仁志・多喜馬の戯言日記&戯言通信

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2019年03月14日
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記者会見で財務省を取材している記者がした質問に対して麻生太郎財務大臣が「『自分で飲み倒して、運動も全然しねえで、糖尿も全然無視している人の医療費を、健康に努力しているオレが払うのはあほらしい、やってられん』と言った人がいた。いいこと言うなと思って聞いていた」と他人の発言を引いて自分の思いを語ったというのだ。78歳の麻生財務大臣より年上の人の中にも健康に気をつけ予防に取り組んでいる人は多く、その人達も「自分で飲み倒して運動もしない人」を指さし「あほらしい、やってられん」と思っている人は多いという。このことはソーシャルメディアでは「自己責任論と弱者排除を振りかざす醜悪体質」などの批判を招いて炎上したのだが、一方で「正論だし本音」という賛意の声も高かったという。

 国は「予防」を推進して医療費を抑制する政策を進めようとしているのだが、中心は経済産業省で「明るい社会保障」というスローガンを掲げているそうなのだ。主なターゲットは糖尿病などの生活習慣病で、105歳で亡くなった医師の日野原重明さんも「成人病」に代わる名前として生活習慣病を提唱していたという。背景には個々人の生活習慣が原因でなる病気なのだから個々人の努力で予防できるはずという考え方があるというのだ。予防によって医療費は抑制できるのかということだがこうした考えには異論があって、「生活習慣病って冷たい言葉だよね。自己責任を過大に評価している。このニュアンスが独り歩きすると、麻生さんみたいな発言になっちゃう」と話すのは、人工透析専門のクリニックを運営するベテラン医師なのだ。

 生活習慣病とされる病気の一つである糖尿病Ⅱ型が原因で腎臓が働かなくなると、血液から老廃物を取り除くため透析治療を受けなければならなくなる。糖尿病を悪化させるのは長時間労働しながら安い外食に頼る人が目立つとされ、「目の前のことに精いっぱい、ギリギリの暮らしで健康のことなど考えられない人が多いんです。日々勃発する出来事を追うポジションではなく、健康に気をつける余裕があります。でも、世の中には私と同じ50歳代で強いストレスを受けながら激務をこなしている人も多いでしょう。貧困病という側面がある」というのが今の医師の間では常識となっているそうなのだ。しかも体中の血液をきれいにする透析治療の標準は1回4時間を週3回必要で、心身ともに負担の大きい治療を生涯受け続ける必要があります。

生活全般にも厳しい制約がかかりその大変さは健康な人間の想像を超えるものだという。「自己責任論」が主張するところは 「勝手に飲み食いして糖尿病、で人工透析 自己責任だから自分でなんとかしろ」 という論理なのだが、いかにも「理にかなっている」ように思えなくもないというのだが、その先の社会の行く末を想像すると意外にゾッとすると言われている。というのも、この「自己責任論」の影には「自分たちは安全圏で、あの人達は別枠の人」と言う意識が甚だ大きく見え隠れするからで、おそらく「自己責任」を主張している方々は少なくとも自分が近い将来人工透析患者になるとは想定しておらず、彼らは「人工透析になる人」と壁を作ってラベリングしているわけで、この「当事者意識の欠如」という病理は大きな問題と言われている。

そもそも日本の医療・介護の世界は「みんなでお金を出し合って、病気や要介護状態になったすべての人を救済しよう」という趣旨の世界で、日本の医療・介護制度はその病気は自分の責任といったことなどを一切問わないとされてきたのだ。国民皆保険制度や高額医療費制度など世界の奇跡と言われる日本の医療制度の基本にはこうした「原因や責任を問わず、困っているひとを救済しよう」という「社会的寛容」の精神から出発している。言うまでもなく「自己責任論」はこの日本の医療・介護の精神の反対にある概念で、「それはお前の責任だから自分でなんとかしろ」という概念が「原因や責任を問わず救済する」という概念と正反対に位置するものであることは説明の余地が無いというのだ。

そしてその「自己責任論」の基礎にある「自分たちは別枠の安全圏」という意識や、「当事者意識の欠如」と言う病理はすでに社会を大きく侵食しつつあるというのだ。社会の仕組みが健康に与える影響を研究している東大准教授の近藤尚己氏は、麻生財務大臣の「不健康が生まれつきなら諦める」という言葉が気になったという。「不健康が生まれつきかどうかの線引きは難しい」のだが、「子どもの頃に置かれた厳しい環境が積み重なると、大人になってから不健康になるリスクが上がり、自分の努力ではどうしようもない事情は様々あるのに今の状態だけで自己責任かどうか判断するのはよくないし、事実上不可能です」という。そして霞が関の官庁で国の動きを取材していると医療費の抑制をめぐって様々な新しい動きがあるというのだ。






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最終更新日  2019年03月14日 01時44分48秒コメント(0) | コメントを書く


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