総務省が発表した5月の家計調査によると1世帯当たりの消費支出は28万3056円となり、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比0.1%減少しているそうなのだ。マイナスは15カ月連続で比較可能な2001年1月以降の最長を更新しているという。食料などへの支出が抑えられたというが、同時発表した5月の全国消費者物価指数は価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が100.3となり前年同月比0.4%上昇しているが、プラスは5カ月連続で、原油高を背景にガソリンや電気代などエネルギーの上昇が続いているそうなのだ。消費支出は5月の日曜日が前年より1日少なかったため集客に苦労した外食などが減少し、この影響を除くと総務省はプラスに転じた可能性があるというのだ。
総務省は消費について「弱い状況ながらも回復の動きが見られる」との見方を示しているが、「プレミアムフライデー推進協議会」が6月中旬に、一般サラリーマン約2000人を対象に行ったアンケート調査によると、プレ金の認知率は約9割と高水準だったが、「どのように思うか」との質問に「賛成」と回答したのは半分程度にとどまっているというた。経団連の石塚邦雄副会長は東京都内で開かれたイベント「プレミアムフライデー・サミット」で、「週休2日もハロウィーンも定着に時間がかかった。プレ金はまだ4カ月なのでこれからだ」と強調したが、その後記者団に「どんな業種でも人事や総務など管理部門は午後3時に帰れるはず。会社全体では無理でも、できる部署から少しずつ参加してほしい」と話したという。
このプレミアムフライデーというのは経済産業省や経団連などによる「プレミアムフライデー推進協議会」が主導し、消費拡大を目的に「働き方改革」の趣旨も踏まえて2月に始まったものなのだが、経産省の集計によると6月時点で早めの退社などに取り組んでいる企業数は537社で2月から4倍近く増えているという。ただし「プレミアムフライデー推進協議会」が約2000人を対象にしたアンケート調査では「会社の推奨で通常より早く帰った人」は2月が7.6%で、3月になると4.9%だったが4月は4.3%に5月5.4%とほぼ横ばいだという。回答者の勤務先企業に導入されている働き方改革の取り組みは「ノー残業デー」が78.3%と最多で、次いで「フレックスタイム勤務制度」と3位が「プレミアムフライデー」となっている。
消費税率の 3 %引き上げからすでに 3 年近く経過し消費税引き上げに伴う駆け込み需要の反動減はとっくに一巡しているはずなのだが、現状の個人消費の伸び悩みの原因を消費増税に求めていては景気の見通しを見誤るという。個人消費の低迷は勤労者所帯での、税金や社会保険料支払いを除く所得である可処分所得の伸び悩みと、高齢者所帯での可処分所得の減少が重要な原因だとされている。国民経済計算によれば国民所得のうち雇用者の取り分を示す雇用者報酬はアベノミクス前比べ 10.3 兆円増加したが、家計可処分所得は 4.3 兆円しか増えていないそうで、雇用者報酬の増加が税金や社会保険料の増加に食われ、消費のもとになる家計可処分所得が伸び悩んでいることを示しているというのだ。
特に高齢者所帯の可処分所得は社会保障給付減少の結果で減少しており、消費支出を削っても追い付かず平均消費性向では高齢者所帯の消費支出が実収入を上回るため高齢者所帯では貯蓄の取り崩し幅が年々拡大しているという。安倍政権の予算作成では財政の帳尻合わせは社会保障費の圧縮と考えているようだが、そう考える限り今後も勤労者所帯には社会保険料や税金の負担増がのしかかるうえに、高齢者所帯には社会保障給付の削減が続くに違いないこともあって可処分所得の前途は今後も危ういという。高齢者は消費者としても巨大な存在なのだが、その高齢・無職所帯が可処分所得の減少から消費支出を縮小せざるを得ない状態では個人消費全体が伸びるはずがないというのだ。
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