の 上 に 有 つて、 尤 も 功労 多 き 頭脳 を 覆 ひて、 寒暑 を 受 くる 事 甚 し、 脛 は 衆体 の 下 に 有 つて、 身体 を 捧 げ 持 ち、 功労 尤 も 多 し、 其 の 人 、 世 に 有 つて、 功労 多 き 処 、 没後 百 年 其 の 骨 朽 ちず、 其 の 理 感銘 すべし、 汝 等 頭脛 の 骨 の 如 く、 永 く 朽 ちざらん 事 を 勤 めよ、
【205】下野国(しもつけのくに)のある村では、風俗がはなはだ頽廃していた。埋葬地も定まっておらず、あるいは山林・原野・田畑・宅地などどこにでも埋葬して忌むことを知らなかった。数年がたつと墓を崩して豆や麦を植えて忌むことがなかった。だから荒地の開拓、堀割りや畑の土壌回復等の工事の際に、骸骨を掘り出す事がしばしばだった。尊徳先生はこれを見て言われた。
「骸骨は腐朽しても、頭蓋骨と脛(けい)骨とは必ず残る。なぜかといえば、頭は体の上にあって、もっとも功労の多い頭脳をおおって、寒さや暑さを受ける事がきわめて多い。脛(はぎ)は体の下にあって、身体をささげもって、功労がもっとも多い。人もまた、世にあって功労が多いところは、亡くなった後百年たってもその骨が朽ちない。その道理をよくわきまえるがよい。
あなたたちも、頭や脛の骨のように、ながく朽ちないように勤めなさい。
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