今年の 1 月の月例経済報告で景気拡大期間が戦後最長となった可能性を示した政府に対して「実感がない」との声が各方面から上がっていたのだが、私たち生活者の好景気ではないという認識は誤っていなかったようなのだ。内閣府は景気動向指数の 1 月の基調判断を「下方への局面変化」に引き下げたそうで、景気がすでに後退局面に入った可能性が示された形でだというのだ。景気判断としては「一時的」とされる可能性もあるが今回のように「下方への局面変化」という評価は 5 回目で、過去いずれもリーマンショックや東日本大震災など特殊事情があったという。日本の政策金利はマイナス圏にあるらしく量的緩和も継続中だが、それでも金融政策の先行きを巡る議論ではタカ派が優位に立っているという。
日本経済の先行きを展望すると海外経済が総じてみれば着実な成長を続けるもとで、設備投資の循環的な減速や消費税率引き上げの影響を受けつつも、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に来年度までの見通し期間を通じて、景気の拡大基調が続くと見込まれているという。消費者物価の前年比はプラスで推移しているが、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると弱めの動きが続いている。これには賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く残るもとで、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスなどが明確に転換するには至っていないことに加え、企業の生産性向上に向けた動きや近年の技術進歩なども影響しているそうなのだ。
こうした物価の上昇を遅らせてきた諸要因の解消に時間を要している中で、中長期的な予想物価上昇率も横ばい圏内で推移している。官房長官は景気が拡大基調にあるという認識に「変わりがない」と会見で発言していることや、 10 月の増税は予定通りとアピールしたことを記していると同時に、「春の統一地方選や夏の参院選を控え、経済対策の積み増しや 増税延期を求める声が与党内からも強まる可能性 がある」としている。そこから読み取れるのは安倍晋三首相が提案する消費税の引き上げが経済成長を頓挫させたとしても、投資家は日銀の支援をさほど期待すべきではないということだ。日銀が先週の政策決定会合で示した 3 年後の消 費者物価指数の見通しは黒田東彦総裁の就任以来で最低の水準となったという。
黒田日銀総裁は 2 %のインフレ目標を導入したが、日銀は 2022 年 3 月までの会計年度について、消費者物価指数上昇率を 1.6 %と予想しているが、最も楽観的な政策委員でさえ上昇率はわずか 1.7 %と予想している。これと矛盾するかのように政策委員会による政策金利の先行き指針はタカ派寄りに傾いており、来年の春ごろまで短期金利をマイナス 0.1 %に据え置く方針が明記されている。従来指針では単に「当分の間」と期限を定めずにその水準を維持するとしていたのに、 3 年後に物価目標が達成できるとみる政策委員が一人もいないというのだ。今からわずか 1 年後に短期金利の水準を再評価する指針を固めた日銀は、金融緩和策の継続を明言しているが、これは国債買い入れプログラムの実績に逆行しているというのだ。
日銀の展望と行動が発表内容の相違について最近公表された「金融システムリポート」で一つの説明がつくという。特に中小地銀の収益を巡る懸念を浮き彫りにしているそうで、低金利を背景とする日本の金融システムへの圧力は懸念してきた問題だという。銀行収益に対する懸念の強まりと並行して日銀は物価目標の未達にも平静を装っており、消費増税の影響を金融政策が相殺する可能性はほとんどないことがうかがわれる。消費税が 6 %から 8 %へ引き上げられた 2014 年は日本の景気回復は予想通り減速したが、日銀は異次元緩和に踏み切り量的緩和の債券買い入れを大幅に増やした。物価目標の達成をあきらめたかに見える中で増税による景気減速に対して以前のような措置が打ち出されるとは想像しにくいという。
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