これから寒くなると天気が悪いと心まで晴れず家にこもりがちになる人が多くなるが、こんなときこそ晴れ間が見えたらできるだけ外に出てほしいというのだ。というのも秋から冬に向けて日照時間が短くなると血中の ビタミン D が足りなくなる可能性があるからで、米国神経学会はビタミン D 不足の高齢者は認知症やアルツハイマー病を発症するリスクが増える可能性を示唆した大規模研究を紹介している。この研究では食物やサプリメントおよび日光浴により摂取したビタミン D の血中レベルに着目して実施したそうで、認知症のない 65 歳以上の高齢者 1658 人について血中ビタミン D 値を測定した結果によると、平均で年後には参加者のうち 171 人が認知症を 102 人が アルツハイマー病を発症していたというのだ。
本研究の結果ではビタミン D 値が正常である参加者と比較すると、ビタミン D 低値である者では認知症発症リスクが 53 %増大し、重度に不足している者では 125 %増大していたという。アルツハイマー病を発症するリスクはビタミン D 低値である者では約 70 %増大し、重度に不足している者では 120 %以上増大したそうなのだ。学歴や喫煙歴およびアルコール摂取といった認知症リスクに影響し得る他の因子で調整した後も結果は変わらなかったそうで、ビタミン D 低値であることと認知症やアルツハイマー病のリスクとの関連性を臨床試験の実施により、脂肪性魚類やビタミン D サプリメントなどを取ることでアルツハイマー病や認知症の発症を遅らせたり予防したりできるのかを確認する必要があることを確かめたというのだ。
ビタミン D は体内でとても重要な役割を果たしているのだが、よく知られているのが骨の形成を助ける働きで食品から取り込まれたカルシウムは吸収率が悪いのだが、ビタミン D と一緒に摂ることで小腸でのカルシウムの吸収が促進されるという。またビタミン D には神経伝達や筋肉の収縮などを正常に行ったり、筋肉中のたんぱく質合成を促進したりする働きがあることもわかってきたという。つまり骨だけでなく筋肉も増強してくれるわけなのだが、女性は閉経後に骨を丈夫にする働きもある女性ホルモンであるエストロゲンなどの分泌が低下するため、 50 代以降に骨がスカスカになってもろくなる 「骨粗しょう症」になりやすいことが知られており、高齢になって筋力が落ちると転倒して骨折しやすくなるのも防げるようになるそうなのだ。
このビタミン D はサケ・イワシ・サンマといった魚介類やキノコ類・牛乳・ヨーグルト・牛のレバーなどに豊富に含まれているのだが、青菜類や根菜類にはほとんど含まれていないという。ですから骨を丈夫にするためにも魚介類やキノコ類に乳製品などを意識して摂ったほうがよく、それに加え血中のビタミン D 濃度を上げるには日光を浴びるのがとても効果的だという。皮膚に紫外線が当たる、ビタミン D の前駆体の物質が活性型のビタミン D に変化し、血中濃度が上がるからだという。これから冬至に向けてますます日照時間が短くなつのだが、血中ビタミン D 濃度が下がりやすい季節であることを意識してできるだけ外に出るよう心掛け、特に高齢者は「骨粗しょう症」等の予防に努めるべきだという。
ビタミン D は摂り過ぎると高カルシウム血症になり腎機能障害だけでなく食欲不振や嘔吐に神経の興奮性亢進といった副作用を起こす恐れがあることから、できるだけバランスのいい食事から摂るよう心がけサプリメントを飲む場合も用量用法を守って服用するべきだという。日光を浴びることは大切なのだが、全身性エリテマトーデスなどの病気の人やケトプロフェンという成分を含む湿布薬だけでなく、一部の抗生物質や抗てんかん薬に抗がん剤などの薬を使っている人は、日光過敏症になる恐れがあるので、この場合も医師の指導を守って対策を取るようにするべきだという。また骨粗しょう症でビタミン D 製剤などの処方を受けている場合も、医師の指導を守ってビタミン D 不足に対応するべきだという。
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