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2007.08.03
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Michel Pastoureau, "Bestiaire du Christ, Bestiaire du Diable : Attribut animal et mise en scene du divin dans image medieval"
dans Michel Pastoureau, Couleurs, Images, Symboles. Etudes d'histoire et d'anthropologie , Paris, Le Leopard d'Or, 1989, pp. 85-110.(この記事で紹介するのは、pp. 85-97)

 ミシェル・パストゥローの論文集『色彩・図像・象徴―歴史人類学研究』(訳は、『王を殺した豚 王が愛した象』の、松村剛さんによる訳者解説より)に収録された論文「キリストの動物誌・悪魔の動物誌―中世図像に現れる神と、動物アトリビュート」を紹介します。
 いままで、『中世西洋における象徴の歴史』 Une histoire symbolique du Moyen Age occidental こちら を参照)に収録された論文を紹介してきましたが、同書の次の項目(植物)に移る前に、もう少し動物を扱った論文を読もうと思い、今回はこの論文を選びました(パストゥロー氏の論文を紹介するのも久々ですね)。

 本稿は、大きく、I.悪魔の動物誌と、II.神の動物誌の二部に分かれます。記事が長くなってしまうので、紹介記事は第一部と第二部に分けることにします。

 では、小見出しに沿って、簡単に紹介していきます。

[序論]


 本稿の目的は、中世図像における、動物と聖性の関係を見ることです。さらなる研究のための準備としての位置づけですね。

I.悪魔の動物誌

 悪魔を示す動物は多く、まずは大きく、以下の三種類に分けられます。
(1)種々の動物:蛇、豚、猿、くじら、猫、ひきがえる、こうもりなど
(2)架空の動物:龍など
(3)半人半獣:ケンタウロス、セイレーンなど
 また、獣性が悪魔を示す印にもなります。毛並みや、角や…。
 角は、いわば「指数となる」象徴です。基本的に、悪魔には角があるわけです。そのため、逆に角のない悪魔は、より不気味な存在となります。

図像:ミニアチュールから紋章へ

 本稿で調査対象となる、ミニアチュールと紋章について。
 まず、10世紀半ばから15世紀半ばまでの、約350のミニアチュールが検討されます。 9世紀までは悪魔の存在は稀ですが、11世紀までに、人間の姿をした悪魔が登場します。 11世紀からは悪魔の図像も多様化し、固有の特徴、すなわち獣性であるとか、動物を伴ったりするようになります。
 次いで、13世紀から増加・多様化する紋章について。13世紀は、現実の人物が身につける紋章だけでなく、文学上の英雄や、過去の聖人などにも紋章が与えられるようになります。聖なる者たちの紋章は比較的均質(種類が少ない)である一方、悪魔の紋章は豊富にあるということです。

動物と獣性

 まずは、悪魔のアトリビュート[象徴的な持ち物]となる動物たちについて。

・猿もよく現れるそうです。これは、異教の偶像を示すとか。
・カエル(ひきがえる):これは、不浄の生き物。
・<まぜこぜの>生き物たち。キメラ、セイレーン、ケンタウロスなどですね。こうもりもここに含まれます。中世の人々にとって、こうもりはねずみであると同時に鳥だったのですね。
・ほ乳類(猫、豚、猿、狼、犬、狐、豹…)、鳥(カラス)、昆虫、さそりなども、悪魔の動物誌に現れます。
・キリスト教的な動物(羊、鹿、ペリカン)などが、悪魔の動物誌にも現れることがあります。


毛並み、羽、表面の扱い

 悪魔の外見(表面)は、綿密な注意をもって描かれているといいます。それは、中世における視覚的慣習、日常に関する感性に基づいているため、その研究は、人類学的な意義ももつという指摘もパストゥローがしています。
 無地、単色の表面というのは稀でした。だからこそ、体が無地の悪魔は、より怪しい存在となります。
 縞模様は、中世の人々にとって、危険の印でした。中世の図像において、縞模様の服は、悪い人間、社会秩序を乱す存在を示します(詳しくは、『悪魔の布』を参照。紹介・感想の記事は こちら )。
 その縞が、波線やぎざぎざだった場合、それは無秩序な印象を強調します。
 区切り模様(格子模様、菱形、うろこ…)は、不快な印象をかきたてます。波線は、「ぬめり」の印象を示したといいます。
 斑点は、無秩序、不規則、不浄を示し、特に、皮膚病を想起させます。中世のように、皮膚病が非常に恐れられた社会では、斑点は、社会秩序からの追放なども意味したといいます。そのため、斑点模様をもつ悪魔は、縞模様やうろこをもつ悪魔よりも悪い存在だったとか。

色の戦略

 中世の図像において、色は非常に重要な要素でした。悪魔を示すためには、三つの特徴があります。
 まず、悪魔は暗い色階で描かれます。黒、茶色、灰色、濃紺などですね。なお、13世紀以降、赤は暗い色階を強調する、悪魔自身の色となるとか。
 第二に、悪魔は濃い色で描かれます。
 第三に、二番目と対立する気もしますが、色がないことも、恐れを引き起こすといいます。
 色は、矛盾する性格をもち、それが用いられる文脈の中で機能します。重要なのは、独立した色はそれ自体では何も示さず、他の色と用いられることではじめて機能するということだそうです。

(後半の記事は こちら





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Last updated  2008.07.12 18:25:16
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