人手不足の業種間格差が一段と広がっているそうで、労働力不足がもっとも深刻なのは外食や運送会社に私の所属する建設などで、逼迫度合いはバブル期なみの厳しさだという。製造業は機械化で業務の置き換えが進んでいることなどからそこまで厳しくなく、銀行もなお余裕があるそうで、人手不足業種は合理化やパート賃上げなど対応を迫られている。企業短期経済観測調査の業種別集計を公表したが、従業員が過剰と答えた企業の割合から不足と回答した割合を引いた雇用人員判断指数で業種ごとのバラツキが鮮明になっており、マイナス幅が最も大きかったのは宿泊・飲食サービスのマイナス 62 で、集計分類を見直して以降で最低となり運輸・郵便はマイナス 47 でバブル期よりも悪化し過去最低を記録したという。
建設や小売りも右肩下がりが続いている模様で、こうした業種は機械や情報技術で作業が代替しづらい労働集約型産業でパート比率も高いとされている。労働力人口が減る中で景気回復とインターネットによる買い物急増などで宅配能力が限界に近づき、料金値上げなどに踏み切っている企業も多いと聞く。働き方改革で正社員の残業による穴埋めも難しくなり、営業時間見直しを迫られる店も出てきたというのだ。人手不足が原因の倒産は全国で 294 件だとされ全体の倒産件数が減少する中でもほぼ前年並みで、建設業とサービス業が半数を占めるというのだ。賃上げに耐えられないコスト増を価格転嫁できないといった体力の弱い地方の中小企業を軸に淘汰の波が広がるかたちとなっているそうなのだ。
人手不足が続く雇用環境でも希望・早期退職者を募る企業は増えており、業績不振からリストラに踏み切る従来型のほか、若手登用を進め年齢構成の是正を図る事例や、早めに不採算事業を見直して筋肉質の体質へ転換を進めたり、新たなビジネスモデル構築に動き出したりするなど将来を見据えている企業もあるという。信用調査会社の東京商工リサーチが主な上場企業について調べたところ、新たなビジネスモデル構築している企業は昨年 25 社と5年ぶりに前の年を上回ったという。東京商工リサーチ情報本部の関雅史課長は多くは業績不振だが将来の展開を視野に入れた「ちょっと前向きな」事例が出てきていると指摘し、有効求人倍率が高水準で推移するなど雇用環境の変化も背景にあるとみている。
企業を取り巻く経営環境は激変し人工知能やインターネットなど技術・情報革新が世界規模で進んでいるほか、少子高齢化で国内市場も急激に変化している。さらに労働市場では人手不足に働き方改革も加わり雇用環境が様変わりしつつあるという。最近の退職者募集の動きについて組織・人事コンサルタントの秋山輝之氏は、かつてのように業績が悪くなって首を切るリストラというよりは退職金を手厚くして望む人に早めに退職してもらうものが「昨今、増えている」と指摘している。バブル期に入社した人が 50 代となるなど企業は社員の年齢構成や必要な事業・部門への人材の適正配置の問題などを抱え「採用には苦慮している」とし、「人員構成は常に見直したい」と考えているというのだ。
このため希望・早期退職者募集は「今後さらに加速していくのではないか」とされ、人手に余裕のある業種から少しでも不足する業種へと人材が移れば労働市場全体が効率的に回るはずだというのだ。現実には処遇格差や技能がカベとなり余剰人員の移動はそう単純ではなく、労働政策などに詳しい日本総研の山田久主席研究員は「これまで付加価値や賃金が低かった業種ほど、いま人手不足感が強まっている」という。数年前までは低賃金で過酷な労働を強いられる「ブラック企業」が社会問題化され、企業の生産性が低くとも安価な労働力でなんとか利益を出せていたが景気回復に伴い労働市場が激変したという。転職がしやすい労働市場の構築に向け政府の仕事も多く「金銭解決制度の導入」も視野に入れているという。
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