「人が 1 時間程度とどまれば確実に死に至る極めて高い線量」というのが福島第一原発 2 号機に関する放射線量が公表されたときにメディアから出た表現だが、核燃料が入っていた圧力容器の真下で 530 シーベルトと公表されたことを受けたものだったという。その際に立命館大学の開沼博准教授は「格納容器内部へ行けば放射線量が高いのは当然で、横に行けば数秒で死ぬ。火力発電所の火の上に 30 秒いれば死ぬのと同じ」と、報道のされ方に疑問を呈していた。動いている火力発電所の火の上のことで事故を起こして8年も経った停止している火力発電所の上に行っても特に問題はないだろう。この表現には「今後の溶融核燃料を取り出す作業には過酷な環境での遠隔操作が必要だ」と伝えるために意味のあるというのだ。
現在でも鉄筋むき出しの原子炉建屋での作業では胸に着けた放射線量計が鳴り響くそうなのだが、福島県の東京電力福島第 1 原発は東日本大震災に伴う史上最悪レベルの事故から 8 年を迎えるが、かつてオオタカの営巣地だったという原発構内は水素爆発で放出された放射性物質を抑え込むために大半が灰色のモルタルで覆われ草木など「命」の気配はなくなっているという。構内の 96 %で全面マスクなどの防護服は必要なくなったそうだが、核心部である建屋は依然として高線量で廃炉に向けた作業を阻んでいる。最大の難題である溶融核燃料)は遠隔装置による初の接触調査ができた段階で取り出しは見通せていないし、廃炉はスタート地点に立ったあたりなのに汚染水タンクも増え続け敷地容量が限界を迎えようとしている。
水素爆発で壁が崩壊した福島第 1 原発 3 号機の建屋脇では、放射性物質を含む砂ぼこりが舞い上がらないように鉄板を敷き詰め、やっとマスクなどの軽装備で近寄れるようになったがという 3 時間もいれば一般人の年間被ばく限度に達する線量があり、滞在は 5 分に制限されているという。 3 号機はプールに残ったままの燃料 566 体の取り出しに向けドーム状の作業場が整備されても設備トラブルが相次ぎ、昨年 11 月の作業開始は今年 3 月末にずれ込むなど計画通りには進んでいないという。 10 メートルほど離れて隣接する 2 号機では調査ロボットが初めてデブリとみられる堆積物をつまみ上げたが、周りの線量は人が 1 時間もいれば死に至るレベルの毎時 7 シーベルトほどあって取り出し方法の検討はこれからというのだ。
これまでは被害を拡大しないために「冷却し続けること」・「汚染水対策をすること」や「労働環境を守ること」などほとんどの作業は廃炉に向けた準備の段階だったそうで、福島第一原発 1 ~ 3 号機のデブリは合計 880 トンという推計もあり、どのように分布しているかも分かっていないというのだ。原子力規制委員会の更田豊志委員長は「触れたのは大きいが、まだ最初のステップ。長期戦になることは覚悟している」と話しているし、東京電力は廃炉期間を 30 年から 40 年と説明しているが「具体的な工程を積み上げた数字ではない。 50 年とか 100 年とか悠長な期間を口にするわけにもいかないので」と、東京電力関係者はは苦しい胸の内を明かしているそうなのだ。ここからが技術的にも最も難しい作業になるので楽観はできないという。
そのうえ問題となっている汚染水は構内の多核種除去設備で処理して約 1200 トンのタンクに移されるが、この汚染水貯蔵タンクは 7 日から 10 日に 1 基のペースで増え続けており、既に千基、 110 万トンに迫っているという。 2020 年末までに 137 万トンを保管できる敷地は確保しているとするが最終処分の方法は決まっていないという。国や東京電力は海洋放出を検討するが風評被害が再燃しかねないと地元の漁業者などは強く反発しており、規制委の更田委員長は「科学的に環境に影響を及ぼさないと説明できても、感情的に理解が難しいというのは当然で、政府と東電が説明を続けざるを得ない。大変難しい問題だからと先送りするというのは、廃炉の大きな障害にもなる」と、増え続ける汚染水タンクに危機感を募らせているという。
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