のぽねこミステリ館

のぽねこミステリ館

PR

Profile

のぽねこ

のぽねこ

Calendar

2006.04.05
XML
Michel Pastoureau, "Couleurs, Decors, Emblemes"
dans Michel Pastoureau, Figures et Couleurs : Etude sur la symbolique et la sensibilite medievales , Paris, 1986, pp. 51-57.

 ミシェル・パストゥローの論文集 『図柄と色彩―中世の象徴と感性に関する研究』 より、「色彩、装飾、紋章」を紹介します。注もついていない短い論文です。簡単に内容紹介を。

まず、装飾の三つの価値について。(1)紋章としての価値。紋章は、個々人を識別する役割を果たします(後述)。(2)イデオロギーを伝達する装置としての価値。(3)図像的価値。
装飾の中で、色が最も重要な役割を果たします。中世の人々にとって、色は、人間や社会の分類、価値付けなどの役割を果たすものでした。以上が前文です。
以下、小見出に沿って。

<布etoffeという媒体の優位性>
11世紀の間に、西洋文明は毛織物の文明となりました。布産業が中世経済の原動力だったといいます。


<灰色の人間、赤い壁>
中世の図像に関する資料は、現実の人間の衣服を研究するにはあてにならないといいます。現実には、(衣服の)色はいくつかの例外を除いて長持ちしなかったからです。はっきりした染色、貴族たちが着ていた色鮮やかな服-こうした現象が認められるのは中世末であって、12-13世紀の人間は、「灰色の人間」hommes grisだったといわれています。
ところで、教会は色を賛美していました(12世紀を生きた修道士クレルヴォーのベルナールなど、色鮮やかな教会について不平を述べる人々もいますが)。その中で、赤が支配的な色だったといいます。赤は卓越の色であり、人間が暗闇への恐れに打ち勝つようにする色だ、ということです。
青が次第に優位になってくるのですが、17世紀半ばまで、室内の壁では、白や赤が優位だったそうです。他のパストゥローの論文では、青が優位になっていく過程が強調されるのが印象に残っているので、この指摘は印象的でした。

<紋章をつけた人間>
12世紀、「個」(個人、個性)が出現し、個人を識別する動きがうまれます。まず、家族が紋章の最初だそうです(個人を識別する役割という意味で、でしょう)。11-14世紀に、姓が普及していく過程も指摘されています。
紋章は、まず戦争やトーナメントの中で出現します。かぶとやくさりかたびらのせいで、個人の識別が難しくなる。そこで登場するのが紋章です。12世紀末から急速に広がり、軍事の領域だけでなく、印璽、貨幣、建築物などでも紋章が利用されるようになります。
また、地理的にも拡大し、13世紀には全ヨーロッパに広がったそうです。紋章を使う人々も、戦士にはじまり、貴族女性、聖職者、市民、ブルジョワなどなど、だれでも使えるようになっていきます。やがて、古代の英雄や神話の人物など、想像上の人物にも紋章が使われます。

<記章marqueの文明>
この節は長いのですが、メモはあまりとっていないので、短めに。紋章学により、紋章には厳格な規則が設けられます。紋章官が、紋章の作成などに責任をもつことになります。
中世の文明は「記章の文明civilisation de marque」だと指摘されます。ここまでに何度もふれていますが、紋章(記章、印signe)がもつ、対象、場所、人を識別するはたらき(さらに、階層だて、対立させ、協力させる、などのはたらきもあります)が強調されています。

ーーー
パストゥロー『図柄と色彩』 Figures et couleurs からの論文紹介も、これで三度目。次から別の論文を読むので、パストゥローの論文を読むのはしばらく先のことになりそうです。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2008.07.12 21:01:52
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Keyword Search

▼キーワード検索

Comments

のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 第2部第…
のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 脳科学に…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: