定年後はもはや余生ではないこともあって再就職することが前提になってきているが、定年後に前職と同等の収入を得られるという幻想は持たない方がいいという。再就職を成功させる秘訣はコミュニケーション能力にあって、仕事でも家事でも人に頼らずに自分でする習慣がついている人が再就職先を見つけやすいようだ。また再就職の面接等のときには人材紹介会社から根掘り葉掘り過剰な情報を得ようとする人はうまくいかないという。資本主義の本質は人間の労働力が商品となることであるとされているが、定年後の再就職においても自己実現などという幻想を捨てて自分の労働力としての商品価値が、市場でどのくらいであるかを冷静に認識した人でないと仕事を見つけるのは難しいというのだ。
厚生労働省によれば日本人の健康寿命の平均は男性が 72.14 歳で女性が 74.79 歳ということになっているが、この数値は年々上昇傾向にあって今後も医療技術の発展に伴って伸びることが予想されている。政府の思惑もあって就業意欲の高い高齢者の活躍推進は高齢化する日本社会にとって重要課題のひとつといえるのだが、実際には働きたいと考えていても実際には働く場を与えられない高齢者は少なくないという。定年後の再雇用される人材とされない人材はどこが違うのかということなのだが、日本総研の小島明子氏は「働く意欲のある高齢者のうち、約 2 割は働いていないという実態がある。大事なことは、成長意欲を忘れずに、専門的な能力・スキルを磨き続けること」という。
日本の大手製造業に技術者を派遣している機関の調査によると「とても働きたい」と「ある程度は働きたい」といった働く意欲はあるのに働いていないと回答した高齢者は 20.8 %で、そのうえで調査では応募しても採用されなかった高齢者自身が分析した理由を尋ねているが、それによると「人事責任者が高齢者雇用に消極的だった」が最も多く、「職場全体に高齢者雇用に消極的な雰囲気があった」に、「自分の専門的な能力・スキルが評価されなかった」と続いているというのだ。調査の中の自由記述でも年齢や専門性のミスマッチを指摘する声は少なくないそうで、「求人では『年齢制限なし』としながらも、実態は高齢という理由だけで、面接さえ受けられなかった」という回答もあったという。
国内では労働人口の減少により人手不足の業種や業態が出ているにもかかわらず、いまだに高齢者の再就職は簡単でないことがうかがえるのだが、健康面への不安などから高齢者の雇用に消極的にならざるを得ない状況もあると想像されている。しかし採用する企業側が業務内容を上手に切り分けするなどして工夫すれば、時間や体力に制約のある高齢者でも活躍できる余地はあると考えられている。活躍できる高齢者を増やすことは企業にとって人手の確保につながるだけでなく、若手の長時間労働の削減や休暇の取得率向上など副次的な効果も期待できるはずだという。現在働いているシニアにどのように今の仕事を見つけたのかを尋ねると取引先などから紹介や継続雇用で就職する人が増えているという。
また就職したくても採用されなかったという高齢者からは「古い技術や経験が評価されない」という意見も数多くあったそうで、特に営業や企画・総務などの職種の人はエンジニアのような専門職よりも採用されにくいかもしれないという。ただし外部環境が目まぐるしく変化する現代社会においては、好奇心や社会に貢献をしたい強い思いと自己成長の意欲が大切になると感じられるそうで、特に成長意欲を見せる高齢者もいて「自分の経験と努力が報われたと考えている。今もスキルアップを目指しながら仕事をしている。この歳になっても現在の仕事が好きである」というように、現在の状態に安住せず勉強し続ける姿勢につながっていることが再就職の大きなポイントとなっていることがうかがえられるという。
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