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2005.04.28
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クリストファー・ドウソン『中世のキリスト教と文化』(新泉社)読了。

ドウソンは、中世キリスト教関連の本を読んでいると、しばしば引用されている研究者です。
本書は、 Medieval Religion Medieval Christianity という、二冊の本の訳書です。章は、日本語版として再構成されています。以下の通りです。

<中世の文化>
第一章 西欧キリスト教世界の社会学的基礎
第二章 中世文化における神学の発展

第四章 中世文化における文学の発展
<中世のキリスト教>
第一章 緒論
第二章 東洋と西洋
第三章 中世におけるキリスト教発展の諸特徴
 第一節 教父時代と西欧キリスト教
 第二節 暗黒時代と蛮族の改宗
 第三節 中世キリスト教世界と西欧文化の復活
 第四節 修道制
第四章 教皇職
第五章 異端と宗教裁判

<付1 浪漫主義の伝統の起源>
<付2 農夫ピアズの夢>
跋文

本書の中で興味深いのは、中世を三つの段階に区分していることでしょう(52頁から)。
第一段階は、後期ローマ帝国時代のキリスト教。教父が活躍する時代です。

第三段階は、12-14世紀、いわゆるヨーロッパ文化の「ルネッサンス時代」です。
以下に述べることは他の箇所に書かれていたことですが、第一段階で教義の整理・発展がみられ、第二段階はそれをそのまま継承、第三段階になると、イスラームからの影響などでスコラ学が発展、あらためて教義が体系化された、ということでした。
なお、現在では、12世紀以前の中世についても、「暗黒時代」と呼ぶ研究者は殆どいないのですが、上でそういう表記を使ったのは、本書に従ったまでです。しかし、ドウソンも、決して「暗黒時代」とはみなしていない、と感じました。

本書でまた興味深いのは、文学に関する論文が多いことです。
『農夫ピアズ』について。これは、14世紀にラングランドという詩人が書いたもので、同時代にはチョーサーの『カンタベリ物語』も生まれていて、後者の方が注目されているわけですが、『農夫ピアズの夢』は、「およそ他のどんな偉大な作品とも比較にならない程より型破り」な作品ということです。
『カンタベリ物語』は、フランスやイタリアの模倣による部分があったというのですが、『農夫ピアズの夢』は、あくまで北欧的伝統、のみならず北欧的精神に則っていた、というのです。
そういえば、『カンタベリ物語』は、イタリアのボッカチオの『デカメロン』の影響を受けていると聞いたことがあります。両者とも、目次しか見たことがありませんが、似たような構成だったと記憶しています。

キリスト教関連のことにも簡単に言及しておきましょう。さきに、三つの段階区分を紹介しましたが、そこからもうかがえるとおり、本書が扱う時代は割と広範囲です。
その中で感じたのは、やたらと聖フランシスコの役割を強調しているなぁ、ということでした。先日、聖フランシスコに関する興味深い指摘をうかがったので、まだ邦訳は出ていないですが、ジャック・ル・ゴフが聖フランシスコに関する本を書いていて、英訳が出ているので、それを読んでみようか、と思いました。
私の目下の研究対象であるジャック・ド・ヴィトリも、聖フランシスコについて言及しているので、間違いなく勉強にはなりますし。
他にも説教関連の外国語文献を読まなければいけないので、どうすることやら、ですが。





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Last updated  2008.07.12 21:41:36
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